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省エネ型自然冷媒機器導入企業担当者インタビュー集
(物流・倉庫)

株式会社西松株式会社西松

  • フロン類を使用する事業者にとって、“2020年問題”は事業上の大きなリスクであり、自然冷媒機器への転換が求められる時代になっている。
  • 季節によっては電気使用量が省エネ型自然冷媒機器の導入前後で4割程度も削減、その他、デフロストが少ないといった特長もある。
  • 倉庫内がマイナス60℃に一定に保たれているため、マグロの品質も良い。
株式会社西松

株式会社西松は、1894年(明治27年)に創業し、長年にわたり、三浦三崎の廻船問屋として全国のマグロ漁船や水産練習船の出入港、水揚げなどの支援を実施している。また、「西松の三崎まぐろ」と称し、ブランド化を図り、まぐろに付加価値をつけ、また、トレーサビリティー化した信頼できる商品を全国に供給している。

-省エネ型自然冷媒機器を導入するに至った経緯についてお聞かせ下さい-

弊社はマグロを冷凍倉庫で保管していますが、倉庫で使用する冷蔵庫は「超低温冷蔵庫」という非常に特殊な機器であり、これまでもマグロを冷やすことに対して、苦労してきたという経緯があります。

2014年(平成26年)、神奈川県三浦市と同じく漁港の町として栄えている静岡県焼津市に省エネ型自然冷媒機器を導入した冷凍倉庫事業者がいらっしゃいましたので、三崎漁港の冷凍倉庫事業者30名とともに、現地を見学させて頂きました。実際に省エネ型自然冷媒機器が稼働している状況を見て、機器の性能や安定性、操作性、さらには環境に配慮した製品であることを理解できました。特に、これからフロン類を使用する事業者にとって、“2020年問題”は事業上の大きなリスクになります。まさに、自然冷媒機器への転換が求められる時代になっていると考えています。ちょうどタイミングよく、環境省が補助事業を実施していることもありましたので、設備を更新する機会と考え、補助事業に申請し、2015年(平成27年)2月、無事に機器を稼働するに至りました。

-冷凍倉庫で商品はどのように保管するのですか-

イメージ:冷蔵庫内の様子/株式会社西松機器

商品であるマグロは、マイナス50℃以下に冷却して保管する必要があります。マイナス40℃で長期保管するとマグロは劣化してしまいます。具体的には、マグロの表面が乾燥し、マグロの油は酸化し、解凍したときに色変わりが早くなるためです。食卓に並ぶマグロはきれいな赤い色をしていますが、少し高い温度帯で保管すると、マグロは黒ずんでしまいますので、マイナス50℃以下で商品を保管する必要があります。ただ、あまりにも超低温になりすぎてしまうと、マグロをコンクリートの上に落とすなどの衝撃によって割れやヒビが入ることもあります。マグロは適切な温度で管理・保管することが求められます。

-現在使用している省エネ型自然冷媒機器にはどのような特徴がありますか-

まず、現在の機器の稼働状況ですが、夕方6時から朝6時までの12時間、冷凍倉庫内の温度をマイナス65℃に設定します。夜中のうちにおよそマイナス64℃から65℃くらいまで、夏場でもマイナス64℃くらいまで温度が下がります。朝6時に機器の運転を止めますが、日中にマグロの出し入れがあまりなければ、夕方まで冷却するための追加運転する必要もありません。

このように低温になればなるほど、冷却効果は高くなり、さらにこれまでの製品より格段に機器の性能が高いという点が特長と考えています。機器が稼働している時間帯は夜中ですので、今後は、夜間電力に切り替えることも検討しています。なお、電気使用量は大幅に削減することができています。季節によっては電気使用量が省エネ型自然冷媒機器の導入前後で4割程度も削減できています。

イメージ:省エネ型自然冷媒機器/株式会社西松機器その他、電気使用量の削減以外に、デフロスト*1が少ないという特長があります。デフロストを行わなくても済むように、できるだけ機器の中に吸い込む水蒸気を少なくする必要があります。一般的に、デフロストの作業はクーラーに水をかけたり、ヒーターで温めて氷を溶かしたりという作業になりますので、倉庫内に新たな熱源を置く必要があります。これによって、倉庫内の温度が高くなってしまい、さらにその分の温度を冷やす必要があるので余計な電気代もかかってしまうことになります。

さらに、今の機械はすべてコンピューターによって制御することができます。一旦操作を覚えれば作業は楽になります。いずれにしても、フロン類を使用せず、倉庫内を冷やすほど効率は高くなり、電気代も削減できるといった特長があり、導入したいま、良いこと尽くめの機器であったと思っています。

-省エネ型自然冷媒機器を導入した際には、どのような課題がありましたか-

機器を導入してしばらく経ち、実は、メーカーが推奨した機器の能力に足りていないということが分かりました。ただ、メーカーが即座に機器の増強を行うなどの迅速な対応をしてくれたことで、今でもしっかり冷却することができています。

イメージ:冷却塔の様子/株式会社西松機器その他に大きな課題になることはなかったと思います。最近では、工事に係る人件費が高騰していますが、早い段階で省エネ型自然冷媒機器を導入する決意ができたことは正しい選択だったと感じています。タイミングもよく、既存の冷凍機を廃棄する時期であり、そこに新しい機器を導入できましたので、作業にかかる負担もさほどありませんでした。

また、安全性の課題もありませんでした。現在の省エネ型自然冷媒機器は空気を使用しています。もともと近隣の冷蔵庫のほとんどはフロン類を使用していましたので、安全性も高くなりました。

-環境省の補助事業は有効でしたか-

省エネ型自然冷媒機器の導入において、非常に大きな後押しになりました。初期投資を圧縮でき、また、先程紹介したように電気代というランニングコストも大幅に削減できました。投資回収年は5,6年と試算しています。

なお、初期投資分の一部を銀行からの融資によって充当しました。その際、銀行に投資内容を説明する必要があり「10年程度ではないでしょうか」と説明しましたが、それでも銀行の担当者は「そんなに短いのですか」と驚いていました。実際はさらに短い5,6年ですから、機器を導入できて良かったと考えています。さらに、2020年問題を気にすることがなくなったので、事業を継続させる上で安心材料になっています。

-省エネ以外の効果はありますか-

倉庫内がマイナス60℃に一定に保たれているため、マグロの品質は良いと思います。お客様は、どのような機器でマグロを冷却・保管しているかについて把握されていらっしゃいませんが、「西松のマグロはしっかり冷えている」というお話を頂いています。最も品質の違いが分かる時は、朝、冷凍倉庫から市場に出荷して並べる時でしょうか。市場には、様々な事業者の倉庫から出荷されたマグロが互い違いに並んでいますが、やはりこの冷凍倉庫で冷却されたマグロは他のマグロよりもなかなか溶けにくいという特徴があります。

-省エネ型自然冷媒機器の導入を検討している事業者へアドバイスがあればお聞かせください-

省エネ型自然冷媒機器を導入したことによって、2020年問題への対応ができ、電気代を削減でき、品質を高めることができたと考えています。特に、2020年問題では、フロン類を使用した機器を保有している企業では、フロン類の調達が課題となり、フロン類の市場価格が値上がりするという可能性があると考えています。

いま、同業者にアドバイスなどは特にしていませんが、このような良い成果は得られていますので、周りの同業者には薦めるようにしています。実際、この地域でも同様の機器の導入を検討している事業者も出てきています。この動きがもっと広がると良いなと思います。

*1 冷凍装置の蒸発器で空気を0℃以下まで冷却すると、空気中の水分が蒸発器の表面に氷結する。氷結した水分は徐々に厚さを増し、熱交換を阻害する。そのため、氷結した水分を除去する必要があり、この作業をデフロストという。

株式会社西松:湊 素文

株式会社 西松
代表取締役 湊 素文

明治27年より、廻船問屋として、三崎港の歴史とともに歩み続けてまいりました。鮪は食材としての魅力にあふれているばかりではなく、日本人の味覚の文化として欠かせない魚です。その奥深さを誰よりも知っていると胸をはる私をはじめ社員一同、誇りをもってまぐろを取り扱っております。

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