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省エネ型自然冷媒機器導入企業担当者インタビュー集
(食品業界)

白鶴酒造株式会社白鶴酒造株式会社

  • 白鶴酒造株式会社は、平成21(2009)年に初めて省エネ型自然冷媒機器を導入してから、フロン類使用機器の削減、エネルギー起源CO2の排出削減を進めてきました。
  • 平成24(2012)年に新設された灘魚崎工場では、紙パック容器での清酒充填工程における加熱・冷却処理用に、従来の燃焼式ボイラ等ではなく、冷温同時取り出しCO2ヒートポンプを導入し、補機としてアンモニア冷凍機を併用しています。
  • 工場のシステム全体を見直すことで、従来よりも年間32%のCO2削減効果を生んでいます。
白鶴酒造株式会社

白鶴酒造株式会社は、1743年(寛保3年)の創業以来、酒造り一筋に歩み、清酒の醸造、販売を通じて、食文化・生活文化を応援することを目指している。
平成24(2012)年7月20日、物流機能と生産機能を併せ持った新しいボトリング工場を建設し、工場内の7ラインにてパック酒や瓶酒などを生産している。環境にも配慮した工場でもあり、省エネ型自然冷媒機器の導入の他、環境負荷の少ない商品開発や廃棄物の削減も積極的に実施している。
現在、省エネ型自然冷媒機器で生産した日本酒を海外四十数カ国に輸出している。

-省エネ型自然冷媒機器を導入するに至った背景について教えてください-

今回、ボトリング工場を新たに建設するタイミングにあわせて、省エネ型自然冷媒機器としてヒートポンプを導入しました。

それまで使用されてきた旧工場は、建設から40年以上も経過しており、機器および建屋の老朽化が進み、効率的な生産を実現するためのゾーニングもできていない状況でした。上層部が新工場の建設を決断したことで、平成23(2011)年に着工し、平成24(2012)年7月20日に竣工となりました。

ヒートポンプは、熱と冷水を同時に取り出すことができる機器です。熱は、殺菌室にて商品に火入し、殺菌します。火入したお酒はパックなどに詰めますが、この時のお酒の温度は65℃程度になっています。ここで、先ほどの冷水を使って、余剰熱を取り、40℃以下までに冷却しています。ただし、熱を利用する工程と冷水を利用する工程が同時に動かなければ、ヒートポンプを動かすことはできません。ラインが稼働してすぐは、熱を使う工程しかありませんので、その時はヒートポンプではなくボイラーを稼働し、蒸気で過熱しています。一方で、ラインの稼働が終盤に差し掛かりますと、パック詰めしたお酒を冷やすだけの工程になります。その時はヒートポンプを使わず、冷凍機(アンモニアを使用した吸収式冷凍機)だけを稼働し、冷水を作っています。

このように、本来ボイラーで熱を作り、冷凍機で冷水を作るという分離された工程の中で、熱と冷水を同時に作ることができるヒートポンプを導入し、ボイラーと冷凍機の一部を代用することによって、省エネを実現しています。

-省エネ型自然冷媒機器はどのように選定されたのでしょうか-

イメージ:白鶴酒造株式会社

冷却中の様子

海外のメーカーを含め、複数のメーカーのヒートポンプの性能やメリットなどを詳細に比較、検討しました。その中で、機器が稼働し、数年後、メンテナンスが必要になった場合、国内メーカーであれば、国内に拠点があるので、時間的な制約もさほどなく、問題なく対応できるのではないかと考え、国内メーカー製に決定しました。また、国内メーカーの場合、機器が故障すると故障箇所を特定し、パーツのみを更新するなどの対応も可能です。機器を単なるアセンブリーとして捉えず、パーツごとに対応してくれる点は、コスト削減、修理に関する時間短縮の観点からも非常に助かります。さらに、ヒートポンプも含め、年々機器の自動制御割合は高まっていますので、システム操作についても、やはり国内メーカーのほうが、意思疎通は取りやすかったと感じています。なお、海外メーカーと比較しても、国内メーカーの省エネ性能は、大きな違いはありませんでした。

-フロン類から自然冷媒への転換は、どの程度進みましたか-

工場の生産ラインの一部を除いて、自然冷媒への転換が完了しています。ただし、圧縮空気を冷やすという工程で使用されるドライヤー機器については、フロン類を使用しています。自然冷媒を使用した機器が製品化されていませんので、フロン類を使用した機器を選択せざるを得ないという状況があります。また、工場の空調機器であるガスヒートポンプエアコンもフロン類を使用した機器であり、これもまたフロン類を使用した機器が製品化されていません。このような機器も、将来的には自然冷媒機器へと転換していけたらと思っています。

-ヒートポンプの導入時の課題としてどのようなものがありましたか-

熱、冷水を使う工程は、お酒の生産において非常に重要な役割を担っています。導入に際して、初期投資の抑制、ランニングコストの削減、メンテナンスの効率性なども含めて、様々な観点から検討してきましたので、特段課題となるようなこともありませんでした。

また、既存の工場に新しい設備を導入するということでもありませんでしたので、機器の入れ替えのためにスペースを確保しなければならないといった課題も生じませんでした。

-ランニングコストの削減はどの程度でしょうか-

イメージ:株白鶴酒造株式会社稼働して1年程度が経った時点で、「ボイラーと冷凍機のみを使用した場合」と「ボイラーと冷凍機に加えてヒートポンプを使用した場合」の電気代を比較しました。その結果、年間1000万円以上の電気代が削減できることが試算されました。電気代の削減に付随して、CO2の排出量も削減できています。

 全ての工程をボイラーと冷凍機で対応することは可能ですが、その一部をヒートポンプで代替し、そのことで年間1000万円以上の削減につながることは、非常に大きな成果であると感じています。

電気代の削減以外にも効果として、最近、工場見学の要望が増えています。一般の方は受け付けていませんが、酒の卸売企業の方や小売企業の方など、得意先の方が工場見学にいらっしゃるようになりました。

また、現在使用しているヒートポンプの特性でもありますが、運転、制御は全て自動で行われますので、機器のスイッチを入れたり、切ったりという作業はありません。これまで運転の停止は手動でしたので、わずかですが、従業員の作業負荷も減ったかと思います。

-省エネ型自然冷媒機器の導入を検討されている企業へのアドバイスをお願いします-

機器だけの更新と、工場の建て替えによる機器の更新は、位置付けがまったく異なっています。機器だけの更新の場合、運転状況を正確に把握しなければなりませんし、機器の設置スペースも確保しなければなりません。様々な制約があり、その制約をどうやってクリアするかが非常に重要になります。機器だけの更新には、想定以上に負荷がかかることを導入する企業は意識する必要があると思います。

その他、当然ながら、経営努力としてどれだけ取組に注力できるかという点も大切だと感じています。設備を新設する計画を出し、複数のヒートポンプメーカーの機器の性能、それにメンテナンスや部品調達の方法、初期投資やランニングコストなどあらゆる観点から自社にあうメーカーを選定することも重要ではないでしょうか。

白鶴酒造株式会社:柴田秀昭(しばた ひであき)

白鶴酒造株式会社
柴田秀昭(しばた ひであき)

昭和52(1977)年入社
製品工場、営業職などを経て平成25(2013)年4月から灘魚崎工場長に。
趣味の音楽ではバンドでベースを担当し、酒蔵開放などのイベントで演奏もこなす。

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