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省エネ型自然冷媒機器導入企業担当者インタビュー集
(食品業界)

春日井製菓株式会社春日井製菓株式会社

  • 商品の乾燥工程で使用していたガスボイラーをヒートポンプに入替。
  • 年間850万円程度のコスト削減効果を試算。クーラーを使用しなくなったことで、フロン類を使用した15kw程度の機器2台分も削減。
  • 乾燥室内の温度差もなくなり、商品の品質が向上。さらに、作業負荷は減り、安全性も向上。
  • 入替を検討した際の考え方の柱は「熱の移動」。事業所内で、どこの熱をどこに持っていくと効率的であるのかということを考えることが必要。
春日井製菓株式会社

昭和23(1948)年に設立された春日井製菓株式会社は、「おいしくて、安心して多くの人びとに愛され続けるお菓子作り」を経営理念に掲げ、品質を重視したお菓子を生産している。生産するお菓子は多岐に渡っており、ゼリービンズや豆菓子、黒あめなどがある。環境に対する活動も幅広く展開しており、ヒートポンプの導入による省エネ対策のほか、商品のパッケージフィルムの薄肉化や段ボール軽量化などを行なっている。省エネ対策については、平成26(2014)年3月、食品産業優良企業表彰において農林水産省食料産業局長賞を受賞している。

-省エネ型自然冷媒機器を導入するに至った背景について教えてください-

省エネ型自然冷媒機器として生産工程においてヒートポンプを導入しています。生産している商品は「ゼリービンズ」です。黄色や赤、白などのカラフルな色でバナナ型をした昔ながらのお菓子といえばイメージされる方も多いと思います。

今回、ゼリービンズを生産する工場の集約にともなって、ヒートポンプを導入しました。以前の工場は、現在の工場から見える場所にある「スーパーマーケット」と、スーパーマーケット前の道路を挟んだ向いにある「ビル」の2箇所にまたがっていました。工場が道路によって分断されているという状況です。当時は、まず1箇所の工場(現スーパーマーケット)で商品の元となる生地を生産し、道路を挟んだ対面の工場(現ビル)に作りかけの生地を運び、そこで商品のつや出しを行い、包装後、出荷していました。

そういった状況の中、道路によって分断された工場をひとつに集約し、より衛生的でより効率的な生産工程に仕立てようという話が出てきました。

-ゼリービンズ生産のどのような工程でヒートポンプを使用するのですか-

イメージ:春日井製菓株式会社機器ゼリービンズは仕込みから包装まで9日間、出荷まで入れると、10日間かかります。その中で、ゼリービンズを乾燥させる工程があります。乾燥のための熱源としてヒートポンプを使用しています。

ゼリービンズの固形成分は、寒天でできています。寒天を成形するためには、どうしても熱をかけなければなりません。以前は、ガスボイラーでつくった熱源をアキュームレータという大きなタンクの中に貯め、それを各乾燥室に熱源として送っていました。また、ガスボイラーとアキュームレータは、150メーター近くも離れており、さらに道路の地下に配管を通し、熱を輸送していました。熱の損失は大きく、その損失を埋めるために、過剰な設備を使用せざるを得ない状況でした。そこで代替可能性を検討するようになり、ヒートポンプの存在を知り、さらに詳細に検討を進めていくこととなりました。

-どのようにしてヒートポンプを選定されたのですか-

ヒートポンプは、熱の移動を活用した機器です。ポンプという言葉のとおり、熱をくみ上げて移動させるというイメージです。ヒートポンプのエネルギー効率を把握したところ、一次エネルギーの投入が1に対して、熱量として2.5倍ぐらいになることがわかりました。そこで、これまで蒸気熱を利用していた工程において、代わりにヒートポンプによる熱を取り入れて乾燥させることを考えました。また、冷却したい箇所に冷気を移動させることができますので、ヒートポンプの持つ“一石二鳥”の特徴を活用できれば、効率性は格段に向上するだろうと考えました。さらに、社内で導入の実現可能性を検討しました。設備そのものの効率性が増し、工場の集約によって、熱の移動距離も格段に減りました。さらに、集約によってメンテナンスすべき箇所も減りますので、作業効率も良くなります。実際に使えるという判断をし、平成24(2012)年2月に導入に至りました。

-導入に際してはどのような点を重視されましたか-

熱の無駄をいかに減らすかという点をもっとも重視しました。無駄を減らすことで最終的にはコスト削減につながってくるのでしょうが、コスト削減を優先したわけではありません。コスト削減は結果論だと思います。

生産性向上を図るには、様々な指標が用いられますが、空調などのエネルギー使用量がどれだけ削減できたかという点も重要な指標になります。これまで使用してきた設備が古かったこと、さらに熱を効率的に使えることになったことで、エネルギー効率は飛躍的に向上しました。

また、省エネは熱から始まると考えています。熱をうまく使うことに対して改善すべき点は多く、熱を余らせて工場外に放出していることは多いと思います。ボイラーなどで蒸気を作って使い切るというように機器単位で考えるのではなく、他の用途も含め、工場全体での最適化を検討すべきだと思います。

-ヒートポンプを導入するにあたってどのような課題がありましたか-

イメージ:春日井製菓株式会社機器ヒートポンプの導入に際して、メーカーと調整する中、本当にうまくいくのかなという多少の不安はありましたが、実際の設置、稼働に関しては、ほぼ順調にいったのではないかと感じています。機器本体のみならず、時間設定などリモコンでの操作によって作業負荷も減りました。機械のバルブの開け閉めなどもなくなりましたので、安全性も向上しています。

また、以前の生産工程では、乾燥室内の天井面と床面の間(高さ2.5メートル程度)に温度差があり、商品の品質にも差が生じているという問題がありました。リニューアルする際に、温度差を解消できないかという検証も行いました。具体的には、1メートル四方の小型の箱を部屋に見立て、その中に熱とゼリービンズを入れ、どの程度の熱量で乾燥できるのかという実験を行いました。この実験は大変でした。機器の使用条件の設定や機器以外の付帯設備の条件設定を変え、何度も何度も検証を行いました。半年以上の月日を検証に費やしました。ここで取得した情報をもとに、実際の乾燥室に拡張した場合に必要となる設備および能力を試算しました。その結果、天井面と床面の温度差がこれまでの14℃から5℃までに減らすことができました。

生地の硬さや商品の水分量など、求められる品質を維持し、さらに温度差の減少により歩留まりも向上したことで、商品の廃棄率も改善されました。

一方で、見方を変えれば、それでもまだ5℃の温度差があるとも考えられます。究極を目指して、温度差を0℃にしてしまえば、全て同じ品質のものができるのではないかと思っています。従来よりもさらに品質を向上、安定化させて、お客様に良い商品を届けられるようにしたいと思っています。

-導入したことに効果とはどの程度でしょうか-

コスト削減の観点としては、ガスの使用量が大幅に減り、電気は増えました。差し引き、年間850万円程度の削減効果があったと試算しています。原油換算すると、これまでの118.6キロリットルから45.2キロリットルに削減できています。なお、フロン類の削減にどの程度効果を発揮しているかまでは把握できていませんが、クーラーを使用しなくなったことで、フロン類を使用した15kw程度の機器2台分を削減できたと試算されます。

また、定性的な効果かもしれませんが、営業部署の社員は、問屋などの取引先から「ここ2、3年のゼリービンズの出来が格段に良くなったよ」というお言葉を頂いているようです。ヒートポンプを導入し、乾燥室の温度差をなくしたことによる成果を、言葉として頂けることはありがたい限りです。従業員のモチベーション向上にもつながります。また、作業環境も従前より大幅に改善されていますので、作業者の肉体的負担もかなり少なくなっていると思います。

-省エネ型自然冷媒機器の導入を検討されている企業へのアドバイスをお願いします-

イメージ:春日井製菓株式会社機器考え方の柱は「熱の移動」です。事業所内で、どこの熱をどこに持っていくと効率的であるのかということを考えると、おおよその取組の方針は見えてくるのではないかと考えています。熱のロスが出ているようであれば、乾燥や加熱すべきところにその熱を移動させた方が、別々の熱源で熱を作るよりも効率的であると思います。

また、商品の生産において熱がどのように影響しているのかといった点の検証も同時に進めても良いかと思います。中長期的な視野に立てば、初期投資分は十分回収できると思います。短期的な視点で投資方針を決めないことで、思い切った施策が講じられるのではないでしょうか。

春日井製菓株式会社 本社工場 工場長 冨山 稔生

春日井製菓株式会社 本社工場
工場長  冨山 稔生

平成4年同社に入社し、主力工場である春日井工場で設備保全担当として勤務、平成17年に本社工場へ異動。工場内の設備改善や合理化、工場の集約プロジェクトに参画、平成27年より現職

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