報道発表資料

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2008年02月12日
  • 自然環境

アホウドリ新繁殖地形成事業によるヒナ移送日の決定について

 この度アホウドリ保護増殖事業の一環として、小笠原群島聟島において、アホウドリの新たな繁殖地の形成を目指す事業を開始します(事業の詳細は「参考2)」を参照)。この事業は、山階鳥類研究所が実施の中心となり、環境省と米国魚類野生生物局と共同で実施するものです。
 今年度は、アホウドリの繁殖地である伊豆諸島鳥島においてヒナ10羽を捕獲し、ヘリコプターで聟島まで移送しますが、その移送日を2月15日(金)に決定いたしましたので、お知らせいたします。
 現在、(財)山階鳥類研究所の調査チームが鳥島に入島し、移送するヒナの選定を行っているところです。
 なお、移送にはヘリコプターを使用するため、当日の天候等によっては、移送日を順延する可能性があります。

1.アホウドリのヒナ移送のスケジュール

移送経路
  • 移送するヒナを捕獲する(財)山階鳥類研究所の研究員チームは、2月8日(金)の朝、八丈島を出発し、翌日2月9日(土)に鳥島に到着しました。
  • 到着後すぐに、島内のアホウドリの繁殖状況について調査を開始し、現在、移送するヒナの選定を行っています。
  • 移送日は、2月15日(金)の予定です。当日の朝、ヒナ10羽を研究員が捕獲し、移送用の箱に入れてからヘリコプターに載せ、聟島まで移送します。聟島まで移送されたヒナは、聟島で待機している研究員が受け取り、飼育地点に放鳥します。放鳥したヒナについては、巣立つまでの3か月間程度、研究員が聟島に滞在して、人工飼育を行います。
  • 移送当日の大よその予定は以下のとおりです。
     10:00 ヘリコプターが鳥島に到着
     11:20  ヒナを載せたヘリが鳥島を離陸
     13:00 〃 聟島に到着
     13:30 聟島においてヒナを放鳥

※ヒナの移送にはヘリコプターを使用するため、天候等によりスケジュールが前後します。

2.ヒナを移送した結果のお知らせについて

 ヒナを移送した結果については、移送当日のうちに、報道各社に公表いたします。
 その際、現場で撮影した写真や映像も、(財)山階鳥類研究所から提供される予定です(環境省経由)。

参考

1)アホウドリについて
 アホウドリ(Diomedea albatrus ) ミズナギドリ目アホウドリ科
 絶滅危惧II類(環境省レッドリスト2006

分布及び個体数

  • 繁殖地は、日本の伊豆諸島鳥島と尖閣諸島のみ。
  • 非繁殖期には、北太平洋のベーリング海やアリューシャン列島、アラスカ沿岸まで移動する。
  • 1949年の調査で1度絶滅宣言が出されたが、1951年に約10羽が鳥島で再発見された。
  • 減少要因は、1890~1900年代に羽毛採取のために大量に捕獲されたことによる。

形態及び生物学的特性

  • 成熟個体で全長が84~94cm。
  • 繁殖活動は10月~翌年5月。
  • 7歳頃から繁殖に参加し、巣立った場所に戻ってきて繁殖を行う傾向が強い。

保護の対策

  • 種の保存法に基づく「国内希少野生動植物種」に指定(平成5年)
  • 国の特別天然記念物

写真

繁殖ペア(手前はクロアシアホウドリ
繁殖ペア(手前はクロアシアホウドリ)

求愛ダンス
求愛ダンス


巣立ち直前のヒナ
巣立ち直前のヒナ(5月)

給餌
給餌


2)アホウドリの新繁殖地形成事業について

1.新繁殖地を形成する必要性について
 全世界でも伊豆諸島鳥島及び尖閣諸島のみで繁殖するアホウドリは、羽毛採取を目的とした乱獲により、一時は絶滅宣言を出されましたが、様々な保護増殖の取組の成果により、現在、推定個体数が2000羽程度にまで回復しています。
 しかし、アホウドリ総個体の8割以上が繁殖する鳥島は、約100年間で3回の噴火を起こしている火山島であり、また、尖閣諸島は政治的な理由で保護の事業を行うことが困難であることから、火山の噴火による生息地の破壊から種の絶滅の危険を回避するためには、現在の繁殖地以外の非火山島に、アホウドリの新たな繁殖地を形成することが、重要な課題であると考えられました。
 これを受け、今年度より、鳥島から約350km南に位置する小笠原群島聟島に、新たな繁殖地を形成するための事業を開始します。
 この事業は、環境省、(財)山階鳥類研究所、米国魚類野生生物局が協力して実施します。

移送経路
2.アホウドリ新繁殖地形成事業の概要
 今年の2月中旬に鳥類の研究者が、鳥島で生後40日程度のヒナ10羽を捕獲し、ヘリコプターに載せて小笠原群島聟島まで移送します。そして聟島の野外に放鳥し、ヒナが巣立つまでの3か月間程度、駐在した研究員が人工的に飼育します。
 これは、アホウドリが自分の生まれ育った島を記憶し、成鳥になった時にその場所に戻って繁殖するという性質を利用して、新たな繁殖地を形成しようとするものです。

 聟島は、かつて、アホウドリの繁殖地であったことに加え、現在でもアホウドリの飛来が確認されていること、アホウドリの導入によって影響を受ける他の固有種がないと専門家の判断を受けたこと、長期間研究員の滞在が可能な場所があることなどから、移送先に選定されました。
 帰巣を容易にし、他のアホウドリを誘導する効果を期待して、聟島には、アホウドリの繁殖地を演出するためのデコイ(アホウドリの模型)とアホウドリの鳴き声を流す音声装置を設置しています。
3.これからの予定
 この事業は今後5年間を目途に、ヒナの移送を継続して実施します。今年度移送したヒナが、島に戻ってくるのは、数年先になるものと予想されています。

報道関係機関へのお願い

アホウドリの育成地点

 今回の事業について、アホウドリの人工飼育はこれまで前例がなく、今回が初めての試みとなります。
 アホウドリは人間に対する警戒心が非常に強いため、付近への人の入り込みがあった場合、ヒナへの影響が懸念されます。
 聟島において取材等を行う場合は、実際に飼育が行われる現場まで近づくことをご遠慮いただき、飼育地点を見渡すことができる展望地(地図黄色○)より、ご覧いただけると幸いです。
 聟島に入島される場合には、国有林の入林許可が必要となります。この手続きには1か月程度要しますので、十分な時間的余裕をもって申請を行ってください。入林手続きに関しては、小笠原総合事務所国有林課(04998-2-2103)までご相談ください。
 また同時に、本件に関する取材で聟島に入られる場合は、環境省関東地方環境事務所小笠原自然保護官事務所(04998-2-7174)まで、事前にご連絡をお願いします。

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長:星野 一昭 (6460)
課長補佐:西山 理行 (6475)
係長:中島 治美 (6469)
直通(03) 5521 - 8283