環境ナノテクがエレクトリック・カーの未来を開く
〜自動車産業のシリコンバレー・モデル〜

AZCA, Inc. マネジングディレクター / Noventi マネジングディレクター 石井正純

2.エレクトリック・カーの進化

 このような衰退一途の歴史をたどった電気自動車だが、最近になって再び脚光を浴びるようになった。これは、近年、地球温暖化や環境汚染が本当に深刻な問題となりつつあり、化石燃料を使用するこれまでの自動車が排出する二酸化炭素(CO2)、NOx、粒子状物質など、温室効果ガスや大気汚染物質がその大きな要因であるからである。低公害車としてはガソリンやディーゼルなど化石燃料を使う従来の自動車に対して、同じ内燃機関自動車でも非化石由来の、バイオディーゼルバイオエタノールなどのバイオ燃料を使う自動車が出回るようになった。また、天然ガスやメタノールなどを燃料とする自動車も開発されている。しかし、特にスポーツカーを含む乗用車の今後の大きな流れは、ハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド、エレクトリック・カーという流れになると考えられる。

 トヨタのプリウスに代表されるハイブリッド車の市場はここ数年大きな成長が見込まれ、2012年には世界で230万台規模の市場に成長すると予想される。ハイブリッド車は簡単にいうと、(ガソリン)エンジンと(電気)モーターで動く自動車といえる。この電気は外部から供給されるものではなく、ガソリンエンジンが発電機を動かして作ったものなので、エンジンがバイオ燃料を使わない場合はハイブリッド車のエネルギー源は化石燃料ということになる。ハイブリッド車の効率がなぜ良いかというと、回転数の低いところではガソリンの効率の悪いところをエンジンとモーターの協調によって全体のシステムとしての効果を上げているいるから。図表2に示すように、ハイブリッド車の基本的な構成はエンジン、必要な際にエンジンを稼動して発電する発電機、バッテリー、バッテリーからの直流電流を交流に変換するインバーター、バッテリーからインバーターを通して供給される電気で動くモーター、車輪を廻すための動力源であるエンジンとモーターの使い方を最適制御する動力分割機構からなる。実際にはハイブリッド車はシリアル・ハイブリッド方式とパラレル・ハイブリッド方式に大きく分かれる。シリアル・ハイブリッド方式ではエンジンはバッテリーの充電のための発電機を動かすためだけに使われ、モーターだけを駆動源として使用する。一方、パラレル・ハイブリッド方式ではエンジンとモーターの両方の出力を駆動源として使用し、エンジンのみで走行、モーターのみで走行、エンジンとモーターを併用して走行という三つの方法を最適に使い分けて使用する。トヨタのプリウスは正確にはパワースプリット方式というパラレル方式でありながらシリアル方式も使えるように、一つで二つ美味しいとこ取りした、賢い方式といえる。

図表2.ハイブリッド車の構造(プリウスの情報に基づいて筆者作成)

図表2.ハイブリッド車の構造(プリウスの情報に基づいて筆者作成)

 プラグイン・ハイブリッド車は家庭用電源で電池を充電出来るハイブリッド車である。バッテリーの容量を増やすことにより、モーターで走行できる距離を長くする。高速走行や長距離の場合はエンジンとモーターの併用で駆動する。プラグイン・ハイブリッド車は駆動エネルギー源として電気を用いる比率が高まるため、電気自動車に一歩近づいた方式といえる。また、 CO2削減や大気汚染防止への一層の効果が期待でき、さらに料金の安い深夜電力を利用して充電することにより、燃料代の低減というメリットも生まれる。

 ハイブリッド(HEV)、プラグイン・ハイブリッド (PHEV)などのハイブリッド方式が実用最先端のエコ技術とされ、これらのほかにも燃料電池により発電してその電気を使用する燃料電池自動車(FCEV)も開発されているが、さらにエンジンを搭載せず、全く排気ガスを出さない100%電気駆動の電気自動車がこれから大いに発展し、リチウムイオン電池の大容量化と低コスト化が実現していけば、2015年までに全世界で3、300万台レベルまで市場が拡大することが予想される。電気自動車という日本語はちょっと古臭い感じがするので、ここからはエレクトリック・カーあるいはEV(Electric Vehicle)という呼び方もしよう。EVの基本構造は図表3に示されるように非常に簡単である。エンジンは使わずに、バッテリー、駆動モーター、滑らかな加速減、一定速度での走行を可能にするためのモーターコントローラーなどから構成されている。冒頭に述べたように、EVの歴史はガソリン自動車の歴史よりも古い。低公害車としての価値もさることながら、100年経ったあとで自動車も本来の姿に戻ろうとしているとすれば、それだけでかなりエキサイティングな話となるだろう。

図表3.エレクトリック・カーの構造

図表3.エレクトリック・カーの構造(筆者作成)

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