環境ナノテクがエレクトリック・カーの未来を開く
〜自動車産業のシリコンバレー・モデル〜

AZCA, Inc. マネジングディレクター / Noventi マネジングディレクター 石井正純

1.とても古い電気自動車の歴史

 今から100年前、1900年から1908年の間に米国では480社以上の会社が自動車に参入したといわれている。10年目のシリコンバレーインターネット・バブルと似た様相を呈していたのではないかと想像される。有名なFord T 型自動車をフォードが売り出した1908年時点でも253社の自動車メーカがしのぎを削っていたといわれている。その後、米国の自動車産業界は淘汰に淘汰を重ねて、誰もが知っているように、今ではフォード、GM、クライスラーに集約されている。これらのビッグ・スリーも昨年の経済危機以来、GMとクライスラーが合併の予備交渉に入る、フォードもマツダの保有株33%の大半売却を検討など、今後生き残れるかどうかの瀬戸際に来ている。

 電気自動車の歴史は実は内燃機関の自動車よりも古く、イタリアのアレッサンドロ・ボルタが電池というもの(ボルタ電池)を1799年に開発した時までさかのぼることが出来る。1838年にスコットランドのロバート・アンダーソンがモータを製造し、1873年にイギリスでロバート・ダビットソンが鉄亜鉛電池(一次電池)を使用した電気自動車の実用化に成功。1897年には図表1にあるようにニューヨークの市内で電気自動車タクシーが走りまわっていた。1900年時点で、米国での電気自動車台数は約4、000台、自動車生産で全体の約40%占めていた。1912年頃に電気自動車の生産はピークを迎えたが、第一次世界大戦が終わり1920年頃からは、衰退の一途をたどった。

図表1.1897年当時のニューヨーク市の電気タクシー

図表1.1897年当時のニューヨーク市の電気タクシー

 その後、1965年頃に大気汚染の問題が深刻化してきたため、電気自動車に対する関心が再び高まり、日本では当時の通産省による研究開発プロジェクトが始まった。1990年代に入ると、地球温暖化、都市環境が社会問題化し始め、米国では一定規模以上の自動車を生産、販売するメーカに対して、2003年に州内で生産する自動車の総台数の少なくとも10%をZEV (zero emission vehicle)にすることを義務付けたZEV規制がカリフォルニア州で1990年に制定されたことで、電気自動車の開発が加速。だが、EVは一般には普及せず、ごく最近まで、ほとんど特殊な用途にしか使われなかった。その理由として「石油会社と政府が電気自動車を葬った」というコンスピラシー・セオリー(陰謀説)もあるが、実際は、急速な発展をとげた内燃機関の技術に対し、利便性、継続走行距離、走行性能などの点から、コンシューマーがガソリンエンジン車を選択してきた、というのが本当のようだ。

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