報道発表資料

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1998年12月10日

 中央環境審議会答申「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第三次答申)」について

12月14日(月)に中央環境審議会大気部会(部会長:斎藤孟 早稲田大学名誉教授)が開催され、標記の答申がまとめられる予定である。
答申の要点は以下のとおりであり、環境庁においては、これらを踏まえ規制強化のための所要の手続きを進めることとしている。

○ディーゼル自動車について、窒素酸化物及び粒子状物質に重点を置いて排出ガス規制を二段階で強化し、1台当たりの排出量を大幅に削減する。

○当面の排出ガス低減目標 -新短期目標-
 車種により、平成14年(2002年)から16年(2004年)にかけて、窒素酸化物で25~30%、粒子状物質で28~35%削減する。また、使用過程における排出ガス性能の維持のため、耐久走行距離を大幅延長するとともに、車載診断システム(OBD)の装備を義務付ける。

○中長期的な排出ガス低減目標 -新長期目標-
 各車種とも、平成19年(2007年)頃を目途に新短期目標の更に2分の1程度に排出ガスを低減すること(窒素酸化物、粒子状物質で平成9~11年規制の6割強の削減)を目標に技術開発を進めることを、自動車メーカー及び石油精製メーカーに要請する。具体的な規制値及び燃料品質等は、平成14年度は、平成14年度(2002年度)末を目途に決定する。また、排出ガス試験方法についても知見を収集し、見直しについて必要性も含め検討する。

[1].経 緯

 中央環境審議会(会長:近藤次郎 元日本学術会議会長)は、平成8年5月に環境庁長官
より諮問された「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」について、平成9年
11月の第二次答申以降、大気部会(部会長:斎藤孟 早稲田大学名誉教授)及び同部会に設
置した自動車排出ガス専門委員会(委員長:池上詢 京都大学教授)で引き続き審議を進
めてきた。
 12月14日(月)に開催予定の第22回大気部会において、ディーゼル自動車の排出ガス低減
対策の強化等を内容とする「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第三次答
申)」が取りまとめられる予定である。

1.大気部会の審議状況

○平成8年

5月21日 第12回大気部会 諮 問 「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」
10月18日 第15回大気部会 中間答申
・二輪車の排出ガス規制導入
・ガソリンの低ベンゼン化  等

○平成9年

11月21日 第20回大気部会 第二次答申
・ガソリン自動車の規制強化
・特殊自動車の規制導入   等
     

○平成10年

11月30日 第21回大気部会 ・自動車排出ガス専門委員会の審議状況について等
12月14日 第22回大気部会 第三次答申 (予定)
・ディーゼル自動車の規制強化 等

2.自動車排出ガス専門委員会の審議状況(第二次答申以降)

○専門委員会 計9回開催 日本自動車工業会ヒアリング、石油連盟ヒアリング、現地調査等を含む。
○作業委員会 計16回開催 国内・海外自動車メーカーヒアリング、触媒メーカーヒアリング等を含む。
   
※作業委員会は専門委員会内に設置

[2].「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第三次答申)」の概要

1.ディーゼル自動車の排出ガス低減対策

(1)

基本的考え方(別紙1参照)

  • ディーゼル自動車については、車種により平成9年から11年にかけて規制強化を実施中 (いわゆる「長期規制」)。
  • しかしながら、二酸化窒素(NO2)、浮遊粒子状物質(SPM)等に係る大気汚染が依然深刻であり、また、自動車保有台数や交通量等の伸びが将来も予測されることから、一層の対策の推進が必要。
  • このため、ディーゼル自動車の排出ガス規制を二段階で強化し、1台当たりの排出ガスの量を大幅に削減することを柱とする、新たな自動車排出ガス低減対策を提言。
(2)

当面の対策 -新短期目標-
○平成14年(2002年)から平成16年(2004年)にかけて、以下の対策を実施することを提言。

  • 平成14年(2002年) 乗用車、トラック・バス(~1.7トン)
  • 平成15年(2003年) トラック・バス(1.7~12トン)
  • 平成16年(2004年) トラック・バス(12トン~)
    (前提)
  • 今後実用化が期待される、窒素酸化物還元触媒等の新技術に必要な燃料品質が現時点は不明確であり、また、当面、燃料品質対策は技術、期間、費用のいずれの面からも困難なことから、現状の燃料品質(硫黄:0.05%=500ppm等)を前提に対策を実施。
  • 排出ガス試験方法の見直しには相当の時間を要すること等から、当面は、現行の試験方法(10・15モード、13モード)により対策を実施。
{1}ディーゼル自動車の排出ガス規制を強化し、大気汚染物質の濃度に直接関与する窒素酸化物及び粒子状物質を低減。また、各種の大気汚染物質の大気中での二次生成に関与する炭化水素も低減。
  • 削減率(対長期規制) 
    窒素酸化物  25%~30%                
    粒子状物質  28%~35%                
    炭化水素及び一酸化炭素 70% (別紙2参照)
  • 対策技術:酸化触媒、冷却EGR、燃料噴射の一層の高圧化、中間冷却ターボ過給など
{2}使用過程における排出ガス性能維持のため、耐久走行距離(新型車がその距離の走行後も許容限度に適合すべき距離)を大幅に延長し、また、排出ガス低減装置の機能不良を監視する車載診断システム(OBDシステム)の搭載を義務付け。
  • 耐久走行距離(例)
    乗用車 3万km→8万km
    大型トラック 3万km→65万km  (別紙2参照)
(3)

中長期的な対策 -新長期目標-
○中長期的に一層の排出ガス低減を図るため、以下の目標を提示。

{1}各車種とも、平成19年(2007年)頃を目途に、新短期目標の更に2分の1程度に排出ガスを低減することを目標に、技術開発。
  • 具体的な目標値・時期等は、技術開発の状況と費用対効果を把握し、中央環境審議会で平成14年度(2002年度)末を目途に決定。
{2}新長期目標の達成に必要な軽油の燃料品質については、今後、所要の研究・開発を進めるとともに、広く知見を収集し、対策のあり方を検討。平成14年度(2002年度)末を目途に燃料品質を決定。
  • 石油連盟・日本自動車工業会共同研究「大気改善のための自動車
  • 燃料等の技術開発プログラム(JCAP)」における研究開発や、海外の知見を活用。
  • 現時点での検討項目は、硫黄含有率のほか、セタン価(着火性の指標)、芳香族含有率、密度等。
{3}排出ガス試験方法については、今後、走行実態調査など所要の調査を行い、その結果を踏まえ、見直しについて必要性も含め検討。

2.ガソリン自動車の燃料蒸発ガス試験

  1. 試験燃料の蒸発性
     第二次答申の継続審議事項である、ガソリン自動車の燃料蒸発ガス試験の試験燃料の蒸発性を定めた。
  2. 市場に供給される燃料の蒸発性の抑制等
    {1}燃料蒸発ガスを抑制するため、平成13年(2001年)夏以降、石油精製会社の自主的な対策により、燃料の蒸発性を抑制することを要望。
    • 夏期には蒸発性の高いガソリン(蒸発性の指標であるRVPが72kPaを超えるもの)の市場への供給を停止。
    • ガソリン全般について可能な限り蒸発性を抑制。
    {2}第二次答申に沿って、中長期的な燃料蒸発ガスの一層の低減について引き続き検討。

3.今後の主な検討方針

  1. 二輪車の排出ガス規制の更なる強化を検討。
  2. 特殊自動車の規制対象範囲の拡大を引き続き検討(ディーゼル特殊自動車のうち定格出力19kW未満及び560kW以上のもの並びにガソリン・LPG特殊自動車)。
  3. 中長期的な燃料品質対策検討(ガソリンのRVP、軽油の硫黄分等)。
  4. 走行実態調査を行い、排出ガス試験方法について見直しも含め検討。

4.関連の主な諸施策

  1. 低公害車の大量普及のための制度的方策の検討、低公害車等排出ガス技術指針の見直し等を要望
  2. 物流の効率化や公共交通機関の整備・利用促進による自動車走行量の抑制、交通流の円滑化を図るとともに、アイドリングストップ、エコドライブ等の推進、局地汚染対策の具体化など、各種自動車交通環境対策の推進を要望。
  3. 今後とも、点検・整備の励行や車検・街頭検査により、使用過程の自動車の排出ガス性能の維持を図るほか、使用過程での抜取り検査(サーベイランス)の導入を必要性も含め検討することを要望。
  4. 地球温暖化対策の観点から、低排出ガス技術と低燃費技術とが両立する方向への技術開発の必要性を指摘。また、自動車からのメタン及び一酸化二窒素の排出実態等を調査することを要望。
  5. PRTRも視野に入れ、自動車からの有害大気汚染物質の排出原単位を整備し、得られた情報を基に必要な施策を講じることを要望。

[3].今後の対応

  1. 環境庁としては、本答申を踏まえ、規制強化のための所要の手続き等を進めることとしている。
     
  2. 中央環境審議会は、自動車排出ガス低減対策のあり方全般について、引き続き審議を進めることとしている。

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局自動車環境対策第二課
課 長 :松本和良(内6550)
 補 佐 :中谷育夫(内6552)
 

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