報道発表資料

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2005年04月18日
  • 地球環境

アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)第10回政府間会合の結果について

アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)第10回政府間会合(第10回科学企画グループ会合との合同セッション)が、4月12~14日、兵庫県神戸市において開催されました。
 本会合では、これまでのAPN活動の評価報告書を踏まえたAPN第二次戦略計画が策定され、10周年を迎えたAPNを一層充実させるための方向性が示されました。また、4月13日には、環境省の主催で「アジア太平洋地域の脆弱性と適応策に対するAPNの貢献」をテーマとした科学シンポジウムが開催されました。
 なお、4月11日には、APNの10周年を記念して、APNと兵庫県の主催による「地球変動研究と環境教育-APNに期待される役割」をテーマとした一般市民等を対象とするシンポジウムが開催され、来賓として小池環境大臣の挨拶が行われました。
1.開催日時・場所
  2005年4月12-14日、神戸国際会議場


2.出席者

(1) APN加盟国の政府代表
オーストラリア、バングラデシュ、カンボジア、中国、フィジー、インド、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、モンゴル、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、韓国、スリランカ、タイ、米国、ベトナム(計20カ国)。我が国からは、環境省松本地球環境審議官がホスト国を代表して開会挨拶を行ったほか、同省の竹本大臣官房審議官が本会合の議長を務めた。この他、環境省地球環境局高橋研究調査室長他が、また科学企画グループのメンバーとして茨城大学三村教授が出席した。
(2) 関係国際機関等
地球変動に関する分析・研究・研修トレーニングのためのシステム(START)、地球圏-生物圏国際協同研究計画(IGBP)、地球環境変化の人間的側面に関する国際研究計画(IHDP)等


3.主な成果

(1) APN活動の評価
2003年度までに終了した66の支援プロジェクトを対象に、国内外の外部専門家による、APN第一次戦略計画に即した評価が行われ、その結果が報告された。この中で、APNは、これまで、アジア太平洋の地域レベルでの研究協力の推進、他の地球変動研究ネットワーク等との協力の推進に関する分野において特に高く評価された他、同地域の科学的、技術的能力の向上、地球変動研究に関する科学データや情報の収集、解析等の促進についても高く評価された。一方、APNにおける今後の課題についても整理された。
(2) APN第二次戦略計画の策定
APN評価報告書を踏まえ、2005年度から2009年度までの5年間におけるAPN第二次戦略計画が策定された。本計画の特徴は以下のとおり。
・[1]気候変動、[2]生態系、生物多様性、土地利用、[3]大気、陸域、海洋の変化、[4]資源の持続的な利用と持続可能な開発に関する分野を重点化することが明示された。
・APNの5大目標が、概ね以下の優先順位で設定された。
[1] 地球変動研究に関する地域レベルの協力を支援すること
[2] 科学者と政策決定者の相互の関わりを強化し、政策決定者及び市民に科学的知識を提供すること
[3] アジア太平洋諸国の科学的・技術的能力を向上させること
[4] 他の地球変動ネットワーク及び機関と協力すること
[5] 研究基盤の開発及び知識並びに技術の移転を容易にすること
・CAPaBLEを含む能力開発プログラムの推進が明記された。
   注)CAPaBLE:持続可能な開発に向けた開発途上国の研究能力開発・向上プログラム
・APNに対する各加盟国政府の主体性を高め、各国の政策ニーズを反映させる方向が示された。
・各加盟国の主体性発揮のため、APNに対する財政支援国数の拡大を目標とすることが盛り込まれた
(3)平成17年度支援プロジェクトの決定
 平成17年度支援プロジェクトについては、56新規課題の申請があり、科学企画グループ会合による厳格な審査の後、本政府間会合において新規分については19課題、継続分については5課題がそれぞれ決定された。新規採択課題の一覧は別紙のとおり。
(4) CAPaBLE(持続可能な開発に向けた開発途上国の研究能力開発・向上プログラム)
 CAPaBLEプログラムの下での研究能力開発プロジェクトについての紹介が行わ れた。各国から、気候変動影響の脆弱性評価などに関する研究を推進するためにはCAPaBLEの枠組を活用した途上国専門家の能力開発が有効であり、本プログラムの一層の強化を求める意見があった。また、第3回地球観測サミット(2005年2月、ブリュッセル)で策定された地球観測10年実施計画を踏まえ、気候変動やその影響のモニタリングに関する能力開発を実施することが重要であるとの意見があり、本年の秋にワークショップを開催し、同分野における能力開発の推進方策について検討していくことで合意された。
(5) 沿岸域管理に関する統合報告書
 1998年度以降実施された、フィジーなどアジア太平洋沿岸域における脆弱性に関する20のAPN支援プロジェクトの統合報告書が紹介された。
 これら一連のプロジェクトにおいては、APNの目標の一つである地球変動研究に関する地域協力、能力開発、科学データの相互交換が促進されたこと、同沿岸域は気候に大きな影響を与えるエルニーニョやアジアモンスーンの発生に大きく関わっており、また多様な海域・陸域生態系を有していること、インドネシア地震津波の被害から分かるように、同沿岸域は環境の変化に対して極めて脆弱であること等が示された。
 今後については、沿岸域管理に関する各国の共同研究の推進、研究ネットワークの強化、研究成果の公表の他、適応策に関する戦略の検討などを、APNの枠組などを通じて強化していくことが必要であると示された。
(6) 科学シンポジウムの開催
 4月13日、環境省とAPNの主催で「アジア太平洋地域の脆弱性と適応策に対するAPNの貢献」をテーマとした科学シンポジウムが開催された。
 シンポジウムでは、国内外の第一線の専門家が、アジア太平洋地域における、最新のスーパーコンピュータを活用した気候変動予測の結果、気候変動による脆弱性の評価、マングローブ林による沿岸域の対応策、CAPABLEプロジェクトを通じたパキスタン等の気候変動に対する脆弱性研究について講演を行った後、「アジア太平洋沿岸域の脆弱性改善に向けたAPNの貢献の可能性」をテーマとしたパネルディスカッションが行われ、出席者からAPNの貢献の重要性と課題などについて活発な討議が行われた。
(7) 運営委員会の改革
 加盟国主導の下で、第二次戦略計画を効率的に実施していくため、APN運営の制度改革が行われた。新運営委員会の政府代表メンバーには、インドネシア、日本(環境省竹本官房審議官)、ニュージーランドの3名が選出され、これに科学企画グループの共同議長である日本(三村教授)、モンゴルを加えた計5名の体制で構成されることになった。また、運営委員会の議長にはニュージーランドのマシュー氏が選出された。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
室長:高橋 康夫(内線6730)
 補佐:竹本 明生(内線6731)

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