報道発表資料
- 環境省では、環境測定分析の信頼性の確保及び精度の向上等を目的として、環境測定分析統一精度管理調査を実施しているが、前年度に引き続き平成12年度においてもダイオキシン類等を対象とする調査を実施したところであり、今般、平成13年度環境測定分析検討会において、その結果を取りまとめた。
- 平成12年度は、金属類(ニッケル、水銀、カドミウム、アンチモンの4項目)、スチレン2量体、スチレン3量体及びエストラジオール類を調査項目とした模擬水質試料と、ダイオキシン類を調査項目とした標準液試料と底質試料を対象として調査を行った。地方公共団体及び民間の分析機関の回答は、前者が476機関、後者が127機関であった。その結果、統計的な異常値を示した機関に対しては、想定される主な原因とともにその旨を連絡したところであるが、異常値を除外した後の各分析機関の間のばらつきについては比較的良好であり、過去に実施した調査結果等と比べても相応な精度が確保されていることが分かった。
- 今般得られた結果に関しては、分析上の留意点とともに参加した分析機関にフィードバックを行うことを目的として、10月中旬以降に全国3ヶ所において調査結果説明会を開催することとし、本日より参加者を募集する。
- なお、平成13年度の調査に関しては、化学的酸素要求量(COD)、ノニルフェノールなどを調査項目とした模擬水質試料とばいじん中のダイオキシン類を調査項目とした廃棄物試料を対象として精度管理調査を行うこととし、本日より公募を開始する。
1. | 環境測定分析統一精度管理調査とは |
環境省が昭和50年度より行っている調査であり、環境測定分析に従事する諸機関が、指定された方法等により均一に調整された環境試料を分析し、それにより得られた結果を解析、検討することにより、環境測定分析の信頼性の確保及び精度の向上等を図るものである。 平成12年度においては、金属類(ニッケル、水銀、カドミウム、アンチモンの4項目)、スチレン2量体、スチレン3量体及びエストラジオール類(注1)を調査項目とした模擬水質試料と、ダイオキシン類を調査項目とした標準液試料と底質試料(湖沼)を対象として精度管理調査を行った。その後、地方公共団体と民間の分析機関から得られた回答結果について、平成13年度環境測定分析検討会(環境管理局長が開催、以下「検討会」という)等(参考1参照)において解析・検討し、その結果を取りまとめた。 |
(注1)スチレン2量体、3量体、エストラジオール類とは | |
_ | スチレン2量体・3量体は、スチレン樹脂製の食器等の原料。エストラジオール類は、17α-エストラジオール及び17β-エストラジオール(人畜由来の物質(いわゆる天然の物質))、エチニルエストラジオール(経口避妊薬等に使用される合成物質)がある。 |
2. | 平成12年度の調査結果について(概要) |
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対象試料の分析は、各分析機関に対して指定した方法(注1)により行った。 参加申込機関は、地方公共団体及び民間の分析機関を併せて金属類、スチレン及びエストラジオール類が511機関、ダイオキシン類が140機関あり、このうち回答のあった機関は各々476機関、127機関であった。(表1) まず、金属類(4項目)、スチレン2量体(4項目)、スチレン3量体(3項目)、エストラジオール類(3項目)、及びダイオキシン類(TEQ:2試料)の代表的なヒストグラムを図1~4示す。また、異常値等を棄却(注2)後、基本的な統計量(平均値、室間精度(CV:注3))、最小値、最大値及び中央値を算出した。(表2~5) 各試料についての結果概要を示す。 |
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(1) | 金属類(アンチモン、ニッケル、水銀、カドミウム) | |
異常値等により棄却される回答は、金属類4項目ともに数%であった。ニッケル、カドミウム、水銀については、棄却後のCVは10%台であり、ほぼ左右対称のヒストグラムを示し良好な結果であった。ただし、水銀については若干高値側に分布する傾向がみられた。アンチモンについては、棄却後のCVが30%台であった。その主な原因としては、前処理が複雑であることなどが考えられる。 | ||
(2) | スチレン類、エストラジオール類 | |
スチレン類については、異常値等により棄却される回答は数%であり、エストラジオール類については、10%台であった。スチレン2量体の棄却後のCVは10~20%台であり、ほぼ左右対称なヒストグラムを示し良好な結果であった。スチレン3量体のCVは30%台、エストラジオール類のCVは40%台であった。その主な原因としては、異性体が多数存在すること(スチレン3量体)、前処理が複雑であることや前処理における回収率を確認するためのサロゲート物質を使用していない場合にばらつきが多いこと(エストラジオール類)などが考えられる。 | ||
(3) | 標準液試料(ダイオキシン類) | |
異常値等により棄却される回答数は、数%であった。棄却後のCVについては、1異性体を除き16項目及び毒性当量(TEQ:注4)ともに概ね数%~10%台であり、ほぼ左右対称なヒストグラムを示し良好な結果であった。 | ||
(4) | 底質試料(ダイオキシン類及びコプラナーPCB) | |
異常値等により棄却される回答数は、ダイオキシン類異性体では17項目中2項目で30%を超えたが、概ね数%であり、コプラナーPCB異性体では12項目中2項目で10%を超えたが、概ね数%であった。棄却後のCVについては、ダイオキシン類異性体の2項目を除き、ダイオキシン類異性体及び同族体、コプラナーPCB異性体、TEQですべて10%~20%台であり、ほぼ左右対称なヒストグラムを示し良好な結果であった。 |
(注1)分析方法 | |||
[1] | 金属類(アンチモン、ニッケル、水銀、カドミウム) | ||
「水質汚濁に係る環境基準について」(昭和46年環境庁告示第59号)に定める方法又は「水質汚濁に係る人の健康の保護に関する環境基準の測定方法及び要監視項目の測定方法について」(平成5年環水規121)に定める方法等 | |||
[2] | スチレン類、エストラジオール類 | ||
「外因性内分泌攪乱化学物質調査暫定マニュアル(水質、底質、水生生物)」(平成10年環境庁水質保全局水質管理課)に定める方法又は「要調査項目等調査マニュアル(水質、底質、水生生物)」(平成11年環境庁水質保全局水質管理課)に定める方法等 | |||
[3] | 標準液試料(ダイオキシン類) | ||
「ダイオキシン類に係る底質調査マニュアル」(平成12年3月環境庁水質保全局水質管理課)、「排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法(JIS K 0311)」又は「工業用水・工場排水中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法(JIS K 0312)」に定める方法等 | |||
[4] | 底質資料(ダイオキシン類) | ||
「ダイオキシン類に係る底質調査マニュアル」(平成12年3月環境庁水質保全局水質管理課)に定める方法等 |
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(注2)異常値等の棄却 | |||
両試料の結果とも、分析結果については次のように異常値を棄却した。((イ)を除いた後、(ロ)を除き、あわせて「異常値等」とした) | |||
(イ) | 「ND」、「○○以下」又は「0」で示されているもの | ||
(ロ) | Grubbs※の方法により、両側確率5%で棄却されるもの | ||
※ | 数値的な異常値(外れ値)の検定方法であり、JIS K 8402及びISO 5725に規定されている一般的な方法である。 |
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(注3)室間精度(CV) | |||
同一試料の測定において、試験室が異なっている測定値の精度をいう。精度は、測定値のばらつきの程度であり、通常は標準偏差(SD)、変動係数(相対標準偏差、CV)で表す。なお、過去の調査事例等(参考2参照)を考慮し、室間精度(CV)が20%台までの場合は「良好な結果」であると考えられる。 |
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(注4)毒性当量(TEQ) | |||
_ | ダイオキシン類等の量をダイオキシン類の中で最強の毒性を有する2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンの量に換算した量として表していることを示す記号。 |
3. | 平成13年度の調査の実施について |
平成13年度の調査に関しては、平成13年度環境測定分析検討会における検討を踏まえ、参考3のとおり調査を実施することとする。 なお、本年度の調査は公募により実施することとする。(参加申し込みについては下記参照) |
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<公募期間> | |
本日より9月25日(火)(当日必着)まで |
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<参加申し込みに関する問い合わせ> | |
〒210-0828 川崎市川崎区四谷上町10-6 財団法人 日本環境衛生センター環境科学部 Tel:044-288-5132 |
4. | 平成12年度環境測定分析統一精度管理調査結果説明会の開催について |
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平成12年度に実施した金属類(アンチモン、ニッケル、水銀、カドミウム)、スチレン類、エストラジオール類、ダイオキシン類に関する調査結果の説明会を東京、大阪、福岡の3都市で10月中旬以降に開催する。希望者は本日より募集する。(説明会の詳細、問い合わせは下記参照) なお、会場の都合等から、平成12年度環境測定分析統一精度管理調査に参加した機関を優先することを予めご了承願いたい。 |
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<開催予定、スケジュール> | <議事予定> | |
10月18日(木) 東京 10月26日(金) 福岡 11月 5日(月) 大阪 |
午前 ダイオキシン類 午後 金属類、スチレン類、 エストラジオール類 |
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<募集期間> | ||
本日より9月25日(火)(当日必着)まで |
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<参加申し込み等に関する問い合わせ> | ||
〒210-0828 川崎市川崎区四谷上町10-6 財団法人 日本環境衛生センター環境科学部 Tel:044-288-5132 |
添付資料
- (参考1)
- (参考2)水質試料中の農薬及び揮発性物質分析の精度管理調査結果例[PDFファイル 30KB] [PDF 29 KB]
- (参考3)平成13年度に実施する調査
- (表1)参加申し込み機関数と回答機関数
- (表1)参加申し込み機関数と回答機関数[PDFファイル](印刷用) [PDF 6 KB]
- (表2)~(表5)分析項目別の異常値棄却後の平均値及び精度等[PDFファイル 26KB] [PDF 25 KB]
- 図1~図4[PDFファイル 48KB] [PDF 47 KB]
- 連絡先
- 環境省環境管理局総務課環境管理技術室
室 長:安藤 憲一(内6550)
技術評価専門官:村井 悟 (内6557)
企 画 係 長:山下 恭範(内6554)