報道発表資料

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2012年02月27日
  • 自然環境

聟島を巣立ったアホウドリの帰還状況について(お知らせ)


 小笠原群島聟島(むこじま)におけるアホウドリの新繁殖地形成事業(伊豆諸島鳥島のアホウドリのヒナを小笠原諸島聟島に移送し、新しい繁殖地を形成する事業)において、平成24年2月20日現在、聟島を巣立った個体3羽の帰還が確認されていますので、お知らせいたします。

※この事業は、(財)山階鳥類研究所が、環境省、米国魚類野生生物局、三井物産環境基金、公益信託サントリー世界愛鳥基金等の支援を得て実施しているもので今年度が5か年目(移送は最終)となります。

聟島巣立ち個体の今シーズンの帰還状況について

帰還確認日 個体番号 ♂♀ 年齢(移送年=聟島巣立ち年) 備考
H23.12.5 Y01 オス 4歳(平成20年) NHKが設置したカメラにより確認
昨季最初に帰還を確認した個体
H24.1.29 Y11 メス 3歳(平成21年) NHKが設置したカメラにより確認
H24.2.9 Y20番代 不明 3歳(平成21年) 個体番号の一桁目は確認できず
計3羽

上記のほか聟島で確認された個体の状況について

確認日 個体番号 ♂♀ 年齢 備考
H23.12.24 不明 不明1(亜成鳥) NHKが設置したカメラにより確認
足環がついていないことを確認
H23.12.31 不明 不明2(亜成鳥) NHKが設置したカメラにより確認
足環装着を確認(足環の色により、聟島へ移送した個体でないことが判明)
H23.1.15 不明 不明3(亜成鳥) NHKが設置したカメラにより確認
足環がついていないことを確認
計3羽
Y01と不明1の個体は、昨年の12月から島内の同じ場所に定着しており、求愛ダンスをしていることが確認されています。
繁殖可能な年齢は最も若くて5歳で、平均では7歳頃と言われています。
NHKのカメラ(山階鳥類研究所がNHKと共同で設置したデコイ(鳥の模型)に似せたカメラ)により確認されていた個体については、2月11日に聟島入りした山階鳥類研究所の調査員が現地で確認したうえで今回発表しました。

参考:平成23年の聟島巣立ち個体の帰還実績(年齢は帰還確認日時点のもの)

帰還確認日 個体番号 ♂♀ 年齢(移送年)
2月10日 Y01 オス 3歳(平成20年)
2月25日 Y04 オス 3歳(平成20年)
3月12日 Y03 メス 3歳(平成20年)
3月17日 Y06 メス 3歳(平成20年)
3月26日 Y24 オス 2歳(平成21年)
4月1日 Y07 オス 3歳(平成20年)
Y10 メス 3歳(平成20年)
計7羽

個体の写真

3羽のヒナ Y01と足環なしのヒナ
 3羽のアホウドリ(周辺はデコイ(模型))
【2月10日撮影】
 Y01と不明1の個体(推定)
(写真撮影時には足環が確認できなかったが、
羽の色や仕草によりそれぞれの個体を推定)
【2月18日撮影】
Y11【2月11日撮影】
 Y11【2月11日撮影】

写真提供:(財)山階鳥類研究所

確認された場所

小笠原諸島聟島で飼育を行っていた場所

<参考>アホウドリについて

アホウドリ(Diomedea albatrus) ミズナギドリ目アホウドリ科
絶滅危惧II類(環境省レッドリスト2006)

分布及び個体数

  • 繁殖地は、日本の伊豆諸島鳥島と尖閣諸島のみ。(2010年北太平洋のミッドウェー環礁で繁殖したと報道されたヒナは別種の可能性もあると言われている。)
  • 非繁殖期には、北太平洋のベーリング海やアリューシャン列島、アラスカ沿岸まで移動する。
  • 1949年の調査で1度絶滅宣言が出されたが、1951年に約10羽が鳥島で再発見された。
  • 減少要因は、1890~1900年代に羽毛採取のために大量に捕獲されたことによる。

形態及び生物学的特性

  • 成熟個体で全長が84~94cm。
  • 繁殖活動は10月~翌年5月。
  • 7歳頃から繁殖に参加し、巣立った場所に戻ってきて繁殖を行う傾向が強い。

保護の対策

  • 種の保存法に基づく「国内希少野生動植物種」に指定(平成5年)
  • 国の特別天然記念物
写真
繁殖ペア 求愛ダンス
繁殖ペア(手前はクロアシアホウドリ) 求愛ダンス
巣立ち直前のヒナ 給餌
巣立ち直前のヒナ(5月) 給餌

これまでの経過

<平成19年>
3月~6月
近縁種のクロアシアホウドリによる飼育試験を実施
<平成20年>
2月19日
伊豆諸島鳥島において捕獲したヒナ10羽(雄4羽、雌6羽)をヘリコプターに載せて、小笠原群島聟島まで移送。
  ↓  
(山階鳥類研究所の職員が聟島に滞在し、ヒナの人工飼育を実施。)
5月19日~25日
ヒナの巣立ち
5月~9月
人工衛星追跡を実施し、追跡できた4羽がベーリング海へ到達。
聟島の飼育ヒナと鳥島の野生ヒナの巣立ち後の行動に大きな違いは見られなかった。
<平成21年>
2月5日
伊豆諸島鳥島において捕獲したヒナ15羽(雄10羽、雌5羽)をヘリコプターに載せて、小笠原群島聟島まで移送。
  ↓  
(山階鳥類研究所の職員が聟島に滞在し、ヒナの人工飼育を実施。)
5月11日~25日
ヒナの巣立ち
<平成22年>
2月8日
伊豆諸島鳥島において捕獲したヒナ15羽(雄11羽、雌4羽)をヘリコプターに載せて、小笠原群島聟島まで移送。
  ↓  
(山階鳥類研究所の職員が聟島に滞在し、ヒナの人工飼育を実施。)
5月18日~29日
ヒナの巣立ち
<平成23年>
2月8日
伊豆諸島鳥島において捕獲したヒナ15羽(雄8羽、雌7羽)をヘリコプターに載せて、小笠原群島聟島まで移送。
  ↓  
(山階鳥類研究所の職員が聟島に滞在し、ヒナの人工飼育を実施。)
2月10日
平成20年に巣立ちしたヒナ(3歳、雄)の聟島への帰還を確認
5月12日~25日
ヒナの巣立ち
<平成24年>
2月11日
伊豆諸島鳥島において捕獲したヒナ15羽(雌雄未判定)をヘリコプターに載せて、小笠原群島聟島まで移送。
連絡先
環境省自然環境局野生生物課
(代表   : 03 - 3581 - 3351)
(直通   : 03 - 5521 - 8283)
課長    : 亀澤 玲治(6460)
課長補佐 : 堀内 洋 (6475)
専 門 官 : 大林 圭司(6469)
係長    : 浪花 伸和 (6469)