報道発表資料

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2000年11月01日

中央環境審議会「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第四次答申)」について

 本日(11月1日)開催の中央環境審議会大気部会(部会長:池上詢福井工業大学工学部教授)において、「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第四次報告)」がまとめられ、これを受けて、同日、中央環境審議会会長から環境庁長官に対して答申がなされた。
 本答申の要点は以下のとおりであり、今後、環境庁においては、本答申を踏まえ規制強化のための所要の手続きを進めることとしている。
 なお、中央環境審議会は、自動車排出ガス低減対策のあり方について、引き続き審議を進めることとしている。

(答申の要点)
ディーゼル自動車の新長期目標を平成17年(2005年)までに達成
 第三次答申で平成19年(2007年)頃を目途とされた新長期目標について、2年前倒しし、平成17年(2005年)までに達成する。新短期目標の2分の1程度とされた新長期目標の具体的な目標値は平成13年度(2001年度)末を目途に決定する。その際、ディーゼル排気微粒子のリスク評価結果を踏まえ、粒子状物質を2分の1程度よりも更に低減することを検討する。

軽油中の硫黄分の許容限度目標値を平成16年(2004年)末までに現行(500ppm)から50ppmに低減
 軽油中の硫黄分の許容限度目標値を平成16年(2004年)末までに現行(500ppm)から50ppmに低減する。なお、将来的には一層の低減を要望する。また、軽油中のその他の燃料性状について、その改善と自動車の排出ガス対策技術との組合せによる排出ガス低減効果に関し一層の研究が必要である。

ディーゼル特殊自動車の低減目標を平成15年(2003年)までに達成すると同時に黒煙の目標値も40%とし達成
 第二次答申で平成16年(2004年)までに達成することとされた窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素及び粒子状物質の低減目標について、1年前倒しし、平成15年までに達成する。また、同時に達成すべき黒煙の目標値を40%とする。

《参考》

I.経緯

 中央環境審議会(会長:森嶌昭夫(財)地球環境戦略研究機関理事長)は、平成8年5月に環境庁長官より諮問された「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」について、平成10年12月の第三次答申以降、大気部会(部会長:池上詢福井工業大学工学部教授)及び同部会に設置した自動車排出ガス専門委員会(委員長:河野通方東京大学大学院教授)で引き続き審議を進めてきた。
 本日開催の第30回大気部会において、ディーゼル自動車新長期目標の前倒し等を内容とする「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第四次報告)」がまとめられ、中央環境審議会会長から環境庁長官に対して答申がなされた。

1.大気部会の審議状況
平成8年
5月21日第12回大気部会諮問「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」

10月18日第15回大気部会中間報告→同日中間答申
・二輪車の排出ガス規制導入
・ガソリンの低ベンゼン化等

平成9年
11月21日第20回大気部会第二次報告→同日第二次答申
・ガソリン自動車の規制強化
・特殊自動車の規制導入等

平成10年
12月14日第22回大気部会第三次報告→同日第三次答申
・ディーゼル自動車の規制強化等

平成12年
9月25日第29回大気部会自動車排出ガス専門委員会の審議状況について等

9月26日
 ~10月20日
パブリックコメント(本手続きによる内容変更なし)


11月1日第30回大気部会第四次報告→同日第四次答申
・ディーゼル自動車の新長期目標の前倒し等

2.自動車排出ガス専門委員会の審議状況(第三次答申以降)
専門委員会 計9回開催(現地調査等を含む。)
作業委員会 計17回開催
(石油連盟ヒアリング、国内・海外自動車メーカーヒアリング等を含む。)
※作業委員会は専門委員会内に設置

 

II.「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第四次答申)」の概要

1.ディーゼル自動車の排出ガス低減対策
(1)背景
二酸化窒素(NO2)、浮遊粒子状物質(SPM)等による大気汚染が依然深刻。
ディーゼル自動車からの窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)は沿道の大気環境中のNO2、SPMへの寄与率が高い。
自動車NOx法が掲げた平成12年度までにNO2環境基準を概ね達成という目標は達成が極めて困難な状況。
尼崎公害訴訟第一審判決において、SPMと健康被害との因果関係が認められ、自治体による独自のディーゼル自動車排出ガス低減対策の提案がなされる等ディーゼル排気微粒子(DEP)への関心が高い。
DEPについて、健康影響へのリスクが懸念されており、リスク評価検討会の中間とりまとめでは発がん性を有していることを示唆。

(2)排出ガス低減対策
ディーゼル自動車の新長期目標を平成17年(2005年)までに達成
(1)に示した状況の変化を踏まえ、第3次答申以降の技術開発状況及び今後の進展の可能性について評価を行った結果、新しい排気後処理装置の開発が急速に進んでいることから、第3次答申で平成19年(2007年)頃を目途とされた新長期目標を上記の時期に達成することが適当と結論。
第3次答申で新短期目標の2分の1程度とされた新長期目標の具体的な値については、今後の技術開発の動向を踏まえ、平成13年度(2001年度)末を目途に決定。その際にはDEPリスク評価結果を踏まえ、PMを2分の1程度よりも更に低減することを検討することが必要。
試験方法については、第3次答申において、走行実態調査を実施し、見直しの必要性も含め検討することと提言されており、可能な限り早期に結論を出すことが必要。
(社)日本自動車工業会が表明している平成15年(2003年)から16年(2004年)の自主的なPM先行対策車の市場投入が適切に実施されることを要望。

(3)燃料品質対策
軽油中の硫黄分の許容限度目標値を平成16年(2004年)末までに現行(500ppm)から50ppmに低減
新長期目標達成のために有望な技術である連続再生式のディーゼル微粒子除去装置(DPF)、NOx還元触媒を十分に機能させるためには軽油中の硫黄分の低減が必要であるが、我が国の石油事情から、現状では50ppmレベルが技術的な限界であるため、上記の達成時期、目標値が適当。
軽油中の硫黄分は将来的には一層の低減を要望。
芳香族含有率や蒸留性状等の燃料性状について、その改善と自動車の排出ガス対策技術との組合せによる排出ガス低減効果に関し一層の研究が必要。
石油連盟が表明している硫黄分の低減された軽油の自主的な部分供給が、PM先行対策車の市場投入にあわせて適切に実施されることを要望。

2.ディーゼル特殊自動車の排出ガス低減対策
ディーゼル特殊自動車の低減目標を平成15年(2003年)までに達成すると同時に黒煙の目標値も40%とし達成
第2次答申において、ディーゼル特殊自動車から排出されるNOx、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及びPMの低減目標を平成16年までに達成し、黒煙の低減目標は試験方法と併せて検討すべきと提言。
しかしながら、ディーゼル特殊自動車は自動車排出ガス全体に占める割合がNOxで約3割、PMで約1割と高いため、ディーゼル自動車と同様に排出ガス低減目標を可能な限り早期に達成することが必要で、既に一部で規制レベルに対応した車両が生産されていることから、技術評価を踏まえ検討を行った結果、上記の時期に達成することが適当。
黒煙の目標値は40%とし、試験方法は(社)日本建設機械化協会のJCMAST-004を採用することとするが、将来的には試験方法を見直しすることが必要。
将来的には全ての成分について一層の排出ガス低減目標を検討することが必要。

3.今後の主な検討課題
ディーゼル自動車の新長期目標の具体的な目標値等を可能な限り早期に設定。
ガソリン・LPG自動車の新長期目標の具体的な目標値、達成時期等を可能な限り早期に設定。燃料・潤滑油品質は自動車の排出ガス対策技術と燃料品質の種々の組合せによる排出ガス低減効果についての研究結果を踏まえ検討。
ディーゼル自動車排出ガス及び燃料品質の新長期目標以降の新たな低減目標の検討。
二輪車の新たな低減目標の設定。
ディーゼル特殊自動車の新たな低減目標の設定。

4.関連の諸施策等
自動車NOx法を改正し、PMの法対象への追加、車種規制の強化等の総合施策の推進を要望。
低公害車に係る施策の推進、普及促進に向けた環境作りの推進を要望。
使用過程のディーゼル自動車対策については、ディーゼル車対策技術評価検討会の中間とりまとめの提言の実現のため、具体的な政策手法についての早急な検討を要望。
使用過程車の点検・整備の励行、自動車の検査・街頭検査の充実を要望。
(社)日本自動車工業会による自主的なPM先行対策車の市場投入及びそれにあわせた石油連盟による低硫黄軽油の部分供給が着実に実施されることを要望。
生産者、使用者等が応分にコストを負担することを要望。
未規制の排出源に対する対策についての検討を要望。
地球温暖化対策の観点から、低排出ガス技術と低燃費技術とが両立する方向への技術開発の推進を要望。また、自動車からのメタン及び一酸化二窒素の排出実態等を調査することを要望。
自動車から排出される有害大気汚染物質について、測定法等の排出量把握のための基盤を整備し、必要な施策を講ずることを要望。
大気質改善に対する各対策の効果・予測手法の開発、沿道等での対策効果の把握体制の整備等を要望。

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局自動車環境対策第二課
課    長 :松本 和良(内6550)
 課長補佐 :酒井 雅彦(内6552)

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