自動車排出ガス専門委員会
略語集
COP3【The 3rd Session of the Conference of the Parties to the United Nations Framework Convention on Climate Change】
DBL【Diurnal Breathing Loss】
DEP【Diesel Exhaust Particles】
DPF【Diesel Particulate Filter】
ISO【International Organization for Standardization】
LPG【Liquefied Petroleum Gas】
OBD System【On-Board Diagnostic System】
PM 【Particulate Matter】
RL【Running Loss】
SPM【Suspended Particulate Matter】
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< 目 次 >
(我が国の自動車排出ガス規制の経緯)
我が国の自動車排出ガス規制は、昭和41年(1966年)のガソリンを燃料とする普通自動車及び小型自動車の一酸化炭素濃度規制により開始された。その後、軽自動車、液化石油ガス(以下「LPG」という。)を燃料とする自動車及び軽油を燃料とする自動車(以下「ディーゼル自動車」という。)が規制対象に追加され、また、規制対象物質も逐次追加された結果、現在では、ガソリン又はLPGを燃料とする自動車(以下「ガソリン・LPG自動車」という。)については一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)が、ディーゼル自動車についてはこれら3物質に加えて粒子状物質(PM)及びPMのうちディーゼル黒煙が規制対象となっている。
さらに、平成9年(1997年)に、ガソリンを燃料とする二輪自動車及び原動機付自転車(以下「二輪車」という。)が規制対象に追加された。これを受けて、平成10年(1998年)には第一種原動機付自転車及び軽二輪自動車について、平成11年(1999年)には第二種原動機付自転車及び小型二輪自動車について規制が開始された。さらに、平成16年(2004年)までに、軽油を燃料とする大型特殊自動車及び小型特殊自動車(以下「ディーゼル特殊自動車」という。)であって、定格出力19kW以上560kW未満のエンジンを搭載するものについても規制の開始が予定されている。
また、平成7年(1995年)には大気汚染防止法が一部改正され、自動車燃料品質に係る許容限度がガソリン及び軽油について設定された。これに基づき平成8年(1996年)から自動車燃料品質規制が開始されている。
(中央環境審議会における審議経緯)
近年の自動車排出ガス低減対策は、平成元年(1989年)12月の中央公害対策審議会答申「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」(平成元年12月22日中公審第266号。以下「元年答申」という。)で示された目標に沿って推進されてきた。これにより、
等の諸施策が平成11年(1999年)までにすべて実施された。
元年答申で示された目標について完全実施のめどが立ったことから、平成8年(1996年)5月、環境庁長官より中央環境審議会に対して「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」(平成8年5月21日諮問第31号)が諮問され、中央環境審議会大気部会及び同部会に新たに設置された本自動車排出ガス専門委員会(以下「本委員会」という。)において検討が開始された。
平成8年10月18日には、有害大気汚染物質対策の重要性・緊急性に鑑み、自動車排出ガス低減対策として可能な限り早急に実施すべきものについて検討した本委員会の中間報告が大気部会に了承され、同日、中間答申「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」(平成8年10月18日中環審第83号。以下「中間答申」という。)がとりまとめられた。同答申に基づき、
の諸施策が、排出ガス規制については平成10年又は11年に、燃料品質規制については平成12年1月に実施された。
平成9年(1997年)11月21日には、ガソリン・LPG自動車及びディーゼル特殊自動車の排出ガス低減対策の強化について検討した本委員会の第二次報告が大気部会に了承され、同日、第二次答申「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」(平成9年11月21日中環審第120号。以下「第二次答申」という。)がとりまとめられた。同答申に基づき、
が予定されており、ガソリン新短期目標及びガソリン自動車の燃料蒸発ガスについては平成10年9月に大気汚染防止法に基づく告示「自動車排出ガスの量の許容限度」(以下「許容限度」という。)の改正等所要の措置が講じられた。
平成10年(1998年)12月14日には、ディーゼル自動車の排出ガス低減対策の強化について検討した本委員会の第三次報告が大気部会に了承され、同日、第三次答申「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」(平成10年12月14日中環審第144号。以下「第三次答申」という。)がとりまとめられた。同答申に基づき、
が予定されており、ディーゼル新短期目標については平成12年9月に許容限度の改正等所要の措置が講じられた。
(本報告の検討経緯及び概要)
本委員会は、第三次答申で示された検討方針に沿って、燃料生産者の現地調査並びに本委員会内に設置した作業委員会による業界団体及び自動車製作者ヒアリング等を含め25回にわたる検討を行った。その結果、2.に示すディーゼル自動車の排出ガス低減対策強化の必要性に加え、内外における自動車排出ガス低減技術の開発状況及び今後の進発展の可能性を考慮した結果、3.に示すディーゼル自動車の排出ガス低減対策及び4.に示すディーゼル特殊自動車の排出ガス低減対策を推進する必要があるとの結論を得た。さらに5.(1)では、3.及び4.の具体的方策を踏まえ、ガソリン・LPG自動車、ディーゼル自動車、特殊自動車及び二輪車の排出ガス低減対策並びに燃料品質対策の強化、排出ガス試験方法の見直し等についての今後の検討課題をそれぞれ示す。また、5.(2)では、関連の諸施策等について本委員会の見解を示す。
本委員会の第三次報告では、ディーゼル自動車の排出ガス低減対策について、次のとおり本委員会の基本的認識を示した。
ディーゼル自動車の排出ガス低減に当たっては、大気汚染物質とディーゼル自動車の排出ガスとの関係を考慮した場合、まずはNOx及びPMの低減対策を一層強力に推進するとともに、大気汚染物質の二次生成の抑制及び有害大気汚染物質対策の観点からHCについても低減を図る必要がある。また、COについては、近年、良好な大気環境が維持されているが、その維持のため、可能な範囲において低減を図ることが適当である。
このうち、PMについては、浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準の達成状況が依然として低い水準で推移していることに加え、発がん性、気管支ぜん息、花粉症等の健康影響との関連が懸念されていること、また、SPMの中でもより粒径の小さい粒子(微小粒子)の大気環境濃度と健康影響との関連性が新たに着目されてきている中、ディーゼル自動車から排出されるPMはその大半が微小粒子であることも念頭に置きつつ、低減対策の推進を図る必要がある。
(参考)大気汚染物質とディーゼル自動車の排出ガスとの関係(第三次報告より)
- ディーゼル自動車からのNOxの排出低減は、大気中の二酸化窒素(NO2)、SPM及び光化学オキシダントの濃度低減に効果があり、酸性雨対策にも資する。これらの効果、特にNO2対策の観点から、排出ガス対策の必要性は極めて大きい。
- ディーゼル自動車からのPMの排出低減は、大気中のSPMの濃度低減、有害大気汚染物質の排出低減に効果があり、排出ガス対策の必要性は極めて大きい。
- ディーゼル自動車からのHCの排出低減は、大気中のNO2、SPM及び光化学オキシダントの濃度低減、有害大気汚染物質の排出低減に効果があり、酸性雨対策にも資することから、排出ガス対策の必要性は大きい。
- ディーゼル自動車からのCOの排出低減は、大気中のCOの濃度低減に効果がある。COの環境基準の達成状況は良好であるものの、大気環境の維持の観点から、排出ガス対策を行うことが望ましい。
本委員会では、ディーゼル自動車の排出ガス低減対策の推進に当たっては、同様な基本的認識に立つが、加えて、以下のような状況を考慮する必要がある。
従って、本委員会では、ディーゼル自動車の排出ガス低減対策の一層の強化推進を図っていく必要があるとの認識に立って、必要な排出ガス低減対策について検討を行った。
第三次答申において、ディーゼル新短期目標の2分の1程度とされているディーゼル新長期目標は非常に高い目標であり、その達成のためには、従来のエンジンの燃焼改善による対応に加え、排気後処理装置を採用することが必要である。ディーゼル新長期目標を達成するための排気後処理装置としては、現在既に実用化されている酸化触媒に加え、連続再生式のディーゼル微粒子除去装置(DPF)やNOx還元触媒等が有望である。ただし、これらの技術は、現行の軽油中の硫黄分の許容限度(0.05質量%:以下「500ppm」と表記する)レベルでは触媒の被毒等によって、十分に機能できないことがわかっているため、ディーゼル新長期目標を達成するためには、軽油中の硫黄分が低減されることが必要不可欠となる。
連続再生式のDPFは、近年、欧州を中心に一部の車種に適用されている等開発が進んでいる。これらは、排気温度や排出ガス中のNOx/PM比等の制約条件及び耐久性等の面で解決すべき課題も残されているものの、大幅なPM削減が可能であり、加えてDPFに付属した酸化触媒の作用により、HC、COのほか有害大気汚染物質の削減も可能である。
ディーゼル自動車のNOx還元触媒は、還元剤として軽油を添加する方式のほか、尿素を添加してさらに大幅なNOx低減効果の得られる方式についても開発が進められている。これらは、DPFよりも更に硫黄分の低い軽油が必要となるほか、性能や耐久性等に課題が残されており、現時点では実用化されていない。しかしながら、開発段階ではあるものの、ガソリン自動車用に実用化されている吸蔵型のNOx還元触媒を利用して、NOxとPMを同時に現行の規制値より約8割除去できるとされる新たな技術が現れる等、近年開発が急速に進んでいる。現時点においては、この技術は中型貨物車程度までのディーゼル自動車に対して適用可能であるとされているが、今後、更に大型のディーゼル自動車に対しても適用されるよう技術開発が進められることが期待される。
本委員会では、上記に示した排気後処理技術の開発状況及び今後の発展の可能性を踏まえ、技術的な評価を行った結果、
以下、3.(2)でディーゼル新長期目標の早期達成について、3.(3)で燃料品質対策について述べる。
自動車製作者に対するヒアリング等を通じて、各車種ごとに技術的な検討を行った結果、3.(1)で述べたとおり、新しい排気後処理装置の開発も進んでおり、早期にディーゼル新長期目標を達成できる技術が実用化されることが期待できる。
従って、ディーゼル新長期目標については、設計、開発、生産準備等を効率的に行うことにより、平成17年(2005年)までに達成を図ることが適当である。
なお、
から、規制への対応が円滑に進められるよう配慮が必要である。
具体的な目標値については、今後の技術開発の動向を踏まえ、現行の排出ガス試験方法を見直す場合にはそれを基に、平成13年度(2001年度)末を目途に決定することが適当である。その際には、DEPのリスク評価の結果を踏まえ、PMを新短期目標の2分の1程度よりも更に低減した目標値とすることについて検討する必要がある。
なお、(社)日本自動車工業会は、自主的対応として、平成15年(2003年)から16年(2004年)にかけてPMの排出量をディーゼル新長期目標レベルに低減した自動車を市場に供給開始することを表明している。同工業会においては、この取組が十分効果を上げるように適切に実施することが望まれる。
排出ガス試験方法については、第三次答申において、現行の試験方法の設定から10年以上が経過し、走行実態に変化が生じている可能性があること等から、改めて走行実態調査を実施し、試験方法の見直しについて必要性も含め検討することとされており、現在環境庁において走行実態調査を実施しているところである。排出ガス試験方法は、ディーゼル新長期目標の具体的な目標値を決定する際に必要であることから、可能な限り早期に結論を出す必要がある。
排出ガス試験方法の見直しに当たっては、我が国の大気汚染状況に鑑み、我が国の大都市地域の走行実態が十分反映されるよう配慮する必要がある。なお、大型車の排出ガス試験方法の国際基準調和活動が国際的に進行していることに鑑み、我が国の環境保全上支障がない範囲において、可能な限り国際調和を図ることが肝要である。
また、採用が確実視されている排気後処理装置の評価に適した排出ガス試験方法となるよう留意するとともに、コールドスタート時の排出ガス低減を適切に行うための測定方法に関し調査研究を進めることが必要である。特に、現在ディーゼル13モードを適用している大型車の試験方法については、コールドスタート時の暖機過程を再現でき、より排気後処理装置の評価に適しているとされる過渡運転の排出ガス試験方法(いわゆる「トランジェントモード」)の導入を検討する必要がある。その際、過渡運転にも対応できる部分希釈・フィルター捕集法によるPMの計測法の導入について検討する必要がある。
また、HCについては、現在HC総体の規制値が設定されているが、効果的に大気環境の改善を図るには、有害性や光化学反応性が高い成分をより的確に低減することが重要であることから、非メタン炭化水素又は非メタン有機ガス(非メタン炭化水素にケトン、アルデヒド等の含酸素有機化合物を加えたもの)による規制の導入について、今後、その必要性も含めて検討することが適当である。
黒煙の測定方法については、ディーゼル新短期規制の時点では、4モード全負荷試験及び無負荷急加速試験が行われることとなるが、PMの対策強化に伴い黒煙も目に見えないレベルにまで低減することが期待され、測定精度上の問題が生じる可能性もあることから、黒煙の測定方法及び黒煙規制のあり方についても、併せて検討することが適当である。
ディーゼル新長期目標を達成するために現段階で有望な技術である連続再生式のDPF及びNOx還元触媒等は、現行の軽油中の硫黄分の許容限度(500ppm)レベルでは、触媒の被毒等によって十分に機能しないことが分かっており、また軽油を低硫黄化することにより、硫酸塩(サルフェート)が生成しにくくなりPMが低減することから、軽油中の硫黄分を低減することが必要である。
しかしながら、我が国が原油の相当部分を依存している中東原油には硫黄分が多く、軽油中に残留した硫黄化合物には難脱硫物質が多いことや、原油中の低硫黄の留分は、暖房に不可欠な灯油に充当しなければならないという我が国の特殊事情にも留意する必要がある。このため、低硫黄化には高度な技術が必要となり、現在の技術レベルでは0.005質量%(以下「50ppm」と表記する)レベルまで低減することが限界で、それ以上の低硫黄化には新たな技術開発に相当の時間・費用が必要となる。
従って、早急にディーゼル新長期目標を達成する必要性に鑑み、当面、軽油中の硫黄分の許容限度設定目標値を50ppmとすることが適当である。
なお、サルフェートの低減に加え、NOx還元触媒がその機能を十分に発揮するためには、50ppmよりも硫黄分が低いことが必要と考えられていることもあり、将来的にはそれ以上の低硫黄化が望まれる。併せて、軽油中の硫黄分に被毒されにくい触媒についても開発が進められることが望まれる。また、芳香族含有率や蒸留性状等その他の燃料性状についても、その改善と自動車の排出ガス対策技術とが適切に組み合わされることにより排出ガス低減に資するとされているが、その定量的な効果については必ずしも明らかではないため、一層の研究が必要である。
ディーゼル新長期目標を可能な限り早期に達成することのほか、自動車製作者がディーゼル新長期目標に基づく規制の適合車をの規制開始前における販売を円滑に販売実施できるよう環境を整えるために、可能な限り早く低硫黄化を実現させる必要がある。
従って、軽油中の硫黄分を50ppmとする許容限度設定目標値については、設備設計及び改造工事等を効率的に行うことにより、平成16年(2004年)末までに達成を図ることが適当である。
なお、石油連盟は、自主的対応として、PMの排出量をディーゼル新長期目標レベルに低減した自動車が平成15年(2003年)から16年(2004年)にかけて市場に供給開始される際に、低硫黄軽油を部分供給することを表明している。この取組が十分効果を上げるように適切に供給体制が整備され可能な範囲で市場の軽油の硫黄分の実勢が低減されることが望まれる。
特殊自動車については、その排出寄与率がNOxで自動車全体の約3割、PMで約1割とかなりの部分を占めるため、第二次答申において、平成16年(2004年)までに排出ガス低減目標値の達成を図ることが適当であるとされている。しかしながら、2.において述べたとおり、ディーゼル特殊自動車の排出ガス対策をとりまく環境は第二次答申がとりまとめられた当時とは大きく変化しており、また、既に一部で規制レベルに対応した車両が欧米の規制への対応や建設省の直轄工事における排出ガス対策型建設機械の取扱い第二次基準の認定制度への対応から生産されていることからため、本委員会では、その後の技術評価を踏まえ検討を行った。その結果、ディーゼル特殊自動車については、既に一部で規制レベルに対応した車両が、欧米の規制への対応や建設省の直轄工事における排出ガス対策型建設機械の取扱い第二次基準の認定制度への対応から生産されており、技術的に対応可能であると考えられる。そのため、
が適当であるとの結論を得た。
以下、4.(2)で排出ガス低減目標の早期達成について、4.(3)でディーゼル黒煙対策について述べる。
ディーゼル特殊自動車の排出ガス低減目標については、特殊自動車業界団体に対するヒアリング等を通じて技術的な検討を行った結果、排出ガス低減目標を達成できる技術の実用化が早期に期待できることから、排出ガス計測施設の整備等に加え、設計、開発、生産準備等を効率的に行うことにより、平成15年(2003年)までに達成を図ることが適当である。
なお、エンジンベースでの排出ガス試験方法による特殊自動車排出ガス規制の導入に当たっては、特殊自動車についてはエンジン製作者と車体製作者が異なる場合が多いこと及び諸外国との規制体系の整合性の観点から、既存の制度に配慮しつつ、エンジン製作者が申請できるエンジン認定制度を早急に創設することが望まれる。また、排出ガス低減目標の達成時期までの期間が短く認証の集中が予想されること等から、規制への対応が円滑に進められるよう配慮が必要である。
PMのうちディーゼル黒煙の排出ガス試験方法については、第二次答申では、国際標準化機構(ISO)においてディーゼル特殊自動車の黒煙の測定方法の開発が進められていたこと等から、諸外国の動向等も踏まえつつ、一般のディーゼル自動車の黒煙測定方法の検討と併せて適切な試験方法について引き続き検討することが必要であるとされた。また、第三次答申においては、第二次答申で示された目標の達成時期に併せて試験が実施できるよう、早急に検討を進めることとされた。
しかしながら、未だISOの黒煙測定方法が決定されていないことに加え、欧州、米国共に当分の間ISOの黒煙測定方法を採用しない方針である等、ISOの黒煙測定方法をとりまく環境は大きく変化しており、また、過渡運転のための直流又は交流動力計や新型のスモークメーター等新たな計測機器が必要でその設定に時間がかかることから、第二次答申で示された目標の達成時期に併せてISOの黒煙測定方法を導入することは極めて困難な状況にある。
従って、当面、平成15年(2003年)の排出ガス低減目標の達成に併せて、ISOの黒煙測定方法以外の測定方法を導入していくことが適当である。ディーゼル特殊自動車からの黒煙の測定方法としては、(社)日本建設機械化協会の規格であるJCMAS
T-004があり、建設省直轄工事における排出ガス対策型建設機械の取扱いに係る認定のための黒煙測定方法として採用されており実績のあること、一般のディーゼル自動車の黒煙測定方法を基に建設機械用に改良しているため一般のディーゼル自動車の測定方法と整合性があること、新たな計測機器等が必要ないこと等から、当面これを採用することが適当である。
なお、今後黒煙測定方法に係る国際動向を見極めていくとともに、一般のディーゼル自動車の黒煙測定方法の検討と併せて適切な試験方法について引き続き検討する必要がある。
ディーゼル特殊自動車には、一般のディーゼル自動車と比較して、以下のような多くの技術的課題があるため、一般のディーゼル自動車と同等の排出ガス低減は直ちには困難であるが、技術的に可能な限りの低減を図ることが必要である。
これらのことを考慮し、ディーゼル特殊自動車の黒煙について技術的な検討を行った結果、当面の許容限度設定目標値を4.(3)@で述べた測定方法により、40%とすることが適当である。また、4.(3)@で述べたように、平成15年(2003年)の規制導入に併せて、この目標値の達成を図ることが適当である。
なお、上記許容限度設定目標値は当面の低減目標であり、今後とも排出ガス低減技術の開発状況等を見極めつつ、適宜排出ガス低減目標を見直すことが必要である。
本委員会においては、3.及び4.で示した検討課題を含め、以下の事項について引き続き検討することとしている。
なお、以上の課題についての検討及び対策の実施に当たっては、第三次答申で示されたとおり、自動車が国際的に流通する商品であって排出ガス低減対策にも内外で共通の要素が多いことに鑑み、我が国の環境保全上支障がない範囲において、可能な限り基準等の国際調和を図ることが肝要である。
本報告で示した対策と相補う施策として、自動車排出ガス総合対策の推進等、以下の関連諸施策が今後行われることが望まれる。
(自動車排出ガス総合対策の推進)
自動車排出ガス総合対策については、大気・交通公害合同部会での審議を踏まえ、平成12年(2000年)内に取りまとめられる中央環境審議会答申を基に実効性のある対策を総合的、計画的に講じていく必要がある。具体的には、自動車NOx法を改正し、PMをの法対象にへの追加えるとともに、車種規制の強化、事業者に係る自動車排出ガス抑制対策の充実、低公害車等の普及促進等の施策を総合的に推進する必要がある。
(低公害車等の普及促進)
低公害車については、既存の諸施策を引き続き推進するとともに、低公害車の普及促進に向けた社会環境づくりを推進する必要がある。また、平成12年(2000年)3月にトラック・バスのうち車両総重量3,500kg超えのものについて、第三次答申に基づき、「低公害車等排出ガス技術指針(大気保全局長通知)」を改定し対象としたところであり、同指針を踏まえ、より排出ガスの少ない自動車の普及促進を図る必要がある。
(使用過程車の排出ガス低減対策)
ディーゼル自動車の使用過程車対策については、「ディーゼル自動車対策技術評価検討会」の中間とりまとめに示された提言を実現するため、具体的な政策手法について早急に検討する必要がある。
第二次答申及び第三次答申で示されたとおり、ガソリン・LPG自動車、ディーゼル自動車等の使用過程車全般について、今後とも、点検・整備の励行、道路運送車両法に基づく自動車の検査(いわゆる「車検」)及び街頭での指導・取締まり(いわゆる「街頭検査」)時における排出ガス低減装置の機能確認等により、使用過程において良好な排出ガス性能を維持させることが重要である。
また、通常の使用過程において排出ガス低減装置の性能維持の状況を把握するため、抜取り検査(サーベイランス)の導入等の方策について、必要性も含め検討することが望ましい。
(関係業界の自主的な取組)
(社)日本自動車工業会及び石油連盟は平成15年(2003年)から16年(2004年)にかけて、PMの排出量をディーゼル新長期目標レベルに低減した自動車の販売を開始し、これにあわせて、低硫黄軽油の部分供給を開始することを表明しており、この取組が着実に実施されることが強く望まれる。
(コスト負担等)
今回の報告に基づき排出ガス低減対策を推進していく過程では、車両価格、燃料価格、エンジン耐久性、燃費及び維持費等への影響が考えられるが、これらは自動車の利用に係る費用として自動車・燃料の生産者、使用者等のそれぞれが応分に負担する必要がある。
なお、最新規制適合車への代替や燃料の品質改善を円滑に推進するためには、金融・税制面等における配慮も必要である。
(未規制排出源の排出実態調査及び対策)
第二次答申及び第三次答申で示されたとおり、各種未規制の排出源について排出実態の調査及び対策の必要性の検討を進めるとともに、対策実施のための制度のあり方について検討する必要がある。
(地球温暖化対策等)
第二次答申及び第三次答申で示されたとおり、低排出ガス技術と低燃費技術とが両立する方向への技術開発が必要である。
また、平成9年(1997年)12月の「気候変動枠組条約第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)」で採択された京都議定書では、二酸化炭素に加え、他の温室効果ガス5種類についても排出削減が求められていることを踏まえ、自動車から排出される温室効果ガスのうち、二酸化炭素以外のメタン及び一酸化二窒素について、今後、排出実態の把握及び生成メカニズムの解明を行うほか、NOx、HC等と併せて排出低減技術等について調査研究し、排出抑制を図ることが強く望まれる。
(有害大気汚染物質対策)
第三次答申で示されたとおり、自動車から排出される有害大気汚染物質について、測定方法の開発及び測定精度の向上を図り、自動車からの排出量把握のための基盤を整備するとともに、得られた情報を基に必要な施策を講じることが望まれる。
その際、エンジン燃焼技術、触媒等の排気後処理技術、燃料・潤滑油品質等が自動車からの有害大気汚染物質の排出量に及ぼす影響についても併せて把握するよう努めることが必要である。
(効果予測・効果測定の充実)
単体対策や総合的な排出ガス対策の進展に伴い、これらの対策の効果を的確に予測し、また、精度の良いモニタリングによる効果測定を行うことが、必要な施策を企画・実施していく上で、一層重要になる。このため、大気質改善に対する各対策の効果・予測手法の開発、沿道等での対策効果の把握体制の整備等が望まれる。
中央環境審議会大気部会自動車排出ガス専門委員会及び同作業委員会名簿
区 別 |
氏 名 |
所 属 |
作業委員会 |
委 員 長 |
河野 通方 |
東京大学大学院教授 |
○ |
委 員 |
松下 秀鶴 |
富士常葉大学環境防災学部教授 |
|
特別委員 |
大聖 泰弘 |
早稲田大学理工学部教授 |
○ |
専門委員 |
指宿 堯嗣 |
通商産業省資源環境技術総合研究所 |
|
〃 |
小高 松男 |
運輸省交通安全公害研究所交通公害部長 |
○ |
〃 |
齋藤 威 |
警察庁科学警察研究所交通部長 |
|
〃 |
坂本 和彦 |
埼玉大学大学院教授 |
|
〃 |
塩路 昌宏 |
京都大学大学院エネルギー科学研究科教授 |
○ |
〃 |
長江 啓泰 |
日本大学理工学部教授 |
|
〃 |
福間 康浩 |
(財)日本自動車研究所理事 |
|
〃 |
御園生 誠 |
工学院大学環境化学工学科教授 |