報道発表資料

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1997年10月27日

第8回ベルリンマンデート・アドホック・グループ会合(AGBM8)の第1週(10月22日~25日)の状況について

10月22日(水)から31日(金)までの予定で、第8回ベルリンマンデート・アドホック・グループ会合(AGBM8)がドイツ・ボンで開会している。その第1週目の状況は以下のとおり。22日午前に公式会合が開催され、各締約国などからステートメントが行われた後、{1}政策・措置、{2}数量目標、{3}途上国を含む全締約国の約束の実施の推進、{4}組織的事項の4つの非公式会合を設けて議論が進められており、29日(水)にその進捗状況について各非公式会合から公式会合に報告が行われることとなっている。
1. 全体会合
 22日午前に開かれ、エストラーダAGBM議長、ザミット・クタヤール条約事務局長による開会挨拶の後、「G77及び中国(以下「G77」という。)」を代表してタンザニアが、概略別紙に示されるG77の数量目標に関する提案を行った。引き続き、我が国から日本提案を紹介するステートメントを行った。また、EUからは、バブル・アプローチ(合同達成(joint fulfilment)に関する新提案の紹介が、サモア、ジンバブエ等からは、それぞれ小島嶼国連合(AOSIS)やアフリカグループを代表するステートメント等が行われた。
 その後、エストラーダ議長から、議長テキストをベースに交渉を進めること、4つのノングループにより交渉を進めること、コンセンサスが得られなければ議長テキストの修正は行わないこと、29日(水)までに交渉を終了して全体会合に報告すべきこと等の方針が示され、コンセンサスのみによるテキストの修正方式については異論が出されたものの、最終的には了承された。最後に、産業NGO、環境NGO及び自治体代表(ICLEI)のステートメントが行われ、会合を終了した。


2. 数量目標(QELROS)に関するノングループ
 議長テキストの3条から8条、10条、11条、附属書B及びC並びに添付書1(Attachment 1)につき交渉する。「政策に関するサブグループ」及び「技術に関するサブグループ」に分かれて、交渉を行っている。23日午前、24日午前及び午後、並びに25日午前及び午後に会合を開き、3条から6条、附属書B及び添付書1について交渉を行った。また、米国から、米の新規提案の説明が行われた。
目標値(3条1項)については、冒頭にジンバブエがアフリカ諸国を代表して日本提案及び米国提案の目標値の不十分性を指摘した以外には、目標値の具体的数値に関する議論は行われなかった。
EUバブルについては、individually or jointlyとの表現を残すべきとする欧州諸国と、国ごとに責任を明らかにする必要があるとして、逆の主張をする日、米、豪、カナダ等との間で主張が分かれた。途上国は、先進各国がそれぞれ対策の義務を負うべきと主張している。
差異化(3条2、3項)については、一律目標を主張する欧州、米国は、差異化を議論している時間的余裕がないとして、この2項目の削除を要求。これに対し、差異化を主張する国(スイス、日本、オーストラリア、ノルウェー、アイスランド、ロシア)は、差異化の基準に関する附属書Cについてコンタクトグループを作り意見をまとめるよう議長から求められた。このため、現在、コンタクトグループにおいて検討が進められている。
吸収源の扱いについては、土地利用変化および林業の分野における排出量、吸収量については、極めて不確実性が高いことが共通認識になりつつある。ニュージーランド、豪、アイスランドは、吸収源も含めたネット概念を主張。日本は、不確実性が高いとの理由から、法的拘束力のある目標に、土地利用変化および森林分野を含めることには反対。欧州は、吸収源を含めるべきか否か確信していないとして未だポジションを固めていない。米国は、従来ネットアプローチを主張していたが、現在その立場を再検討中。G77は、基本的にはネットアプローチに否定的。本問題につき、以上の国を中心にコンタクトグループを作り検討中。
対象ガスについては、附属書は不必要と主張する米国及び途上国と、対象となるガスに関する附属書が必要と主張するEU、日本とが対立している。なお、バスケットアプローチを主張するEU、米国、日本等と、ガスバイガスアプローチを主張する途上国との間で意見が分かれている。
ロシア、東欧諸国などのいわゆる市場経済への移行国の扱い(第3条4項)については、小グループで、1990年以外の基準年を選択することができるという案がとりまとめ
られ、報告された。
中間目標年(第3条5項)については、2005年に法的拘束力のある目標を設けるべきとする欧州と、努力目標とすべきとする豪、必要ないとする米国の主張に隔たりがあった。
バジェットアプローチ(第3条7、8項)については、米国、日本等は、バジェットアプローチを主張した。EUは、このアプローチに関心を示しつつも、完全には賛成していないが、議長は、概ねバジェットアプローチに対する賛成が得られつつあると総括した。
バンキング・ボローイング(第3条、13、14条)については、多くの先進国は、柔軟性を高め早期対策を促す方策としてバンキングを支持したのに対し、ボローイングには懸念を表明した。米国、日本、カナダは、ボローイングも義務を遵守する方法であると主張。途上国は、対策を先送りする恐れがある等の理由から、バジェットアプローチ及びそれに関連する議論(特にボローイング)は支持できないとして、削除を求めた。
排出権取引(第5条)については、G77は排出権取引そのものに反対し、条文の削除を要求。ただし、途上国の中には、パイロットフェーズとして先進国間で導入してはという意見を表明した国もある。EUは、排出権取引は国内措置に代替するものではないとし、また、数量目標の水準に応じてその必要性も変わるとしつつも、排出権取引に関する理解を増しつつあり、本条文を括弧に入れるよう主張。その他の先進国の多くは排出権取引を支持した。なお、排出権取引を認める場合には、実施に必要な手続の詳細はCOP3の後で詰めれば良いとの共通認識が醸成されつつある。
共同実施(第6条)については、G77は途上国との共同実施に反対し、条文の削除を要求。ただし、コスタリカなどは、共同実施活動の評価が得られてから議論すれば良いという柔軟な姿勢を示した。EUは、まず附属書[1]国で実施すべきと主張し、途上国との共同実施を直ちに決定することには慎重姿勢を示した。米国、日本等、その他の先進国の多くは、条件付きの国を含め、基本的に途上国との共同実施活動に賛成。


3. 政策措置に関するノングループ
 議長テキストの2条及び附属書Aにつき交渉する。22日午後及び24日午後に会合を開き、2条(1項パラa-eにより構成)について交渉を行ったほか、断続的に小グループによるテキスト改正交渉を行っている。EU及びG77から修正案が提出され、議長テキストとこれらの修正案との調整交渉が中心的課題となっている。
パラaについては、持続可能な開発を達成するためという分言を追加するとの追加提案を踏まえつつ、政策措置は数量目標の達成を直接目指すべきとするG77と、数量目標の達成に資するものであるとする米国等との調整が課題となっている。
パラbについては、気候変動の影響や先進国の政策措置が途上国の経済等に与える影響を避けるような形で政策措置を実施すべきとするG77と、個々の途上国の経済に対する影響の回避まで分析したうえで政策措置をとることは不可能とする先進国との調整が課題となっている。
パラcについては、議定書の第1回締約国会合で政策措置を精緻なものにすればよく、附属書Aは不要と主張するG77と、附属書Aを義務的な政策措置として位置づけるべきと主張するEUとの隔たりが大きい。また、パラaと同様、数量目標との関係についても調整課題となっている。
G77が提出した、パラdの国際的な政策措置の調整に関する規定とパラeの政策措置に係る指標の規定とを統合したテキスト案を軸に調整作業が進められている。


4. 全締約国の対策の実施の促進に関するノングループ
 12条(途上国も含めた全締約国の約束)及び13条(資金供与制度)につき交渉する。23日午前、25日午後に会合を開いたほか、頻繁に少数国による非公式会合を開き、12条及び13条の全ての条文について一通り交渉を行った。
12条は、条約第4条1項の全締約国の約束の実施の促進を定めようとする規定。条約の規定に沿って、柱書き、排出目録、国別計画、技術、吸収源、気候変動の影響への適応、政策決定に際しての気候変動への配慮、研究・観測、情報交換、教育・訓練・啓発、情報の送付の各項目ごとに整理されている。
ベルリンマンデートでは、「非附属書[1]国(途上国)にいかなる新たな約束をも導入しないが、持続可能な開発を実現するために、条約4条3項、4条5項及び4条7項の規定に配慮しつつ、条約4条1項に定める既存の約束を再確認し、引き続き、これらの約束の実施を推進する」と定められている。
先進国は、既存の条約4条1項の範囲内で、できるだけ全途上国の約束の内容を具体化して、気候変動対策を前進させたいとしている。これに対し、途上国は、「共通だが差異のある責任」の原則を強調して、いかなる新たな義務も排除するとともに、既存の義務の実施を推進させるには、資金援助、技術支援が必要として追加的な支援を求めている。
13条については、先進国は、今回の議定書では、いかなる新たな義務をも導入しない以上、資金供与メカニズムについても、条約に定めるシステムで十分カバーされていると主張している。これに対して、途上国は、既存の義務の実施の推進には、円滑な実施を妨げている要因を取り除く必要があり、そのための資金、技術面での支援が必要と主張し、さらにG77の提案した基金(Clean Development Fund)の創設を規定するように求めている。


5. 組織事項に関するノングループ
 前文、1条、9条及び14条から26条につき交渉する。23日午後、25日午前に会合を開き、これまでに前文、14条~19条の各規定について交渉した。修文、追加、削除の案が出されたがコンセンサスが得られず、残された他の条項と併せて第2週に再度議論される。
前文については、G77が、途上国に対しては何ら新しい約束を導入しないとのベルリンマンデートの文言を引用すべしと主張。EUがこの議定書独自の目的規定を置くことを提案したのに対し、途上国は目的を書くなら原則も書くべしと主張。
14条(締約国会議)については、議長テキストで、議定書独自の締約国会合(MOP)を置くA案と条約の締約国会議が議定書の最高決議機関を兼ねるB案とが示されているが、米国を除く大半の国がB案を支持。
15条(事務局)については、条約事務局が議定書の事務局を兼ねることには合意があるものの、費用の分担(3項)については異論があり、3項は削除するのが大勢。16条(補助機関)については、条約上のSBSTA及びSBIを議定書の下でも活用することについては合意がある。17条(多国間協議)については、他の条文(9条、14条)との関係で、意見を留保する国が多い。
18条(改正規定)については、スイスが改正手続きについて二重多数決方式を提案。
これを日米が支持。また、19条(附属書)については、議定書の附属書は、条約が想定しているような技術的な内容にとどまらない可能性があるため、それに応じてこの条文を再検討すべきとの意見が大勢。

別紙1,2、参考については、添付ファイル参照。

添付資料

連絡先
環境庁企画調整局地球環境部企画課
課  長 :柳下 正冶(内6731)

環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
調 整 官 :関 荘一郎(内6765)
 調 査 官 :三好 信俊(内6760)
 課長補佐:石飛 博之(内6737)