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2008年09月17日
  • 自然環境

平成20年度野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会の開催結果について

 環境省では9月16日に「平成20年度野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会」を開催し、アホウドリ保護増殖事業の実施結果の報告と今後の計画についての検討を行いました。
 今年2月に実施したアホウドリの最大の繁殖地・鳥島におけるモニタリング調査においては、当年生まれのヒナ274羽を確認したことを報告しました。これは、平成5年の事業開始以降、確認したヒナとして最高となり、鳥島の個体群は全体でおよそ2,140羽と推定されています。推定個体数としては、初めて2,000羽を超えました。
 また、山階鳥類研究所が環境省と米国魚類野生生物局との協力により実施している聟(むこ)島(じま)でのアホウドリ新繁殖地形成事業では、聟島で人工飼育された10羽のヒナのうち5羽に衛星発信器を装着して行動追跡を行っており、巣立ち約2か月後の7月末には、ベーリング海付近にまで到達していることが確認できています(但し、7月末時点で稼働していた発信器は3羽分のみ)。
 聟島事業の今後の計画についても検討され、平成21年の繁殖期(2月頃)には、今年の10羽から5羽多い15羽を伊豆諸島の鳥島から小笠原群島の聟島まで移送して、今年度と同様の方法により、巣立ちまで飼育することとなりました。

I 環境省野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会検討員 名簿

小城 春雄
北海道大学 名誉教授
尾崎 清明
(財)山階鳥類研究所標識研究室 室長
長谷川 博
東邦大学理学部 教授
樋口 広芳
東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 ※座長 (五十音順 敬称略)
                  

II 野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会での報告及び検討事項

1.鳥島におけるアホウドリ保護増殖事業について

[1] 平成19年度の実施結果報告
実施期間:
平成20年2月21日~3月6日(15日間)
  • 鳥島の確認ヒナ数は、燕崎で245羽、初寝崎で25羽、子持山南斜面で4羽、合計274羽となり、昨年の227羽より47羽増加した。(※このうち燕崎のヒナ10羽を2月19日に小笠原聟島へ移送した。)
  • 確認ヒナ数は調査開始以降最多となった(図1)。
  • 分科会検討員の長谷川東邦大学教授により、アホウドリの鳥島個体群はおよそ2,140羽と推定されている。

図1 鳥島における2-3月期の確認ヒナ数の推移
図1 鳥島における2-3月期の確認ヒナ数の推移

[2] 今年度の実施計画について
  • 昨年度も順調な繁殖が確認されたため、今年度も2月にモニタリングを行う。また初寝崎のヒナには、来年4月~5月に足環を装着する。
  • 鳥島では極力人為を排除して観察を続ける方針とするが、モニタリング結果より、繁殖環境の維持・改善のための事業再開の必要性が高まったと判断される場合には、分科会委員に諮り、対応の必要性等を検討する。

2.日米共同衛星追跡調査について

[1] 平成19年度の実施結果報告
実施期間:
平成20年2月中旬から3月末まで(7-8月まで信号は受信)
  • 鳥島の育(いく)雛(すう)期の成鳥に、粘着テープ又は接着剤で発信機を装着。日本2台、米国4台。
  • 装着後も問題なく育雛を続けた。
  • 主に鳥島と伊豆諸島北部海域、房総半島東岸海域、茨城・福島県の東方海域との間を行き来したことが確認され、親潮と黒潮の潮目付近の漁場となる海域を主な採餌海域として利用していることが示された(図2)。
  • 鳥島から東方への移動が2個体で見られたが、いずれも1回のみの移動で短時間で引き返しており、採餌場所として頻繁に利用している様子は見られなかった。

鳥島・成鳥(育雛期)の衛星追跡結果(平成20年2-3月:6個体)
図2 鳥島・成鳥(育雛期)の衛星追跡結果
(平成20年2-3月:6個体)

[2] 今年度~来年度の実施計画について
<平成20年度>
アホウドリ成鳥の生活サイクルのうち、これまでに明らかになっていない、抱卵期の行動を把握するため、11月から12月にかけて鳥島の抱卵している成鳥に発信機を装着する。
<平成21年度>
鳥島における巣立ちヒナの追跡調査を日米共同調査と位置づけ、平成20年5月に米国魚類野生生物局と山階鳥類研究所により実施された鳥島及び聟島の巣立ちヒナの追跡調査と同様の方法で、来年5月にヒナに発信機を装着する。

3.小笠原(聟島)での繁殖地形成事業について

[1] 今繁殖期(平成20年2月~現在)の実施結果報告
<移送>
  • 2月19日に鳥島から聟島までヒナ10羽をヘリコプターで移送。
  • 捕獲から放鳥までの時間は約6時間だった(ヘリによる移送時間は1.5時間)
  • ヒナの性比は雌6羽、雄4羽だった。
  • 移送中に衰弱したヒナはなく、放鳥時にも健康状態に異常のあるヒナはなかった。
<飼育>
  • 聟島の飼育ヒナの体重成長は鳥島の野生ヒナとほぼ一致した
  • 1羽も死ぬこと無く全てのヒナが5月19日-24日の間に巣立った。
  • 5月23日の調査では鳥島で47%、聟島で80%のヒナが巣立っており、飼育ヒナの巣立ちは鳥島のヒナよりも早い傾向が見られた。
<追跡>
  • 5月10日に聟島の飼育ヒナ5羽(雌3羽,雄2羽)、5月24日に鳥島の野生ヒナ5羽に衛星発信器を装着。それぞれのヒナ1羽ずつは巣立ち後間もなく発信が途絶えたが、その他8羽の発信は7月下旬まで続いた(図3, 9月9日現在、6羽の発信器が稼働中)。
  • 飼育ヒナ、野生ヒナの間で巣立ち後の行動に顕著な差は見られず、いずれのヒナも巣立ち後1週間ほど海上を漂った後、北へ向けて飛行を始めた。

図3	聟島及び鳥島のヒナの衛星追跡結果(9月9日現在)
図3 聟島及び鳥島のヒナの衛星追跡結果(9月9日現在)

[2] 次繁殖期(平成21年2月~)の事業実施計画について
  • 移送するヒナは35日齢とし(移送予定日は2月5日-10日)、ヒナ数は15羽(利用するヘリに1度に載せられる最大数)とする。
  • 飼育方法は基本的に今年と同様とする。
  • 今年と同様に聟島、鳥島のヒナ各5羽に衛星発信器を装着し、巣立ち後の行動を追跡する予定。

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