報道発表資料
小笠原群島聟島(むこじま)におけるアホウドリの新繁殖地形成事業として、今年の2月19日に伊豆諸島鳥島から聟島までヘリコプターで移送したアホウドリのヒナは、(財)山階鳥類研究所の研究員による給餌を受け、5月25日までに10羽全てが巣立ちました。
ヒナ10羽のうち5羽に衛星発信器を装着しており(発信器装着個体の巣立ちは5月19~23日)、6月30日現在、このうち4羽の位置が確認できています。
(※アホウドリのヒナの巣立ち後の行動を衛星で追跡するのは初めてのことです。)
現在、一番遠くまで渡っているものは、聟島から約3,900キロの地点(カムチャッカ半島基部の東方)まで到達しています。
また、比較のために鳥島の野生ヒナ5羽にも衛星発信器を装着していますが、巣立ち後の行動について、聟島に移送したヒナと鳥島の野生ヒナとの大きな違いは確認されていません。
※この事業は、山階鳥類研究所が実施の中心となり、環境省と米国魚類野生生物局とが共同で実施しています。
1.衛星追跡の方法について
巣立ち前のヒナの背中に、アルゴスGPSシステムの発信器(アルゴス発信装置とGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信装置が一体化したもの:重さ22g)を装着。GPS受信器が1日最大6回受信した位置情報を3日に1回アルゴス発信装置から発信し、衛星を経由してアルゴスの受信局が位置情報を受信している。
2.衛星追跡の結果(6月30日現在):図I
- 聟島の飼育ヒナと鳥島の野生ヒナそれぞれ5羽に衛星発信器を装着し、それぞれ4羽の追跡を継続している(聟島のヒナ1羽は5月24日以降、鳥島のヒナ1羽は6月1日以降、位置情報が受信できていない)。
- 最も遠くまで渡っているもので聟島から約3,900キロの地点(カムチャッカ半島基部の東方)、最も近いものでも鳥島から約1,100キロの地点(北海道の東方)まで到達している。
- 聟島の飼育ヒナと鳥島の野生ヒナの巣立ち後の行動に、大きな違いは見られていない。
- 巣立ったヒナの多くは1週間から10日ほどは海上を漂い、その後本格的な飛翔を始めている(成鳥は直ちに北上を開始することが確認されている)。
- 巣立ち後のヒナは昼夜とも飛翔していることが確認された。通常は時速20-30キロで飛翔し、早いときは40キロくらいと推定される。
- 成鳥は繁殖後北上し、短期間(1週間から10日間)でアリューシャン列島に到達するものが多い(図II)が、ヒナはそれに比べると回り道をする傾向が見られる。もっとも早い個体でも約1ヶ月かかってアリューシャン列島に到達した。
(参考)これまでの経過
平成19年
- 3月~6月
- 近縁種のクロアシアホウドリによる飼育試験を実施
- 9月
- 環境省野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会において、事業の実施内容について検討。
平成20年
- 2月19日
- 伊豆諸島鳥島において捕獲したヒナ10羽をヘリコプターに載せて、小笠原群島聟島まで移送。
- ↓
- (山階鳥類研究所の職員が聟島に滞在し、ヒナの人工飼育を実施。)
- 5月19日~25日
- ヒナの巣立ち
添付資料
- 連絡先
- 環境省自然環境局野生生物課
課長:星野 一昭 (6460)
課長補佐:西山 理行 (6475)
係長:中島 治美 (6469)
直通 (03) 5521 - 8283
関連情報
過去の報道発表資料
- 平成20年5月26日
- 聟島に移送したアホウドリのヒナ全羽の巣立ちについて(速報)
- 平成20年2月22日
- アホウドリ新繁殖地形成事業によるヒナ移送の結果について
- 平成20年2月12日
- アホウドリ新繁殖地形成事業によるヒナ移送日の決定について
- 平成19年9月12日
- 平成19年度野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会の開催結果について