環境ナノテクの世界動向

NanoGram Corporation 神部信幸

5.将来への展望

 環境ナノテクを考えるとき、とかく技術の視点から眺めるきらいがあるが、実際にはそれでは不十分である。技術開発の計画自体、本来社会・政治経済からの視点も含めて議論するのが有効である。米国MITなどではエネルギー・イニシアティブとしてすでに複数の学部にまたがる横断的な取り組みを数年前から始めており[13]、同様の傾向は特に欧米で強い。日本はアジアや世界をリードすることを期待されているので、早急に社会横断的に環境ナノテクの目標設定と戦略を明確にすることが重要である。

 米国は、2009年に入りいち早く環境・エネルギー分野におけるリーダーシップを発揮し始めた。そのアウトカムとして新しい見方が示されている。それは、当該技術の事業化や製品の普及により雇用と新産業の創出という経済的効果を謳う点である。シリコンバレーにおいて、クリーンテックの一環としてベンチャーが環境ナノテクを開発・事業化する様子は、国や州の政策を先取りしているかのごとくである。

 ナノテクのミッションは、元来エネルギーや地球資源の危機から地球を救い、持続成長可能な社会の形成への貢献にある。部品や装置のミニチュア化と集積化は極自然なマーケットからの要望である。環境とナノテク、そしてナノバイオと異なる技術間の融合により新たな産業の創成と経済的効果が生まれれば、うねりとなって国境を越える。同時に環境の改善と資源の維持が可能になる筈である。そうした人間が持続可能な社会を享受する時代を目指して全人類がアクションをとる時代が来た。

このページの先頭へ戻る