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小笠原国立公園の写真

公園の特長

亜熱帯の海洋島~進化と固有種の宝庫~
指定:昭和47年10月16日
面積(陸域のみ):6,629ha
東京都
小笠原国立公園は、日本列島から約1,000km南に位置する亜熱帯の島々で構成されています。これらの島々は大陸と陸続きになったことがない「海洋島」であり、独自の進化を遂げた動植物や生態系が広がっていることから、平成23年6月、世界自然遺産に登録されました。景観では、亜熱帯性の海洋島ならではの島しょ景観、枕状溶岩などの独特の海岸地形、国内では数少ない沈水カルスト地形などを望むことができます。また、海域ではザトウクジラやイルカに代表される海棲ほ乳類、アオウミガメ、サンゴ礁や熱帯魚などの生物が多彩な海中景観を構成しています。利用については、日本のエコツーリズムの始まりと言われているホエールウォッチングの自主ルールの制定など、小笠原エコツーリズム協議会を中心に先進的なエコツーリズムがなされています。

地形・景観

小笠原諸島は、海洋プレート同士がぶつかり合い、島が誕生し成長してきた過程を観察できる貴重な場所です。
小笠原諸島の形成図その1
小笠原諸島の形成
約4,800万年前、プレートのすぐ下で発生した火山活動により、父島・聟島列島ができました
小笠原諸島の形成図その2
約4,400万年前には、より深い場所で発生した火山活動により母島列島ができました。
小笠原諸島の形成図その3
プレートの沈み込みはさらに進行し、現在も活動している火山列島が生まれました。
ボニナイトを含む枕状溶岩の写真

ボニナイトを含む枕状溶岩

南島周辺の沈水カルストの写真

南島周辺の沈水カルスト

小笠原では過去の海底火山活動で発生したマグマが冷え固まってできた「枕状溶岩」や小笠原の洋名ボニンアイランズから命名された溶岩である「ボニナイト」をはじめ、ボニナイトに含まれる固い鉱物でできた「うぐいす砂」や、石灰岩が浸食や風化を受けてできたカルスト地形が海に沈んだ「沈水カルスト」など、世界的にも珍しい地形・地質を見ることができます。
乾性低木林(兄島)の写真

乾性低木林(兄島)

景観と生態系
父島や兄島では、「乾性低木林」と呼ばれる背の低い林がたくさん広がっています。乾性低木林は、父島や兄島の乾燥した気候に合わせて、葉の形を変えるなどの進化をした固有の植物たちが生育しています。
湿性高木林で見られる木性シダ(石門)の写真

湿性高木林で見られる木性シダ(石門)

一方、母島では「湿性高木林」と呼ばれる、湿度が高く雨の多い環境を好む背の高い森林が広がっています。
小笠原のような「海洋島」は、生きものが陸を通って移り住むことができないため、空や海を越えることのできた限られた生きものだけが島にたどり着きました。そして、島の環境に合ったものが生き残り、さらに適したものへと独自に進化してきました。
こうして独自の進化を遂げた結果、小さな島の中に世界でもここにしかいない固有の生きものが数多く生息・生育しています。在来種に占める固有種の割合は、植物(維管束植物)で36%、昆虫類で28%、陸産貝類では94%にもなります。

植物

小笠原は温和な亜熱帯に位置し、ムニンヒメツバキなど東南アジアの亜熱帯起源、ナガバキブシなど日本本土起源、ノヤシなどオセアニア起源など、多様な起源の植物が定着しています。さらに独自の種分化を遂げた結果、小さな海洋島でありながら種数が多く、固有種率が高いのが特徴です。

動物

動物については、小笠原にしか生息しておらず、かつ数が少なく保護を図っていく必要のあるアカガシラカラスバト、オガサワラオオコウモリなどを見ることができます。
アカガシラカラスバト(固有亜種)の写真

アカガシラカラスバト(固有亜種)

また、小笠原諸島の周辺には数多くのイルカやクジラなどが生息しており、日本最大のアオウミガメの産卵地でもあるなど、海域においても様々な生き物を見ることができます。