自然環境・生物多様性

第65次南極地域観測隊同行日記2

第2回:自然保護官(レンジャー)、暴風圏を往く

2023年12月22日(金)

みなさまこんにちは。お元気にしていますか?
私は今、暴風圏を進んでいます。

 

オーストラリアのフリーマントル港を離れてはや幾日、南極観測船しらせはどんどんと南下し、先日遂に南緯60度に到達し西へと舵をきりました。

南緯60度以南は南極条約における「南極地域」と定義されている区域であり、いよいよ南極観測も本格化していくことでしょう。

さて今回は南極近海の俗称のお話をしようと思います。
なお南極の緯度ごとの区分わけは第60次隊に同行した安生さんの日記に詳しく載っていますので、バックナンバーをご確認ください。
(参考:第60次南極地域観測隊同行日記2 ~南極地域について~ | 自然環境・生物多様性 | 環境省 (env.go.jp)

南極付近の海は荒れることで有名で、また南極に近づくごとにその激しさを増すことから、緯度10度きざみでそれぞれ「吠える40度」「狂う50度」「叫ぶ60度」と呼ばれています。今回の航海では幸いにも天候が落ち着いていたり、荒れた海を避けて運行していたと聞いており、揺れも少なく過ごすことができました。


それでも、吠える40度では飛行機の中と同じような揺れを感じましたし、狂う50度では心の中でベルト着用サインが点灯しました。
また一度だけ大きく揺れた時には、踏ん張りが効かず左舷端から右舷端まで滑り落ちました。
あとで聞いたところその時の傾斜が約11度で、船の揺れとしてはまだまだ序の口と知っておののくなどしておりました。
そして叫ぶ60度では今までの横揺れに加えて、ドンッ!ドンッ!と波がぶつかる音や縦揺れも出てきました。

しかしそのような中でも、「吠える叫ぶ」と称された時代のような沈没遭難の恐怖はありません。
それはもちろん当時より進んだ船舶であることや、南極付近の海や天候のデータ蓄積などによるものもあるのでしょう。
しかしそれだけではなく、南極観測船しらせ出港までの入念な準備と、船員のみなさまの活躍によるものも同じくらい大きいものだと感じます。

南極観測は様々な人に支えられて行われているのだと感じました。
 



               <ある晴れた日のお昼、波しぶきに映る虹> 

                         

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