第67次南極地域観測隊同行日記【第22回】

第22回:日本が管理する南極特別保護地区
2026年8月3日(月)

みなさん、こんにちは。
環境省の福濱です。
 
第21回は、南極の岩石についてご紹介しました。
ペンギンや氷だけでなく、岩石もまた南極の大切な魅力の一つです。
このような貴重な自然環境を未来に引き継ぐため、南極では様々な環境保護の取組が行われています。
今回は、その代表的な制度の一つである「南極特別保護地区」についてご紹介したいと思います。
 
南極では、どこでも自由に立ち入りができるわけではありません。
実は、希少な生物の生息地や重要な研究地点など、特別に保護されている場所があります。
こうした場所は「南極特別保護地区」と呼ばれ、立ち入るためには特別な許可が必要です。現在、南極にはおよそ80か所の南極特別保護地区が指定されています。
 
日本も、南極特別保護地区を一か所管理しています。
その場所が、昭和基地から約20km南に位置し、南極大陸のラングホブデにある「雪鳥沢(ゆきどりざわ)」です。雪鳥沢には、雪解け水によってできた川や湖があり、1987年に特別保護地区として指定されました。
 
私も、実際に雪鳥沢を訪れました。現地にはコケ類や地衣類が広がり、ユキドリという海鳥の繁殖地となっています。
私が訪れた際には、生きたユキドリの姿を見ることはできませんでしたが、オオトウゾクカモメに捕食された痕跡が至る所に残されていました。こうした光景からも、雪鳥沢に息づく生態系の一端を感じることができました。
一見すると静かな風景ですが、南極では非常に貴重な陸上生態系が残されている場所です。
 

<雪鳥沢での調査>

現地では、南極特別保護地区の環境が適切に保護されているかを調査しました。コケ類や地衣類の状況を観察し、外来種が侵入していないかについても確認しました。その結果、特別保護地区の主要な構成要素に大きな変化は見られず、現在も良好な状態が保たれていることが確認できました。


<コケが広がっている雪鳥沢>

また、環境保護のためには、調査だけでなく、維持管理も重要です。
雪鳥沢では、特別保護地区の境界を示すロープが設置されていますが、強い風や厳しい自然環境にさらされてきたため、一部が劣化し、繊維状にほつれていました。このままでは飛散してゴミになるおそれがあることから、ロープの張替作業も実施しました。
 

<ロープの張替作業>


<張り替えたロープ>

こうした地道な調査や維持管理は、目立つ仕事ではありません。
しかし、雪鳥沢の貴重な自然環境を将来に引き継ぐためには、欠かせない取組です。
私も実際に現地で作業を行い、南極の環境保護は国際的なルールだけでなく、多くの人々の継続的な努力によって支えられていることを改めて実感しました。