第67次南極地域観測隊同行日記【第17回】

第17回:極限環境でもたくましく生きている生き物 クマムシ
2026年2月13日(金)

みなさん、こんにちは。
環境省の福濱です。
第16回でヒルガタワムシのご紹介をしましたが、実は顕微鏡で、他にも確認できた生き物がいます。
すばしっこく動き回っていてとてもかわいらしい、0.3~0.8mmほどの大きさの南極のオニクマムシです。


<南極のオニクマムシ(おそらく南極固有のクマデオニクマムシ)>

このオニクマムシは、第16回でご紹介したヒルガタワムシを食べて生きています。
魚や水生昆虫が見当たらない南極の湖では、このような肉眼では見えづらい微小動物(びしょうどうぶつ)たちが、生態系のトップにたっているということを目の当たりにしました。私は普段の生活で、なかなかミクロの世界に注目することはなかったのですが、今回、新しい世界に触れることができ、本当に感動しました。

実はクマムシは、ワムシと同様、どんな環境でも生きていける「最強」の生き物なのです。
南極では、このオニクマムシのほか、ナンキョククマムシという種も確認されており、南極のクマムシたちは、湖の底のほか、湿地やコケに生息しています。


<ナンキョククマムシ>

ここで、クマムシの生態を少しだけご紹介したいと思います。
 
南極に生息するクマデオニクマムシは、オニクマムシの中ではめずらしくオスとメスが共存しており、有性生殖(ゆうせいせいしょく)をして子孫を残すと考えられています。一方で、ナンキョククマムシはメスのみで卵を産み増える、単為生殖(たんいせいしょく)をしています。増え方ひとつとっても種によって大きく変わるようです。
 
彼女たちは、1回で10個ほどの卵を産み、卵から孵化(ふか)した幼虫は、4回ほど脱皮を繰り返し、10~14日ほどで、成虫になります。成虫の足は8本あり、それぞれの足に複数本のツメを持ちます。
 
クマムシは、これまでに全世界で1,500種ほどが確認されていますが、研究者たちは、この小さな足のツメの本数や形で種の判定を行っているそうです。
こんなに小さく、巧(たく)みなツメを持つ姿に感動を覚えずにはいられませんし、種類によってそのツメの本数が違うと気づいた研究者を尊敬せずにいられません。
 
クマムシは日本でも生息しており、大都会である東京の道端のコケにも住んでいます。なんと、皇居のお堀についているコケにも生息しているのだそうです。
 
実は南極のクマデオニクマムシは、日本に生息するオニクマムシよりワシャワシャとした、たくさんの爪を持っていることが分かっています。そのため「熊手(クマデ)」と名前についているのだとか。また、クマデオニクマムシにはオスが存在することも明らかになっています。しかし、オスが実際にどのような役割を持っているのか、また、ワシャワシャと爪を持っている理由が何なのか、よく分かっていません。今回の研究結果で明らかになることが楽しみです。

第16回と今回の2回にわたってご紹介した「最強」生物ですが、ワムシとクマムシにセンチュウを追加し、それらが3大「最強」生物といわれています。
どこでも生きられる「最強」とだけあって、センチュウも南極で確認できました。ちなみにオニクマムシはセンチュウも食べるので、湿地の微小動物生態系のトップ・オブ・トップとも言えるかもしれませんね。


<南極で確認できたセンチュウ>
※写真提供:第67次南極地域観測隊 夏隊 杉浦健太隊員

南極という厳しい環境でもたくましく生きている「最強」生物たち。
日本国内の身近な場所にも生息していて、今回、南極で出会った「最強」生物たちの仲間と、また日本でも会えることがとても嬉しいです。普段、肉眼で見えるものに注目しがちな私ですが、帰国したら道端に生えているコケを見て楽しむだけでなく、コケに生息している小さな生き物にも思いを巡らせたいと思います。