環境省ホームページへ戻る 環境省政策評価
環境省政策評価

■大臣官房■

| 政策評価TOP | ご意見・ご要望 |

平成15年度の環境政策の企画立案に向けて

平成13年度評価書TOP
政策評価 (1)平成15年度環境政策の企画立案に向けて (2)事後評価


 

 II  重点分野ごとの施策の現状と課題、今後の方向性

分野5:化学物質等による環境リスクの管理

【現状】

  • 現代の社会においては、物の生産などに多種多様な化学物質が利用され、推計で約5万種類以上の化学物質が流通し、また、我が国において工業用途として利用されるものだけでも年間300物質程度の新たな化学物質が市場に投入されています。
  • 化学物質の中には、その製造、流通、使用、廃棄の各段階で適切な管理が行われない場合に環境汚染を引き起こし、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものがあります。
  • 今日では、かつてみられたような高濃度の汚染事例は少なくなりましたが、極めて多くの化学物質に複合的に長期間暴露されていることから、化学物質による長期的な影響に対する懸念が高まっています。
  • 大気環境については、総じて改善傾向にありますが、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質については、大都市地域を中心に環境基準の達成率は依然として低い状況にあります。
  • 水環境については、健康項目についての環境基準はほぼ達成されているものの、生活環境項目については、湖沼、内湾等閉鎖性水域において依然として低い状況にあります。また、地下水については、硝酸性窒素等による環境基準の超過率が高くなっています。なお、水生生物保全の観点からの化学物質汚染に係る水質目標は設定されていません。
  • 土壌汚染については、近年、工場跡地や研究機関跡地の再開発等に伴い、有害物質の不適正な取扱い、汚染物質の漏洩等による汚染が判明する事例が増加しています。

【これまでの取組と課題】

  • 環境中の化学物質については、分析法の開発、環境残留状況の調査を行うとともに、既存化学物質を効率的・体系的に調査し、環境に対する安全性を評価するため化学物質環境安全性総点検調査を行っています。
  • 「環境ホルモン戦略SPEED'98」に基づき、内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質の評価を行っています。
  • 人の健康及び生態系に対する影響の観点から化学物質の環境リスク評価を行っています。
  • 新たに製造、輸入される化学物質については、化学物質審査規制法により事前審査を行い、人の健康に対する有害性が認められた物質については、使用禁止や製造量の届出の義務付け等の規制を行っています。今後、化学物質の審査・規制への生態系保全の観点の導入を含めた、より効果的・効率的な体系への見直しが必要となっています。
  • PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)とMSDS制度(化学物質等安全データシート制度)の2つを大きな柱とする化学物質排出把握管理促進法が平成11年から順次施行されており、平成14年末を目途に第1回のPRTRデータの取りまとめと公表が行われる予定です。
  • 農薬については、作物残留及び水質汚濁に係る登録保留基準の設定を行っており、農薬による環境リスクの低減に大きな効果を上げています。今後、農薬による生態系への影響評価についての検討を強化していく必要があります。
  • 化学物質の環境リスクに関する情報の共有及び相互理解を促進する場として、平成13年12月に市民、産業及び行政の代表からなる「化学物質と円卓会議」を設置しました。
  • 環境リスクに対する国民の不安も大きくなっており、PRTR制度を活用した環境リスクの適切な管理とリスクコミュニケーションの促進に向けた取組を強化することが必要となっています。
  • POPs(残留性有機汚染物質)条約に関しては、国内実施計画の検討、埋設農薬の適正管理、POPsモニタリングの実施などを進めており、今後、アジア太平洋地域を中心とした国際的な対応についても期待されています。
  • 大気、水、土壌などの環境汚染に対しては、従来から、環境基準の設定や排出規制等の対策を講ずるとともに、汚染の状況の監視を行ってきました。
  • 自動車排出ガス対策としては、自動車NOx・PM法を制定し、環境基準の達成が困難な大都市地域における対策を強化したほか、自動車単体の排出ガス規制を平成17年より大幅に強化することとしています。また、平成13年7月に環境省、経済産業省及び国土交通省において策定した「低公害車開発普及アクションプラン」に基づき、低公害車の率先導入、普及支援等の取組を進めています。
  • 今後、自動車排出ガス対策を一層推進するとともに、窒素酸化物、炭化水素等のガス状物質が大気中で変化し生成する二次粒子対策についても発生機構の解明や原因物質の排出削減について検討するなど、浮遊粒子状物質の排出削減のための総合的な対策を実施していく必要があります。
  • 湖沼、内湾等の閉鎖性水域については、窒素及びりんの排水規制に加え、総量規制の導入や湖沼法による総合的な対策を講じていますが、水質汚濁の大きな要因と考えられている生活系排水対策を一層強力に進めていくとともに、非特定汚染源について、さらに汚濁負荷量の把握や対策手法の確立等を進めていく必要があります。
  • 健全な水循環や流域における水収支の視点から、河川流域全体を視野に入れた水環境の保全対策が必要となっています。
  • 水生生物への影響にも留意した環境基準等の水質目標について検討を進めていく必要があります。
  • 農用地の土壌汚染対策については、農用地土壌汚染防止法に基づく対策を計画的に推進しておりますが、近年、判明事例が急増している市街地等の土壌汚染対策については、平成14年5月に土壌汚染対策法が制定されたところであり、法の円滑な施行に向けた体制整備が必要となっています。

【15年度の方向性】
  

様々な物質が大気、水質、土壌などの媒体を経由して人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれ(環境リスク)の低減・管理を一層推進するため、生態系保全も視野に入れた化学物質の審査・規制の枠組みの導入を図るとともに、PRTR制度により法に基づき得られたデータの活用を図りつつ、環境リスクの的確な把握・評価を行い、リスク削減対策に反映させていきます。また、国民の環境リスクへの不安に対し的確に対処するため、リスクコミュニケーションの推進に努めます。
   さらに、大気中の浮遊粒子状物質、湖沼や内湾の水質汚濁など環境基準の達成が芳しくない項目については、最新の知見や技術も活用しながら、原因の究明と対策の推進に一層努めます。

 

分野1:地球温暖化対策
分野2:循環型社会の形成に向けた廃棄物・リサイクル対策
分野3:環境ビジネス・環境研究技術の振興
分野4:自然生態系の保全・再生
分野5:化学物質等による環境リスクの管理
分野6:環境教育・環境保全活動の活性化
分野7:ヨハネスブルグサミットを踏まえた国際協力の展開

政策評価  (2) II  重点分野ごとの施策の現状と課題、今後の方向性TOP



Top


環境省大臣官房政策評価広報課