II 重点分野ごとの施策の現状と課題、今後の方向性
分野4:自然生態系の保全・再生
【現状】
- 我が国の自然環境を概観すると、自然林、二次林は減少し、植林地、市街地、造成地等は増加傾向にあります。湖岸、海岸の状況では、自然湖岸、海岸が減少し人工湖岸、海岸が増加しています。また、藻場や干潟も減少しています。
- 我が国は、亜熱帯から亜寒帯にわたる気候帯や起伏に富み標高差のある国土であり、脊椎動物約1,400種、無脊椎動物約35,000種、維管束植物約7,000種など多くの種の存在が確認されています。
- 一方、戦後の高度成長期を中心に開発による自然環境の改変が進行し、生物の生息・育成の場を減少させ、多くの種の存続が脅かされるに至っています。
- 絶滅のおそれのある野生生物を取りまとめた通称「レッドデータブック」によると、我が国に生息するほ乳類、両生類、汽水・淡水魚類の2割強、は虫類、維管束植物の2割弱、鳥類の1割強において種の存続が脅かされています。
- 自然公園は、国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園を併せると536万haとなり国土面積の約14%を占めています。また、一年間に約9億4千万人の人が利用しています。
【これまでの取組と課題】
- 我が国の自然環境の現況及び改変状況を把握するため、おおむね5年ごとに自然環境保全基礎調査(いわゆる「緑の国勢調査」)を行っています。
- しかし、生物の量的情報や生態系の機能・構造に係る詳細な情報収集は十分果たされておらず、また近年人為的要因により急速に変化している森林、湿原、干潟などの生態系について、長期的・継続的なきめ細かな自然環境情報収集・モニタリングの実施が必要となっています。
- 平成14年3月に、近年の自然環境の現状や社会経済状況の変化を踏まえて生物多様性国家戦略の見直しを行い、「自然と共生する社会」を政府全体として実現することを目的とした自然の保全と再生のためのトータルプランとして位置づけました。
- 国立公園等の適正な保全管理を進めるとともに、自然や社会環境を熟知した地元住民等を雇用し、管理強化を図るグリーンワーカー事業による登山道整備や不法投棄物の処理等の整備促進等を行いました。今後も地域住民等の参画により国立公園管理の充実を図っていく必要があります。
- エコツーリズム(環境保全型自然体験活動)については、その適正な推進のための枠組みが沖縄振興特別措置法に盛り込まれたところであり、今後は、より環境教育・環境学習の視点を重視しつつ地域における自然環境を活かしたエコツーリズムの普及が必要となっています。
- 里地里山等の二次的自然環境の維持形成に関して、生物多様性保全上の問題点を把握するとともに、生物多様性国家戦略の中で里地里山の保全と持続可能な利用に関する取扱方針を定めました。
- 湿地については、生物の生息地として規模の大きな湿地や希少種が生息する湿地などの「重要湿地500」を選定し、生物多様性国家戦略の中で湿地の保全の強化と再生に関する取扱方針を定めました。
- 今後、里地里山や湿地の効果的な保全方策の検討や対策の実施が必要となっています。
- 自然と共生する社会を実現するためには、優れた自然を保全することに加え、失われた自然環境の再生を積極的に推進することが必要であり、平成13年度から北海道の釧路湿原において各省と連携しつつ地元関係者の参画も得て、自然再生事業に着手したところです。
- 今後、計画段階から専門家やNGO等の参画を得るなど地域の多様な主体の連携による自然再生事業を積極的に推進していくとともに、自然再生事業に参加するNPO等の支援策や実施体制の一層の充実を図っていく必要があります。
- 移入種(外来種)問題については、全体像の把握と今後の取組の方向性及び基本的な対応方針を検討するとともに、固有の生態系に影響を及ぼしている移入種の排除事業を行いましたが、今後、輸入や利用に先立つ影響の評価について検討を行っていく必要があります。
- 生物多様性条約「バイオセイフティーに関するカルタヘナ議定書」の締結に向けて、遺伝子組換え生物の生物多様性への影響に関する評価等に係る国内措置のあり方について検討を行っており、国内措置を早急に確立しカルタヘナ議定書を締結する必要があります。
【15年度の方向性】
本年3月に改定された新・生物多様性国家戦略を踏まえ、自然環境データの整備を図るとともに、NPOや市民の参加を得ながら、失われた自然環境を再生する事業やCO2吸収源、生物多様性保全上重要な役割を担う森林の保全、生態系の保全、里地里山の保全、移入種対策などを進め、自然環境を活かした地域づくりを進めます。 |
分野1:地球温暖化対策
分野2:循環型社会の形成に向けた廃棄物・リサイクル対策
分野3:環境ビジネス・環境研究技術の振興
分野4:自然生態系の保全・再生
分野5:化学物質等による環境リスクの管理
分野6:環境教育・環境保全活動の活性化
分野7:ヨハネスブルグサミットを踏まえた国際協力の展開
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