(1)平成15年度の環境政策の企画立案に向けて
~平成13年度事後評価のまとめと今後の方向性~
Ⅰ 基本的な考え方
( II 重点分野ごとの施策の現状と課題、今後の方向性 )
- 環境省では、この度、環境省政策評価基本計画及び平成14年度環境省政策評価実施計画に基づき平成13年度に行った施策について事後評価を行い、それをもとに環境政策の各分野を網羅する事後評価書を別紙のとおり取りまとめました。
- 環境省における事後評価の目的は、省の政策全体の進捗状況を把握・評価し、新たな政策の企画立案及び既存政策の見直しに活用することです。このような観点から、環境省では網羅的な事後評価書とは別に、事後評価をもとに平成15年度の環境政策の企画立案及び施策の見直しをどのような方向で行うべきかをわかりやすい形で示すこととしました。
- このため、環境政策の各分野のうち、国民のニーズや対応の緊急性、政策全般を効果的に実施するための必要性等の観点から、平成15年度に重点的に取り組むべき7つの分野を取り上げ、この7分野について、特に重点的に評価を行い、今後の取組の方向を明らかにすることとしました。
- 第一に挙げる分野は「地球温暖化対策」です。
京都議定書の締結の節目となる本年から、同議定書の6%削減約束の達成に向けて、脱温暖化社会の構築への歩みを確かなものとし、温室効果ガス排出量を減少基調へと転換させるためには、まず本年3月に決定した新しい地球温暖化対策推進大綱を政府が一体となって着実に推進しなければなりません。また、増加傾向にある民生部門や運輸部分に係る地域・日常生活対策の充実、京都メカニズムの活用のための基盤整備、米国や中国・インド等の途上国を含むすべての国が参加する共通のルールの構築、途上国の参加促進のための科学的能力向上の支援が必要です。このような状況の下、経済財政諮問会議で取りまとめられ、6月25日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(以下「基本方針2002」と略)では、「平成15年度財政運営のあり方」における「重点的に推進すべき分野」として「地球環境問題への対応」が挙げられており、その中の「重点化・効率化の考え方」において「地球温暖化についての研究開発、我が国の温室効果ガスの削減・吸収…に直接つながる事業」が掲げられたところです。
- 第二の分野は「循環型社会に向けた廃棄物・リサイクル対策」です。
環境省では今年度中に循環型社会形成推進基本計画を作成することとしており、15年度はこの基本計画の初年度として、リデュース・リユース・リサイクルという3R施策をより一層推進していく必要があります。なお、「基本方針2002」においても、「重点的に推進すべき分野」として「循環型社会の構築」が挙げられるとともに、その中の「重点化・効率化の考え方」において「廃棄物処理、リサイクル等いわゆる3Rの着実な推進、バイオマスの利活用」が掲げられています。
- 第三の分野は「環境ビジネス・環境研究技術の振興」です。
社会経済システムそのものを持続可能なものへと転換していくためには、環境ビジネス、及びその基盤となる環境技術や環境研究の振興を図り、技術革新、雇用創出、将来の損害回避等を通じて我が国経済の長期的な対外競争力を強めることが必要です。「基本方針2002」でも、経済活性化戦略における30のアクションプランの一つとして「環境産業の活性化」が位置づけられており、また「重点的に推進すべき分野」の一つである科学技術においても、「環境」は更なる集中と戦略的重点化を図るべき重点4分野の一つとされています。
- なお、以上の3分野に関しては、
○我が国は、二酸化炭素など温室効果ガスの排出抑制を図る「脱温暖化社会」と、廃棄物等のリデュース、リユース、リサイクル(3R)に向けた「循環型社会」の双方を兼ね備えた社会の構築する必要があること、
○このような社会の構築を迅速に、かつ我が国の目下の課題である経済の活性化を図りながら進めていくには、環境ビジネスや環境技術研究等の振興を図り環境分野への投資を集中・促進することにより、環境制約を新たな成長要因に転換させ、環境と経済の統合を一層進めることが必要であること、
という関連性があることから、平成15年度の環境省の重点施策を打ち出す際にはこの点を十分考慮してストーリーを示していきます。
- 第四の分野は「自然生態系の保全・再生」です。
本年3月、「自然と共生する社会」を実現するためのトータルプランとして、新・生物多様性国家戦略が制定されました。この中では、生物多様性の問題点を「3つの危機」として整理するとともに、それに対応する施策を「自然再生」や「里地里山の保全」、「移入種対策」や「NPO・市民の参加」など具体的に提示しています。本戦略に基づき生態系の保全・再生を進め、良好な地域環境の創造を図ることは、地域の個性ある環境を生かした活力ある社会の構築にもつながります。なお、「基本方針2002」でも、「地球環境問題への対応」に関する「重点化・効率化の考え方」の中に「多様で健全な森林の育成など自然生態系の保全・再生に直接つながる事業」が掲げられたところです。
- 第五の分野は「化学物質等による環境リスクの管理」です。
化学物質に関しては、化学物質排出把握管理促進法に基づくPRTR制度による届出が本年から開始され、事業者からの化学物質の環境中への排出量等が明らかになります。このような状況を踏まえながら、化学物質等による環境リスクを的確に評価するとともに、大気や水質等の環境媒体におけるリスク管理に適切に反映させていくことが重要となっています。また、環境リスクについて、市民、産業、行政の間で情報を共有しつつ、相互理解を図るというリスクコミュニケーションの推進が必要です。さらに、生態系に影響を及ぼすおそれのある化学物質による環境汚染の防止を図るため、生態系保全も視野に入れた化学物質の審査・規制の枠組みを導入する必要があります。
- 第六の分野は「環境教育・環境保全活動の活性化」です。
今日の環境政策上の問題を解決するためには、国民や事業者、行政等の様々な主体が自らの問題として環境問題を捉え、自主的、積極的にその解決に取り組んでライフスタイルや社会経済活動の在り方を環境に配慮したものへ変えていく必要があります。そのためには、あらゆる年齢層を対象として、すべての環境政策に関連する重要な課題である、環境教育・環境学習や自主的な環境保全活動の活性化を様々な場面で図っていくことが重要です。現在、中央環境審議会ではこのような観点から「環境保全活動の活性化方策のあり方について」審議を進めています。また、本年5月27日から6月7日にインドネシア・バリ島で行われたヨハネスブルグサミット準備会合では、「持続可能な開発のための教育の10年」について、2004年での国連総会での採択を目指すことについて「ヨハネスブルグサミット実施計画」に盛り込まれることが合意されました。これらの動きも踏まえながら、環境教育・環境保全活動の活性化についての従来の施策を評価し、今後の施策の進め方について考えていく必要があります。
- 第七の分野は「ヨハネスブルグサミットを踏まえた国際協力の展開」です。
本年8月26日から9月4日に開催されるヨハネスブルグサミットでは、10年前のリオ地球サミットで採択されたアジェンダ21の実施状況や地球サミット後に生じた課題等を検証し、今後の取組の強化を図ることが目的とされています。地球サミットでの課題である「持続可能な開発」への動きが途上国においては未だ十分でない点が見られることから、ヨハネスブルグサミット以降この取組を強化していくため、特に我が国にとっては地理的に近いアジア・太平洋地域の国々を中心にどのような国際的貢献を行うべきか、ということが大きな課題です。
- 今日の環境問題の多くは、国民の日常生活や通常の事業活動に起因するものです。このまま大量生産・大量消費・大量廃棄型の生産と消費のパターンを続けていけば、早晩、更に厳しい環境の制約に直面し、私たちの生存と活動の基盤である環境を破壊し、社会経済の行き詰まりをもたらすことになるでしょう。今こそ、社会全体にわたる変革を通じて社会そのものを持続可能なものに変えていかなければなりません。
- このため、環境省としては、国民、民間団体、事業者、地方公共団体、国などの社会を構成するあらゆる主体が、自らの行動に十分な環境配慮を織り込んでいくことが必要であるとの認識の下、そのための社会基盤づくり、パートナーシップ構築の重要性を念頭に置いて、上記の7分野ごとに施策の現状と課題を整理・評価した上で、各分野における15年度の施策の方向性を明確にし、今後の環境政策の企画立案作業を進めていきます。
平成13年度政策評価 (1) II 重点分野ごとの施策の現状と課題、今後の方向性へ
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