環境省
VOLUME.66
2018年8・9月号

CASE STUDY 2 徳島県立農林水産総合技術支援センター 環境の変化が地元の新しい特産物を生んだ

新品種の導入で、白未熟粒を防ぐ

気温上昇は稲作にも大きな影響を与えています。徳島県では、稲作農家に対して
高温に強い品種の作付けを奨め、気温の上昇に対抗しています。

徳島県立農林水産総合技術支援センターでは、米をはじめさまざまな農林水産業の試験研究を行い、環境の変化に適した栽培技術の開発・普及を進めている

徳島県立農林水産総合技術支援センターでは、米をはじめさまざまな農林水産業の試験研究を行い、環境の変化に適した栽培技術の開発・普及を進めている

 徳島県では近年の気温上昇の影響で、県内の水稲作付け面積の約3割を占めていた『キヌヒカリ』に白未熟粒などが多く発生。良質な一等米の比率が低くなっていたため、高温による品質の劣化が少ない『あきさかり』を代替品種として、約2年前からその作付けを地元農家に奨めている。
「一般的には、出穂して20日間の平均気温が27℃を超えると白未熟粒が多発すると言われていますが、徳島県でも2003年ごろから白未熟粒が顕著に現れ始めました。近年は『キヌヒカリ』の一等米比率が30%前後にまで落ち込んだため、新しい品種の検討を進めた結果、『あきさかり』には高温耐性があって、気温が高い条件下でも劣化が少ないことや、収量も多いことなどが認められたため、県下での稲作に適している品種として、2016年に奨励品種として採用しました」と徳島県立農林水産総合技術支援センターの広田年信上席研究員は話す。

 これまで『キヌヒカリ』の売れ行きが良かったこともあり、周囲から『あきさかり』への品種の変更を心配する声もあったと言うが、作付けした農家からは「収穫量が多く、品質も良い」「栽培しやすい」などの良好な感想があがった。

 奨励品種となった翌年の2017年産『あきさかり』の作付け面積は約474ha。県全体の作付け面積の4.1%程度だったが、2年目となる今年は、その倍近い作付け面積が予想されており、徐々に『あきさかり』にシフトする農家が増えてきている。「今後は、高温耐性のある品質の良い『あきさかり』をさらにおいしくするための栽培試験、そして農家への技術支援を通して栽培面積を拡大していくとともに、『あきさかり』の知名度の向上をはかり、県内はもとより県外でも売れるように支援していきたいと思います」。

同センターで作物を専門に研究を行っている広田上席研究員

穀粒判別機で玄米を一粒ずつ分析し、品質低下の原因となる白未熟粒の割合を測定

徳島県産『あきさかり』。精米パッケージは徳島県マスコット「すだちくん」が目印

1_同センターで作物を専門に研究を行っている広田上席研究員 2_穀粒判別機で玄米を一粒ずつ分析し、品質低下の原因となる白未熟粒の割合を測定 3_徳島県産『あきさかり』。精米パッケージは徳島県マスコット「すだちくん」が目印

INFORMATION徳島県立農林水産総合技術支援センターhttps://www.pref.tokushima.lg.jp/tafftsc/

写真/大久保惠造

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