環境省
VOLUME.65
2018年7月号

いま、サンゴ礁があぶない!

今、世界中でサンゴ礁が危機に瀕しています。その大きな原因が、地球温暖化による
海水温の上昇です。海水温が2℃上昇すると、サンゴ礁は失われるといわれています。
サンゴ礁を未来に残すために、私たちにはどんなことができるのでしょうか。

地球温暖化がサンゴを壊す

 サンゴ礁の危機は、世界中で起きている。2008年時点で、世界のサンゴ礁の19%が破壊され、さらに15%は危機的状況にあり、10~20年後には失われてしまう恐れが高いことが報告されている。サンゴは、体の中にいる「褐虫藻」という植物プランクトンが光合成で作り出す栄養を使って生きている。海水温が高くなりすぎると褐虫藻が消えてしまい、栄養源を失ってサンゴも弱っていく。この時、色が薄くなり、骨格が白く透けて見えることを「白化現象」といい、この状態が続くとサンゴは死んでしまう。温暖化が進むと白化が頻繁に起こることが危惧され、日本でも2016年夏、奄美群島から八重山諸島にかけての広い海域で、過去最大規模の白化現象が発生した。2015年の「パリ協定」に基づき、世界中で温暖化防止の取り組みが進んでいるが、サンゴやサンゴ礁を保護するためには一刻も早く温暖化を食い止め、海水温の上昇を抑えることが必要とされている。

白化したサンゴ 写真/中村隆志

パリ協定とは

世界の平均気温の上昇を、産業革命前に比べて2℃以内に抑えることを目指す国際的な枠組み。協定に参加するCO2排出国に対し、排出削減に向けた努力を求めている。

あなたもサンゴのためにできること COOL CHOICE

サンゴ礁を守るためには、海水温の上昇を抑える必要がある、私たちが日々の暮らしでCO2排出を抑えることが何より大切だ。環境に優しい製品やサービスを選択する「COOLCHOICE」を日々の生活に取り入れてみよう。

室温は夏は28℃、冬は20℃を目安に。過度な冷暖房は控えよう

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白熱電球を、消費電力が少なく長く使えるLED照明に切り換えて

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走行時のCO2排出量が少ないエコカーは、低燃費で税の優遇も

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再配達で排出されるCO2は約42万t!荷物は1回で受け取ろう

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詳細はこちら 
http://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/

サンゴを減らすそのほかの原因

地球温暖化のほかにも、人間が引き起こす負の要因からサンゴが減少しています。

赤土で海が汚れる

雨が降ると、畑や工事現場のむき出しの地面から、川や海に土が流れ込むことがある。沖縄では、流入する土が赤いことから「赤土汚染」とも呼ばれている。赤土で海水が濁ると、日光が遮られ、褐虫藻の光合成が妨げられる。また、サンゴの上に土が溜まるとサンゴが窒息してしまう。

シートで覆って流出防止

沖縄県では赤土等流出防止条例を制定している。濁った水が流れ出さないよう、一定規模以上の工事では、土の上をシートや砂利で囲う、沈殿池で土を除いてから水を川に流すなどの対策が義務づけられている。

不適切な観光

美しいサンゴ礁を楽しむためのダイビングやシュノーケリングでも、ボートから下ろしたいかりや、慣れないダイバーのフィンがサンゴにぶつかり、折ったり傷付けたりしてしまうことがある。また、サンゴへの理解が不十分な観光客が、サンゴを岩や石と同じように踏み付けてしまうケースもある。

サンゴに気をつけて楽しんで

沖縄県の一部地域では、ダイビング業者などがサンゴに配慮した観光のルールを設けているが、ルール作りがまだできていない地域も多い。サンゴを傷つけないために、一人ひとりのサンゴへの優しさが求められている。

天敵に食べられる

サンゴの天敵はオニヒトデ。オニヒトデは、直径50cmにもなる大型のヒトデで、表面のトゲに毒を持つ。最近の研究では、生活排水や農業など人間の活動によって海に流れ込む有機物が増えると、それを餌とするオニヒトデの幼生も増え、大量発生につながりやすいことが指摘されている。

モニタリング

天敵からサンゴを守るためには、継続的モニタリングが欠かせない。観測による状況把握や、同時に海に流れ込む有機物を減らし、オニヒトデをはじめとする天敵たちの人為的な大量発生を引き起こさないようにすることが大切だ。

イラスト/ナカオテッペイ

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