環境省
VOLUME.64
2018年4月・5月号

生物多様性の現状をおさらいしてみよう 日本のいきものたちのいま

生物多様性の現状をおさらいしてみよう 日本のいきものたちのいま

生物多様性って一体何だろう? それは、肉眼では見えない小さな細菌から大きなゾウやクジラまで、
さまざまな個性を持ついきもの同士がつながり、支え合い、バランスを保って生息・生育するということ。
多くのいきものたちの複雑な関わり合いが、酸素や水、食料をつくり出し、
私たち人間もその恵みに支えられて生命をつないできました。
しかし今、人間が環境に及ぼす影響によって、地球上の「生物多様性」が脅かされているのです。

POINT.1 絶滅するいきものの数が増えている!

(!)地球上の種の絶滅速度が1,000倍に

 地球上には現在、確認されているだけで約175万種、未発見のものを含めると3,000万種を超えるいきものがいるといわれている。地球に生命が誕生した約40億年前から、数え切れない数のいきものが生まれ、その一方で、恐竜のように絶滅してしまった種も多くある。

 国連が行ったミレニアム生態系評価によると、化石記録から計算した過去の絶滅スピードは、100年間で1万種あたり0.1~1種。しかし、ここ100年では1万種あたり約100種ものいきものが絶滅し、記録されていないいきものを含めると、過去の平均に比べて絶滅の速度が1,000倍以上に上昇しているとされている。20世紀以降の地球は、過去のどの時代よりも急速にいきものの絶滅が進んでいるのだ。

(!)日本にいる3,690種が「絶滅危惧種」入り

 世界的に見て、日本には今も豊かな自然が残されている。国内のいきものは推定で30万種を超え、そのうち、ほ乳類の4割、爬虫類の6割、両生類の8割が日本にしかいない固有種なのだ。南北に長い国土、起伏に富んだ複雑な地形、数千の島々と長い海岸線など、独特の自然環境が多様ないきものの生命を育んできた。

 しかし、やはり日本でも多くのいきものが絶滅の危機に瀕している。環境省の「レッドリスト」に掲載された絶滅危惧種は、2006~2007年公表の第3次レッドリストで3,155種、2012年度公表の第4次レッドリストでは3,597種、さらに2017年3月公表のレッドリスト2017及び海洋生物レッドリストでは合計3,690種に増加した。第4次レッドリストで評価対象を広げたことや新種発見等の最新知見を反映したことも増加の一因だが、日本の野生生物が未だに厳しい状況にあることは確かだ。

POINT.2 追いやられる希少ないきものたち

 いきものが絶滅の危険にさらされている最も大きな原因は、人間が環境に及ぼす影響だ。中でも森林伐採、道路工事などの開発による影響は大きく、環境省が2012年に発表した調査結果によると、日本国内の絶滅危惧種の半数以上は開発が原因で数を減らしているという。そのほかにも、地球温暖化などの環境の変化、人間が持ち込んだ外来種に捕食されるなど、直接的なもの以外にもさまざまな原因が挙げられている。ここではこうした多様な原因に焦点を当て、詳しく見ていこう。

CASE1 人間による活動/開発によって生息地を奪われるニホンカワウソ

森林伐採や埋め立てなどの開発行為が、多くのいきものの生息環境を破壊している。また、工場や家庭からの排水による水質の変化や、食用や観賞用などを目的とした過度な捕獲・採取も生態に影響を及ぼす主な要因の一つ。

CASE2 自然への働きかけが減った/里地が荒廃し、しおれてしまったキキョウ

かつて里地里山は、人が生活に利用するために手を加えていた。その後、放置されることで環境が荒廃。密生した木の枝葉で光が遮られて、明るい場所で生育する植物が減ってしまうなど、いきものの生息・生育地が失われている。

CASE3 外来種/マングースに襲われるヤンバルクイナ

外来種とは、本来の生息・生育地から人間の手でほかの地域へ持ち込まれたいきもののこと。外来種が元々その地域にいたいきものを捕食したり、すみかや餌を奪ったりすることで、在来種や生態系に大きな影響を及ぼしている。

CASE4 地球環境の変化/温暖化ですみかが高地化するライチョウ

地球の環境の変化が、さまざまな動植物の絶滅リスクを上昇させる可能性がある。地球温暖化によっても、海水温の上昇や、北極の氷が溶け出すなどの変化を招き、いきものの生息・生育環境に影響を与えると言われている。

イラスト/ナカオテッペイ

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