環境省
VOLUME.64
2018年4月・5月号

エコジンインタビュー/〝自然学校〟が、いきものや命の大切さを教えてくれる。/つるの剛士

つるの剛士

自宅のすぐ近くに海や山があるという環境で、家族7人、にぎやかに暮らしている、つるの剛士さん。

子どもの頃から身近ないきものに興味を持ち、とくにセミに対する偏愛と知識量は、芸能界一と言われるほど。

そんなつるのさんが、いきものから学んだこと、そしていきものを通して子どもたちに伝えたいこととは?

 少年の心を持ったまま、大人になったような人。セミを筆頭に、大好きな昆虫の話をしているときのつるのさんは、思わずそう表現したくなるほど、無邪気で楽しそう。
「セミって、体がすっごく小さいのに、どうしてあんなに大きな声で鳴けるんだと思います? あれは筋肉の振動なんです。セミの体の中は空洞になっているんですけど、それがスピーカー代わりになって、筋肉が震える音を大きく響かせている。子どもの頃は、その仕組みがわからず、ずっと不思議に思っていて。そういう“疑問”が、僕を夢中にさせていたんだと思います」

 セミ以外にも、さまざまないきものに興味があって、幼い頃から、ザリガニやゲジ、トカゲやダンゴムシなどを採ってきては、家で育てる日々。高校生の頃には猫を拾ってきて、それから現在まで絶えず猫とは一緒。お子さんの希望で、5年ほど前からは、サモエドという犬種の大型犬も飼っている。
「昆虫はプラモデルのような感覚で、飛ぶ仕組みなんかを観察していると楽しいし、犬や猫は見ていて単純にかわいい。いきものと一緒に暮らすことは、僕にとって、子どものころからごく普通のことでした。ただ、いきものを飼っていて気づいたのは、楽しかったり、かわいかったりするだけではなく、必ず“生”と“死”があるということ。その2つの繰り返し。死んじゃうたびに泣いて、お墓を作って……。でも、『かわいそうだから、もう次は飼うのを止めよう』とは思わなかったですね。また新しく迎え入れて、そのたびに命の大切さを、いきものの存在から学びました。人間と比べると短い一生かもしれないけれど、連れて帰ってきたからには大切に思い出を作っていこう。自分の子どもたちにも、そんなふうに話しています」

あんなに大きな声で鳴くのはなぜ?そんな疑問からセミに夢中に。

 つるのさんは、男の子2人、女の子3人の子を持つお父さん。海や山が近くにある環境ということもあって、子どもたちは日ごろから自然遊びに親しんでいるそう。
「娘たちは、花摘みよりも虫採りのほうが好き。中学2年生の長女は、最近サーフィンに興味があるというので、一緒に海に行くようにもなりました。中学3年生の長男は、地元の冒険団に入って、雪がかなり残っている時期の富士山に登ったり、アイスクライミングをしたり。僕より激しいことをやっていますよ(笑)。ただ、本音を言うと、親としては勇気がいるんです。そういう自然の中に出すのって、危ないんじゃないかなって。長男なんて、時には顔面がぼこぼこになって帰ってくることもありますからね。でも、本人は楽しそうにしているし、たった数日間、外に出ただけでこんなにたくましくなるのかっていう姿もこれまで何度も見ているから、今はもう“自然学校”に任せることにしています。あとは子どもたちのことを信用することかな」

 そんな自然学校の先生の中には、いきものもいるという。
「例えば釣りをすると、少し前まで生きていた魚をさばいて、その命をいただきますよね。そうすると、単に親から言わされている『いただきます』じゃなくて、初めて本当の『いただきます』が言えるようになると思うんです。自然と身近に触れていない子の中には、魚はスーパーに行ったら釣れるものだと思っている子や、もともと切り身だと思っている子もいっぱいいる。でも、自然の中にいれば、命はどうやって生まれてくるのかも、おのずとわかります。命の根源みたいなものを教えてくれる、必要な場所なんです」

profile

つるの剛士

1975年生まれ、福岡県出身。1997年、ドラマ『ウルトラマンダイナ』で主役を演じ、一躍人気となる。歌手デビューも果たすほか、将棋、釣り、楽器、カメラ、バイクなど、多趣味なことでも知られる。現在は、『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)の水曜日サブMCなど、レギュラー番組も多数。

写真/かくたみほ

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