放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
(平成30年度版、 HTML形式)

第5章 国際機関による評価
5.1 WHO報告書とUNSCEAR2013年報告書

WHO報告書とUNSCEAR2013年報告書(3/3)「保守的な評価」と「現実的な評価」

WHO報告書とUNSCEAR2013年報告書(3/3)「保守的な評価」と「現実的な評価」
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原子力災害直後の緊急時の対応では、放射線被ばくによる健康影響を回避するという防護の観点から、被ばく線量及び健康リスクを高めに見積もることが行われます。
つまり、リスク評価が過大とはなっても、過小とはならないように「保守的に」見積もります。この「保守的な」評価は、起こる可能性のある最悪の事態を回避するために有効であるとされています。一方、原子力災害時の緊急対応が収束した回復期には、残された断片的な情報や測定データを基に事故の状況を復元し、現実的な被ばく状況の把握を行い、将来の健康影響の可能性についての評価が行われます。
例えば世界保健機関(WHO)の健康リスク評価報告書では、限られた情報の中で保守的に算出された線量、保守的な仮定の下で、健康リスクを算出しています。そのため、リスク評価結果は上限を与えるものにはなりますが、全体として過大に見積もられることになります。
国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書では、事故による被ばくレベルと放射線リスク評価を、十分な情報が集まった時点で、できるだけ現実的な評価を実施しようとされています。ただし、実際のデータに限りがあることから評価には不確かさがあることが示されています。例えば、線量評価の際の、地表に沈着した放射性核種の測定レベルに関わる不確かさや食品中の放射性核種濃度の設定に伴う不確かさがその例です。このためUNSCEARの報告書では、線量の評価結果が、実際の被ばくよりも過大に見積もられている可能性がある一方、場合によっては過小に見積もられている可能性もあるとして示されています。

本資料への収録日:平成27年3月31日

改訂日:平成30年2月28日

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