放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
(平成30年度版、 HTML形式)

第4章 防護の考え方
4.1 防護の原則

生物学的側面

生物学的側面
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国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告の目的の一つは、放射線に対する防護体系を構築するための考察や仮定を与えることによって、確定的影響の発生を防止することにあります。そこで、しきい値の最小値である100ミリグレイ(≒100ミリシーベルト)近くまで年間線量が増加した場合には、防護対策を導入すべきと考えられています。
年間およそ100ミリシーベルトを下回る場合は、確率的影響の発生の増加は低い確率であり、バックグラウンド線量を超えた放射線量の増加に比例すると仮定する「直線しきい値なし(LNT)モデル」が、低線量・低線量率での放射線防護の管理に実用的で、予防原則の観点からもふさわしいとされています。
ICRPが根拠としている原爆被爆者のデータは、1回の被ばくである一方で、管理すべき被ばくのほとんどは、長期間の少しずつの被ばくです。そのため、低線量・低線量率による影響軽減分の補正が行われています。動物実験やヒトの細胞における染色体異常や突然変異誘発の結果等から、様々な数値が報告されていますが、防護のためには係数として2を使うと定められています。つまり1回被ばくに比べ、少しずつの被ばくでは、同じ総線量を受けた場合の影響の出方が半分になるということです。
こうした補正を行った結果、致死的ながんリスクの増加は、低線量や低線量率の場合1シーベルト当たり約5%になると考えられています。
(関連ページ:上巻P84「確定的影響と確率的影響」

本資料への収録日:平成25年3月31日

改訂日:平成27年3月31日

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