大気環境・自動車対策

これまでの経緯と概要(ADB―GEF黄砂対策プロジェクト)

プロジェクトの背景

近年、被害が急激に拡大しつつある黄砂問題は、北東アジアの国々において共通の関心事項となっています。黄砂は従来自然現象として捉えられてきましたが、近年の大規模化は急速に広がりつつある過放牧や農地転換による土地の劣化等との関連性も指摘されており、森林減少、土地の劣化、砂漠化といった人為的影響による側面も持った環境問題として認識が高まっています。また、黄砂の発生源を有する国だけでなく、発生源から離れた風下の国でも飛来頻度と被害が拡大しており、越境する環境問題としても注目が高まりつつあります。このような中、アジア開発銀行(ADB)、国連砂漠化対処条約事務局(UNCCD)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、及び国連環境計画(UNEP)は、北東アジアにおける黄砂の防止と抑制に関するプロジェクトを立ち上げました。

【プロジェクト開始までの経緯】

2002年5月
ADBが地域技術援助(RETA またはTA)のためのプロジェクト概要を作成し、3国連機関が、これらの地域内に共通する環境問題に対処するために、地球環境ファシリティー(GEF)からの支援を求めるプロジェクトを提案。

2002年6月
日本、中国、韓国、及びモンゴルの環境省間の会議の席上、これら4カ国の政府より、国際社会からの支援を統合して活動効果の最大化を図り、ADB 及びGEF が資金を共同支出する黄砂対処のための地域協力を促進するために、ADB、UNCCD、UNESCAP 及びUNEP が合同で技術援助を拡大することが提案される。
2002年8月26日から9月2日にかけて、4国際機関の代表で構成され、ADB が主導する合同実態調査団が中国とモンゴルを視察。

2002年12月
「北東アジアにおける黄砂の防止と抑制(RETA 6068)」に関する合同プロジェクトが、ADB 及びGEF から承認を受ける。

2003年
プロジェクト開始。

プロジェクトの実施体制

同プロジェクトでは、4国際機関(ADB、UNESCAP、UNCCD 及びUNEP) と4カ国(日本、中国、韓国、及びモンゴル)の協力により、これまでフェーズI(2003-2005年)が実施され、日本政府が資金を提供するアジア開発銀行(ADB)の日本特別基金から50万ドル、そして地球環境ファシリティー(GEF)の中規模プロジェクトから共同資金として50万ドルが拠出されています。
プロジェクト実施に当たっては、

■運営委員会・・・基本的方向を審議(日本メンバーは環境省、外務省、及び林野庁)

■3つの技術委員会・・・具体的な調査内容を検討

が設置され、ADB が本技術支援の総合的な管理運営責任を担う執行機関を務めています。

マスタープランの作成

プロジェクトの主な目的は、北東アジアにおける黄砂の防止と抑制のための地域協力メカニズムの確立を促すことにあり、これに関連し、調査の具体的な成果として、北東アジアにおける黄砂緩和のための地域協力活動の手引きとなるマスタープランが作成されました。2005年には3冊の報告書がとりまとめられています。

マスタープランの骨子は下記の2つから成っています。

■北東アジアにおける黄砂の地域モニタリング及び早期警報ネットワークを確立するための段階的なプログラム・・・UNEP が議長を務める技術委員会の下で実施

  • モンゴル及び中国において必要なモニタリング地点数及び内容等の調査
  • 黄砂モニタリングのための専門家ネットワーク等、データ共有及びキャパシティビルディングの必要性を提唱

■黄砂の根本原因である発生源での対策を強化する投資戦略・・・UNESCAP が議長を務める技術委員会の下で実施

  • 9箇所(中国4箇所、モンゴル4箇所及び中モ国境に1箇所)を対策技術の実証サイトとし、発生源対策メニューを提示するとともに、費用を概算(投資戦略)

今後はフォローアップのためのフェーズIIが予定されており、上記マスタープランに盛り込まれた内容の具現化が求められているところです。

プロジェクト(フェーズII)の立ち上げに先立ち、環境省では第1回黄砂モニタリング専門家ネットワーク会合(準備会合)を2005年8月に開催し、日本、中国、韓国、モンゴルの専門家、及び国際機関の参加を得て、黄砂モニタリング及びモニタリングデータ共有のための地域共通の手法(オペレーショナルマニュアル)に含めるべき項目について意見交換を行いました(→会合の結果について)。