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里海復興の考え方

1.里海とは? 里海づくりとは? 里海復興とは?

1-1 里海とは

海辺では古くから漁業者を中心としたコミュニティーが形成され、その前浜の恵みを受けて海と深いかかわりを築き上げてきた。近年、そうしたかかわりは「里海」という言葉で表せるようになった。

 東北地方太平洋沿岸域は、海外線近くまで山がせまり、その森から海の基礎生産を支える栄養塩や有機物が供給されることにより、高い生産性を誇ってきた。海域のポテンシャルは高く、海とのかかわりはほかの地域のように積極的に海に手をいれる、という行動よりも、「大切に利用する・海の恵みを最大限利用する」というアプローチであった。東北地方太平洋沿岸域の閉鎖性海域における里海を特徴づける言葉は、「海・森・里が近接」、「高い多様性」、「高い生産性」である。

また、東北地方沿岸域は、瀬戸内海や東京湾・大阪湾・伊勢湾等と比較して自然の海岸線が多く、海へのアプローチが容易であったことも、これらの機会を増大していたと考えられる。

1-2 里海づくりとは

環境省で配布している「里海づくりの手引書」(平成23年3月)によれば、里海づくりは「物質循環」、「生態系」および「ふれあい」という活動より保全・再生される3つの要素(保全・再生要素)と、活動を実践する「場」「主体」という2つの活動要素により構成される。里海はこれらの要素のバランスのうえに成り立っていると考えられ、里海づくりはこのバランスの補正あるいは維持、もしくは強化することといえる。

里海を構成する5つの要素は多様性として、物質循環、生態系、ふれあい、持続性として活動の場、活動の主体があげられます。

1-3 里海復興とは

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は津波や地盤沈降、地震の揺れによって、家屋、海岸の構造物を破壊し、道路や漁港等のインフラを破壊した。この結果、漁業を中心とした海と人々のかかわりは寸断された。破壊された構造物周辺は近づくことが困難となり、その後も復興工事により立ち入り禁止となる箇所も多くなり、人の生活と海は隔てられた状況と考えられる。

これら、かつては里海を支えてきたコミュニティーの機能が低下していることがまず、課題として感じ取られる地域がほとんどではないかと想像される。

一方、自然環境については、震災後の海域環境は、「きれいになった」との報告が多く、その原因として閉鎖性を高める構造物の破壊による海水交換の向上、汚濁負荷の減少、津波による汚濁の進んだ底泥の掃流等があげられているが、その実態はあまり明らかになっていない。また、磯場に形成されるガラモ場やコンブ場の震災後の変化に比べ、後述するようにアマモ場の減少や干潟の変形・減少が報告されている。

復興工事により水に近づけない海辺[2013年12月. 広田湾] 復興工事により水に近づけない海辺
[2013年12月. 広田湾]
崩壊した護岸のため水に近づけない海辺[2013年12月. 大槌湾] 崩壊した護岸のため水に近づけない海辺
[2013年12月. 大槌湾]

藻場・干潟は、水生生物の幼稚仔の生育場としての機能、自然浄化能力機能が高い場であり、自然回復を待つだけでは、里海が損なわれてしまう恐れもある。

里海復興では、震災による変化を正しく把握しつつ、人の手が加わる「里海」の活動によって海辺のコミュニティーを再構築するとともに、物質循環等の海域環境の保全を図ることが必要である。

 以上の状況から、東北地方太平洋沿岸域における里海の5要素の震災前後の変化について概観すると、次のように考えられる。

里海を構成する5つの要素からみた震災前後の変化の概観

これらのことから、東京湾、伊勢湾や瀬戸内海ですすめられている里海づくり(創出・再生)と里海復興はその経緯や目的に違いはあるものと考えられる。本来は生産性が高く、健全な物質循環が築かれていたが、人為的なインパクトにより徐々にその機能が低下した対策が里海づくりであるのに対し、里海復興は、課題はあったものの比較的健全な機能を保っていた東北地方太平洋沿岸域の内湾において、自然の巨大なインパクトを受けた環境下において、生態系や物質循環のバランスが崩れてしまう懸念に対して、コミュニティーの再構築もあわせて、里海というスキームを用いて海と人とのかかわりを再構築することが里海復興といえる。

2.震災前の環境の把握

実際の里海復興にあたっては、対象とする閉鎖性海域における震災前の海況の特性や水質・底質等の環境条件、藻場・干潟等の重要な生態系や天然記念物等の自然環境状況について整理する。情報は、3-2で後述するようなホームページあるいは、研究機関等の研究報告・論文等から引用する。   宮古湾における震災前の自然環境・社会環境を以下に示す。

震災前の自然環境・社会環境(宮古湾の例)
自然環境 地形等 湾口を太平洋に開いた湾で、沖合で黒潮続流と親潮がぶつかっている。気候は寒冷で、夏季には親潮の影響で海霧が発生する。
湾口に閉伊川が流入し、宮古市街地があるが水質は良好で、COD 年平均値推移をみると、1mg/L 前後の値で推移している。
底質は、湾奥部で砂質となっているが、概ね泥質で構成されている。
生態系等 陸中海岸国立公園の一部をなし、湾奥に位置する宮古の景観を代表する浄土ヶ浜は、国立公園の主要拠点の一部となっている。
湾奥の閉伊川河口付近にはアマモ場、湾東岸の岩礁にはコンブ、ワカメを主体とする海中林やガラモ場が分布する。
浄土ヶ浜には北の大沢海岸に突き出た巨大な岩のローソク岩や潮吹穴がある。ローソク岩は、火成岩が周囲の水成岩を突き破って形成され、岩脈部分が露出し全体が見られる珍しい岩で、天然記念物に指定されている。
社会環境 文化歴史 宮古地方からは多くの遺跡が発見されており、太古の昔からこの地方の山と海の幸を求め、多くの先人が暮らしていたことがわかるが、有史以降も長い間、中央政権の支配からは無縁であったと思われる。しかし鎌倉時代に入り、源頼朝の御家人・閉伊氏が宮古に館を築き、宮古地方の統治が始まった。その後、土岐氏、千徳氏等の豪族が君臨したが、次第に八戸・三戸地方から勢力を伸ばしてきた南部氏に相次いで滅ぼされた。また、戊辰の役の「箱館戦争」の勝敗の鍵を握る戦いが、宮古港沖で繰り広げられた。
宮古港は江戸時代中期以降、海産物の移出港として発展した。
産業 宮古地方の中心都市は、三陸漁業の拠点として発展してきた。鮭の水揚げが県内一であり、サケは市のシンボルにもなっている。
浄土ヶ浜は陸中海岸国立公園を代表する観光地で、ウミネコに餌付けもできる観光船の発着場でもあり、市内の魚菜市場には水揚げされたばかりの魚介類が並ぶ。日本一の生産量を誇るワカメをはじめ、コンブやスルメ等の乾物各種水産加工品も観光客に人気がある。

3.事前準備(何が変わったのか、どんな特徴なのかを把握する)

3-1 活動範囲

里海復興プランを策定する閉鎖性海域内において、自然環境や社会環境の情報を整理したうえで、活動対象範囲を決定する。範囲は、実施主体の規模によっても変化するものであるから、範囲は事前検討中に適宜フィードバックして検討することが好ましい。

里海復興のための事前調査の例(自然環境)

3-2 実施主体の把握・実施体制

活動範囲全体にかかわることのできる実施主体を整理する。まず、被災地の状況下では、全体にかかわる実施主体は、行政機関が考えられる。情報整理、リーダーシップを行政機関が統括あるいは後押ししたうえで、より小さなスケールではNPOや漁業者団体の参画が必要である。

3-3 事前調査

活動対象範囲やその周辺について、震災前後の自然環境を把握するために、公開されている情報を整理する。活動対象範囲では詳細な調査が行われていないことも多く、そうした場合は現地調査を実施する必要がある。

下記に公開されている調査結果の整理と現地調査に分けて、その項目、参照する文献やWEBサイトを示す。

その際に、調査のクオリティも合わせて示す。

里海復興のための事前調査の例(自然環境)
地形等 公開されている調査結果 現地調査
地形 ■国土地理院刊行の地図等
■海上保安部海洋情報部刊行の海図等
詳細】測量機器・手法を用い計測
推奨】ハンディGPS、魚群探知機、オートレベル等、比較的安価で取り扱うことのできる人の多い機器で計測。
簡易】既存の地図を基に、スタッフ・巻尺等で計測、情報を追加。
水質 ■公共用水域水質測定結果
■水浴場の水質調査結果
詳細】船舶を使用して採水し、化学分析を行う。
推奨】船舶を使用し、多項目水質計(水温、溶存酸素、塩分、濁り等機器レンタル会社でレンタル可能)で計測。
→写真①
簡易】船舶を使用せず、陸地からバケツ等で採水し、多項目水質計(水温、溶存酸素、塩分、pH等。機器レンタル会社でレンタル可能)で計測。
底質 ■公共用水域水質測定結果 詳細】船舶を使用して採泥し、化学分析を行う。
推奨】船舶を使用せず、干潟等で採泥し、化学分析を行う。
簡易】船舶を使用せず、干潟等で採泥し、外観や臭い等の観察を行う。
底生生物 ■河川水辺の国勢調査結果(国土交通省)
*一級河川に限られ、里海復興活動には最下流(河口付近)のデータが有効である。(以下、同)
■自然環境保全基礎調査結果(環境省)
*干潟の底生生物調査
■モニタリングサイト1000(環境省)
(重要生態系監視地域モニタリング推進事業)
*干潟の底生生物調査
詳細】船舶を使用して採泥し、生物分析を行う。
推奨】船舶を使用せず、干潟等で採泥し、生物分析を行う。
→写真②
簡易】船舶を使用せず、干潟等で採泥し、目視で判断する。
魚類 ■河川水辺の国勢調査結果(国土交通省) 詳細】船舶を使用して採泥し、漁業者の協力を得つつ、魚類を採集する。
推奨】船舶を使用せず、干潟等で魚類を採集する。
→写真③
簡易】漁業者等に依頼し、漁獲した魚類を観察させてもらう。
海藻草類 ■自然環境保全基礎調査結果(環境省)
■モニタリングサイト1000(環境省)
(重要生態系監視地域モニタリング推進事業)
詳細】船舶を使用して、ダイバーによる潜水観察を行う。サイドスキャンソナー等を用いて藻場の分布の把握も行う。
→写真④、⑤
推奨】船舶を使用せず、ダイバーによる潜水観察を行う。もしくは船舶は用いるが、潜水は行わず、箱メガネや水中カメラで観察する。
→写真⑥
簡易】大潮の干潮時を利用し、干潟や浅場においてシュノーケリング等で観察を行う。
植物 ■自然環境保全基礎調査結果(環境省)
■モニタリングサイト1000(環境省)
(重要生態系監視地域モニタリング推進事業)
*湿地調査
詳細】航空写真等を利用し、植生図を作成、植物相も把握する。
推奨】GPS等で位置情報を確認しつつ、生育状況マップを作成する。
簡易】一定時間で確認される植物種とその状況を観察する。
多項目水質計のイメージ 底質調査のイメージ 渚の稚魚調査のイメージ 簡易ソナーによる藻場調査のイメージ ダイバーによる藻場調査のイメージ 船上から藻場を観察するイメージ

活動対象範囲やその周辺について、震災前後の社会環境を把握する。項目としては、産業、歴史、文化、名所・旧跡、しきたり等が考えられる。参照する資料としては、以下の情報が考えられる。   里海復興にあたっては、津波等による被災状況や復旧状況等も整理しておくことが好ましい。   地域の祭りの整理も必要である。祭りや地域コミュニティーをまとめさせる力がある。そのうえ、比較的高台に作られて いる寺社のお祭りは自然に津波からの避難訓練となっていた、という指摘もある。祭りを把握し、参加あるいは支援を計画実行することは、コミュニティーの復興につながり、やがて里海復興につながるものとなる。

震災により何が変化したのか(インパクト・レスポンスの例:社会環境)

得られた結果は、震災前後を比較し、検討すべき内容について整理する。

アマモ場に注目した整理例
  アマモ場の現状 環境の現状 アマモ場に対する地域の状況
宮古湾 津波により、湾奥の群落は大きく面積を減少 海底は攪乱を受け、地盤高が変化 環境学習、魚介類の産卵・成育の場として注目。学術的な知見も多い。
大槌湾 大きな群落は元来なかったが、群落はさらに縮小 海底は攪乱を受け、流入河川(鵜住居川)の河口形状が変化 モニタリングサイトにも選出されており、学術的な知見が多い。
広田湾 岩手県最大のアマモ場が存在していたが、群落は縮小 海底は攪乱を受け、流入河川(気仙川)の河口形状が変化 広田水産高校等、アマモに着目した学校の活動がある。漁業者は、漁業障害として認識
気仙沼湾 大きな群落は元来なかったが、群落はさらに縮小 海底は攪乱を受け、地盤高が変化。湾奥では被災による海底の油分の汚濁がみられる 群落が小さいためあまり着目されていないが、森・川・海の連携の発祥の地として海への関心が高い
松島湾 湾内に広くアマモ場が形成されていたが、島陰等にわずかに残存する程度まで縮小 海底は攪乱を受け、地盤高が変化 大都市仙台の近傍、景勝地として、海への関心は高い。水質浄化の一環として松島湾リフレッシュ事業の一環としてアマモの再生に取り組んでいた。

4.目標と実施主体(どのような考えに基づき里海復興をめざすのか?)

震災後の里海復興プランの策定にあたり、目標を設定する。目標の検討は、前項のとおり自然条件や社会条件を整理したうえで、震災後の状況を認識することが必要である。 自然環境、社会環境、制約事項、地域特性を踏まえ、対象とする海域に望まれる姿、復興後の姿を目標として設定する。

目標と実施主体は、伝統からのアプローチ、現状からのアプローチ、生態系サービスからのアプローチ、復興をめざす環境の明確化などがあげられます

目標時期の設定

第1のステップとして、里海復興の目標とする時期(どのような時期に状況を回復するのか)を決める。里海復興は、東日本大震災という大きな災害からの復興ではあり、「震災前」への回復というイメージを受けがちであるが、震災前が好ましい状況であったかを慎重に検討する必要がある。あるいは、震災前でもなく、ちょっと以前の姿でもなく、社会環境の変化等も考慮した新たなビジョンを作成し、そのための一歩を進める、という目標時期を小楽した考え方も可能である。

目標時期の設定としては、震災前、より以前、目標時期を設定しない、などの例が考えられます

目標イメージの設定

第2のステップとして、磁気を明確にしたうえで、象徴的な生物や事象のイメージを目標とする。このイメージの具現化によって、多様な里海づくりの主体にとってわかりやすさが増し、成果や活動中の能動的な管理に有効である。

例えば、自然環境の点では、象徴的な生物を選定する方法がイメージがしやすく、また、活動の継続、評価も比較的容易である。その観点は、①水産重要種、②目につく代表的な種、③希少種、④地域で代表的な種、⑤震災の被害を大きく受けた種、等である。

社会環境の点では、「活気」等のキーワードのもと、地域住民や活動主体、あるいは近隣住民がどのように海とかかわる姿が好ましいかをイメージして目標にする。

なお、目標設定にあたっては、1年後、5年後、10年後等の中間的な目標イメージもあわせて設定しておくと、後に述べる順応的管理に役立つ。

以下に、目標イメージの例を示す。また、東北地方太平洋沿岸域ではないが、目標―実施―効果がうまく進んだ事例として岡山県日生の事例を示す。

目標イメージの設定として、アマモ群落の大きさ、目標とする生物の生息や増加、きれいな海、何度もきたくなる海、などが考えられます

推進体制には、多くの主体がさまざまな関係で連携することになる。このため、活動を進める前に、関係する機関、団体、個人を事前に抽出し、関係者間で活動の内容、範囲、役割分担等について合意形成を図る必要がある。

里海復興は、地域的に広い範囲を活動することが想定され、かつ、多種多様な管理者、地権者等との信頼関係を築くことが重要なため、関係者間の調整を行うコーディネーターが必要になる。コーディネーターは地域に詳しい人(地元環境活動団体のリーダー、地元自治体職員等)が適任と考えられる。

5.具体的手法と場

設定した目的の達成に向けて、里海復興活動の内容を具体化した計画を策定する。   里海づくりの具体的手法については、「里海復興プラン策定の手引き」に示す資料等多くの手法が示されており、参考にな る。活動手法における留意点の例を以下にあげる。

具体的手法と場を設定する留意点として、生活史、遺伝的かく乱、外来種、継承、自然回復力の見極め、エコツーリズムなどがあげられます。

6.活動の実施(実際に活動する上での留意点~安全~)

里海復興の活動においては、参加者の安全が最優先されなければならない。活動参加者には、海に不慣れな方々の参加も考えられることから、イベントやフィールドでの活動を前に、安全管理計画を策定する必要がある。特に、東日本大震災の被災地での活動となることから、余震活動への対策等、独自の安全管理を実施する必要がある。下記に安全管理のうえで考えられる事例、下記に安全管理チェックシートの案を示す。

安全管理チェックシート(案)
安全管理チェックシートは、事前準備、活動前、活動後にわけ、それぞれ保険の加入や避難経路の確認、装備チェック、事後の体調確認などがあげられます。

 里海復興の活動の継続には地域の合意や関心が不可欠である。また、広範囲に及ぶ被災地のなかには、同様の意向を持つが活動に移行できない方々が潜在的に存在する可能性も高く、実施主体のモチベーションの確保のためにも、活動の広報を計画・実施することが好ましい。

広く参加者を募るイベントの開催や参加が最も有効な広報活動である。下記に震災後に実施されたイベントの例を示す。

全国の里海づくりに携わるNPOにはホームページを持つ団体が多く、最もポピュラーな広報手法といえる。現状では、被災地では未だ仮設住宅にお住まいの方々も多いため、A4:1枚程度のニュースレターを作成し、地域における拠点に配布することも有効と考えられる。

里海復興に関連するイベントの例(続)
イベント名 開催場所 開催日時 イベント概要
広田湾漁協
土曜市
広田湾漁協気仙町支所前 5月19日~12月中旬 朝に水揚げされたばかりの新鮮な水産物の販売が行われる。
広田半島
大漁まつり
広田漁港 10月下旬 鮭やカキ・ホタテ・アワビ等、三陸海岸の旬の魚介類を格安で販売。豪快な鮭のつかみ捕りや郷土芸能、餅まき、イベントコーナー等

7.評価と見直し(持続的な活動を目指して)

里海復興プランを実行した成果について、逐次検証・評価して順応的管理を行うことにより、成果の向上が期待できる。順応的管理は、PDCAサイクルで代表されるように、Plan(計画)→Do(実施)→Check(評価)→Act(改善)を繰り返し行うことにより、里海復興プランを継続的に、かつ効果的に行うことが可能である。

評価にあたっては、自然環境は後述するように様々なイベントの影響を受けつつ変化するものであることを考慮し、性急な評価にならないように注意する必要がある。特に、津波や広域な地盤沈降という巨大な攪乱を受けた後であるため、環境の安定性がまだ十分ではないことは里海復興では考慮すべき点である。

なお、調査、評価にあたっては、想定以上の評価、あるいは新たな課題の抽出、活動計画の再検討等広範な知識が求められる状況も予想される。活動主体が科学的な評価を行ううえでの助言を得る意味でも、評価の場合には専門家の助力を得ることが効果的である。近年、学識者に求められる役割も変化しており、活動の広報・持続にも有益であると考えられる。

評価と見直しの例として、漁業者や住民への聞き取り、無形の評価などがあげられます。

中間評価にしたがって、計画の見直しを行う。里海復興の進捗による結果とともに、公表されているほかの環境・社会情報を参照しつつ、判断を行う。例えば、アマモ造成を実施した場合、計画自体の問題よりも、異常気象(大雨による低塩分、台風の襲来、海水温異常等)が要因となっている可能性もある。

判断には、専門家へのヒアリングを実施すると、より正確な評価、計画の改善が期待できる。ただし、計画の見直しにおいては、社会的な評価も加味するために、見直しには住民や漁業者の参加も重要である。