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研究課題別評価詳細表

I. 事後評価

事後評価   8. 第7研究分科会<次世代循環型社会形成推進技術基盤整備事業>

研究課題名:【J111009】強度があり嵩比重の小さい石綿含有保温材等の除去工事規模に応じた減容化技術の開発 (H23)
研究代表者氏名:内田 季延(飛島建設株式会社 技術研究所)
補助金交付額:12,000,000 円

1.技術開発の目的と開発内容

<達成目標>
本事業は、石綿含有保温材(レベル2廃棄物)の解体除去工事および運搬作業の効率化を図るための支援ツールと補助装置等を開発し、石綿含有保温材の溶融無害化処理の促進に寄与することを目的としている。解体除去・運搬・溶融無害化処理までのコストダウンと省エネルギー化を図り、従来、最終処分場で埋立処分されている石綿含有廃棄物(廃石綿等)の無害化循環利用促進に寄与することを意図するものである。
<研究概要>
本件事業では、アスベストを含有する配管保温材等の、①袋詰支援プログラムの開発。②袋詰め補助器具の開発。③解体除去工事現場に持ち込める減容化装置の開発。④解体工事現場での実証試験を開発技術項目として開発を進めた。このうち、主たる目的である、減容化装置の開発では、油圧シリンダー方式のペットボトル減容化装置を原型とした開発を想定した。しかし、配管保温材の強度試験、市販ペットボトル減用化装置を用いた予備試験の結果、1) ペットボトル減用化装置の既製品で解体除去工事現場に持ち込める形状寸法、重量の製品では、配管保温材の減容化に十分な能力が得られない。2) 既製品のペットボトル減用化装置の油圧シリンダー能力を向上させるには機械本体の構造強度が十分ではない。3) 所定の能力の油圧シリンダーを用いた減容化装置を、解体除去工事現場に持ち込める形状寸法、重量とすることは困難である。等の事2象を確認した。一方、ペットボトル減用化装置の調査及び予備試験により、圧縮機構を油圧シリンダー方式から機械式に変更し、2系統の圧縮機構により一般的な配管保温材寸法(610mm)を2分割して圧縮する減容化装置を開発することで、当初想定以上の処理能力とできる見込みが得られた。また、詰め込み補助器具を使用して専用ビニル袋への配管保温材廃棄物片の詰込み効率を向上させても、運搬車両台数を軽減できるだけの効果は得られないことと、減容化装置を機械式とすることで十分な減容化効果が期待でき、事前に袋詰状態を一定条件に揃える必要がないことが判明したことから、以後の事業では減容化装置開発を主体とした。
開発した機械式減容化装置は、高さが2m以下と低くエレベータに搭載でき、キャスター付きなので人手での移動が可能である。本装置は、テーブルに置いたビニル袋詰めされた配管保温材廃棄物を手作業で投入口より減容室に押し込んだ後は、加圧版での圧縮減容と排出を自動処理する。減容室には一度に4体のビニル袋が入り、幅50cm、長さ70cm、高さ20〜30cmの長方体に圧縮減容されて、排出口に掛けたビニル袋内に排出口から押し出される。
減容化装置には各所に吸引ダクトを設け、集合して1本の排気ダクトを接続できるようにした。このダクトを負圧除じん装置と接続することで、圧縮減容に伴う石綿繊維の室内への飛散をできるだけ軽減できるようにした。

■ J111009  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#1009
研究イメージ図

図 研究のイメージ        
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2.技術開発の成果

<達成度>
目標成果に対する達成度の自己評価を以下に示す。
1)工事規模スペースに応じた減容化技術の開発。
・小規模な解体除去工事の場合、袋詰の工夫等による減容化効果は補助器具を利用しても約40%の容積減少程度であり、運搬車両台数の削減に寄与するだけの効果は期待できない。
2)袋詰補助器具の開発。
・補助器具利用の減容化効果は約40%、配管保温材片の向きを揃えることは可能であるが、詰込み作業に手間を要する。また開発した減容化装置の処理能力が高く、事前に袋詰補助器具を利用して配管保温材片の向きを揃える必要はなかった。
3)減容化装置の開発。
・処理能力:1m3/h(50〜80kg/h)の目標に対して、二重ビニル袋詰された配管保温材4袋を一度に減容可能であり、240〜480kg/hの処理能力を確保した。
・三相200V動力、自走台車での運搬と工業用エレベータ搭載の目標に対して、三相200V動力でキャスターでの人力移動可能かつエレベータ搭載とクレーン等での吊込み作業も可能な重量及び形状とした。
4)化石燃料使用量の削減。
・車載効率を4〜5倍とでき、運搬車両の化石燃料使用量を大幅に削減可能である。減容化前の容積1,000m3以上では約78%の削減効果を得られる。
<課題>
減容化装置は、石綿含有保温材の解体除去工事現場の負圧管理区域内に設置使用することを前提としている。そのため、除去工事後の返却時には、十分な清掃と再飛散防止対策を講じた上で、負圧管理区域から出す必要がある。開発した減容化装置は、吹付石綿除去工事相当のケレン作業により、付着した粉じんを除去し、飛散防止材による拭き取り作業により、再飛散を防止した上で、負圧管理区域を解除した。そのため、装置の清掃に1人工以上を要した。実用機では、より簡易な清掃対応を可能とする工夫が望まれる。

3.評点

   総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): c  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b

4.委員指摘及び提言

 アスベスト含有率2.1%以上では高い(94%以上)精度で検出しており、現場での導入では、可能と考えられる。
 アスベスト検出装置、期待通りに完成すると思われるが、選別システムに組込まれ実用に供した場合、期待通りの成果が挙がるように選別システムの完成に期待したい。
 市場に出るまでにまだ山、谷、ありの感じです。
 アスベスト含有建材を使用した建造物の解体は、十分な事前調査の実施とアスベスト含有建材の除去後に建造物解体が基本であり、この技術開発のコンセプトに疑義がある。
 この技術開発によるアスベスト検出装置を小型化して携帯型にできれば、解体現場で実用性の高い計器として活用が期待されるのではないか。
 アスベスト含有率が何パーセントまで検出可能か明らかにすべき。その時廃棄物の断面と検出機の向きの影響など考慮すべき。 
 検出アルゴリズムの中で妨害要素になる要因を明らかにすべき。特に表面に付着したアスベストの影響など考慮すべき。


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