循環型社会形成推進研究
7.循環型社会形成推進研究       

採択課題における事業の概要

J112001「水熱ガス化プロセスによる工場廃水の処理・燃料ガス製造技術の実証試験」(大阪ガス株式会社(松本信行))

 水熱ガス化技術は、300℃、10MPaG 程度の液相で触媒を用いて有機物をガス化する技術である。有機物を含む廃水の処理に適用することにより、メタン等の有用なガスを回収するとともに、処理にともなって排出される炭酸ガスを、従来の焼却法に比べて大幅に削減することができる。これまで、本技術について、小型バッチ試験装置やラボスケール(廃水処理量7L/日)およびベンチスケール(廃水処理量250L/日)の連続試験装置等を用いて、各種物質の分解特性、実廃水の分解特性、実廃水の設備材料影響等の検討を行ってきた。平成22 年4 月からは、平成22 年度次世代循環型社会形成技術基盤整備事業として、廃水処理量5.5m3/日のパイロットプラント(申請者および共同技術開発者が独自の資金で製作したもの)を廃水排出工場に設置して実証試験を開始した。平成23 年度からの本事業においては、水熱ガス化技術の実証試験を継続実施し、処理性能の安定性を確認するとともに、実規模のプラント設計に必要なエンジニアリングデータの取得を行う。

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J112002「世界の廃棄物処理展開を目指した低炭素型シャフト炉の開発」(新日鉄エンジニアリング株式会社(高田純一))

 シャフト炉は、コークスを使用することで減容化、資源化、無害化に優れた特性を有する半面、温室効果ガスが多くなり、処理コストが高くなることから、コークス使用量削減が求められている。そこで、シャフト炉の特長を活かしつつ、ごみのエネルギーを有効活用し、コークス使用量を削減できるシステムとして、高効率でごみの乾燥・熱分解を行える低炭素型シャフト炉を開発し、20トン/日規模での溶融試験においてコークス使用量が大幅削減できる見通しを得た。さらに化石燃料由来コークスをカーボンニュートラルなバイオマス由来コークスに100%置換した試験においても良好な結果を得た。本格的な実用化展開のためには、少なくとも1炉当たり200トン/日規模以上の処理能力が必要となるが、シャフト炉ではこれまでの知見からは通常3倍程度のスケールアップが望ましく、一度に10倍のスケールアップは困難である。従って、まず中間ステップでの性能評価を行うことが必須であり、本事業では65トン/日規模の実機施設を低炭素型シャフト炉に改造することで、コークス使用量大幅削減及びバイオマスコークスへの全量置換が可能か検証を行う。

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J113003「アスベスト含有建材対応型 建設系廃棄物選別システムの開発」(東急建設株式会社(柳原好孝))

 本事業は、解体工事から排出される建設系廃棄物に含まれるアスベスト含有建材(アスベスト含有産業廃棄物)を、近赤外線分光フィルタを応用したイメージングセンサで撮影し、判定する建設系廃棄物選別システムの実証試験装置を開発するものである。これまで、画像処理による建設系廃棄物選別システムを開発し、コンクリート、プラスチック、木材など5種類の建設系廃棄物について選別可能なことを実証してきたが、アスベスト含有建材が混入した廃棄物を処理する場合、現場での飛散防止や他の廃棄物との分離保管が必要となるため、開発するシステムは飛散防止用の隔壁や散水装置を具備し、自動車による現場搬送が可能なシステムとする。処理量は一現場が排出する量の約1/10に相当する1m3/hとし、5種類以上の建設系廃棄物とアスベスト含有建材の選別精度やアスベスト飛散の有無を検証実験により確認する。この選別システムにより建物解体時に人の手によって行ってきた廃棄物の選別作業を自動化することができ、廃棄物処理の効率化や作業環境の改善を図るとともに、混合廃棄物排出量の削減や不法投棄の抑制、建設副産物への有害物質混入防止などの効果が期待される。

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J112004「廃棄物からのバイオマスの回収とエタノール変換技術の開発」(日立造船株式会社(冨山茂男))

 既存の収集と焼却システムで年間を通して処理される一般廃棄物を、生ごみ、紙、及びそれ以外のビニール等に機械分別する技術、生ごみと紙の混合物を効率的にエタノールに変換する技術を実証する。廃棄物を粗破砕後、まず、高速回転する羽の風力と遠心力を利用して、含水率の高い生ごみと湿った紙(重量物)、及び乾いた紙とビニール等(軽量物)に分別する。次に、軽量物に水を加え攪拌して、紙を繊維状に分散させ、スクリーンでビニール等とスラリー状の紙に分別する。重量物の殺菌、及びスラリー状の紙を殺菌して脱水した後、アミラーゼ、セルラーゼ及び酵母を添加して、同時糖化・発酵を行い、発酵醪を蒸留してエタノールを濃縮する。本事業では、廃棄物の組成割合が変化しても生ごみと紙を高精度に分別できること、及び糖化酵素と酵母の添加量の調整によって4~5 日で5vol%以上の発酵醪が得られることを実証する。また、分別したビニールのRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)としての適性、蒸留残渣のメタン発酵適性を評価し、最大でエネルギー回収率50%、焼却処理の二酸化炭素排出量の2 倍量を削減することを目指す。

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J113005「黒液の利活用によるリグニンを原料とした炭素微粒子に関する研究」(大王製紙株式会社(岡村徹也))

 3年間の本研究では、現在燃料として焼却されている廃棄物系バイオマスである黒液(製紙パルプ製造の廃液)に含まれるリグニンから炭素微粒子(リグニンブラック:LB)を製造し、主に既存の炭素原料の代替えとなる、多様な製品の原料として、高付加価値な利用用途を確立することにより、循環型社会の形成、環境配慮型製品の拡充を促進することを目標とする。本申請対象である初年度は、LB の用途別形状・性質等を最適化する為の研究に向け、大王製紙㈱にて黒液からリグニンを抽出すると共に、用途開発の前提となる基礎的性質を具備した「基礎LB」の生産設備を構築、ユーザー評価に向けたサンプル供給体制を整える。基礎LB 生産設備の構築後は、1 年目後半から2 年目にかけ、基礎LB をタイヤ、ゴム部材、トナー、インキ、顔料、炭素材等の様々な製品のメーカーに提供し、これらユーザーからのフィードバックに基づき基礎LB の品質改善を進め、その後3 年目に量産化の為の技術確立、及び用途別のLB を使用した製品サンプルの研究開発を進める。

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J112006「カーバイド法アセチレン製造における副産消石灰リサイクル技術の開発」(電気化学工業株式会社(坂下拓志))

 当社は1915年にカーバイドと石灰窒素の製造技術を基礎に創立以来、今日まで樹脂やセラミックス、電子部材等幅広い製品を提供する化学会社として発展してきた。現在も国内の2工場(大牟田、糸魚川)では、石灰石(CaCO3)からカーバイド(CaC2)、さらにカーバイドからアセチレンガス(C2H2)を製造して化学誘導品に展開している。このカーバイド法は、主原料の石灰石が国内調達可能という利点がある一方で、カーバイドを製造する過程ではエネルギー由来に加えて原料由来でも多量のCO2が排出されるという課題を抱えている。そこで、カーバイドからアセチレンガスを製造する際に副産物として生成する消石灰(Ca(OH) 2)に着目し、この副産消石灰を石灰石と共にカーバイドの原料として利用するリサイクル技術を構築することにより、CO2 排出量の削減並びに経済性の優れたカーバイド法製造技術の確立を達成する。

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J113007「未利用バイオマス由来ナノファイバーとFRP 廃材を利用した複合材及びスモールバッチ生産システムの開発に関する研究」(ヤマハリビングテック株式会社(牧瀬理恵))

 本事業は、未利用バイオマスとFRP 廃材を利用して、木材、金属、セラミック等の製品に代用できる新たなバイオマスプラスチックを発生する地域で生産できるスモールバッチシステムでの実証開発を行う。ポイントとしては、「湿式状態で未利用バイオマスからダイレクトにセルロースナノファイバー(CNF)を調整する変換技術」、「水熱条件下でFRP 廃材中のシリカ成分とCNF をアロイし、CNF の合成と相溶性を高める技術」、「この含水状態の機能化CNF を高充填の配合でプラスチックとコンパウンドし、木材、金属及びセラミックに代用できる軽量、高耐久の複合素材へ変換する技術」及びこれらの変換を一貫生産する「尐量でも事業性のあるスモールバッチシステムを構築」の4 点である。これにより、未利用バイオマスや住宅解体等で発生するFRP 廃材の地域に賦存する廃棄物をその発生地域(周辺)で付加価値の高い製品(素材)に有効利用するビジネスモデルが提案でき、かつ従来海外製品(資源)を使用していた代替利用であるため、新たな環境産業の創出にもつながる。

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J112008「し尿、浄化槽汚泥からの高効率リン回収(HAP)技術の開発」(アタカ大機株式会社(奥野芳男))

 汚泥再生処理センター(し尿処理施設)における汚泥可溶化によるリン溶出技術と高度リン回収技術を実証する。高度リン回収技術は、従来の晶析HAP 法(HAP:ヒドロキシアパタイト)を基本とし、処理対象である生物処理後の膜透過液を脱炭酸処理し、浮遊法による晶析法と高pH・高カルシウム条件の固定床による晶析法の二段晶析リン回収法を用い、処理水リン濃度を1.0mg/L 以下にできることを検証する。また、リン溶出技術は、生物汚泥をアルカリ薬剤で可溶化することにより生物汚泥からリンおよび溶解性BOD を溶出させ、生物処理後の膜透過液のリン濃度を増加させるとともに、可溶化した溶解性BOD が脱窒素に必要な炭素源として利用できることを検証する。このリン溶出技術と高度リン回収技術により後段の凝集沈殿、砂ろ過工程を省略し、従来のリン回収技術に比較して低コストで高効率のリン回収技術を実証する。

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J111009「強度があり嵩比重の小さい石綿含有保温材等の除去工事規模に応じた減容化技術の開発に関する研究」(飛島建設株式会社(内田秀延))

 本事業は、ケイ酸カルシウム保温材など、比較的強度があり嵩比重が0.1t/m3程度と非常に小さい石綿含有保温材等を対象として、除去工事規模に応じた減容化を実現するための技術開発を行うものである。小規模な除去工事を対象として、「三次元詰め込み問題」の知見を利用した除去材の寸法形状決定支援システムおよび効率的な袋詰めを補助するパッキング装置を開発する。大規模な除去工事を対象としては、工事範囲内に持ち込み・移動可能な減容化装置を開発する。これらの減容化技術の実現により、現状では10トントラック1台で1 トン程度しか運搬できない石綿含有保温材廃棄物の積載量を2~5倍とし、輸送効率を向上させることで運搬に伴う化石燃料使用量を削減する。また容積低減は、溶融無害化処理作業における、単位時間当たりの溶融炉内への石綿含有保温材廃棄物の投入体積の低減にもなり、処理作業及び溶融処理に伴う燃料消費量の削減にも寄与する。

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K113001「水銀など有害金属の循環利用における適正管理に関する研究」(京都大学(高岡昌輝))

 有害金属のうち水銀については国際的な使用低減の流れの中でその利用は厳しく制限され、欧米においては、余剰水銀を長期保管する方向にある。我が国においては、回収された水銀の安定的な保管が求められ、技術的な検討が端緒についたばかりである。また途上国においては欧米や我が国のような回収システムがない中で水銀の適正管理に対応していく必要がある。したがって、まず我が国の水銀の最終保管に関する技術的検討やリスク評価を行う。アジア圏諸国での調査も行い、得られた水銀の回収・安定化・保管技術に関する成果を他のグッドプラクティスも含めて、アジア圏諸国と共有する。さらに、国際的な化学物質管理戦略で取り上げられているカドミウム及び鉛を中心に、広く有害金属の排出実態を調査し、環境排出を考慮したマテリアルフローを簡易に算出できるようなツールキットを開発する。最終的に、水銀を含めた有害金属の日本型管理モデルを構築する。

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K113002「アジア都市における日本の技術・政策を活用する資源循環システムの設計手法に関する研究」((独)国立環境研究所(藤田壮))

 中国及びアジアの拠点的な産業都市を対象に、国内のエコタウンをはじめとする循環技術・施策をもとに、日本発信の循環マネジメントシステムを地域特性に応じて効果的に設計するための定量的な計画・評価システムを構築する。国内自治体企業と連携してエコタウン等の日本国内の先進的な循環技術・制度システムのインベントリを構築し、アジアの都市の特性に応じた技術パッケージとして展開を支援する学術的手法を構築する。資源循環・リサイクル技術フローの「リエンジニアリング」プロセスと、技術の運用効率を高める資源循環の社会制度パッケージの定量的設計プロセスを開発して、アジアの具体的なモデル都市での中国科学院及び都市行政等との連携で循環経済都市データベースと技術・制度のシミュレーションプロセスを構築し、地域の循環特性に応じた実現のガイドラインとしてアジア都市への汎用化し、成果の事業者及び国際政策連携を通じての国内還元を図る。

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K112003「アジア地域大におけるリサイクル認証制度の導入可能性に関する研究」((財)地球環境戦略研究機関(堀田康彦))

 本研究は、適正な国際資源循環の確保及び国内静脈産業の海外展開の推進を目的に、アジア諸国におけるリサイクル関連業認証制度の導入可能性を検討する。 近年、アジア諸国で循環資源の国際移動が増大する中、途上国を中心とした不適正なリサイクル・処理による環境汚染・健康被害の問題が指摘されている。国際資源循環の適正化を進めるためには、国際的に調和の取れた基準を基に適正なリサイクル関連業者の認証を行い、信頼できるリサイクル関連業者間のネットワーク化を進めることが有効であると考えられる。 本研究では、アジア諸国におけるリサイクル関連の許認可制度等の調査に加え、欧州や米国でのリサイクル産業に係る認証基準の先行事例を参考にし、回収、運搬、処理といったリサイクルに係る過程に関して、アジア地域大での調和のとれた基準の検討、及び、具体的な認証制度の枠組へ向け、政策の提言を行う。

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K113004「東アジア標準化に向けた廃棄物・副産物の環境安全品質管理手法の確立」((独)国立環境研究所(肴倉宏史))

 鉄鋼業や電力業等から発生する鉄鋼スラグ・石炭灰等の産業副産物、廃コンクリート等の建設副産物、焼却灰や溶融スラグなど廃棄物処理残渣等の「循環資材」の利用が、3R の推進に着実に貢献するためには、環境安全品質の適切な管理が必要であり、工業化の進む東アジア(日本・中国・韓国・台湾)共通の課題となっている。 そこで本研究は、東アジア共通化が可能な、循環資材の環境安全品質管理手法を確立する。すなわち、申請者が提案するライフサイクルを通した品質管理の枠組みと試験評価・解析手法を各国の循環資材へ適用し標準規格化を図る。また、循環資材の環境安全品質向上を目的に、主に都市ごみ焼却灰利用製品の製造技術(溶融・セメント原料化)と品質管理技術の高度化を図る。 以上より、東アジア各国の課題解決、環境保全のための責任の公平化、環境安全品質向上技術とパッケージ化された製造技術システムの海外展開、等への貢献が期待される。

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K112005「有機性廃棄物からの高効率有機酸発酵技術の開発および反応機構解析に関する研究」(京都大学(日高平))

 有機性廃棄物からの発酵処理による効率的な資源・エネルギー回収技術の開発を目的として、特に前処理から酸発酵までの段階に着目して、処理の効率化、反応機構の解明、および数理モデルの構築により、基礎的な加水分解-酸発酵過程の知見を収集する。膜分離、生物膜、超高温、化学酸化などの要素技術の組み込みによる酸発酵効率向上技術の開発を行いながら、発酵前の加水分解段階および酸発酵過程の反応機構を組成分析、酵素活性試験、分子生物学的手法(微生物群集解析あるいは定量PCR)などを駆使しながら解析する。得られた成果を、数理モデルとしてまとめながら、有機性廃棄物の酸発酵技術として、前処理過程も含めて、水素発酵における乳酸生成抑制、また逆に乳酸などの有機酸発酵における水素生成抑制などについて、処理の効率化や現場での運転をより安定化させる運転・管理技術の提示を行う。

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K113006「固体酸触媒を用いた様々な草木質系バイオマス廃棄物に対応できる糖化システムの構築」(東京農工大学(銭衛華))

 食糧と競合しない草木質系バイオマス廃棄物を利用して、バイオエタノールの製造法の開発のため、低コスト糖化技術は不可欠である。我々は、すでに高い糖化速度かつ高い単糖収率を有する固体酸触媒による稲わらの直接水熱糖化法を開発してきた。しかし、草木質系バイオマス廃棄物からのバイオエタノール製造法の実用には、季節によらず、安定したバイオマスの供給のため、水熱糖化反応性が異なる様々なバイオマス廃棄物を使わなければならない。そこで、本研究では、異なる酸特性をもつ固体酸触媒の調製法を確立し、固体酸による様々な草木質系バイオマス廃棄物の水熱糖化特性を解明する。また、バイオマス廃棄物の種類に応じて、2 段固体酸水熱糖化法、またはバイオマスの前処理後固体酸水熱糖化という組み合わせ糖化法をそれぞれ開発し、固体酸触媒による水熱糖化技術をコアとする様々な草木質系バイオマス廃棄物に柔軟的に対応できる水熱糖化システムの構築を行う。

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K112007「木質系バイオマスの量子ビームによる高効率糖化処理技術の開発と評価」(光産業創成大学院大学(太田万理))

 本研究では資源・エネルギー源としての活用が期待される木質系バイオマスのレーザーと電子線による高効率の糖化前処理法を開発し、微生物固体培養法との組み合わせを検討することにより、高効率でバイオエタノールを生産する技術を開発し、その有効性の評価を行うことを目的とする。光はその波長を選ぶことにより原子、分子の結合に選択的に作用させることが可能であるため、紫外線など物質に化学的変化をもたらす作用や、レーザー光源による物質の物理的な加工、電子線水分解によるラジカル発生など様々な利用用途を持つ。本研究ではそれらの光の作用をリグニンの低分子化、ヘミセルロースの可溶化処理に用い、環境負荷の低い高効率の木質系バイオマス廃棄物の糖化前処理法を開発する。またエタノール、乳酸発酵に対する光前処理の有効性を検討するため、固体発酵法を用い、高効率で変換される条件を検討する。

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K113008「難循環ガラス素材廃製品の適正処理に関する研究」(東北大学(吉岡敏明))

 廃電気電子機器類中のガラス素材、特にブラウン管ガラスや薄型テレビ等のパネルガラスは、鉛やヒ素を含有し、リサイクルの困難な難循環廃製品といえる。循環・廃棄過程での環境影響(飛散・溶出)が潜在していることから、これら有害物質を除去しなければ有効利用も最終処分も環境影響が懸念される。本研究では、これら有害物質を含むガラス素材からの有害物質除去を目的とした実験的な処理技術の検討を行う。熱力学的解析及び熱分析による基礎検討結果をもとに、塩化揮発法、還元溶融法及び溶融分相法について実験的検討を行い、これら処理技術の適用可能性を評価する。塩化揮発法では、無機塩素化合物と共に、塩ビ(PVC)の廃製品を塩素源とし、プラスチックの難循環製品といえるPVC の処理技術への適用性についても併せて検討する。以上の実験的検討と共に、ブラウン管及び液晶パネル等のマテリアルフロー解析を行い、廃電気電子機器類のガラス素材の適正処理のあり方を展望し、処理技術を最適化する上での基礎的情報とする。

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K113009「最終処分場機能の健全性の検査手法と回復技術に関する研究」((独)国立環境研究所(遠藤和人))

 共同命令前に設置された古い構造、もしくは保有水が長期的に湛水する等管理が不十分な処分場は、廃止までの期間が長期化し、崩落や漏水などのリスクが高く、不健全な負の遺産の予備軍である。最終処分場の健全性をスクリーニングするため、沈下、構造、設備、地下水、保有水量、浸出水、ガス発生量等の項目を、アンケートや観測井モニタリング、物理探査等の検査技術で把握し、構造安定性と排水機能を数値解析等によって評価する。保有水とガスの質・量の変動を、発生ポテンシャル試験や観測データのトレンド解析によって評価し、廃止までに要する期間を処分場諸元と対応させて類型化する。以上の情報より、処分場の健全さをスコアリングし、必要な対策の優先順位付けをする。また、不健全さの類型と対応して、健全さを回復させる補強や安定化促進のための技術の費用対効果を求める。これら最終処分場の点検と改善技術を記したマニュアル案を総合報告書として提示する。

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K113010「静脈産業のアジア地域への移転戦略の構築に関する研究」((独)国立環境研究所(山田正人))

 現在、アジア地域の静脈産業市場では欧米企業の進出が活発であり、わが国は出遅れている。わが国のこれまでの公共主導、箱物型の技術移転の在り方を見直し、欧米等による不適正な技術を用いた利益確定重視な事業展開に対抗すべきである。本研究では、日本がアジアという風土で培ってきた静脈産業の途上国への持続的な移転を促すため、先行事例や日本型技術、事業環境を精査し、日本の廃棄物処理業等が廃棄物・資源管理事業をアジア地域で事業を展開する際の戦略を提示する。具体的には、日本型技術の優位性を技術開発史と欧米技術との対峙により評価する。現地パートナーの資質や既存市場、行政・法制度等の事業環境を特定する。先行事例と共に事業の適切な展開範囲を分析する。複数のアジア都市で資金調達手法や利益化手法、環境改善効果評価を含めた事業モデルを立案し、複数事例を一般化して事業者が活用できるツールとなる技術移転戦略を提示する。

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K113011「有害危険な製品・部材の安全で効果的な回収・リサイクルシステムの構築」((独)国立環境研究所(寺園淳))

 自治体や民間の処理施設や輸出現場などで有害危険な製品・部材が不適切な取扱いを受けることによって、火災事故や環境汚染を生じる事例がこれまで報告されてきた。本研究では、家庭や事業所から廃棄される有害危険な製品・部材を抽出し、火災事故や環境汚染に至る原因や現在のフロー・処理過程を把握するとともに、代替策として安全面や資源回収の観点からも望ましい回収。リサイクルシステムの構築を目的とする。そのために、事故事例や環境汚染事例の調査・解析と、現在の国内フローや各施設での取扱い・金属挙動の調査を行い、その安全性や資源回収の状況を把握する。そして、処理施設などにおける安全管理指針の策定や製品設計への提言も含めて、安全で効果的な回収・リサイクルシステムを提示する。以上より、処理段階での事故リスクを減少させるとともに、消費者の分別意識向上や資源回収効率の高いリサイクルシステムの構築を目指す。

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K113012「電池の循環・廃棄システム構築に向けた環境負荷解析及び政策比較研究」(京都大学(浅利美鈴))

 電池は、家庭や産業などで幅広く用いられる製品であり、その用途に応じて、様々な種類が存在する。中には、有害性や資源性を有する物質(鉛、水銀、カドミウム、コバルトなど)を含むものがあり、特に家庭系有害廃棄物の典型例として、過去よりその廃棄プロセスにおける環境影響が研究対象となってきた。しかし、日本国内においては、電池の回収・リサイクル率が低いだけでなく、回収・リサイクルの実態が十分に把握されておらず、また使い捨て製品の評価や管理政策に関する議論も十分とは言えない状況である。そこで、(1)小形電池製品及びそこに含まれる有害性・資源性の高い物質のフローの同定・定量と解析(循環・廃棄の実態把握を含む)、(2)小形一次電池の二次電池化や電池リサイクルシステム構築の効果などを検証するライフサイクルアセスメント、(3)国際的な電池政策比較と日本でのあり方を検討するベンチマーキング研究を行う。

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K111013「輸入不要の還元剤を用いる希土類磁石合金のリサイクル法の確立」(北海道大学(鈴木亮輔))

 希土類元素を多く含む希土類磁石合金は高性能モーターに不可欠であるが、その磁石表面は空気酸化により速やかにネオジウムやディスプロシウムなどのレアアースに富む酸化皮膜で覆われる。この皮膜は融点が高く耐火物と反応し易いので再溶解リサイクルが困難であるため、酸化した磁石合金は従来は廃棄されてきた。一方、研究代表者らが開発した溶融塩化物浴中での電気分解を用いる還元法(OS 法)では、陰極近傍に極めて強力な還元剤のカルシウムやリチウムをその場で生成させ、各種難還元性酸化物の還元に成功している。保管が難しいリチウムやカルシウムなど還元剤金属を輸入して使用する必要は無く、OS 法で還元して酸化皮膜を分解除去し、希土類磁石スクラップを健全な溶解リサイクルに供する。磁石スクラップ中の炭素及び酸素除去する前処理技術とOS 法による還元技術の組合せにより低コストで再生磁石材を製造するシステム技術を開発する。

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K111014「都市鉱山中のガリウムとインジウムの完全分離回収システムの構築」(東京学芸大学(國仙久雄))

 申請者はシリカゲル表面にアルキル鎖を導入した疎水性シリカゲルに、溶媒抽出で用いられている抽出分離試薬を担持する新規イオン交換分離材を合成した。本研究このイオン交換分離材をカラム法に適用し、Ga3+およびIn3+の相互分離を行う。特に、レーザー半導体やタッチパネルなどの都市鉱山の有用資源であるGa とIn の分離回収技術の実用化を試行する。申請者は、既に新規イオン交換分離材を用いてGa3+およびIn3+の相互分離に関する基礎検討を行っている。その結果は「研究概要説明図」に示すように、バッチ法を用いた際、酸性溶液中のGa3+およびIn3+の高い相互分離能を示している。本申請では合成したイオン交換分離材を分取カラムに充填した分離ユニットを作成し、Ga3+およびIn3+の酸性溶液からの完全相互分離を行い、実用化に向けた分離条件を明らかにする。

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K113015「中間処理残さ主体埋立地に対応した安定化促進技術の開発」(北海道大学(東條安匡))

 循環型社会基本計画での最終処分量の目標は達成される見込みである。しかし、量的削減は埋立物の質的濃縮をもたらし、その弊害が処分場管理に現れつつある。我が国の埋立物はその大半を無機化の進んだ中間処理残渣が占めるという特殊な状態にあり、従来の有機物対策を主眼とした埋立処分技術では対応できない、焼却灰の固結による通水/通気性の低下、極端な水みちの形成、高アルカリ化、重金属等の蓄積とその不規則な流出等の問題が顕在化している。本研究では、これらの問題に対処するために、中間処理残渣の安定化過程に関し、現場調査から実態と課題を把握する。また、廃棄物同士もしくは土壌との混合による埋立物の物理・化学特性の改善技術と、その効果を埋立実験から検証する。さらに、有害物流出に対応したバックアップ技術として機能性中間覆土の導入を検討する。以上より、早期に良好な土壌化を達成する新しい日本型の埋立処分技術を確立する。

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K113016「バイオマス・二酸化炭素を原料としたソーラー燃料・化成品変換システムの構築に関する研究」(大分大学(天尾豊))

 石油の代替となる新規エネルギー・燃料や環境調和型材料の創製が望まれている。有望な新規エネルギー源や環境調和型材料の原料としてセルロースなどのバイオマスがあげられる。特にバイオマスをエネルギーとして利用する研究が活発に行なわれている。しかしながら、バイオマスを燃焼させてエネルギーを得る方法が主流であるため副生成物として二酸化炭素が発生するといった欠点もある。一方、二酸化炭素を削減する技術として、さらにバイオマスを原料とした環境調和型分子やアルコールなどへの変換も十分に進んでいない.本提案では,木材廃棄物等に含まれるセルロースを代表とする多糖類を主成分としたバイオマスと二酸化炭素を原料とし,光エネルギー,生体機能分子・触媒を駆使して,燃料(水素・メタノール)及び化成品(グルコン酸)を効率良く同時に生産可能な「バイオマス・二酸化炭素を原料としたソーラー燃料・化成品変換システム」の確立を目指す。

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K113017「産業廃棄物マニフェスト情報の信頼性の確保と多面的活用策の検討」((財)日本産業廃棄物処理振興センター(谷川昇))

 持続可能な社会づくりのために、産業廃棄物の3R 推進と適正処理の実現を図っていく上では、産業廃棄物の量・質の流れをできるだけ正確に把握する必要がある。そこで、産業廃棄物の委託処理に膨大な労力と経費をかけて適用されている廃棄物管理票(マニフェスト)の記載情報(マニフェスト情報) に着目し、マニフェストシステムの運用実態及びマニフェスト情報の活用実態の分析、実際の産業廃棄物処理現場でのマニフェスト情報の信頼性の検証を行うことにより、マニフェスト情報の産業廃棄物の量と質の流れ解析への活用可能性を明らかにする。あわせて、国内の他のマニフェストシステムや海外の電子マニフェストシステムの活用事例を解析する。以上から、国・都道府県等、産業廃棄物の排出事業者、処理業者が、マニフェスト情報を、産業廃棄物の3R 推進と適正処理の一層の推進などに多面的に活用する方策を提案し、紙マニフェスト情報の効率的な利用可能性を示す。

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K113018「磁性ナノ球状カプセル酵素と酵母によるバイオエタノールの製造および相溶化処理した生分解性複合材料の創製」(秋田県立大学(邱建輝))

 廃棄物の排出抑制、炭酸ガスの削減およびカーボンニュートラルで再生可能なバイオマスを有効に利用するために、主に農作物に伴って大量に発生している草本系の天然バイオマス(稲わら、籾殻、麦わらなどの各種農作物の茎・葉)を再生可能なエネルギーに変換する製造技術の開発および民生製品用環境に優しい生分解性複合材料の創製と実用化を目指す。草本系の天然バイオマスから高効率、低コストでバイオエタノールを製造するために、本研究は共同研究者らが開発した高効率の粉砕装置を使用し、さらに回収・再利用できる磁性ナノ球状カブセル酵素と酵母の開発により、最適なバイオエタノールの製造技術を確立する。また、草本系バイオマスおよびリグニンなどの残渣をポリマー表面被覆法と無水マレイン酸等での表面処理によって生分解性プラスチックとの相溶性を改善させ、低コスト・付加価値の高い新規生分解性複合材料を開発し、民生用品などへの実用化を図る。

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K113019「農産廃棄物カスケード型循環利用バイオエタノール製造システムに関する研究」(地方独立行政法人 北海道立総合研究機構(北口敏弘))

 北海道十勝地方ではビート、小麦、ばれいしょ、豆類の主要4作物による畑作輪作体系が確立されており、その生産量は全国の15~40%を占め、大規模畑作地域が形成されている。それらの農産物を生産する際に農業廃棄物としてビートトップ(葉部)、麦桿、ばれいしょ地上部、豆殻が排出される。主に家畜の敷料として圃場から収集されている麦桿以外のものは圃場に鋤込まれるか野焼きされているのが現状である。本研究ではこれらの農業廃棄物を未利用資源と位置づけ、十勝地方をモデル地域と設定し、セルロース系廃棄物から抗肥満性物質などの有用成分を抽出した残渣を原料とした高効率で安価なバイオエタノール製造技術体系を確立する。さらにバイオエタノール蒸留残渣のサーマルリサイクル後に得られる焼却灰を肥料等として圃場還元する農業廃棄物カスケード型循環利用エタノール製造システムの確立を目指す。

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K112020「微生物酵素活性の利用による有機性廃棄物からのリン再資源化に関する研究」(三重大学(橋本洋平))

 有機性廃棄物に大量に含まれるリンの3R 促進は、リン原料の国際価格が高騰している現状において、国内消費のリンの全量を輸入している日本の緊急課題である。輸入リン鉱石の80%が肥料用途であることからも、有機性廃棄物のリンを肥料として再資源化する意義は大きい。地球規模で起きている環境問題を炭素、窒素、リンの関係から見てみると、生ごみ、下水汚泥、家畜ふん尿などの有機性廃棄物を回収し、メタン発酵後、残渣に濃縮されるリンを肥料として循環させることが解決策として見えてくる。本研究では、微生物酵素の作用を利用し、有機性廃棄物中の難溶性リン形態を植物が容易に利用できる形態に転換し、肥料資源としてリンを再資源化する方法の確立を目指す。生ごみやふん尿から目的とする微生物を単離し、実際の堆肥化プロセスにおけるリン形態の変化に及ぼす機能を評価し、回収したリンの肥料資源としての有効性を評価する。

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K113021「3Rに係る自治体施策・行動変容プログラムの政策効果分析」(岡山大学(松井康弘))

 本研究は、3R に係る自治体施策(有料化・分別収集等)・行動変容プログラムに焦点を当て、これらが市民の3R 意識・行動、消費支出、ごみの発生・排出に及ぼす影響・相互関連を体系的に解明する。また、施策・プログラム実施に伴う費用と期待されるごみ減量・環境負荷削減効果を推定し、その費用対効果を評価する。具体的には、全市町村対象の3R 施策動向調査を実施、地域特性・施策効果等に基づき類型化し、特徴の異なる自治体で市民に対する実態調査を実施、地域横断的分析により自治体施策の意識・行動への影響を解明する。また、行動変容プログラムを開発して岡山市等に適用し、啓発前後の意識・行動・消費支出・ごみ発生等を調査、その効果・因果構造を検討する。さらに、市民の意識・家計支出・個人属性・自治体施策・行動変容プログラムの効果を組み込んだ「ごみ発生・3R 行動の予測モデル群」を構築、各種自治体施策・行動変容プログラムの費用対効果を評価する。

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K113022「一般廃棄物不燃・粗大ごみの適正処理に関する研究」(埼玉県環境科学国際センター(川嵜幹生))

 市町村の不燃・粗大ごみ資源化施設は機械化選別装置に依存した処理システムであるが、排出される資源化処理残さの質は施設によってかなり異なっている。その要因として、回収品目の差違の他に、機械選別方法や機器投入前の処理方法等の差違も考えられる。そこでまず、各施設の処理方法の調査、廃家電類のリユースや銅線の資源回収等の手選別前処理方法の調査を行う。次に、県処分場に搬入されている資源化処理残さのごみ質について、見かけ比重、熱量、粒度分布及び金属含有量等の調査を行い、その差異を明確にするとともに、処理方法が資源化処理残さの質に及ぼす影響を明確にする。さらに、熱量の高い残さを対象に振動ふるい等を用いた選別試験による資源物の抽出やごみ質の経年変化等を調査することによって、現在の手選別前処理の効果及び処理残さの再資源化の可能性等を評価する。これらの科学的知見を用いて、県内市町村の廃棄物処理行政の支援を行う。

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K113023「家庭系有害廃棄物(HHW)の現状把握と回収システム構築に関する研究」(北海道大学(松藤敏彦))

 家庭系有害廃棄物(Household Hazardous Waste: 以下HHW という。)の適正処理のあり方を巡っては、欧米で法制化、仕組みづくりが既に数十年の歴史を持つのに対して、日本では一部研究者からの必要性の主張にも拘わらず、具体的な進展が見られないのが現状である。本研究は、家庭から少量且つ不定期に排出される有害な一般廃棄物の安全・適正な排出源管理・収集運搬・処分のための社会システムの必要性、具体的な役割分担や法的措置のあり方までを提案することを目標とし、3箇年にわたる大学及び外部研究機関連携による共同研究をである。1年目:国内外の都市ごみ管理政策の基本的考え方、変遷の違いを念頭においた上での国内関係主体実態把握と課題抽出、2年目:国内2 から3 か所での官学共同での組成分析含む排出管理・回収モデル実験の実施、最終年度:法的措置の有無、関係者の役割分担を含む社会システム制度提言を行い、比較制度論的要素を加味した実践的政策研究とする。

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K113024「アスベスト含有建材の選別手法確立と再生砕石の安全性評価に関する研究」(埼玉県環境科学国際センター(渡辺洋一))

 廃コンクリートは再生砕石等として97%が再利用され,砕石利用量の29%を占めているが、アスベストを含有するスレート板等のアスベストの再生砕石への混入が社会問題化しており、その防止と安全性の確保が緊急の課題となっている。本研究では、目視によるアスベスト含有建材の選別除去手法と作業現場等の飛散防止対策及び一連の工程における健康リスクを検討することにより、建築物の解体から再生利用に至るまでの安全性を確保するための判定-選別-飛散防止システムを構築し、リサイクルの推進と環境安全性の両立を図る。そのため、①実態調査を行い、アスベスト建材の混入経路と要因を把握する。②目視によるアスベスト建材の判定法を確立する。③作業現場等における安全対策のため,アスベスト繊維の飛散・流出挙動を把握し,飛散防止対策を提示する。⑤一連の工程におけるアスベスト繊維の飛散量を予測し,人の健康に対するリスクを求める。

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K113025「有機ハロゲン化合物の熱化学的破壊の可視化・最適化」(大阪工業大学(渡邊信久))

 効率的な有機ハロゲン化合物の熱化学的破壊の条件を探索する。C-X(C は炭素、X はハロゲン)を引き離すエネルギー「励起強度」と、X にとってC より魅力的な相手(H やCa など)の供給「脱ハロゲン活性」の2 軸からなる平面「破壊到達度マップ」を作成する。4 種類のハロゲンを含む有機化合物:C-F(PFOS/PFOA など)、C-Cl(PVC やPCB など)、C-Br(難燃剤など)、C-I(医薬品など)の比較を行うために、元素別の定量が可能なヘリウムプラズマ発光法を適用する。熱化学的破壊の条件を、実試料を適用して、ラボ実験において変動させ、「破壊到達度マップ」上で「C-X 化合物破壊の難易度ランキング」を作成する。ラボ実験と、実焼却炉での物質収支を比較し、実焼却炉の「破壊到達度マップ」上での位置づけを明らかにし、効率的な有機ハロゲン化合物の熱化学的破壊を達成する。

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K113026「資源性廃棄物の不適切分別を招く心理要因の構造化と分別改善化手法の提言」(九州大学(高橋史武))

 分別回収された資源性廃棄物(プラスチック製包装容器など)は手選別による異物除去が不可欠であり、リサイクルコストを増加させている。そもそもなぜ異物が混入するのか? 不適切な分別は、分別に対して住民が感じる煩わしさ(=心理的負担感)に起因すると捉え、本研究では「何が、どのようにして、どのくらい分別忌避の心理要因を働かせるか?」明らかにする。住民による分別廃棄作業を素工程に分解し、各行程において分別忌避を招く時間的・空間的・機会的制限因子を抽出・整理した上で、アンケート調査によって損失金額ベースで制限因子を定量的に評価する。また、これらの制限因子の構造性を共分散分析などで分析し、不適切分別を誘発する重要な要因を見出す。これらの成果を踏まえ、分別精度の向上へ誘導できる分別化手法を設計・提言することを狙う。

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K113027「アジアの都市廃棄物管理の発展に応じた埋立地浸出水対策の適正な技術移転に関する検討」((独)国立環境研究所(石垣智基))

 アジア特有の地理文化的な背景を踏まえたうえで、都市の発展に応じた埋立地浸出水の変動に対応可能な技術を開発・検証し、都市の廃棄物管理体系と一体化した浸出水の管理方策を日本の技術移転パッケージとして包括的に提案する。アジア都市域の廃棄物管理体系は、経済成長および環境保全にかかる国際的枠組の影響を受けて大きな変革を遂げる過渡期にある。なかでも、廃棄物埋立地は単純な投棄地から、資源回収拠点あるいは温室効果ガス管理の対策拠点として、日本を含む諸外国から注視されている状況にある。しかし多くの埋立地の機能・構造強化に際して、浸出水対策の高度化は置き去りにされており、貯留池や地盤への浸透など旧態依然のままのケースが多く見受けられる。浸出水対策を単なる末端技術としてではなく、都市域の廃棄物フローの高度化・多様化に伴い問題が集約した場として捉え、廃棄物管理技術・システムの移転および導入を完結させるため、問題低減の最適手法と効果について実証的に提示する。

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K111028「既存インフラを活用した使用済み小型家電等からの資源回収システムの設計・評価に関する研究」(早稲田大学(小野田弘士))

 社会コストミニマムでの使用済み小型家電等からのレアメタルを含む資源回収システムの構築が求 められている。本研究では、新たな収集・回収ルートの構築や設備投資を必要最低限に抑制することを目的に、既存の一般廃棄物の収集・回収ルートおよび民間の破砕選別施設を活用することによる資 源回収システムの費用対効果の算定を埼玉県におけるモデル事業を通じて実施し、その実現可能性を検証する。具体的には、埼玉県に立地する複数の自治体から発生する粗大ごみを直接もしくは破砕処 理後の残渣を県内の民間破砕施設で受け入れ、破砕・選別を行い、希少資源が含有している可能性がある基板くずのレアメタル等の含有量を把握したうえで、本モデルによるマテリアルバランスを把握 する。それらに基づき、既存インフラを最大限活用することによる経済性や環境負荷削減効果および本モデルの埼玉県内および全国への展開可能性について明らかにする。

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K113029「硫化処理した廃棄物系バイオマスを用いためっき廃液からの高選択的レアメタル分離回収技術の開発に関する研究」(秋田大学(和嶋隆昌))

 現在、我が国は、レアメタルをはじめとする多くの金属資源を国外からの輸入に依存しており、使用済み家電・工業製品の浸出液や廃水中に含まれる金属資源を効率的に選択・濃縮・回収する技術の開発は重要な課題である。申請者は、これまでの研究で、ヤシ殻や石炭を原料として硫化水素雰囲気で炭化処理を行うことで硫黄を担持した吸着材を作成し、活性炭に比べて高選択的・高容量で亜鉛、鉛などの金属を吸着する性能をもつことを見出した。本研究では、廃木材、製紙スラッジなどの廃棄物系バイオマスから同様の方法で重金属に対して高選択性、高吸着容量、高吸着速度を有する金属吸着材を製造し、これを用いてめっき洗浄廃液などの様々な金属を含む溶液からレアメタルを選択的に分離・回収する連続処理プロセスを検討する。これにより、“廃棄物系バイオマスの再利用”と“金属資源のリサイクル”を可能とする革新的同時リサイクル技術の実現可能性を検証する。

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K113030「日本からアジアに展開する廃棄物系バイオマス利活用による3R定着に関する研究」(鳥取環境大学(田中勝))

 アジア諸国での3R定着を目指して、既存の廃棄物系バイオマス(以下「バイオマス」という)利活用への取組を一層推進するとともに、日本の取組をアジアに発信し、各国専門家等の参加により利活用の展開を図る。具体的には次のとおり。(1)既存の家庭系廃食用油循環システムに対し、回収拠点での回収量増加や多様な利用先開拓を行い、深化を図る。(2)日本のバイオマスタウンでの様々な取組を経済循環、資源循環、環境負荷の面から診断し、対象バイオマスや循環範囲、工夫や施策などの特徴を抽出し、利活用推進のための処方箋を作成する。(3)日本と異なる地域特性を持つアジア諸国でバイオマスの利活用を推進するための専門家会議を開催し、優先的に取り組むべきプロジェクトを提案し、利活用推進を後押しする。(4)利活用推進のために、効率的な収集・運搬等の技術的手法や、税制も含めた経済的手法、住民の自発的な協力を促す社会的手法を開発する。

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K112031「無機層状酸化物を用いたレアメタル回収に関する研究」(山梨大学(熊田伸弘))

 レアメタルには高度に発達した科学技術を支えている重要な元素が多く、地球規模での産出量が限られていることおよび産出地が偏在していることが、わが国が技術立国として国際競争力を維持するための障害になっていくと懸念されている。しかし、これまでに多くのレアメタルを製品化して身近に使用していることから、多くのレアメタルは遍在していると言える。これがいわゆる都市鉱山であり、これを如何に再利用していくことができるかが、わが国の資源安全保障の面において重要となってくる。しかし、都市鉱山中のレアメタルは、化学的性質が類似していることから、分離・回収のプロセスが複雑かつ大きなエネルギーが必要となる。そこで、本研究では多様なレアメタルの中でも希土類金属に着目し、その分離・回収に無機層状酸化物の吸着選択性を用いることで、ミニマムエネルギーで効率よくレアメタルを回収するシステムを構築しようとするものである。

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K113032「廃棄物焼却施設におけるハロゲン化多環芳香族炭化水素類の生成機構解析とリスクベース管理手法の提案」(静岡県立大学(三宅祐一))

 ダイオキシン類と同様に燃焼に伴い非意図的に発生し、ダイオキシン類と同等以上の環境リスクが指摘されている塩素化または臭素化した多環芳香族炭化水素類(PAHs)について、既存の産業廃棄物焼却施設を想定した、生成機構及び生成速度の解析を行い、さらに実施設からの排出実態等を基にしたリスクベース管理手法を提案する。具体的には、既存施設の焼却条件を参考に、室内焼却分解実験装置を作製し、ハロゲン化PAHs の生成機構及び生成速度について明らかにする。また、約40 施設の廃棄物焼却施設から採取した排ガス及び焼却灰を用いて、ハロゲン化PAHs の排出実態を調査する。さらに、リスクベースの排出濃度から、リスクレベルを低減できる燃焼条件や排ガス処理方法等を提案する。これにより、将来、残留性有機汚染物質(POPs)に指定される可能性もあるハロゲン化PAHs に関して、他国に先駆けて情報集積が可能となり、我が国の環境保全技術開発の優位性向上に貢献する。

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K112033「草木質系バイオマスの常温脱水脱油技術による石炭・油代替燃料への転換」((財)電力中央研究所(神田英輝))

 現在世界で最も増加中の発電方式である石炭火力発電からの、CO2 排出量を大幅に削減するため、草木質系バイオマスを、石炭代替燃料に転換する技術を開発する。草木質系バイオマスは高水分で、粉砕性・燃焼性が悪く、発電効率が低下するので、多量の水分を蒸発する必要がある。しかし、この工程は膨大な熱エネルギーを要する。そこで、代表研究者が考案した、液化ジメチルエーテル(DME)を水分抽出剤として利用する、亜瀝青炭・汚泥・廃棄物の常温・省エネルギー脱水技術を、草木質系バイオマスに適用して、石炭代替燃料に転換することで、石炭火力発電のCO2 排出量を大幅に削減する。ただし、草木質系バイオマスは石炭より揮発分が多く、単に脱水しただけでは石炭代替燃料として不向きである。ここで、液化DME は脱水と同時に、揮発分も抽出できるので、草木質系バイオマスの揮発分を低減すると同時に、揮発分をバイオ油に転換する。

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