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研究課題別評価詳細表

I. 中間評価

中間評価   7.  第7研究分科会<循環型社会形成推進研究事業>

研究課題名: 【K113001】水銀など有害金属の循環利用における適正管理に関する研究(H23〜H25)
研究代表者氏名: 高岡 昌輝(京都大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
本研究では水銀の最終保管に関して、メカノケミカル法以外の水銀安定化技術の開発及び回収量推計の精緻化および将来予測、回収・保管フローにおけるリスク評価を行い、より環境への排出の少ない長期保管、回収システムの構築を目指す。
さらに水銀をベースに作成された大気への排出インベントリー、フローモデルを他有害金属(カドミウム、鉛)に拡張し、排出実態調査や有害金属含有廃棄物調査を踏まえ、環境排出を考慮したマテリアルフローツールキットを開発し、アジア圏での水銀及び他有害金属の制御および管理に用いることを目指す。


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<本年度の目標>
より簡便な水銀安定化技術の開発については、より安価で大量に硫化水銀を合成する手法としてボールミルによる方法を検討し、最適条件を見出す。回収水銀量の推計においては我が国の将来予測ができるように蛍光灯からLEDへの切り替えなどの動向を調べ、主に製品由来・不純物の情報を収集する。安定化された水銀を我が国における遮断型処分場、管理型処分場に保管・処分をする場合の大気、水系汚染を想定して健康リスクを評価する。
水銀以外の有害金属については、含有する製品・廃棄物の排出量推計,有害物質を不純物として含む原料等の需給データ等に基づき、排出インベントリーを作成する。その際、主要な排出源と考えられる箇所について排出実態調査、有害金属含有廃棄物の実態調査を行う。インドネシア、マレーシアにおける現地調査を実施し、海外での水銀、有害金属の排出状況、有害金属含有廃棄物の処理・処分状況回収等を明らかにする。
<本年度の成果>
水銀については、水銀及び水銀廃棄物の管理の現状および回収量推計の精緻化および製品由来水銀の回収促進ための調査からは、全体としての水銀回収率は高いものの、さらなる水銀回収余地は大きいことがわかった。SDモデルを用いて作成した水銀のマテリアルフローモデルが水銀移動評価に有効であること及び余剰水銀のより簡便な水銀安定化技術として転動ミルの有効性が確認された。水銀回収・保管フローにおけるリスク評価では遮断型処分場・管理型処分場に保管・処分では健康リスクは十分に小さいが、集中処分および水銀溶出を招く破壊的イベントのケースでは、水銀曝露が時間を置いて顕在化する可能性があることがわかった。アジアでの水銀実態調査ではマレーシアの大気排出ポテンシャルを試算した。
水銀以外の有害金属については、PRTR制度における届出排出量をもとに活動量あたりの鉛、カドミウム排出量を試算し、当該業種からの排出原単位に相当する値として活用できる可能性があると考えられた。

■ K113001  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3001

2.委員の指摘及び提言概要

 個々の研究課題間の関連性が曖昧で構築しようとしている適正管理の全体像が見えない。特に回収システムと長期保管技術に関して発生リスクに対する各課題の優先順位が整理されていないことが問題である。したがって、開発しようとしている固定化技術開発の重要性が不明であり、アジアの位置づけも不明確となり、他の有害金属への展開も収まりが悪い。研究資源の抜本的な整理・集中が望まれる。一方で、推定の不確かさを考慮した国際的に評価されるインベントリーの精緻化が望まれる。

3.評点

   総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): b  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b


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研究課題名: 【K113002】アジア都市における日本の技術・政策を活用する資源循環システムの設計手法(H23〜H25)
研究代表者氏名: 藤田 壮((独)国立環境研究所)

1.研究における達成目標

<全体目標>
① 国内の資源循環・リサイクル技術及び循環型の動脈産業についての生産関数データベース・インベントリを構築する。日本の循環技術・制度をアジアの特性に応じて効率的に再設計する「リエンジニアリング」プロセスの手法を構築し、循環型の社会制度の定量的設計のプロセスを構築する。
② アジア都市の産業、環境統計情報の整備の状況に応じて、廃棄物の発生分布と環境基盤施設の整備、循環政策情報を含む循環経済都市データベースの構築手法を開発して、モデル都市での実証都市でのその利用性の検証を行う。
③ 循環地域特性の解析プロセスとともに、環境負荷と経済コストを最小化する評価システムの構築と合わせて、具体的な都市と地域を対象とする循環システムの環境・経済評価のシミュレーションシステムを構築する。
④ 中国とアジアの都市を対象に循環経済拠点地区で社会実証研究を通じて、政策検討への情報発信による手法の高度化とその検証を行う。
<本年度の目標>
① 循環技術の設計値、運営値等から事業量によって変化する機能効率を規定する循環生産関数を同定するプロセスを開発する。エコタウン事業の体系的な調査を行い、アジア都市で需要の大きい技術について技術を組み合わせた技術・政策パッケージを定量的な循環技術関数インベントリとして構築し、中核技術についてはアジア都市の適用にむけた技術開発を進める。
② 日中両国環境大臣による「環境にやさしい都市」支援協定のもとで中国瀋陽市を対象に産廃の発生、有価資源の発生および事業拠点、一廃発生・処理量の立地について、中国科学院との連携でGISデータベースを構築する。またその開発手法の他都市への適用の準備を進める。
③ 中核技術のデータと都市環境データベースを組み合わせて代替的な循環経済シナリオを計画・評価する手順を構築し、試行的な算定を行う。
④ 瀋陽市の低炭素工業生態園へ研究情報を発信する日中連携のプラットフォームを構築する。
<本年度の成果>
下記の通り、計画は順調に進んでいると判断される。
① 循環生産関数を同定するプロセスについては、食品、下水汚泥のリサイクル技術を中心にインベントリデータの収集を行った。また複合リサイクルシステムのプロトタイプを設計、評価した。新たな技術開発として、アジア都市の適用にむけた汚水処理・リサイクル技術の開発を実施した。
② 中国瀋陽市を対象とした産廃、有価資源の発生および事業拠点、一廃発生・処理量の立地に関するGISデータベースは、中国科学院の協力を得て、優先度の高い項目からデータ整備を行った。更に、社会インフラや自然資源のGISデータベースを構築した。
③ 中核技術のデータと都市環境データベースを組み合わせて循環経済シナリオを計画・評価する手順については、その基礎的モデルを構築し、評価を実施した。
④ 瀋陽市の低炭素工業生態園へ研究情報を発信する日中連携のプラットフォームを構築する点については、中国科学院、瀋陽大学、瀋陽市政府機関等と複数回の協議を行い、その体制を整えた。

研究のイメージ

図 研究のイメージ        
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■ K113002  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3002

2.委員の指摘及び提言概要

「複合」と「統合」、「結合」という用語がどのように使われているかが不明であり、言葉の定義を明確にしておく必要がある。また、研究の進み具合から、社会的な実証に到達できるか否かが判断できないため、ケーススタディで終わる恐れがある。特定の地域を対象として考えるのか、アジア一般に共通するモデルを示そうとしているのかをはっきりさせる必要がある。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113004】東アジア標準化に向けた廃棄物・副産物の環境安全品質管理手法の確立(H23〜H25)
研究代表者氏名: 肴倉 宏史((独)国立環境研究所)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
① 東アジアにおける循環資材の発生と利用や法制度等の現状調査及び、各国の研究者との連携・研究協力を通して、環境安全品質管理の枠組みと品質検査法の東アジア共通化に取り組む。鉄鋼スラグや都市ごみ焼却灰等、各国の循環資材を対象に、品質管理試験を適用してデータ蓄積・相互比較を行う。
② 循環資材の長期安全性を評価するための詳細試験法と解析モデルを開発する。各地域の気候・地盤パラメータ情報の収集整理に基づき解析を行い、各環境条件・利用条件で必要な環境安全品質を規定する。各国の関連研究機関との連携により、様々な循環資材の基礎試験・詳細試験データを蓄積する。


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③ ばらつきの大きい都市ごみ焼却灰の前処理技術改善による溶融スラグ安定製造技術を確立する。原料性状の違いによる溶融スラグやセメントへの影響を解明する。適切な試料採取法や簡易モニタリング法等から成る、循環資材の合理的な品質管理技術を確立する。
<本年度の目標>
① 東アジアにおける循環資材の発生と利用や法制度、情報管理方策等の現状について、資料調査、ヒアリング調査を行う。中国、韓国、台湾の専門家に循環資材の環境安全品質管理に関する枠組みを提案し、標準化に向けた課題を整理する。また、類似の取組を推進する欧州の各国専門家にヒアリング調査を行う。
② 長期安全性試験の文献調査を実施する。乾湿履歴を受ける用途を想定し、乾湿サイクル試験法における試験温度と水浸・乾燥時間設定を促進率の観点から整理する。カラムとバッチ溶出試験の結果の相互変換法を論理化し、必要パラメータを環境影響解析モデルへ導入する。
③ 溶融スラグについて、雰囲気ガスを調節可能な灰溶融実験装置を開発し、焼却灰から塩素等の不安定化要因物質を除去することによる溶融スラグ安定製造への効果を検討する。鉄鋼業界の協力により、検体数を含めた適切な代表試料の採取法を理論と実証の両面から検討する。
<本年度の成果>
① 東アジアにおける循環資材の発生と利用や法制度、情報管理方策等の現状について、資料調査、ヒアリング調査を行った。中国、韓国、台湾の専門家に循環資材の環境安全品質管理に関する枠組みを提案し、標準化に向けた課題を整理した。なお欧州状況は鉄鋼スラグ協会の依頼で調査を行ったため参考情報とした。
② 既存の長期安全性試験について文献調査を実施した。乾湿履歴を受ける用途を想定し、乾湿サイクル試験法における試験温度と水浸・乾燥時間設定を促進率の観点から整理し,実試験を実施した。カラムとバッチ溶出試験の結果の相互変換のためのシリアルバッチ試験を実施し、撹拌強度の影響を環境影響解析モデルへ導入する手法を検討した。
③ 雰囲気ガスを調節可能な灰溶融実験装置を開発し、焼却灰から塩素等の不安定化要因物質を除去することによる溶融スラグ安定製造への効果を検討した。製鋼スラグを対象に、検体数を含めた適切な代表試料の採取法を理論と実証の両面から示した。

■ K113004  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3004

2.委員の指摘及び提言概要

政策の展開に大きく寄与する可能性が大きいと評価でき、実践的な社会システムづくりのための応用研究といえる。研究課題もバランスよく展開されているなど、今後に期待でき研究である。東アジア共通の枠組みをいかに見つけるかが重要なポイントなので、アジアに適用するため対象をある程度限定する必要があるかも。また、日本と中国、韓国、台湾との環境基準等の考え方の違いを明確に整理してほしい

3.評点

   総合評点: S    ★★★★★  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113006】固体酸触媒を用いた様々な草木質系バイオマス廃棄物に対応できる糖化システムの構築(H23〜H25)
研究代表者氏名: 銭 衛華(東京農工大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
異なる酸量・酸強度をもつ硫酸根や硝酸根を遷移金属酸化物に導入したルイス酸型触媒および多孔質シリカ担体の表面にスルホ基を導入したブレンステッド酸型触媒の調製法を確立する。また、様々な草木質系バイオマス中のヘミセルロース・セルロース及びリグニンを、120℃〜220℃の温度下、固体酸水熱糖化反応を行い、反応後生成物の定性・定量し、固体酸によるヘミセルロース・セルロース及びリグニンの水熱分解反応機構を解明し、水熱分解に及ぼす固体酸の影響を解明する。さらに、様々なバイオマス廃棄物の種類に応じて、120℃〜220℃の温度下、異なる触媒や反応条件下での2段固体酸水熱糖化法、またはメカノケミカル処理法等のバイオマス前処理法と固体酸水熱糖化法との組み合わせ糖化法をそれぞれ開発し、固体酸触媒を用いた水熱糖化技術をコアとする様々な草木質系バイオマス廃棄物の糖化特性に応じた最適な水熱糖化システムを構築する。


図 研究のイメージ        
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<本年度の目標>
硫酸根や硝酸根を遷移金属酸化物に導入したルイス酸型触媒および多孔質シリカ担体の表面にスルホ基を導入したブレンステッド酸型触媒を調製する。また、これらの触媒のBET表面積や細孔分布の測定、酸量・酸強度分布の測定を行う。解析結果に基づいて、異なる酸特性をもつ固体酸触媒の調製法を確立する。また、様々な草木質バイオマスのモデル化合物として、キシラン、セルロース、バイオマスから調製したヘミセルロース・セルロース混合物であるホロセルロースを用いて、130℃〜210℃の温度下、これらの固体酸水熱糖化反応を行う。反応後生成物中の単糖や多糖類、有機酸類をそれぞれHPLC・GPC・LC-MASS等で定性・定量し、固体酸による草木質バイオマスの水熱糖化機構を解明し、水熱糖化に及ぼす固体酸の影響を解明する。同様に、針葉樹、広葉樹、稲わら等の固体酸水熱糖化反応を行い、各種のバイオマス中に存在するヘミセルロースやリグニンの水熱分解挙動を解明し、ヘミセルロースやリグニンの水熱糖化に及ぼす固体酸の影響を解明する。
<本年度の成果>
(1)新規固体酸触媒の調製法の開発
高表面積のメソポーラスシリカの表面に遷移金属酸化物に導入し、さらに遷移金属酸化物を硫酸化した50〜200m2/gのBET表面積をもつルイス酸型触媒と、メソポーラスシリカの表面に炭化物を導入し、さらにスルホ基を導入した100〜477m2/gの高表面積をもつブレンステッド酸型触媒を調製した。また、セルロースの水熱糖化反応を行い、これらの触媒の水熱糖化活性を評価し、最適な触媒調製条件を決定した。これらの結果より、繰り返し利用ができる高耐久性の固体酸触媒を開発した。
(2)各種の草木質系バイオマスの水熱分解特性の解明
草木質バイオマスのモデル化合物であるキシランや稲わらの脱リグニンより調製したホロセルロース及び様々なバイオマス廃棄物(赤松、ユーカリ、稲わら等)を用いて、固体酸水熱分解反応を行い、各種のバイオマスの水熱分解特性に及ぼす反応温度・時間(130-210℃、5分〜6時間)、固体酸触媒の種類の影響を解明した。また、これらのバイオマスの組成分析を行い、それぞれの反応性と組成と関係を検討した。

■ K113006  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3006

2.委員の指摘及び提言概要

 個体酸触媒の開発など、目標に向かって着実に研究が進行している。24年度では糖化収率を目標の80%レベルに上げる手段を詰めて欲しい。さらには、ベンチスケール(3年)→パイロットスケール→実機までの時間を想定した上でシステム全体のスケーリング、トレードオフ、評価方法について予め作業仮設を立て、最終年度には熱バランス、連続化を十分に考慮した事業化への道筋(システム提案と評価)を示して欲しい。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113008】難循環ガラス素材廃製品の適正処理に関する研究(H23〜H25)
研究代表者氏名: 吉岡 敏明(東北大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
(1)ブラウン管ガラスからの鉛の分離回収に関する研究
① 塩化揮発法:塩素源として無機薬剤及び有機薬剤を用いた、ガラス素材との基礎的な混合加熱実験から最適条件を確定し、本技術の評価を行う。
② 溶融分相法:ホウ素系薬剤によりガラスから鉛を分相除去最適条件、また分相後のガラスから酸を用いた鉛の回収における最適条件を求め、本技術の評価を行う。
③ 還元溶融法:還元雰囲気での溶融実験を行い、鉛の熱分離特性を確認し、最適条件(還元剤の種類、混合割合等)を求め、本技術の評価を行う。


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④ 上記3種類の鉛分離回収方法のエネルギー試算および環境影響評価を行い、適用性の評価を行う。
(2)パネルガラスからのヒ素等の分離回収に関する研究
塩化揮発法及び還元溶融法について、ブラウン管ガラスからの鉛の分離回収実験と同様の実験を行い、各技術の評価を行う。
(3)ブラウン管及び液晶・プラズマパネルのマテリアルフロー解析
 廃電気電子機器類のガラス素材に注目したマテリアルフローモデルを開発する。
<本年度の目標>
(1)ブラウン管ガラスからの鉛の分離回収に関する研究
① 塩化揮発法:塩素源として無機薬剤及び有機薬剤を用いた、ガラス素材との基礎的な熱分析実験を行い、添加量、加熱温度、加熱時間、添加剤の混合等のパラメータの影響を把握する。この基礎情報をもとに実験室レベルでの混合加熱実験を行い、最適条件(添加量、加熱温度、加熱時間、添加剤の混合)に関する情報を収集する。
② 溶融分相法:ホウ素系薬剤によりガラスから鉛を分相し分離除去する最適条件を確定する。また分相後のガラスから酸を用いた鉛の回収における最適条件(酸の種類、濃度等)を求める。
(2)ブラウン管のマテリアルフロー解析
ブラウン管及びガラス素材のマテリアルフローモデルに関する基礎情報を収集し、モデルの骨格を作成する。
<本年度の成果>
(1) ブラウン管ガラスからの鉛の分離回収に関する研究
① 塩化揮発法:塩素源として無機薬剤2種(NaCl, CaCl2)及び有機薬剤2種(PVC, スクラロース)を選定し、ブラン管ガラスとの基礎的な熱分析実験を行い、添加量、加熱温度、加熱時間、添加剤の混合等のパラメータの影響を把握した。更に実験室レベルでの混合加熱実験を行った結果、無機薬剤と有機薬剤を混合した条件において、低エネルギーで高いPb揮発率を実現できる可能性が示された。
② 溶融分相法:ホウ素系の分相剤2種(B2O3, Na2B4O7)を選定し、ブラウン管ガラスに対する添加率、N2O濃度を振り、鉛回収の最適条件(酸の種類、濃度等)を求めた結果、鉛ガラス中のPbを選択的に抽出分離することが可能であることが示唆された。
(2)ブラウン管のマテリアルフロー解析
ブラウン管及びガラス素材のマテリアルフローモデルに関する基礎情報を収集し、モデルの骨格を作成した。

■ K113008  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3008

2.委員の指摘及び提言概要

 研究目標に対して十分に進行している。24年度はコスト試算を行い、最終年度にはリスク関連データ、物質としての安定性、不確実性、コストに関するトレードオフガイドラインを提示し、実用化に向けた道筋を示して欲しい。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113009】最終処分場機能の健全性の検査手法と回復技術に関する研究 (H23〜H25)
研究代表者氏名: 遠藤 和人((独)国立環境研究所)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
(1)構造的健全性評価のための検査技術開発
 処分場の沈下、構造等の諸元を把握するためのアンケート調査と現場調査を実施し、室内実験で実施する廃棄物地盤の物理特性を踏まえて、沈下の将来予測モデルを構築する。土堰堤のすべり、転倒に着目した安定性評価について、包括的な見解を取りまとめる。非破壊探査による処分場構造把握に対する適用性を明らかにする。地下水水質や量を用いた漏水判断の評価フローと適用限界を明らかにする。


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(2)維持管理期間の推定に関する評価技術開発
 浸出水や処分場ガスの発生量、質をアンケートや現場調査によって把握し、ガス発生ポテンシャル試験を実施することで、処分場諸元に関連付けた類型化を実施することで、廃止までの維持管理期間推定を行う。
(3)健全性回復に向けた現場適用技術開発
 処分場の健全性を評価するための一連の検査手法をとりまとめ、費用対効果を考慮した回復技術の提案を行い、マニュアル案としてとりまとめる。
<本年度の目標>
(1)構造的健全性評価のための検査技術開発
 分担研究者が所属する自治体(埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県)の一般廃棄物処分場の維持管理状況を把握するため、アンケートや現場調査を実施し、沈下等の類型化を行う。室内試験による廃棄物の力学特性(沈下、斜面安定)を把握し、既往研究レビューを実施する。多段積み土堰堤を有する処分場にて物理探査を実施して実際の構造との比較検証を行う。アンケート等で得られた地下水データを利用して漏水検証を行う。
(2)維持管理期間の推定に関する評価技術開発
 アンケート等で得られたデータを利用し、浸出水水質やガス発生量のトレンド解析を実施する。ガス発生ポテンシャル試験を実施して処分場データとの比較検証を行う。
(3)健全性回復に向けた現場適用技術開発
 保有水水位低下ならびに有害ガス発生抑制に関する模擬試験を実施すると同時に既往研究レビューを行うことで、処分場構造と廃棄物質との関係を明らかにする。
<本年度の成果>
(1)構造的健全性評価のための検査技術開発
 物理探査として比抵抗探査、電磁波探査、弾性波探査を実施した結果、土堰堤等の土質材料と廃棄物材料との境界領域を非破壊で可視化することが可能であった。焼却灰や汚泥を主体とする産業廃棄物を用いた三軸圧縮試験結果より、直径15cmでも30cmでも同様の結果を得ることができた。また、締固め曲線には粒径の影響が大きいことがわかった。地下水を採取する際にはポンプを用いて底泥撹拌を抑制する手法が良いことが明らかとなった。
(2)維持管理期間の推定に関する評価技術開発
一般廃棄物処分場と産業廃棄物処分場の原水水質データを集め、経年変化をみるためのデータ整理を行い、一般廃棄物処分場のT-Nの経年変化は、いずれの処分場において時間とともに減少する傾向が観察された。
(3)健全性回復に向けた現場適用技術開発
 廃石膏ボード埋立由来と考えられる硫化水素ガス発生について、その発生ポテンシャルに関する室内培養試験を実施し、硫化水素ガス発生量の原単位は150μL/g・化学糊・石膏粉であることが求められた。

■ K113009  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3009

2.委員の指摘及び提言概要

 処分場機能の健全性という難しいテーマに対し、3つのテーマでの総合的な調査、研究にまとまりのある目標どおりの成果が出ており、高く評価する。一方、個別事象(構造的健全性評価;斜面土堰堤等の崩壊・沈下・漏洩、維持管理期間の推定;浸出水の類型化・ガス発生ポテンシャル)に関する特性データとそれらから導出される普遍化、一般化された評価モデルあるいは指標化を追求し、ケーススタディに終わることがないよう願いたい。同時に、各論的な要素と一般化の安易な同一化には注意をされたい。事故、漏洩等の対策の方法、コストなどと併せて総合的に評価できると大変有益と思う。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113010】静脈産業のアジア地域への移転戦略の構築に関する研究 (H23〜H25)
研究代表者氏名: 山田 正人((独)国立環境研究所)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
アジア地域へ、わが国からの民間投資を基本として、アジア風土に適合した廃棄物資源循環の技術と管理手法を移転し、持続的な現地での運営が可能な静脈産業の事業モデルをアジアの複数都市で立案することで、わが国の静脈産業移転戦略を示す。個別には、アジアに適合し、欧米に対して優位な国産の技術・管理手法を官民の連携手法を含めてメニュー化する。アジア都市における廃棄物資源循環フロー・静脈産業市場、現地パートナーの所在、行政・法制度等の事業環境を示す。先行事例の検証と共に事業の適切な領域を分析する。アジア複数都市において、国産の技術・管理手法の移転手法を資金調達手法や利益化手法、環境改善効果と共に、具体的な事業モデルとして示し、総合して戦略とする。


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<本年度の目標>
わが国の技術、政策、静脈産業の現状をメニュー化する。わが国および欧米からの廃棄物資源循環市場への参入および支援の事例を整理して、事業環境の構成要素を抽出・整理する。アジア都市(ベトナムを想定)の事業環境を把握する。以上、情報を用いて、SWOT分析を行い、ベトナムにおける事業領域特定と過去の事例の検証等を行う。
<本年度の成果>
ベトナム国で我が国の静脈産業移転が有望な事業領域は、化学系(有害)廃棄物、建設系廃棄物および都市ごみであると特定された。化学系(有害)廃棄物では、日系および欧米企業を当初のターゲットとし、法整備との一体的展開や段階的な「ローテク」の商品化、建設廃棄物では、ODA事業によるリサイクル品の基準と利用率の指定を契機とした、法整備との一体的展開による土石系資源の循環利用事業や段階的な再生資源製造拠点整備の複数企業連携、大規模埋立地の確保による差別化、都市ごみでは、大都市の周辺都市へアジア適合技術を導入していくことを契機とし、都市ごみ総合管理や資源化・エネルギー化総合拠点整備に関する官民連携による事業展開や、日本型技術の優位性理論武装による差別化、コストダウンを念頭に置いたアジア適合技術のRe-engineeringによる段階的進出が戦略として考えられた。

■ K113010  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3010

2.委員の指摘及び提言概要

事業モデルの立案、提示はわが国の政策としても重要なテーマにつながるが、具体的なプログラムとしての展開を考えるときには、机上の空論にならない工夫が必要であり、アウトプットのイメージを明確にする必要がある。国あるいは都市により廃棄物事情が異なるので、事業戦略の成果を上げるためには的を絞った方がいいと思う。また、ベトナムやタイでは成果が得られると思われるが、中国ではどのようにアプローチをするのか、確実な見通しを示してほしい。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113011】有害危険な製品・部材の安全で効率的な回収・リサイクルシステムの構築 (H23〜H25)
研究代表者氏名: 寺園 淳((独)国立環境研究所)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
各種処理施設などでの事故・環境汚染の事例から、家庭や事業所から廃棄される有害危険な製品・部材を抽出する。金属スクラップ火災が発生した場合には、その調査にも協力する。なお、東日本大震災の発生に対応して、被災地における仮置場での火災発生原因に対しても、可能な範囲での把握を試みる。
自治体の処理、民間の自主的回収、ならびに物流過程を経て輸出に至る国内フローや自治体の分別・処理プロセスを把握する。処理施設の金属挙動調査によって、有害性物質の捕捉や資源性物質の回収状況などを明らかにする。また、民間のリサイクル施設においても、有害性・資源性物質の管理状況を把握する。各種危険性把握試験によって、火災事故の原因と火災回避条件を求める。


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短期的に可能な目標として、自治体における分別方法や処理施設での安全管理指針を提示し、中長期的な目標として安全で効果的なリサイクルシステムを提示する。
<本年度の目標>
自治体・民間の処理施設、ならびに輸出現場などにおける火災・爆発事故や環境汚染について、先行の研究実績・データベースなどによって、その事例を収集、分析する。金属スクラップ火災が発生した場合には、その調査にも協力する。使用済み電気電子機器に関連して、有害危険な製品・部材を抽出する。東日本大震災の発生に対応して、被災地における仮置場での火災発生原因に対しても、可能な範囲での把握を試みる。
自治体の処理、民間の自主的回収、ならびに輸出に至る国内フローや自治体の分別・処理プロセスの概略を把握する。実際の処理施設における投入・排出物の調査によって、金属元素の挙動の概略を求める。危険性評価試験として熱分析などの試験を行い、火災・爆発事故の原因と防止対策を検討する。
欧州など諸外国における有害危険な製品や部品の取扱い状況を調査する。各種リサイクル法やバーゼル法などの関連規制を整理する。
<本年度の成果>
廃棄物関連施設等での火災事故・環境汚染として、使用済み電気電子機器に含まれる電池類やトナー、有害金属などの事例が挙げられた。2012年1月に発生した金属スクラップ火災現場からは蓄熱発火の可能性が疑われた。東日本大震災後に発生した瓦礫火災を調査した結果、出火原因として微生物の発酵の可能性が高かった。
一般廃棄物処理における収集・処理フローを推定した結果、年間1人あたり約2kgの使用済み電気・電子製品が一般廃棄物として排出され、その処理方法は破砕が全体の8割と推計された。調査対象とした粗大・不燃ごみは重量で電子基板や電池類をそれぞれ1%弱含んでいた。熱処理プロセスにおいては、貴金属含有銅原料として高付加価値化の可能性があることが明らかとなった。トナー粉の防爆対策としては、静電対策、電気設備を防爆構造にすることなどが望まれた。
国内では十分回収されていない電池類やトナーカートリッジに対する回収システムの構築が求められることと、国際的には有価物に対する下流の処理状況把握も求められる傾向にあることを指摘した。

■ K113011  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3011

2.委員の指摘及び提言概要

「不適正な管理によっておこる火災」が研究対象であるのなら、課題名を修正するなど研究の的を絞ったほうが良いのでは。火災・爆発のような事故事例と排水による環境汚染の事例は同列での扱い難しく、火災にしても原因によって対策が大きく異なるのではないか。このため、製品ごとに回収・リサイクルシステムの型を提示する必要があると思う。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113012】電池の循環・廃棄システム構築に向けた環境負荷解析及び政策比較研究 (H23〜H25)
研究代表者氏名: 浅利 美鈴(京都大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
電池については、日本国内では、水銀フリー化や二次電池の開発、資源有効利用促進法による小形二次電池の回収・リサイクル、リサイクル技術の構築など、環境負荷低減策も一定の進展を見せている。しかし、いまだに家庭などで使用される小形電池の回収率は2割程度と低く、使い捨て電池の評価や循環・廃棄を含む管理政策に関する議論も十分には行われていない。そこで、本研究を通じて①まず、循環・廃棄の実態を把握した上で、フロー解析を行い、電池とそこに含まれるカドミウムや鉛、レアメタルなどのフローに関する基礎的知見を得る。また②ライフサイクルアセスメントにより、小形一次電池(使い捨て電池)と小形二次電池、将来製品との比較、リサイクルシステム構築の効果などを検証する。さらに③欧米や中国、東南アジアなどを対象に、電池政策に関する政策比較を行う。これらで得られた知見より、特に日本における電池政策のあり方を検討する。


図 研究のイメージ        
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<本年度の目標>
①統計データや自治体・業界団体ヒアリング、アンケート調査などをもとに、日本における主要な小形電池の現状の循環・廃棄フローを解析し、問題点を把握する。京都市ごみ関連調査とも連動する。
②本研究で実施するLCAについて、目的及び調査範囲の設定を行い、必要なデータなどを明らかにし、インベントリ分析の準備を行う。製造やリサイクルプロセスから入手する必要があるデータについては、製造メーカーやリサイクラーとの調整を行い、調査・測定などを行う。
③論文や報告書、ウェブなどから、できるだけ多くの国や地域における電池政策に関する情報を収集し、データベース化を始める。また、先行性や将来性の観点から、欧州(EU本部、スイス及びフランス)及びアメリカ、アジア地域(中国、マレーシア)を訪問し、各国・地域の電池政策に関する情報収集及び視察を行う。その際、周辺の国に関する情報収集方法についても、できる限り情報を得る。
<本年度の成果>
全体目標の第一ステップとして、次のような研究展開や準備を行った。
①フロー解析については、循環・廃棄の実態に関するヒアリングや統計データ収集を行った上で、代表的な小形電池であるニカド電池中のカドミウム、リチウムイオン電池中のコバルトに着目したフロー解析を行い、それぞれの国内フロー(現状や経年変化)の推定結果を得た。
②ライフサイクルアセスメントについては、既存研究の論点や結果をレビューし、どのようなライフサイクルアセスメントが求められるかの検討を行った。
③欧米やアジアなどを対象に、小形電池の回収・リサイクル制度に関する情報収集を行い、基礎的な比較情報を得た。また、デンマークやスイス、ドイツ、台湾については、詳細な現地視察、各国政府や業界団体等へのヒアリング調査等を行い、政策比較を行った。
これらから得られた知見より、特に日本における電池政策のあり方や、回収実験等の検討を始めた。

■ K113012  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3012

2.委員の指摘及び提言概要

初年度の研究は着実に進められていると評価できるし、社会システムの変更についても提言できる可能性を持った研究であると評価したい。今後のLCA評価では、有害性かサイクルシステムかのどちらに重点を置くか、明確にして実施しないと有効な効果が得られない。ただし、リサイクルの方法は電池の種類によって異なるので、循環システムをLCAから評価するのは難しいと思われる。また、金属成分のLCAについては、最終処分後の長期にわたる環境負荷を評価する必要がある。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113015】中間処理残さ主体埋立地に対応した安定化促進技術の開発 (H23〜H25)
研究代表者氏名: 東條 安匡(北海道大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>
中間処理残渣埋立で顕在化している各種問題(焼却灰の固結による通気/通水性の悪化と高アルカリ条件の持続、極端な偏り流れとその時間的変化による洗い出しの遅れと浸出水の濃度変動、さらには焼却灰や破砕残渣等によってもたらされる重金属や有機汚染物質の長期的溶出)を、埋立工法と埋立構造の改善によって解決することを目指す。具体的目的は以下の3つである。①中間処理残渣主体の埋立地を対象に各種物理探査とボーリングを実施し、埋立層内の流動状況等を把握し、安定化遅延に影響を与えている要因を特定する。②焼却灰層の固結、埋立層内の不均質性、極端な水みちの生成等を改善するために、廃棄物の混合埋立を提案し、固結、通気/通水性等の改善、さらに安定化に及ぼす効果を明らかにする。③有害物の動態に及ぼす混合埋立の影響を明らかにするとともに、それらを埋立層内で制御する機能性中間覆土の有害物捕捉機構の解明と設計手法を確立する。
<本年度の目標>
①中間処理残渣主体の埋立地を選定し、物理探査(比抵抗+EM)により埋立層内の状況(安定化の状況、水分流動状況等)を把握する。物理探査の結果を基にボーリングを行い、入手したサンプルを対象に物理特性、化学的特性を測定し、安定化の片寄りを明らかにする。
②焼却灰を対象に固結化のメカニズム(鉱物的変化)を明らかにすると共に、固結化による透水性の低下が含有物質の放出に与える影響を明確にする。
③各種中間処理残渣の性状を既存データと試料分析から収集し、性状改善が期待される廃棄物については配合を決定する上での指標を明確にする。
④各有害物質(放射性物質を含む)の移動可能性を各種シナリオを想定してリストアップし、機能性覆土で捕捉しなければならない対象物質とその形態を明確にする他、焼却灰、覆土層に対する放射性物質の吸着特性を実測する。また隔離層の設計手法についても検討を行う。
<本年度の成果>
①埋立履歴の明確な1処分場にて比抵抗探査とEM探査を実施した結果、両物理探査の結果は調和的で、埋立地内部構造を把握できた。埋立履歴と物理探査の結果を元に、ボーリングと表面部掘削を行った結果、焼却灰層境界部に浸潤層が存在し、焼却灰の固結が片寄り流れに寄与していることが確認された。
②数種の焼却灰を対象に間欠の浸潤試験を実施した結果、Ca含有量の高い灰で顕著な固結化が生じることを確認した。固結による透水係数の低下と塩類の洗い出しを追跡した結果、2週間で透水係数は初期の1/10に、塩類の洗い出しは可能溶出量の30%程度に留まった。固結灰では初期に存在したPortlanditeが消失しCalciteのピークが増進したことから炭酸塩の形成が固結に関与していると考えられた。
③混合埋立の指標として必要な酸素消費速度を複数の廃棄物について実測しデータベースを作成した。汚泥の通気性改善に鉱滓と建設廃棄物を混合した結果、透気係数は400倍まで改善した。体積で25%の汚泥を鉱さいと混合することで酸素侵入深さを2〜7m程度まで確保可能なことがわかった。
④機能性覆土層の有害物捕捉として、ゼオライト等の鉱物によるCsの吸脱着特性を検討した。吸着性能は、ゼオライト>ベントナイト>カオリンの順であり、特にゼオライトについては、脱着量も小さくCsを強固に捕捉できることがわかった。 研究のイメージ

図 研究のイメージ        
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■ K113015  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3015

2.委員の指摘及び提言概要

 研究計画に対し、着実な研究成果が得られている。特に課題が総合的かつ系統的に整理された研究であり、研究開発との連携、プラガブル(プラグイン可能な)まとめ方により処分場への応用が可能と思われるが、既存と新設処分場に共通な要素技術と個別の要素技術があると思われるので、整理が必要である。最終段階では促進に対する技術的手法を提示してほしい。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113016】バイオマス・二酸化炭素を原料としたソーラー燃料・化成品変換システムの構築に関する研究 (H23〜H25)
研究代表者氏名: 天尾  豊(大分大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
本提案は以下の4項目から構成される。
①酵素・触媒によるセルロースの糖化,グルコース脱水素酵素による電子供与分子及びグルコン酸生成プロセス
②光合成色素分子と電子伝達分子で構成される光レドックス反応プロセス
③白金微粒子による水素生産反応プロセス
④ギ酸・アルデヒド・アルコール脱水素酵素系による二酸化炭素のメタノールへの変換プロセス
研究期間3年間で、多糖類セルロースと二酸化炭素から生物工学的手法と光エネルギー利用により新規エネルギー源・燃料となる水素・メタノール生産反応系を確立し、システムの効率化プロセスへ展開する。


図 研究のイメージ        
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具体的には、バイオマス利用の需要が高い古紙以外の不溶性セルロースの使用が可能な反応系を構築することを目的とし、反応収率も同様に、物質量換算で不溶性セルロースの50%程度を水素に変換でき、なおかつ糖化したグルコースはすべてグルコン酸に変換可能な系の達成が最大かつ最終の成果目標とする。一方メタノール生産に関する目標値として、申請者の持つ技術シーズでは、二酸化炭素を原料として収率50%でメタノールが合成できている。さらに収率を80%まで向上させる。概算ではあるが、二酸化炭素20Lとし、反応収率を80%に設定し、1日あたり炭素換算で7.2g削減することができるシステムを目指す。
<本年度の目標>
研究項目①では、古紙由来のセルロースの高速加水分解の達成を目標とする。具体的には1時間あたりのセルロースからグルコースへの変換効率を50%を目指す。糖化したグルコースはすべてグルコン酸カルシウムの形で回収する。
研究項目②では、効率よく電子伝達分子が光還元できるような反応の最適化を進める。光エネルギー変換効率5%を目標とする。
研究項目③では、白金微粒子を水溶性高分子で化学修飾し、水中で効率よく分散可能な触媒材料に展開する。
研究項目④では、特に二酸化炭素の還元や化合物への取り込み能力を有する二酸化炭素固定化酵素を探索し機能を調べる。具体的にはギ酸脱水素酵素のような二酸化炭素を還元してギ酸を生成する酵素を探索・機能解析を行う。二酸化炭素からギ酸への変換効率を1時間あたり90%を目指す。
<本年度の成果>
平成23年度での目標達成度として、結晶セルロースや古紙由来のセルロースをイオン液体とルイス酸触媒の組み合わせ、あるいは糸状菌由来のセルラーゼで処理することによって,比較的温和な条件下で糖化することに成功した。反応効率は30%であり、当初目標に飛躍的に近づく成果を得られた。次に光捕集機能を持つ色素分子と光増感機能を持つ色素分子とを複合した材料を開発した。複合色素は光照射に対する安定性が飛躍的に向上し、さらに電子伝達分子を効率的に光還元することを見いだした光エネルギー変換効率は条件により4.5%にまで向上した。また、白金微粒子をポリビニルアルコールを基盤とした水溶性高分子で化学修飾することで、水中で凝集すること無く効率よく分散可能な触媒材料に展開することに成功した。最後に、二酸化炭素の還元や化合物への取り込み能力を有する二酸化炭素固定化酵素を探索し機能を調べた。具体的には二酸化炭素を還元してギ酸を生成するギ酸脱水素酵素に対して効率的に作用する人工基質を合成することに成功し、1時間あたり90%以上の二酸化炭素からギ酸への変換効率を達成した。

■ K113016  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3016

2.委員の指摘及び提言概要

 計画に対して順調に研究が進行している。パーツテストは成功したが、「組み上げたシステムが理論どおりに進行するのか不安がある」、「興味深い要素の組合せであるが、他のアルコール合成に比べて優位性が不明」といった不安要素がある。新規性の高い技術として評価できるのでCO2の供給やコストを含めた実用化への道筋や実用段階のシステムのイメージを明確にして欲しい。また、早期に問題点を抽出し、技術開発の見通しを立てて欲しい。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113017】産業廃棄物マニフェスト情報の信頼性の確保と多面的活用策の検討 (H23〜H25)
研究代表者氏名: 谷川 昇((公財)日本産業破棄物処理振興センター)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
(1)マニフェストのシステム運用と記載情報活用の実態解析
マニフェストのシステム運用と情報活用の実態を明らかにして、マニフェストシステムの有効活用のための改善策を提案する。
(2)マニフェスト情報の信頼性の検討
マニフェスト情報の信頼性の程度と改善策を明確にし、マニフェスト情報が産業廃棄物の量と質の流れの解析に利用可能であることを明らかにする。
(3)マニフェストシステム活用事例の解析
韓国、台湾、マレーシア、ドイツ等の海外での電子マニフェストシステムと国内のマニフェストシステムの記載情報の内容、活用方法、バーゼル条約のシステムとの連携等の特徴を明確にする。


図 研究のイメージ        
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(4)マニフェスト情報の多面的活用策の提案と検討
貴重なマニフェスト情報を、国・都道府県等、産業廃棄物の排出事業者、処理業者が、産業廃棄物の3R推進と適正処理の一層の推進など多面的に活用できる方策を提案し、紙マニフェスト情報の効率的な利用可能性を示す。
<本年度の目標>
(1)マニフェストのシステム運用と記載情報活用の実態解析
主体 (都道府県市、産業廃棄物の排出事業者、収集運搬・処理業者等) 別のマニフェストのシステム運用と情報活用の実態を把握し、活用ニーズを明確にする。
(2)マニフェスト情報の信頼性の検討
①処理業者によるマニフェスト記載情報の正確性の確認方法、廃棄物の計量実施等の現状を明らかにする。
②搬入産業廃棄物調査
1)産業廃棄物最終処分場での電子マニフェストと紙マニフェストの利用状況、マニフェスト記載情報と搬入廃棄物の内容の一致の程度、マニフェスト記載情報の利用状況等を明らかにし、マニフェスト記載情報の信頼性を示す。
2)今後の産業廃棄物の種類別の質的情報の把握方法を検討するために必要な産業廃棄物の主要構成成分や有害金属、希少金属の含有量等情報を整理する。
(3)マニフェストシステム活用事例の解析
韓国、台湾、マレーシアの電子マニフェストシステムの記載情報の内容、活用方法、バーゼル条約のシステムとの連携等の特性を明確にする。
<本年度の成果>
①都道府県・政令市は、集計マニフェスト情報を十分には活用していないこと、産業廃棄物処理業者は、マニフェストに記載された種類と数量を概ね信頼しているが、重量換算係数に対する信頼性の認識が高くないことが分かった。
②一部の種類を除いて、最終処分場に搬入される産業廃棄物のマニフェスト記載の種類の信頼性が高いこと、マニフェスト記載重量と実測重量が一致する割合は約60%と高くはなく、現場での計量の励行と環境省通知の重量換算係数の見直しが必要であることが分かった。
③主要な産業廃棄物の主成分、有害金属、希少金属の含有量や溶出成分量等を示し、マニフェスト情報と搬入産業廃棄物の化学組成の関係を明確にした上で、マニフェストに化学成分の質・量の情報を付与することの重要性を明らかにした。
④海外の電子マニフェストシステムの運用と活用状況を明確にし、今後の日本におけるマニフェスト記載情報の有効利用にあたっての課題を抽出できた。
⑤東日本大震災の災害廃棄物処理管理のために、電子マニフェストシステムを稼働させ、その実績と改善策を示した。

■ K113017  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3017

2.委員の指摘及び提言概要

マニフェストの実態調査など、問題点抽出の意義は認められるが、それらの結果を踏まえた具体的な提案が必要である。質的情報の把握は、信頼性が確保できる方法を検討する必要がある。また、3年間の研究で何をどこまで明らかにできるかが必ずしも明確でないため、効果の全体が見えにくい。「多面的ニーズ」をより明確にするなど、研究のストーリーを再度整理する必要があるのではないか。

3.評点

   総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113018】磁性ナノ球状カプセル酵素と酵母によるバイオエタノールの製造および相溶化処理した生分解性複合材料の創製 (H23〜H25)
研究代表者氏名: 邱 健輝(秋田県立大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
資源の有効利用、地球環境問題、エネルギー問題は益々注目されつつある。そのため、一層の廃棄物・炭酸ガス削減およびカーボンニュートラルで再生可能なバイオマスの有効利用による循環型社会の形成が強く求められている。さらに、日本では廃プラスチック総排出量が年間1,000万トン(容器包装,家庭用品など:約47%)以上超えている。
本研究では、「バイオマス・ニッポン総合戦略」で提言されたバイオマスの総合利用として、回収・再利用できる磁性ナノ球状カプセル酵素と酵母、および稲わらなどの草本系バイオマスの表面処理技術(リグニンなどの残渣も含む)を開発・確立し、低コストのバイオエタノール製造技術と新規生分解性複合材料の開発および実用化を目指すことを全体目標とする。


図 研究のイメージ        
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<本年度の目標>
本年度は、以下の3つの項目について検討することを目標とする。
①粉砕装置の技術改造および最適なバイオマスの粉砕加工条件を確立する。
②磁性ナノ球状カプセル酵素と酵母を創製し、糖化と発酵試験を行い、その有効性を確認する。
③各種粒度・添加量のバイオマス/生分解性複合材料を作製し、その力学特性と内部構造の関係を明らかにする。
<本年度の成果>
(1)粉砕装置の改造・粉砕条件の確立
本研究により、インナーパワーリングミルを用いれば、稲わら、麦わら、籾殻のような草本系バイオマスを20μm程度まで粉砕するのに効率的にできることが明らかとなった。
(2)磁性ナノ球状カプセル酵素の開発、有効性の確認
各バイオマスの糖化率は20μm程度まで粉砕することで70%以上まで高めることが可能となった。また、磁性ナノ球状カプセル酵素の開発とその有効性を確認した。現時点では糖化率は40%程度と低いものであるが、来年度、最適条件を検討することで向上するものと予想される。
(3)バイオマス/生分解性複合材料の作製
バイオマス/生分解性複合材料の力学特性は稲わらの添加量の増大と粒度の低下により悪くなり、稲わらと樹脂との相溶性が良くないことが明らかとなった。来年度目標である表面処理についての基礎段階として、シランカップリング剤による稲わらの表面改質について検討したところ、強度と界面接合が改善されたが、さらに表面処理の検討が必要である。

■ K113018  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3018

2.委員の指摘及び提言概要

 研究は計画どおり順調に進行している。特に粉砕、加工技術開発には進展が見られる。しかし、磁性ナノカプセル酵素が目標どおりの性能を確保できるか、耐久性に課題が残る。また、粉砕装置のエネルギー消費量、バイオエタノールの製造コスト等の数値や理論に未熟さが見える。既存データや理論を確認の上、精査を望みたい。生分解性複合材料にしても商品として機能やコスト的に市場確保が可能か、しっかりと見通しを立てる必要がある。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113019】農産廃棄物カスケード型循環利用バイオエタノール製造システムに関する研究(H23〜H25)
研究代表者氏名: 北口 敏弘((地独)北海道立総合研究機構)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
 達成目標は以下の通り。
(1)原料収集、保存に関する検討
①各原料の効率的な収集方法、運搬方法の提言
②各原料の保存方法の確立
(2)原料に含まれる有用成分評価
①エタノール抽出物の機能性評価と製品化
(3)原料の前処理
①原料特性に合わせた処理条件の最適化
②蒸煮・爆砕処理の連続処理装置の開発
(4)同時糖化発酵
①高温耐性機能性酵母の創製
②酵素生産、同時糖化発酵のプロセス化
(5)エタノール蒸留残渣焼却灰の成分評価
①エタノール蒸留残渣焼却灰の肥効性成分評価
②エタノール蒸留残渣焼却灰の安全性評価


図 研究のイメージ        
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(6)プロセスの検討
①全プロセスの最適化
②LCA評価
③経済性評価
<本年度の目標>
(1)原料収集、保存に関する検討
①各原料の効率的な収集方法、運搬方法に関する調査
②各原料の長期保存方法に関する検討
(2)原料に含まれる有用成分評価
①エタノール抽出物の動物を用いた機能性評価
(3)原料の前処理
①原料特性の解明
②蒸煮・爆砕処理の連続処理装置の設計、製作
(4)同時糖化発酵
①進化工学的手法による高温耐性機能性酵母の創製
②酵素生産、同時糖化発酵の装置的課題の抽出、対策方法
<本年度の成果>
原料収集、保存に関する検討では、ビートトップなどの農産廃棄物の排出時期、排出形態について調査を行い、収集、運搬方法を検討した。また、ビートトップについて保存方法の検討を行った。その結果、グルコース含有量は、2ヶ月経過後でも貯蔵条件に関係なく、ほぼ一定値で良好であったこと、カロテノイドは低温下の保存が有効であることがわかった。
原料に含まれる有用成分評価では、農産廃棄物からエタノールにより脂溶性成分を抽出し、その成分解析を行った。また、エタノール抽出物の動物を用いた機能性評価を行った。その結果、総合的な脂質代謝改善作用を有するネオキサンチンの機能性が初めて明らかにされるとともに、ビートトップはネオキサンチンを多く含む未利用資源として活用できることが明らかになった。
原料の前処理では、ビートトップほかの農産廃棄物について糖類、リグニンなどの分析によって原料特性を明らかとするとともに蒸煮・爆砕連続処理装置の設計、試作、試運転を行った。
同時糖化発酵では、進化工学的手法によりセルラーゼ遺伝子の発現バランスを最適化させる手法を開発し、UV変異導入法を用いて39℃においても増殖可能な高温耐性酵母の創製に成功したほか、同時糖化発酵装置の装置的課題を抽出し、対策方法について検討を行った。

■ K113019  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3019

2.委員の指摘及び提言概要

要素技術の開発研究としては評価できる。コストを含めた、社会での実用化の見通しを明らかにしてほしい。ネオキサンチンの脂肪代謝効果の判定は大きな成果であると思われる。また、廃棄物の地産地消という点では、北海道固有の研究成果に期待しているが、必要となる科学的データをしっかりと得てほしい。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113021】3Rに係る自治体施策・行動変容プログラムの政策効果分析 (H23〜H25)
研究代表者氏名: 松井 康弘(岡山大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
 本研究は、3Rに係る自治体施策(有料化・分別収集等)・行動変容プログラムに焦点を当て、これらが市民の3R意識・行動、消費支出、ごみの発生・排出に及ぼす影響・相互関連を体系的に解明する。また、施策・プログラム実施に伴う費用と期待されるごみ減量・環境負荷削減効果を推定し、その費用対効果を評価する。
具体的には、全市町村対象の3R施策動向調査を実施、地域特性・施策効果等に基づき類型化し、特徴の異なる自治体でアンケート調査を実施、地域横断的分析により自治体施策の意識・行動への影響を解明する。また、行動変容プログラムを開発して岡山市等に適用し、啓発前後の意識・行動・消費支出・ごみ発生等を調査、その効果・因果構造を検討する。


図 研究のイメージ        
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さらに、市民の意識・家計支出・個人属性・自治体施策・行動変容プログラムの効果を組み込んだ「ごみ発生・3R行動の予測モデル群」を構築、各種自治体施策・行動変容プログラムの費用対効果を評価する。
<本年度の目標>
(1)自治体の施策動向調査・類型化
全国市町村を対象として3R施策動向調査を実施、施策の実施水準・効果に関する最新データを収集するとともに、人口統計・廃棄物処理実態調査等のデータと統合利用し、地域特性・施策効果等に基づいて自治体を類型化する。調査・類型化に当たっては、廃棄物分野の実務担当者・専門家ヒアリングにより妥当性を確認する。
(2)行動変容プログラムの開発・適用
保健・交通分野における行動変容の研究事例・理論、3Rに係る先進事例等の体系的レビューを実施し、考慮すべき要因・手法を体系的に整理した上で、3R行動変容プログラムのコンセプトを開発する。
(3)行動変容プログラムの効果測定及び行動変容の因果構造の検討
岡山市において、プログラム導入前の調査として、市民の個人属性・意識・行動・家計支出・ごみ発生に関するアンケート調査・ごみ計量モニター調査を実施し、それらの現状と相互関連を明らかにする。
<本年度の成果>
(1)自治体の施策動向調査・類型化
全国市町村を対象として3R施策動向調査を実施、施策の実施水準・効果に関する最新データを収集し、人口統計・廃棄物処理実態調査等のデータと統合利用し、地域特性に基づいて自治体を類型化し、各種3R政策の効果を明らかにするとともに、ごみ・資源化物の予測モデルを構築した。
(2)行動変容プログラムの開発・適用
環境・保健・交通分野における行動変容の研究事例・理論、3Rに係る先進事例等の体系的レビューを実施し、考慮すべき要因・手法を体系的に整理した上で、3R行動変容に向けた情報提供方策案を検討した
(3)行動変容プログラムの効果測定及び行動変容の因果構造の検討
岡山市において、市民の個人属性・意識・行動・ごみ発生に関するアンケート調査・ごみ計量モニター調査を実施し、各種3R行動の行動予測モデルの開発、ごみ・資源化物の原単位の算定、並びに各種3R政策のごみ減量・リサイクル促進ポテンシャルの推定を行った。

■ K113021  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3021

2.委員の指摘及び提言概要

数多くの自治体アンケートを分析した努力は評価できるが、得られた知見に新規性がない。行動予測モデルについても、結果を政策に反映させるためには各地域のおかれた状況分析が不可欠である。実際、岡山でのモデルが、どれだけの普遍性を持つのか。あまりにも単純に分析しており、研究のストーリー性も欠如しているために説得力が弱い。開発したプログラムの適用可能性など、実際のモデルを対象に調査されることをお勧めする

3.評点

   総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): b  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113022】一般廃棄物不燃・粗大ごみの適正処理に関する研究 (H23〜H25)
研究代表者氏名: 川嵜 幹生(埼玉県環境科学国際センター)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
(1)市町村不燃・粗大ごみに係わる分別情報の整理
 市町村の不燃・粗大ごみ収集に関連した分別・分類についての情報収集・整理を行い、それらの実態及び差異を明らかにする。
(2)市町村資源化施設における処理方法・資源化物・処理物の調査
 資源化施設において調査を行い、各施設間の差違を明らかにする。
(3)処理残さの物理化学的特性調査及び検討
(4)処理方法と処理残さの物理化学的特性との関係についての評価
処理残さの再資源化の方法についての調査・試験及び再資源化可能量の把握、比重差選別等を適用し、試験及び評価を行う。


図 研究のイメージ        
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(5)県内及び近隣の再資源化物利用インフラ情報の調査
(6)研究成果のまとめ及び公表
埼玉県清掃行政研究協議会等において公表することにより、市町村廃棄物担当者の資源化意識を啓発する。
<本年度の目標>
(1)市町村不燃・粗大ごみに係わる分別情報の整理
 HP情報等から不燃・粗大ごみの分け方・出し方に関する情報整理を行い、市町村による差異を明らかにする。
(2)市町村資源化施設における処理方法・資源化物・処理物の調査
 現場におけるヒアリング調査及び視察調査等から、搬入廃棄物に対する処理方法、処理施設投入前後におけるマスバランス、施設稼働率、売却品目・売価、保守に係わる情報等を明らかにする。
(3)処理残さの物理化学的特性調査
 物質組成、嵩密度、粒度分布、熱量、金属含有量等について調査を行い、施設間の差違を明らかにする。
(5)県内及び近隣の再資源化物利用インフラ情報の調査
 廃プラスチック類の利用施設についての情報、位置情報、年間・月需要量、品質、現在の購入価格等の調査を行う。
(6)研究成果のまとめ及び公表
 埼玉県清掃行政研究協議会、全国都市清掃会議や資源循環廃棄物学会等で、成果の公表を行う。
<本年度の成果>
①県内全市町村の不燃・粗大ごみに係わる分別情報収集・整理を行い、分別状況を明らかにした。
②20資源化施設の処理方法に関する情報を入手・整理を行った。
③及び④県内20箇所の資源化施設の処理残さを採取し、可燃分含有率等の物理化学的特性を調査し、①及び②の情報を元に、物理化学特性に与える要因について検討した。また、不燃ごみ中の廃電化製品に着目し、廃家電の混入両調査を行うとともに、抜き取った廃家電を用いた破砕選別に関わるマスバランス調査を行った。さらに、その一部を用いて簡易組成調査を行った。
④比重差選別装置を用いて不燃残さの処理を行い、生成物の質を把握するとともに改善点を抽出した。
⑤県内及び近隣の再資源化物利用インフラ情報を、市町村のヒアリング調査及び業界新聞等を用いて収集、整理を行った。
⑥研究成果のまとめ及び公表
⑦全国都市清掃会議研究発表会において、①〜④のの研究成果を元に2件の研究発表を行った。

■ K113022  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3022

2.委員の指摘及び提言概要

 初年度の成果としては十分に達している。しかし、実態調査から研究への展開が望まれる。例えば、データの適切な公表によるコミュニティからのフィードバックによる不燃物分別精度の向上、選定処理システムのコスト影響、指導体制などに着目した調査分類の残渣特性への影響等である。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b


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研究課題名: 【K113023】家庭系有害廃棄物(HHW)の現状把握と回収システム構築に関する研究(H23〜H25)
研究代表者氏名: 松藤 敏彦(北海道大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
第1年度の文献調査及びアンケート・ヒアリング調査、第2年度の排出管理・回収モデル実験、そして全体を通じて開催する外部委員を交えたワーキンググループの検討により、今後の我が国で実践、適用が可能な家庭系有害廃棄物HHW管理(回収・適正処理)に係る社会システム案を複数設計する。
とりわけ将来に向けた社会システムの具体化に向けて、法的な措置及び公共関与の必要性、マーケットベースでの実現手法(費用負担・資金調達の手法、関係生産者の参加・協力を可能とする広域認定制度等の活用等)についてのオプション提示。


図 研究のイメージ        
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<本年度の目標>
①HHWを巡る国内外の文献調査を実施、日欧米の有害廃棄物管理に関連する法制度の変容、国内外特に視察対象となる海外都市の施策(回収スキーム等)の抽出、今日国内で着目すべきHHWリスト案を策定。
②HHWリスト案に基づくアンケートを実施して、全国世帯におけるHHW発生、排出(処理)先の現状、有害性に関する意識等の把握を行う。
③さらに、海外でのベストプラクティス事例の調査を実施する(例えば、ウィーン市及びウィーン工科大学(オーストリア、チューリッヒ市(スイス)、シアトル市(米国)等)。
これらを統合して、第2年度に実施するHHW回収モデル事業案(複数の方式を包含した構想)を得ることを目標とする。
<本年度の成果>
①HHWを巡る国内外の文献調査を実施し、日欧米の有害廃棄物管理に関連する法制度の変容を調査・比較を行い、また欧米都市の施策(回収スキーム等)を調査した。欧米にいてはHHWの明確な定義はなく、回収は自治体レベルで行われていることが明らかになった。
②自治体の処理状況について、申請者らが過去に行なった調査を補足し、我が国においては家庭系有害廃棄物の収集が皆無であることを確認した。
③欧米における回収品目をもとに、生活習慣、使用頻度の違いなどを考慮して、日本版HHWリストを作成した。この過程でリスクの程度による分類を行い、規制等が設けられる以前の製品(Old Legacy)、内容不明物(Unknown)の存在も明らかとした。
④家庭における購入、保管、廃棄の実態把握のため、全国、回収実験を計画している旭川市、消費者意識の高い生活クラブに対し、アンケート調査を実施した。対象品目はHHWリスト案より使用頻度の高いものを選び、リスク、環境影響に関する質問も加えた。
⑤モデル自治体の聞取り調査を実施し、ステークホルダーから成るワーキンググループ会議を開催して、モデル回収実験の準備を進めている。

■ K113023  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3023

2.委員の指摘及び提言概要

研究課題はわが国の環境政策で検討されるべき重要なテーマに属しており、これまで研究計画に従って研究が進められていると評価できる。研究成果を踏まえて、解決のための的確な提言や政策立案に資する成果を期待したい。ただし、HHWの分類と定量化を明確にして、有害性をはっきりさせる必要があるので、バーゼル条約に記載されている有害性要因との対応で考えてみたらどうか。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113024】アスベスト含有建材の選別手法確立と再生砕石の安全性評価に関する研究(H23〜H25)
研究代表者氏名: 渡辺 洋一(埼玉県環境科学国際センター)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
①実際の建築物解体現場、中間処理施設、再生砕石利用現場を調査し、試料を採取して現場における目視と実態顕微鏡によるアスベスト含有建材の判定手法を確立する。
②散水等による水分の影響や風等の気象条件の影響を加味した飛散実験を行い、実現場における飛散量を推定するとともに、散水等による飛散防止効果を定量的に把握する。
③アスベスト建材判定手法を各工程に導入した場合の効果を検証する。
④アスベスト繊維飛散数及びその状況から、人の健康リスクを計算する。
発生から利用に至る一連の判定−選別システムを、混入した場合の人の健康リスクを考慮した経済的なシステムとして構築する。


図 研究のイメージ        
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<本年度の目標>
実際の建築物解体現場、中間処理施設、再生砕石利用現場を調査し、試料を採取してアスベスト含有建材の混入実態を把握するとともに、現場における目視、及び実態顕微鏡によるアスベスト含有建材の判定手法を確立する。
がれき類破砕時、再生砕石敷設時、使用時等のアスベスト繊維の飛散量測定を行い、実態を把握する。
様々なアスベスト含有建材を用いてアスベスト繊維の飛散実験を行い、種類別、形態別の飛散特性を明確にする。
砕石製造ライン、混合廃棄物破砕選別ラインを調査し、アスベスト建材が混入した場合の各工程における挙動を検討する。
これらにより、建築物解体現場、あるいは中間処理施設の搬入検査においてアスベスト含有建材の判定を可能とする。
アスベスト繊維飛散数及びその状況と疫学データから、人の健康リスクを計算する。
<本年度の成果>
建築物解体現場調査の結果、目視判定し採取した建材にはいずれもアスベスト含有が確認された。レベル3のアスベスト含有建材の管理の甘さが確認された。一方、石綿講習会において実施したアスベスト含有建材の目視判定テストの結果から、ある程度の経験を積むことによって、石綿含有の目視判定を行える可能性が有ることが示唆された。また、実態顕微鏡による建材断面観察により建材中のアスベスト含有量が推定できる可能性のあることが示唆された。さらに、建設混合廃棄物からアスベスト含有建材を目視などによって選別する工程の、選別精度を再現するシミュレーションを構築した。
アスベスト繊維の飛散防止対策については、被災地の実態を調査し、偏光顕微鏡を用いた迅速判定法等の適用を検討した。また、現地測定用飛散量測定装置を試作した。また、アスベスト含有建材や土壌からの繊維飛散量の測定方法や事例を収集・整理し、飛散防止対策検証用実験系構築に向けた検討を行った。

■ K113024  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3024

2.委員の指摘及び提言概要

 研究体制が大きいにも関わらず、全体が機能的に動いていないため、サブテーマの達成度のデコボコに繋がっているといえる。また、選別手法の精度向上にこだわるより、一定精度で漏れ落ちるケースは別処理法で対処する等、柔軟性の高い選別システムの導入が必要ではないか。

3.評点

   総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): b  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b


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研究課題名: 【K113025】有機ハロゲン化合物の熱化学的破壊の可視化・最適化(H23〜H25)
研究代表者氏名: 渡邊 信久(大阪工業大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
本研究では水銀の最終保管に関して、メカノケミカル法以外の水銀安定化技術の開発及び回収量推計の精緻化および将来予測、回収・保管フローにおけるリスク評価を行い、より環境への排出の少ない長期保管、回収システムの構築を目指す。
さらに水銀をベースに作成された大気への排出インベントリー、フローモデルを他有害金属(カドミウム、鉛)に拡張し、排出実態調査や有害金属含有廃棄物調査を踏まえ、環境排出を考慮したマテリアルフローツールキットを開発し、アジア圏での水銀及び他有害金属の制御および管理に用いることを目指す。


図 研究のイメージ        
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<本年度の目標>
より簡便な水銀安定化技術の開発については、より安価で大量に硫化水銀を合成する手法としてボールミルによる方法を検討し、最適条件を見出す。回収水銀量の推計においては我が国の将来予測ができるように蛍光灯からLEDへの切り替えなどの動向を調べ、主に製品由来・不純物の情報を収集する。安定化された水銀を我が国における遮断型処分場、管理型処分場に保管・処分をする場合の大気、水系汚染を想定して健康リスクを評価する。
水銀以外の有害金属については、含有する製品・廃棄物の排出量推計,有害物質を不純物として含む原料等の需給データ等に基づき、排出インベントリーを作成する。その際、主要な排出源と考えられる箇所について排出実態調査、有害金属含有廃棄物の実態調査を行う。インドネシア、マレーシアにおける現地調査を実施し、海外での水銀、有害金属の排出状況、有害金属含有廃棄物の処理・処分状況回収等を明らかにする。
<本年度の成果>
水銀については、水銀及び水銀廃棄物の管理の現状および回収量推計の精緻化および製品由来水銀の回収促進ための調査からは、全体としての水銀回収率は高いものの、さらなる水銀回収余地は大きいことがわかった。SDモデルを用いて作成した水銀のマテリアルフローモデルが水銀移動評価に有効であること及び余剰水銀のより簡便な水銀安定化技術として転動ミルの有効性が確認された。水銀回収・保管フローにおけるリスク評価では遮断型処分場・管理型処分場に保管・処分では健康リスクは十分に小さいが、集中処分および水銀溶出を招く破壊的イベントのケースでは、水銀曝露が時間を置いて顕在化する可能性があることがわかった。アジアでの水銀実態調査ではマレーシアの大気排出ポテンシャルを試算した。
水銀以外の有害金属については、PRTR制度における届出排出量をもとに活動量あたりの鉛、カドミウム排出量を試算し、当該業種からの排出原単位に相当する値として活用できる可能性があると考えられた。

■ K113025  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3025

2.委員の指摘及び提言概要

 研究の的(目標)を絞り込む必要がある。例えば、実炉での熱分解が、実験室でのあるいは理論的な熱分解と、何故かけ離れているのか(可視化)、かつどうすれば適切化(即ち、最適化)できるのかを示すようになって欲しい。

3.評点

   総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): b  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b


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研究課題名: 【K113026】資源性廃棄物の不適切分別を招く心理要因の構造化と分別改善化手法の提言(H23〜H25)
研究代表者氏名: 高橋 史武(九州大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
住民が資源性廃棄物を分別廃棄する際の素工程において、分別忌避を招く時間的・空間的・機会的制限因子を抽出し、それらが与える煩わしさ(心理的負担感)を損失金額ベースで定量的に評価する。そして上記の制限因子の構造性を分析することで、「何が、どのようにして、どのくらい分別忌避の心理要因を働かせるか?」を明らかにする。これらの成果を踏まえ、より適切な分別へと誘導できる分別化手法や消費者(排出者)心理ベースでより分別性に優れた製品をデザインする指針を設計・提言する。


図 研究のイメージ        
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<本年度の目標>
(1)分別回収された資源性廃棄物の分別適切性に関する実態調査
各自治体での資源性廃棄物の分別方法を調査し、分別数が多い自治体と分別数が少ない自治体を選択する。両グループの自治体において分別回収された廃棄物を調査し、自治体間での異物混入状況を明らかにする。
(2)分別作業の素工程分解と各行程での時間的・空間的・機会的制限因子の抽出・整理
購入・消費・ストック・廃棄の各ライフステージにおいて、適切な分別に必要とされる作業(洗浄、剥離、選別、保管など)を抽出・整理する。次に各作業で必要な時間的・空間的・機会的因子(洗浄に必要な時間、保管スペースの必要面積など)を抽出・整理し、アンケート調査や実測によってデータを収集する。
<本年度の成果>
(1)分別回収された資源性廃棄物の分別適切性に関する実態調査
政令指定都市を対象に、資源性廃棄物の分別方法を調査した。分別方法は各自治体によって歴史的変遷が異なっており、早期にペットボトルの分別回収を始めた自治体ほど、住民の選別に対する理解が深まっていることから分別精度が良くなる傾向が現れた。来年度により詳細な調査を行い、分別回収制度の歴史性と住民理解、異物混入状況の関係性を明らかにする。
(2)分別作業の素工程分解と各行程での時間的・空間的・機会的制限因子の抽出・整理
ペットボトルの分別回収について、6個の素工程に分解して調査した。本研究で提案する手法(参照作業の損失金額ベースによる煩わしさの定量化)と従来の手法(仮想評価法)では各工程に対する煩わしさ(金額換算)に大きな差が現れるものがあった。例えば大学生を対象とした場合、ペットボトルを回収拠点に持っていくことに極めて煩わしさを感じていることが本研究の手法で見出された。

■ K113026  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3026

2.委員の指摘及び提言概要

新たな定量的評価法の開発は有用な研究であり、さらに改善を図る努力を期待したい。得られた知見をどのように政策決定に役立てるかは今後の課題であり、その点が重要である。また、面白い研究だと思うが、地方公共団体により事情が変わるので、きめ細かい対応が必要である。内容的には、異物の定義を明確にするとともに、ペットボトルの異物混入率と資源ごみ分別の関係を評価してほしい。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113027】アジアの都市廃棄物管理の発展に応じた埋立地浸出水対策の適正な技術移転に関する検討(H23〜H25)
研究代表者氏名: 石垣 智基(独立行政法人 国立環境研究所)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
アジア地域への適応例がない浸出水管理技術の基礎的な開発・応用を行う。浸出水循環プロセスについて、水分バランスを考慮し、注入の時期・位置、注入水の水質管理などの運転因子を示す。埋立層原位置での窒素除去について、環境制御と生物活性の効率的利用による除去効果と実現可能性の検証を行う。
現状の浸出水管理方策の簡易な改変・高機能化を図り、より実用化に近い現場で検証する。貯留池の簡易人工湿地化のための設計因子および管理方策を構築する。また、嫌気性消化と浸出水循環の組合せ、太陽エネルギー・余剰地活用型の光触媒反応などの水質管理方策の運転に関する技術情報を提示する。


図 研究のイメージ        
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廃棄物管理の発展過程を類型化し、各ステージでの浸出水質・水量に対して最適な浸出水対策技術・システムを提案する。廃棄物管理の一部としての「アジア型」の浸出水対策のあり方を提案し、発展段階に応じたパッケージとしての技術移転の方法論を示す。
<本年度の目標>
埋立層への浸出水循環技術の現地適応化に関する技術情報を収集する。埋立地形状、集水地点との高度差、降水排除形態などの構造情報と、水分布・浸透挙動に関する理化学的情報を元に、浸出水循環の時期・位置・量に関する運転条件を提示する。埋立層及び浸出水中の微生物群集と酸素濃度の現状を把握し、微量酸素センシングによる効率的窒素除去の実験的検討を開始する。
貯留池の容量及び形状に関する現地調査を行い、人工湿地化可能な範囲と水量に関する提案を行う。広範囲かつ簡易に人工湿地への改変を可能とする基盤材・植生を選定する。浸出水質に適合した水処理技術(嫌気性消化・光触媒)に関する実験室での基礎的な検討を開始する。
アジア各国における廃棄物管理体系の履歴と現状、浸出水対策の現状調査を行い、廃棄物に関係する問題の抽出と整理を行い、類型化に向けた基礎情報とするとともに、個別技術・システムの開発目標設定にフィードバックする。
<本年度の成果>
アジアの浸出水において有機物、窒素に加え総溶存物質問題の顕在化が示された。埋立層へ循環する浸出水質の膜処理制御について実験的に検討し、処理能力、エネルギー、膜洗浄や交換の頻度の情報を得た。埋立層・酸化池での酸素検知に係る目標濃度を設定しその制御方法を検討した。
貯留池の容量・形状に関する調査を行い、人工湿地化可能な範囲と水量を試算した。既存人工湿地の管理状態から基盤材と植生種の適用性の知見を得た。溶存物質による光触媒反応速度の低下とその抑制に関する技術的検討を行い、広大な埋立地面積を活用する平面型触媒の有効性が示唆された。
大都市圏を中心に廃棄物管理体系の履歴と現状、浸出水対策の現状調査を行い、類型化のための情報収集を行った。またパッケージとしての技術移転における水環境・温暖化・コスト・エネルギー評価ツールのプロトタイプを作成し、原単位・パラメータの精緻化をすすめた。

■ K113027  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3027

2.委員の指摘及び提言概要

アジアの都市に共通する特性が現在の日本とは違っていても、気候変動などにより日本にも適用可能な技術となりうる可能性を含んだ研究と思われる。ただし、地域の特徴をしっかり把握して進めないと一般化ができなくなり、分析が明確にならないので、国別、都市別の適正な技術移転メニューを整理したらどうか。また、研究成果を反映させる場合、環境省にもバックアップをしてもらう必要があるだろう。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113029】硫化処理した廃棄物系バイオマスを用いためっき廃液からの高選択的レアメタル分離回収技術の開発(H23〜H25)
研究代表者氏名: 和嶋 隆昌(秋田大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>
本研究では、大きく次のことを達成目標とする。
①廃棄物系バイオマスからの硫黄担持活性炭(重金属吸着材)の生成機構の解明
②廃棄物系バイオマスの種類(原料の性質)による硫黄担持活性炭の生成反応とそれぞれの特性の解明
③廃棄物系バイオマスからの高性能重金属吸着材の作成方法の確立
④硫黄担持活性炭(重金属吸着材)の各元素(特に、レアメタル)に対する吸着挙動の解明
⑤実めっき廃液への適用の可能性評価
⑥硫黄担持活性炭(重金属吸着材)を用いた連続分離プロセスの設計と可能性評
<本年度の目標>
1年目は、各種廃棄物系バイオマスからの重金属吸着剤の作成と評価を行い、次のことを達成目標とする。
①各種廃棄物系バイオマスから高性能な重金属吸着材を得るための、硫化カリウム濃度、加熱温度、加熱時間などの各製造条件を明確にする。
②原料として用いる廃棄物系バイオマスの性質(化学組成、炭素含有量、形状など)を調べ、生成物の比表面積、細孔径分布、重金属(鉛)吸着量・速度に与える影響を明らかにする。
③最も効率的に硫黄を担持させた生成物を得るための生成機構とその生成条件を明確にする。
<本年度の成果>
廃棄物系バイオマスとして、製紙スラッジからの重金属吸着剤の作成と評価を行った。各種廃棄物系バイオマスから高性能な重金属吸着材を得るための硫化カリウム濃度、加熱温度、加熱時間の各製造条件を明確にした。また、各条件における生成物の性質(化学組成、炭素含有量、形状など)を調べ、生成物の比表面積、細孔径分布、重金属(鉛)吸着量・速度に与える影響を検討し、明らかにした。さらに、最も効率的に硫黄を担持させ重金属吸着能をもつ生成物を得るための生成条件を明確し、生成機構について考察した。初年度の研究計画における達成目標度としてほぼ達成できている。

研究のイメージ

図 研究のイメージ        
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■ K113029  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3029

2.委員の指摘及び提言概要

実験計画に基づき、順調に成果が出されている。吸着メカニズムまで含めて、成果が分かりやすく整理されており、プロセス設計として普遍化、実用化の試みが望まれる。但し、既存法(硫化物法)との違いを明確にする必要がある。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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研究課題名: 【K113030】日本からアジアに展開する廃棄物系バイオマス利活用による3R定着に関する研究(H23〜H25)
研究代表者氏名: 田中 勝(鳥取環境大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
(1)地域に密着したバイオマス循環システムの構築
鳥取市内の各家庭で発生する廃食用油の回収率を高め、再生したBDFの活用を農機具などに拡大し地域バイオマス循環を構築する。
(2)バイオマス利活用促進処方箋の作成
バイオマスタウンで取り組まれているバイオマスの利活用(回収、再生、利用のサイクル)システムに係る費用・環境負荷・施策効果に関するバイオマス利活用データベースを構築し、費用対効果等の診断システムを開発し、処方箋を作成する。


図 研究のイメージ        
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(3)アジア諸国で取り組むべきバイオマス利活用プロジェクトを提案
アジア諸国におけるバイオマスの利活用・地球温暖化防止を推進するためのプロジェクト提案書を発表する。
(4)利活用促進のための技術、経済、社会的手法の開発
GISを援用した収集運搬の効率を高める技術手法、バイオマス利活用促進のための経済的手法、リサイクル製品に対する付加価値の付与などの社会的手法を開発する。
<本年度の目標>
(1)地域に密着したバイオマス循環システムの構築
鳥取市内の各家庭で発生する廃食用油の回収率を高めるための情報発信とそれに伴う市民のバイオマスに係る行動・意識に関する実態調査を実施する。
(2)バイオマス利活用促進処方箋の作成
バイオマス利活用(回収、再生、利用のサイクル)のデータベース・診断システムの基本設計を実施する。
(3)アジア諸国で取り組むべきバイオマス利活用プロジェクトを提案
アジア諸国のバイオマスの発生・利活用の実態について専門家に対するヒアリング調査を実施する。
(4)利活用促進のための技術、経済、社会的手法の開発
GISを援用した収集運搬システム設計手法の枠組みを検討するとともに、バイオマス利活用システム導入自治体を事例として、現行システムの費用対効果を分析する。BDFを中心に、現行の課税・補助金政策についてその課題を明らかにする。
<本年度の成果>
(1)地域に密着したバイオマス循環システムの構築
鳥取市内の各家庭で発生する廃食用油の回収率を高めるための情報発信とそれに伴う市民のバイオマスに係る行動・意識に関する実態調査を実施した。
(2)バイオマス利活用促進処方箋の作成
バイオマス利活用(回収、再生、利用のサイクル)のデータベース・診断システムの基本となるデータを集めた「バイオマス利活用事例集」を作成した。
(3)アジア諸国で取り組むべきバイオマス利活用プロジェクトを提案
アジア諸国のバイオマスの発生・利活用の実態についてタイ・インドネシアの専門家に対するヒアリング調査及び意見交換会を実施した。
(4)利活用促進のための技術、経済、社会的手法の開発
ベトナムにおいてGPS/GISを援用した収集運搬システムを検討した。また、先行研究の資料調査、課税・補助金政策の事例研究、閉じた物質循環系市場の経済モデル研究を行った。更に上記(1)〜(3)をまとめた社会的手法の開発を検討した。

■ K113030  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3030

2.委員の指摘及び提言概要

「アジアに展開する」を目標とした研究であるが、これまでの研究内容から見て何がどのように展開されるのか内容が不明化であるなど、研究の具体性がない。また、予定した調査が行われ、結果が示されているが、その解析から得られた知見がバイオマスの有効利用にどのように結びつくのかが示されておらず、二年目以降の研究展開の方向についても不明確なものが少なくない。研究解析面での進展が望まれる。

3.評点

   総合評点: B    ★★★☆☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): b  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): b  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): b


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研究課題名: 【K113032】廃棄物焼却施設におけるハロゲン化多環芳香族炭化水素類の生成機構分析とリスクベース管理手法の提案(H23〜H25)
研究代表者氏名: 三宅 祐一(静岡県立大学)

1.研究における達成目標

研究のイメージ <全体目標>
ダイオキシン類と同様に燃焼に伴い非意図的に発生し、ダイオキシン類と同等以上の環境リスクが指摘されている塩素化または臭素化した多環芳香族炭化水素類(PAHs)について、既存の産業廃棄物焼却施設を想定した、生成機構及び生成速度の解析を行い、さらに実施設からの排出実態等を基にしたリスクベース管理手法を提案する。具体的には、既存施設の焼却条件を参考に、室内焼却分解実験装置を作製し、ハロゲン化PAHsの生成機構及び生成速度について明らかにする。また、約40施設の廃棄物焼却施設から採取した排ガス及び焼却灰を用いて、ハロゲン化PAHsの排出実態を調査する。さらに、リスクベースの排出濃度から、リスクレベルを低減できる燃焼条件や排ガス処理方法等を提案する。

図 研究のイメージ        
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<本年度の目標>
(1)室内高温・焼却分解実験装置の作製
 既存の産業廃棄物焼却施設の焼却条件を参考に、任意の温度や滞留時間で、高温・燃焼分解実験ができる室内実験装置を作成する。
(2)実験炉を用いたハロゲン化PAHsの生成機構及び生成速度解析
 塩素系樹脂や臭素系難燃剤等の燃焼試料について、温度(500〜1000℃)、滞留時間(2〜8 s)、ガス雰囲気、試料負荷量(5〜10 kg/h/m3)を変化させて分解実験を行い、生成するハロゲン化PAHsの物質種、環数の違い等を解析し、分析可能な異性体については塩素置換場所の変化についても解析する。
(3)廃棄物焼却施設におけるハロゲン化PAHsの排出実態及び生成機構解析
 廃棄物焼却施設において、排ガス及び焼却灰を採取し、ハロゲン化PAHsの排出実態を調査する。また、研究グループが保有する保管抽出液を有効活用し、計数十の施設について、過去も含めたハロゲン化PAHsの排出実態について評価する。
<本年度の成果>
既存の廃棄物焼却施設の焼却条件を参考に、任意の温度(500〜1000℃)や滞留時間(2〜8 s)で、高温・燃焼分解実験ができる室内装置を作成した。作成した装置を用いて、塩素系樹脂と臭素系難燃剤の燃焼実験を行い、金属による触媒反応が影響しない場合のハロゲン化PAHsの生成傾向を明らかにした。また、実施設(16施設)の排ガスについて、ハロゲン化PAHsの異性体別詳細分析(全41種)を行い、その濃度レベルや組成を明らかにすることができた。室内実験と現場の結果を比較すると、4環以上のPAHs組成が大きく異なっており、今後詳細な検討を行う予定である。今年度予定していなかった焼却施設種別の解析や、ハロゲン化PAHsの毒性等価係数(対TCDD)を用いた毒性等量(TEQ)を算出するなど、想定目標以上の成果が得られた。なお、ハロゲン化PAHsのTEQは、ダイオキシン類のTEQより高い値を示す施設が見られ、廃棄物焼却条件との関連性を詳細に解析していく必要性が示された。

■ K113032  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/jisedai.html#3032

2.委員の指摘及び提言概要

 研究は計画どおり進行していると判断でき、解析も丁寧に行われている。今後の課題あるが実験炉と実炉の燃焼条件の違いを明確にし、両者の比較検討から、実験炉の結果を実炉にどのように生かすのか(生成機構からリスクベース管理手法への展開)少々困難な問題であるが、積極的に挑んで欲しい。

3.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a


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