平成22年度環境省政策評価委員会 第2回議事録要旨

  1. 日時:平成22年8月26日(木)10:00~12:00
  2. 場所:環境省第一会議室
  3. 出席者
    委員
    (委員長)
    須藤 隆一
    埼玉県環境科学国際センター総長
    井村 秀文 名古屋大学大学院環境学研究科特任教授
    大塚 直 早稲田大学大学院法務研究科教授
    河野 正男 横浜国立大学名誉教授
    崎田 裕子 ジャーナリスト・環境カウンセラー
    堤 惠美子 株式会社タケエイ 顧問
    藤井 絢子 特定非営利活動法人 菜の花プロジェクトネットワーク代表
    細田 衛士 慶應義塾大学経済学部教授
    三橋 規宏 千葉商科大学大学院政策情報学研究科客員教授
    山本 良一 国際グリーン購入ネットワーク会長
    鷲谷いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
    [欠席]
    細田 衛士 慶應義塾大学経済学部教授
    事務局(大臣官房)
    谷津大臣官房長、清水審議官、奥主秘書課長、紀村総務課長、弥元会計課長、塚本政策評価広報課長、他
    環境省各局部
    坂川企画課長(廃棄物・リサイクル対策部)、川上総務課長(総合環境政策局)、谷貝企画課課長補佐(環境保健部)、鮎川総務課課長補佐(地球環境局)、石飛総務課長(水・大気環境局)、田中総務課長(自然環境局)
  4. 議題:
    (1)平成21年度環境省政策評価書(事後評価)(案)について
    (2)その他
  5. 配布資料
    配布資料
  6. 議事録要旨
    議事録要旨

議事録要旨

(各委員紹介)

(環境省出席者紹介)

(大臣官房長挨拶)

(事務局より資料3「第1回政策評価委員会における主な意見及び対処方針)」の説明)

【須藤委員長】
環境省からは、以前の評価書の修正点を説明いただき、修正を加えた評価書を提出いただいた。先生方には主にこの点について、おっしゃっていただきたい。また、重点項目以外の項目についても、新たに気づいた点があれば、ご意見いただきたい。
【井村委員】
評価書そのものの構成・記述の仕方、指標の作り方はかなり改善された。数年前は、文章のばらつき、データ不足が見受けられたが、かなり改善されてきており、形式的なことについては言うことはなくなってきた。強いて言えば、所々の間違いや、自分の関心のある分野の記述不足程度である。特に指標については、よく読むと色々な重要な情報が盛り込まれており、大変よく記述されている。
政策評価そのものについてのコメントではないが、大きな話として、経済のグリーン化やグリーン・イノベーションについて、最近中国や東南アジアを訪問して感じるのは、日本の環境技術の世界における力が相当弱くなってきているのではないか。1990年代は、日本の環境技術は世界でトップクラスであったし、我々も日本は優れているという意識でいた。世界も同様に認めていたと思うが、最近の評価は後退してきたのではないかという印象がある。例えばソーラーパネルは、巨大なマーケットが中国で生まれている。昨日の日経新聞によれば、ソーラーパネル、再生可能エネルギー関連、廃棄物技術、上下水道技術など、環境製品の貿易はここ5年間で規模が倍増しており、1位がドイツ、2位が中国、3位が米国、日本は4位で、韓国に追い上げられているという。このようなことを、国際会議に出席したり、世界各地を訪問したときに非常によく実感する。評価書にという話ではないが、この事実をもう少し深刻にとらえた方が良い。
【大塚委員】
簡単に二点だけ申し上げておきたい。
一つ目は、廃棄物リサイクルの分野において、細田委員がご質問されているが、EPR(拡大生産者責任)に基づくDfE(環境配慮設計)がどの程度推進されているかについては、回答があまりよく見えない。政策評価において何かしていただけるのか。
二つ目は、レアメタルについて、中国が輸出を抑制するようである。このことは、前回と今回の会議の間の時期に出てきたので、どのように対応するのかについて、もう少し深く検討する必要があるのではないか。
【河野委員】
一つ目は、163ページ、資料3の「第1回政策評価委員会における主な意見及び対処方針」の「4.廃棄物・リサイクル対策の推進」に、DfEを政策として進めると書いてあるが、評価書の中で取り上げられていない。取り上げるとすれば、P.39に書き込めばよい。今後は川下の取り組みだけでは行き詰まるだろう。川上での取り組みを環境省の政策として実施することを明確に記述した方がよいのではないか。
二つ目は、環境政策の多くが他省庁と協働して行うことが多いので、以前に環境省で評価すればよいのではないかと申し上げたが、仕組み上は難しいようである。そのような目で評価書を見ると、特記事項に関係省庁名が並べてあるが、挙げるだけではなく、政策の関係の濃淡や予算の大小などを含め、「環境省としては予算上や法律上で、このように他省庁と協力している」ということがわかるように記述していただきたい。さらに、特記事項と、前に書かれた内容との関係もわかるようにしていただければ、よりよい評価書になるのではないか。
三つ目は、予算について、それぞれ各年度の予算が出ているが、合計が出ていない。その理由は何か。環境省総合環境政策編の『環境統計集』を見ると、国全体の環境保全費、事業別環境保全費などが記載されているが、それぞれ合計が出ている。このような全体のものと比較して、環境省の予算がどれくらいかということがわかれば、国の政策における環境省の役割がわかってよい。
なお、「環境統計集」によれば、平成22年度は平成20、21年度と比較して国家予算が1兆円ほど少ない。これだけ環境のことが騒がれている中で、なぜ当初予算が減らされているのか、理由をご説明いただきたい。
【崎田委員】
環境学習センターの運営する指定管理者を務めたり、色々な分野の環境コミュニケーションの部分で活動や発言をさせていだたく機会が多い。現在、広報やコミュニケーションに関する活動は、事業仕分けでどんどん削られているが、各部署におけるコミュニケーションは非常に重要である。例えば130ページに、環境省の環境教育や環境パートナーシップの形成について、「今後の主な取り組み」が記述されているが、コミュニケーションについては意識して強調し、記述することが大変重要ではないか。
色々な分野でコミュニケーションの重要性が増しているということはどういうことかと言うと、例えばエネルギー分野では、ゼロエミッション電力として再生可能エネルギーと原子力が社会で話題となることが増えてきている。再生可能エネルギーについては関心が高い人が多い一方、原子力については普段の生活の中で話し合う風土は育ってきていない。きちんと話す機会を設けないと、安心・安全な運営や的確な情報発信につながらない。エネルギーに関する情報をどのように発信し受けとめるかはこれから大変重要となる。
さらに、化学物質のリスクコミュニケーションについても、どんどん予算が削られている。ダイオキシン等の問題が起きた時期に比べると、社会的関心が薄れてきている。いい意味でならよいが、無関心層の広がりが疑われるくらい薄れてきている。このような中で新たな情報が増えてきたときに、パニックが起こるのではないか。パニックというのは言い過ぎだが、環境省で今年度から大々的に実施するエコチル調査は日本のこどもの健康状況を把握し守ってゆくために、大変重要なことである。リスクコミュニケーションが今年から全国の基軸病院で始まる。全国で新しく子どもを出産されるお母さんたちに、なぜそういうことをするのかについて、また、色々な情報を欲しがられたときに、化学物質は怖いものではなく、身の回りにたくさんある化学物質を使って暮らしてきており、それを適正管理することが大事であるということについて、冷静な情報の伝え方など、色々な課題がある。様々な分野でこのような課題があると思うため、全ての分野において、変化のときにどう国民にきちんと情報を伝えていくか、一度総ざらいすることも大事ではないか。
関連して、例えば環境学習の中で、現在、地方公共団体による環境学習施設の設置が増えている。環境パートナーシップオフィスなどのような環境省の場づくりは進んできているが、このような施設の情報をネットワーク化して共有することや、環境省からきちんと情報発信をする仕組み作りなど、一度ちゃんと予算ぐみしてしっかりと定着させることも大事ではないか。
なお、事例の中では循環型社会について申し上げなかったが、実は循環型社会も3Rで資源を大事にするという話から入っているが、最後にゴミにするのであれば熱回収をきちんとしようという、サーマルリカバリーの話が入ってくると、では燃やせば良いという誤った情報だけが踊ってしまうことがある。バランスよく、趣旨が理解できるように情報を出すことなど、変化のときには大事なことがたくさんあるため、みんなできちんとケアしながら情報発信していくことが大事ではないか。
もう一点、150ページについて、日本の科学技術が世界で認められ、日本経済の牽引力となることを目指して取り組まないと、グリーン・イノベーションとライフ・イノベーションが明確にならない。これをどのように描くかについて、総合科学技術会議の第4期基本計画見直しにおいて検討しているが、環境省においても道筋に関して強めに発信していただきたい。例えば150ページの「今後の展開」の第2項目と第3項目に、もう少しこのようなことが伝わるようにかいていただくことが重要である。特に第2項目に「地域における科学技術の振興」とあるが、科学技術をシステムとしてきちんと地域に活かし、地域に根ざした環境対策を実現し、そのシステムを地域活性化につなげるとともに、世界の環境対応のためにそのシステムを移転し、世界に貢献するという道筋を明確につくって発信することが大事ではないか。
【堤委員】
河野委員、崎田委員のおっしゃるとおり、廃棄物リサイクルについては川下だけではやっていけず、川上の対策が必要である。リサイクル事業は動脈と言われる製造業の設計段階のデザイン、環境デザインが本当に必要である。静脈と言われる処理業の再生品の製造から、静脈物流を通してまた動脈に物質循環がされるという、いわば入り口と出口が水漏れのない水道管の仕組みのようにつながっていることが、非常に大事であり、本来のマテリアル・リサイクルを展開させるための必須の要件である。現状を見ると、例えば廃プラスチック類については、入り口と出口の理論に全くお構いなしに様々なものが製造されている。容器包装法の対象であっても、その多くがマテリアルに戻されることなく、エネルギー・リカバリーに使われたり、埋め立てられたりしている。エネルギー・リカバリーはリサイクルではない。有限な石油資源を用いて製造されるプラスチックの半分ほどの量が使い捨てである。廃プラスチックは環境汚染などの様々な問題をはらんでいるので、製造段階から対策を考えていただきたい。トレイについても、色をつけたり素材に戻せるかわからないような化学的加工を施したりすることなどによって、リユースできない状態になっている。このような問題を解決することにより、「リデュース」につなげる重要な糸口を見つけることができるのではないか。数値目標を伴う省庁間の連携が必要である。3Rの原点に立ち返り、環境省から、入り口から出口までを勘案した総合的なリサイクルの新しいデザインを示し、評価していただきたい。
【藤井委員】
「8.環境・経済・社会の統合的向上」で意見したい。井村委員よりご発言があったが、「環境産業の市場規模及び雇用規模については、最近の傾向として継続的に拡大基調にある」とあり、前年度比較の数値が記述されているが、この2年の激変が大変大きな問題になっている。評価書に書くことができなくても、例えば日本の成長戦略の中で環境輸出が他国と比較してどうなのか、途上国へはどうなのか、ということを把握しておかないと、このままの書きぶりでは少し課題があるのではないか。
10月に北京大学で開かれる、循環型のエコタウンづくりに関するフォーラムに、市民として参加する予定である。エコタウンと言えば、日本のソフトの売りが話題になるかと思えば、スウェーデンであった。環境と健康をマッチングさせた地域づくりに中国は大変関心を持っており、モデル地域をつくりながら、全国的にかなりの箇所数をつくり、さらにそのソフトを中南米やアフリカに輸出する戦略を立てているようである。日本は循環型社会やエコタウンについて相当なエネルギーを注いできたと思われるが、そのようなソフトの売りのところで本当に負けていないのだろうか、ということを懸念している。
生物多様性については、「生物多様性の現状に関する理解の促進に貢献した」とある。しかし、COP10間近で、琵琶湖周辺において活動しているが、「いざ名古屋へ」といった気風がまったくない。全国各地域で活動している人たちや、海外NGOと交流のある人たちが名古屋の場をどのように作るのか、ということについての議論なしに、今まで来てしまったという認識がある。このような点について、177ページ「政策評価シートの主な修正点」の「5.生物多様性の保全と自然との共生の推進」の「今後の展開」には、「わが国の生物多様性の総合評価実施・充実は、国民への普及広報・多様な主体の参画促進の強化等を行う」としか書けないであろうが、現状を見たときに、「有効性」において貢献したと記述してよいのか。
【三橋委員】
「1.地球温暖化対策の推進」の3ページについて、環境省の評価なので仕方ないかもしれないが、例えば175ページにある「政策評価シートの主な修正点」の「1.地球温暖化対策の推進」において「今後、景気の回復に伴い温室効果ガス排出量が増加する~」とあるが、2007年度までは温室効果ガスは前年比大幅に増加したが2008年度に突然減少したことについて、理由を正確に書くべきなのではないか。これは、リーマンショックによる影響である。4ページの始めに「京都議定書の目標達成の目安に達している」とあり、2008年度に単年度で6%削減は達成できるということが書いてある。それはそう思う。2009年度は経済の落ち込みが2008年度よりはるかに大きく、温室効果ガス排出量は、単年度で8~9%くらい削減されるだろう。その理由は、景気に全面的に左右されおり、経済成長がマイナスであることの影響により温室効果ガス排出もマイナスになるということである。環境省の政策評価として書けるかわからないにしても、2007年度と2008年度の違いが説明されないと、この目標が達成できたことの理由がわからない。名目成長率がマイナスから脱せないため、2010年度には90年度比マイナス10%という大変な成果をあげたみたいなことになるかもしれないが、これは、大変な失業率の増大や、景気の低迷に伴う色々な負の遺産の結果ということである。今後景気が回復すれば温室効果ガスが増加するはずであるため、心を緩めてはいけない。このような意味で、この書き方は非常に問題があると感じる。
もう一つ、環境省によるキャンペーン施策の成果が、産業界に広く浸透してきている。例えばオフィスビルや住宅について、省エネ型あるいはCO2排出ゼロの住宅作りなどである。企業は一つの方向に向かって動き出すと、途中でなかなか変更できない。そういう意味でかなり成果が上がってきている。個別業界についての動きをもっと書き込んでよいのではないか。住宅は大きなウェイトを占めており、家電はデジタル革命で相当進んだ。主要な産業である鉄については別であろうが、他の業種ではグリーン・ビジネスに向かって経営そのものを大きく変えてきている。このような、うねりみたいなものを成果として書いたほうがよいのではないか。
【山本委員】
評価書はこれでよい。
しかし、地球温暖化への適応策について何も書いていない。テレビ報道でも熱中症で300人亡くなられたことや救急車で搬送される患者の数の激増したことが報道されている。ロシアでは千年に一度の猛暑で大森林火災がおき、穀物が25%も枯れてしまい、穀物の輸出をストップしたようである。パキスタンも大洪水が起こった。全世界的な異常気象であるが、まず間違いなく地球温暖化は理由として挙げられるだろう。そのため、一つの方向として適応策についても評価をする必要がある。
削減策、適応策もあるが、もう一つ、前回お話したジオエンジニアリングがあり、世界的な話題になっているばかりではなく、現実的な国際的な外交交渉の問題に挙げられている。グッデル氏が書いた「How to Cool the Planet」と、その他にも「Hack the Planet」やケンブリッジ大学から出版された「Geoengineering」という本を読んで驚いたことは、ここ3年くらい欧米は激しく動いているということである。調査を早急に実施しなければならないことは、前回に問題提起した。
また、もう一つ、早急に考えなければいけないのは、海に富栄養化させる物質をばら撒いてプランクトンを増加させ、CO2を吸収させることがすでにビジネス化され、トライアルが行われているということである。アメリカではClimos社とPlanktos社が実際に排出権を獲得しようと計画したが、市民団体の反対により中止に追い込まれた。しかし、この本によれば、ドイツとインドが、共同研究でLOHAFEXというプロジェクトを実際に南極洋で実行してしまったようである。科学的な知見も得られているようであるが、かなり多くの国際的な反対がある中で強行した実験であった。ある意味、欧米では削減策、適応策に加えて、このジオエンジニアリングをプランBとして位置付けつつあるという非常に大きな動きである。
前回紹介した以降の情報としては、5月にビル・ゲイツ氏が太平洋で大規模なジオエンジニアリングの実験を行うプロジェクトのスポンサーになったそうである。これは、海水を空気中に噴霧して雲を白くする実験で、Silver Lining Projectと言い、南北大陸の太平洋岸4箇所程度を想定しており、1万平方キロメートルくらいの海域で実験を行う予定である。この話題はナイロビのCOP10の準備会合でも議題になり、カナダに本拠地がある環境NGOのETCグループは、予測が測り知れないためにこのジオエンジニアリングを当面中止するモラトリアムの提案を行ったが、準備会合のレゾリューションになく、合意が取れなかったということだと思われる。ETCグループのホームページに、名古屋のCOP10においても直接モラトリアムの提案を行うとあった。このように、まさにジオエンジニアリングは政治・国際交渉の問題になっている。このままいけば、温室効果ガス削減策については国際合意の見通しが全く立たず、おそらくCOP16も空中分解であろう。そうなると、おのずと適応策とジオエンジニアリングに注目が集まるはずである。アメリカの全米科学技術振興財団(NSF)はすでにジオエンジニアリングに対して研究費を支出している。日本もよりジオエンジニアリングと生物多様性の問題について調査し、国としても見解を持つべきではないか。
【鷲谷委員】
以前申し上げた内容については模範的な回答をいただいた。
COP10に向けた地域や市民活動について、個人的な印象を述べる。一般には今春くらいから生物多様性に関する関心は急速に高まりつつある。マスコミの報道でも生物多様性という言葉が出てくる頻度があがっていると思う。それに伴い、生物多様性について知りたい、勉強したい、という気運が高まっているようで、勉強会やシンポジウムでの講演依頼が増えた。大抵断らざるを得ないが、どこかに講師などがいらっしゃれば、そちらに振ることができればよいと感じた。せっかく勉強したいのに、適切なアドバイザーがいないために勉強をやめてしまうのはもったいない。
基礎自治体においても、自然環境を大事にしながら地域づくりをしているようであるが、生物多様性に関する政策や法律等の動きを全くご存知ない。それについて伝えれば、何か地域で実際に動きたいということになってくるのではないか。しかし、その伝えるための仕組みが確立されていない印象を受ける。生物多様性に関する政策がやや難しいと感じるため、その政策を総合的に把握し、地域が望むものを的確に見据えたアドバイスができるような機関があれば、生物多様性に関する取り組みがより広まっていくだろう。
COP10に関連して、NGOは地域によって取り組みをどのように行ったらよいかわからないところがあり、温度差が大きいと思う。進んでいるところは、県の生物多様性戦略の策定にとどまらず、市民から情報発信をする仕組み作りを開始している。COP10が目標になっているようである。兵庫県では、何度もシンポジウムや学習会を重ねて参加者一人ひとりの意見を無視せずにまとめていくという手間のかかる作業をしており、宣言を作って発表するそうである。何かこういうものを守りたい、再生したいと言っても、外来種の問題が大抵のことには関わってくるため、どの仕組みを使えば一番良いのかがわからない。地域のあちこちに何かをやりたい、国際的にも重視されている生物多様性というキーワードに関わりたいという人がいるのに、なかなか情報が届いていない。COP10もその機会になりそうで十分ではないようである。
【須藤委員長】
山本委員がおっしゃっていた地球温暖化への適応策について、将来の展望できちんと位置づけなければならないと思うことを再度申し上げる。先月末に中国吉林省で集中豪雨にあったが、それによって、工場と倉庫がそのまま流出し、化学物質を含むドラム缶が河川に流れたという事件があった。ドラム缶の数は7,000本あり、うち3,500本は空で、残り3,500本については、封はしてあったが薬品が入っていたそうである。自分は水の専門家であるため、対応について聞かれた。日本では水質汚濁防止法の中で、気候変動問題に関する対応は全くしていないが、事故については速やかに届ける義務規定を新設している。倉庫の耐震性については対策をとっているが、水害への対応はおそらくあまりできていないのではないか。他人事ではない。日本はPRTR制度によって、薬品についてはどこに何がどれだけ保管されているかわかるが、中国はPRTR制度のようなものはないためにわからない。しかし、薬品が流れてしまえばそれっきりである。幸い、中国で流出したドラム缶は密閉されていたようであるが、今後、異常気象による問題については、水質汚濁、大気汚染など、様々な環境問題と関連性が高いため、このような問題を取り組む制度や評価を実施しなくてはならないのではないか。
二つ目は、井村委員や崎田委員がおっしゃっていた科学技術の問題である。かなりの予算を使っているが、技術開発の重要性について、あまり浮き彫りになっていないという印象であるため、環境分野の科学技術開発が進んでいるのであればその旨、また、今後の展開にも1、2行書き込んだ方が良いのではないか。
【地球環境局】
井村委員からの、地球環境関連の技術について、全般については総合環境政策局からお答えする。
地球環境関係の技術については、おっしゃるとおり、太陽光パネルについては中国の躍進が著しく、昔は日本がトップを持っていたが、奪われてしまった。太陽光だけではない。しかし、個々の要素技術については日本の環境技術が最先端といえるものがたくさんある。環境技術がまだまだ日本の強みであるということは、環境省だけではなく政府全体の意識としてもあり、「新成長戦略」の中でも太陽光の奪還を含めて力をいれていくことが方針となっている。いただいたご意見を踏まえて、関係省庁とも連携しながら、さらに勉強しながら取り組みたい。
三橋委員からの「地球温暖化対策の推進」における記述の仕方に関するご意見ついて、第一回会議においてご指摘いただいたご意見を踏まえて修正したが、まだ不十分であるというご指摘であると理解した。あたかも2008年の削減が環境施策の成果であるというつもりは全くない。160ページの「第1回政策評価委員会における主な意見及び対処方針」「1.地球温暖化対策の推進」の記述は、いただいたご指摘を理解した上で書いたつもりである。この中では、2008年の削減の中では、主たる原因は鉱工業生産の落ち込みであることは認識しているため、それを表現するつもりで、今後景気が回復したらゆり戻しがある旨を表現した。それではまだわかりにくいということであるとのご指摘であろうと理解したため、もう少し誤解を招かないような表現を工夫できないか検討したい。
同じく、三橋委員からの産業界における環境技術の意識の浸透に関するご意見について、個別業界を具体的に名指しすることが適切であるかどうかはともかく、産業界を含めてこのような意識が普及してきたことを書き込むという主旨であると理解した。環境施策の成果として、適切な表現を見つけて追記を検討したい。
山本委員と須藤委員長からの地球温暖化への適応策について記述していないとのご指摘については、その通りである。重点施策という位置づけで地球温暖化対策について記載するシートであるため、削減が主たる対策になることから削減策について記述したが、適応策については、今後の課題のところで書けるか検討してみたい。
山本委員からのジオエンジニアリングについてのご意見は、前回もご意見をいただいたために対処方針にも書かせていただいたが、新しい動きをフォローさせていただきたい。別途ご相談しながら勉強させていただきたい。
【水・大気環境局】
井村委員からの日本の環境技術力の低下に関するご意見について、水質汚濁や大気汚染の防止・処理技術は、日本はまだ最先端の技術を持っている。今後もこのような強みを出さなければならないと考えている。また、水関係では、中国農村部での分散型排水処理システム導入など、技術自体は最先端ではないものの、その地域に最適な技術を普及させることについて、日本は貢献することができる。さらに、コベネフィット・アプローチとして、温暖化対策と大気汚染防止対策などを同時に実施することも、中国やインドネシアにおいて開始されている。この中で日本企業の努力が報われるということもあるため、政府としても支援・促進していきたい。
【自然環境局】
鷲谷委員の、国内だけでなく、国際的な目標の実現に向けてリーダーシップをとっていくべきというご意見については、まさにその通りである。10月に名古屋でCOP10が開催されるが、そこで様々な目標が議論され、新たな目標設定もされることとなる。日本はこれまでアジアを中心に国際貢献を行ってきたが、より充実させていく必要がある。例えば里山イニシアティブのように、わが国の知見・経験を生かして国際的なイニシアティブとして立ち上げることも一つの動きだと考える。他にも来週、さんご礁関係の会議がタイで開催され、行動計画を策定する予定である。このような協力を様々な分野で取り組みたい。
また、しっかりとした科学的アセスメントに立脚して政策を充実させていくべきというご意見についても、おっしゃる通りである。IPBES(生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)設立の動きがあり、特にアジア地域を中心に、しっかりとしたアセスメントに対するわが国の貢献も重要なことであると考える。現在ある枠組みや仕組みを生かしつつ、様々な研究者の知見等を参考にしながら充実させていきたい。
【廃棄物・リサイクル対策部】
大塚委員、河野委員、堤委員からのDfEに関するご意見について、循環型社会を構築するために大変重要な課題であり、さらに進めていかなければならないと考えている。従来は個別のリサイクル法や広域認定制度によって推進されることを狙っていたが、今後もさらに進めていく必要がある。ご意見を踏まえ、評価書には環境配慮設計をさらに進める必要があるという趣旨を盛り込む方向性で検討させていただきたい。
大塚委員からのレアメタルに関するご質問について、リサイクルを推進するために経産省と協力して研究会を設置している。有効なリサイクルシステムや課題について議論し、実際に回収のモデル事業も実施している。今後の重要性が増す可能性があるため、検討をスピードアップさせていくとともに、来年度の予算要求において増額を要求し、より充実した検討を行いたい。
【総合環境政策局】
河野委員からのご質問である環境保全経費が昨年度と比較して1兆円減っている理由について、昨年から今年にかけて各省の公共事業関係を一括して交付金化する動きがある。今まで取れていた環境関係の内訳がなくなり、経費の範囲から抜け落ちているものがあるため、前年と継続的に比較ができなくなっている。決して後退しているわけではない。きちんと予算措置をしているが、統計上フォローができなくなったため、見かけの数字が減っているということである。表現不足があると思われるため、検討させていただきたい。
井村委員、崎田委員および三橋委員からの環境と経済の関係に関するご指摘について、前回山本委員からいただいたご指摘を踏まえて少々記述を充実させたが、その時にもご説明した6月の「新成長戦略」の中で、環境エネルギー分野は今後の成長の一つの大きな柱として位置づけられている。今回の厳しい予算一律削減の中で、特別枠の活用を含め、ビジネス支援として環境金融ではリースなどを活用した中小企業や家庭への支援策強化、地域の活性化として低炭素な地域づくりなどへの支援強化について、検討している。
三橋委員から頂いたご意見であるグリーン・ビジネスのうねりに関する記述については、さらに充実できないか地球環境局とも相談して対応したい。
井村委員、崎田委員および須藤委員長からの科学技術に関するご指摘について、来年度予算において支援策を強化すべく努める。環境省としても、戦略の見直しを行っており、従来からの温暖化、3R、生物多様性に加えて、横断的な課題への対応について強化する。
崎田委員からのご指摘である、公害問題が一段落したことによって地域の研究機関の足腰が弱まっていることについては、地域の研究が進むための重点化などに力をいれたい。
同じく崎田委員からの環境教育のパートナーシップの強化に関するご指摘について、「新しい公共」は政府全体としてもかなりウェイトを置いており、我々も非常に大事だと考えている。厳しい予算事情ではあるが、幅広い世代に対する環境教育や、NPOのビジネスセンスや政策への提言力などを伸ばしていけるような検討を来年度予算においても続けていきたい。
以上述べたことについては、必要に応じて表現等を検討する。
【環境保健部】
崎田委員からのリスクコミュニケーションの重要性に関するご指摘については深く意識しており、前回の河野委員から頂いた同様のご指摘に対してお答えしたが、60ページ「6.化学物質対策の推進」「6-3.リスクコミュニケーションの推進」の「有効性」や「今後の展開」において、例えば化学物質のファクトシートの作成や、化学物質アドバイザーの派遣などを進めている。さらに、今月末に開催を予定している「化学物質と環境円卓会議」の中で、今後のリスクコミュニケーションのあり方について議論していただきたいと考えている。今後もご意見をいただき、発展・強化させていきたい。
【政策評価広報課長】
河野委員からの予算合計の記述がないことに関するご質問については、わかりやすい表現となるよう工夫したいので宿題とさせていただきたい。
【須藤委員長】
それぞれの部局からご回答いただいたが、かみ合っていない部分もあるようである。総合環境政策局のご回答についてはいかがか。
【崎田委員】
答えづらい点を申し上げたためであろうが、お答えがない部分もある。
環境コミュニケーションについて申し上げたために地球環境局からはご回答いただかなかったが、今後はエネルギーに関して政策的にも大きな変化が予想されるが、制度改正に伴う情報等が追いつかないという状況である。適切な情報発信について、地球環境局においても取り組んでいただきたい。
なお、企業の環境分野への取り組みについて、すばらしい事例をどんどん前に出していただくことが、他の取組も強めることにつながる。これに関連して、新しい首相に代わられてからほとんどマスコミに地球環境のことをおっしゃらない。政府における環境問題の露出が少なくなってきていることで、トップダウン型の環境政策は必要なく、ボトムアップによる取り組みがいいという企業の意見が増えてきたと感じる。環境省として、政府が高い目標を掲げていることを追い風にして、環境大臣がより明確に環境問題についてテレビで言及するなど、発信力を強めていただいて、大きな変化を乗りきっていただきたい。特に一度廃案になった地球温暖化対策法案の審議を進め、環境税、全量買取制度、排出権取引などについて話を通していただき、その後の制度設計に関しても、環境と経済の好循環に向けて、環境省に強く関与していただきたい。
【須藤委員長】
一言で言えば、環境省はもっと強くリーダーシップをとって欲しいということである。その中の一つとして、地球温暖化対策基本法が廃案になり、足踏み状態になっていることが挙げられる。政府が足踏み状態のために、地方でも様子を見ようと全体的に足踏みをしている状況と見受けられるが、いかがか。
【谷津大臣官房長】
環境省がリーダーシップをとって、大臣が先頭に立つことについては、是非そのようにしたい。
地球温暖化対策基本法について、秋の臨時国会で再提出し、早期に成立させたい。そのための準備をしている。
排出量取引について、審議会レベルでいくつのオプションをとりまとめ、国民的なの議論の場に提供させていただく予定である。
環境税について、昨日の民主党における部門別会議で、環境省としての税制改正要望を提出した。経済産業省においても同様である。両省とも、炭素税を盛り込んだ税制改正要望である。両省足並みをそろえ、様々な課題に対処する所存である。
【三橋委員】
温室効果ガスの削減の資料として鉱工業生産指数を用いているが、鉱工業生産指数は製造業と対応している。現在GDPに占める製造業の割合は3割をきるため、GDPと温室効果ガスの比較をすべきではないか。現在の経済構造やエネルギー消費構造を見ると、製造業だけの比較では狭いのではないか。もちろん、鉱工業生産指数で比較することは大きな意味はあると思うが、全体としてはやはりGDPであろう。特に、名目GDPと連動している部分が多い。名目GDPは縮小しており、そのために温室効果ガスも減っている。そのことは区別して説明した方が良いという提案である。
【地球環境局】
経済全体の規模を表す指標としてGDPが適切であるのはご指摘の通りである。しかし、温室効果ガスの京都議定書目標達成計画の点検のために、中央環境審議会の地球環境部会において報告をしたが、その中で、直近の各部門の排出量を分析したところ、エネルギー起源CO2全体の前年度比較では8,000万トン削減されていたが、そのうち4,900万トンが産業部門の削減で占められていた。その主たる理由が鉱工業の生産落ち込みであったため、そのことを説明すべきであったところを少し省略して記述したため誤解を招いてしまった。他方で業務部門や生活・家庭部門も減っているが、床面積が減っているなどの傾向があるわけではなく、主に先ほど委員がご指摘されたオフィス等での省エネの取り組みや、個々の機器のエネルギー効率が向上したことなどが要因で減ってきていると分析している。こうした要因分析も視野に入れてもう少し丁寧に追加説明することを含め、検討したい。。
【須藤委員長】
評価書の記載や表現の修正等については、事務局にお願いをした後、私が調整させていただき、決定をした後に、委員にご確認いただくということにしたい。
【政策評価広報課長】
一点報告がある。評価書について先月パブリックコメントを募集したが、残念ながらコメントは一つもなかった。我々としても国民の皆さんに関心を持っていただけるよう、少しは工夫しないといけないと考えている。

(事務局より資料5「今後の政策評価に関する主な事項」の説明)

【井村委員】
「参考指標」や「間接指標」とあるが、この定義は何か。
【政策評価広報課長】
施策の目標達成に向けた進捗状況がわかるものを「直接指標」、それに準じて間接、参考になるものを「間接指標」「参考指標」としている。
【河野委員】
形式的なことであるが、特記事項に関係する省庁が列挙されているが、施策の関係や予算の大小について記述することは、工夫していただけるか。
【政策評価広報課長】
今後、見やすい評価書に向けて、検討したい。
【須藤委員長】
パブリックコメントが0件と、あまりに少ないのは問題である。何か工夫をしなければならないのではないか。
【政策評価広報課長】
工夫をしなければならないと感じている。
【三橋委員】
利害関係がある者はコメントをするが、利害関係を持たない者に対して意見を求める場合の方法は工夫しなければならない。数名抽出して、若干お金を払ったりすることはできないか。お金を払えなくても、無作為抽出をしてコメントをお伺いするなど、何か工夫をしなければならない。
【政策評価広報課長】
少し考えたい。
【須藤委員長】
以上をもって、本年度の第二回政策評価委員会を終了する。

以上


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環境省大臣官房総合政策課企画評価・政策プロモーション室
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