平成22年度環境省政策評価委員会 第1回議事録要旨

  1. 日時:平成22年6月25日(金)10:00~12:05
  2. 場所:経済産業省別館1111号会議室
  3. 出席者
    委員
    (委員長)
    須藤 隆一
    埼玉県環境科学国際センター総長
    井村 秀文 名古屋大学大学院環境学研究科特任教授
    河野 正男 横浜国立大学名誉教授
    堤 惠美子 株式会社タケエイ 顧問
    藤井 絢子 特定非営利活動法人 菜の花プロジェクトネットワーク代表
    細田 衛士 慶應義塾大学経済学部教授
    三橋 規宏 千葉商科大学大学院政策情報学研究科客員教授
    山本 良一 国際グリーン購入ネットワーク会長
    鷲谷いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
    [欠席]
    大塚 直 早稲田大学大学院法務研究科教授
    崎田 裕子 ジャーナリスト・環境カウンセラー
    事務局(大臣官房)
    南川大臣官房長、小林大臣官房審議官、紀村総務課長、梶原会計課長、奥主政策評価広報課長、他
    環境省各局部
    金丸企画課長(廃棄物・リサイクル対策部)、川上総務課長(総合環境政策局)、弥元企画課長(環境保健部)、鎌形総務課長(地球環境局)、木村総務課長(水・大気環境局)、田中総務課長(自然環境局)
  4. 議題:
    (1)平成21年度環境省政策評価書(事後評価)(案)について
    (2)その他
  5. 配布資料
    配布資料
  6. 議事録要旨
    議事録要旨

議事録要旨

(各委員紹介)

(大臣官房長挨拶)

(須藤委員長選任)

(事務局より資料1「平成21年度施策に関する事後評価書(案)(重点的評価対象施策)」の説明)

【須藤委員長】
ここでは、今年度の4つの重点的評価対象施策(「1.地球温暖化対策の推進」、「2.地球環境の保全」、「4.廃棄物・リサイクル対策の推進」、「6.化学物質対策の推進」)を中心にご意見をいただき、その他の施策については、ご意見があればいただく、ということでお願いしたい。
【井村委員】
最初の印象としては、内容が改善された。体系的な書き方が定着してきた。文字量に制限があり詳細を書ききれないため、もう少し詳しく知りたいところはあるものの、全体としてはよいのではないか。目標の設定について、数値的な指標がうまく設定されているという印象である。
省内では政策評価広報課と各原局がどのような体制で、本評価書(案)を作成しているのか伺いたい。
内容の評価にあたる必要性、有効性、効率性については、当初、項目によって記述の仕方に乱れがあったが、改善されてきた。ただ、効率性の記述については、若干気になる。基本的に、効率性というのは、限られた予算と人員の中でいかに無駄なくやるかというものなので、その論拠を示さずに、単に何かを効率的に行ったという表現は適切ではない。どのように効率的だったのか、の点があいまいなままになっているものも若干見受けられる。これは、書き方の工夫によって改善できるのではないか。例えば、化学物質について、56ページの効率性の記述に、「専門的な観点から検討を行った上で、調査対象物質を決定し、調査を行っている」という表現については、全て行うのは非効率なため、スクリーニングを体系的に行うことで、費用を抑えつつしっかりと押さえるべき点は押さえているといった意味だと思うので、それをわかりやすく表現してほしい。全体のフォーマット、記述方法はまとまってきている。
内容的な質問としては、14ページ真ん中あたりに「二酸化炭素海底下地層貯留(海底下CCS)に伴う環境影響評価手法およびモニタリング手法の高度化のための作業を実施した」と記述されているが、どういう意味なのか。非常に興味があるため教えていただきたい。
また、酸性雨・黄砂対策の話が出ていたが、黄砂については、健康への影響等の議論もあるようなので、モニタリングだけではなくこのような問題について取り組みがあるのか教えていただきたい。
最後に、6ページ3行目5「業務その他部門の床面積当たりの二酸化炭素排出量[kg-CO2/世帯]」とあるが、世帯ではなくm2の間違いだと思うので、修正が必要である。
【河野委員】
全般的なことと個別的なことがある。
全般的なことで、まず効率性の書き方について。書きにくい面があろうが、「効率的に行っている」、「費用対効果を考えて行っている」だけでは具体的にどうしているのか見えない。もう一工夫必要なのではないか、という気がした。必要性、有効性については書きやすいであろうと思うし、また、読んでいてわかりやすい。
つぎに評価制度に関して。例えば5ページに、「施策の方向」、「今後の施策の方向性」とあるが、評価した結果、どういう方向性をとるのかを書いていないということは、「施策の方向性」の「2取組みを引き続き推進」ということであろうか。書いてあるものもあるが、書いていないものもある。また、評価制度ということであれば、もし政策が妥当でなければ廃止、休止、完了とあるが、廃止や休止についてはほとんど書かれていない。今年度はそれに該当するものがどのくらいあったのか教えていただきたい。
個別的なことについては、まず、地球温暖化の今後の展開について。政府が2020年までに1990年比25%削減、2050年までに80%削減という目標を掲げているが、資金手当についてもよく考えられているのか、今後国民にどれくらい負担を求めるのか、おおよそを示してわかるようにしていただきたい。
次に、温暖化については、温暖化が進むということへの対応・対策も今後は何か必要ではないか。これについても考えていただきたい。
その他、廃棄物について。中央環境審議会総合政策部会で、川下の話が中心で、川上の話がないということが話題にのぼっていた。企業では、企画・設計段階で将来発生するコストの80%くらいは決まってしまうと言われている。原価企画の段階では、川上で将来発生するコストを絞り込むことが行われる。そうしたことを全ての企業が実施すれば、川下でも廃棄物が減るだろうが、川上の政策として、原料を減らす「リデュース」ということも考える必要がある。また、今後は、再利用しやすい製品設計、あるいはリサイクルしやすい製品設計や原料の組み合わせを検討するなど、政策でも川上について考える必要があるのではないか。
それから、化学物質について。リスクコミュニケーションも大事だと思うのだが、円卓会議を2回程度開催、他にマニュアル作成とあるが、これだけでコミュニケーションになるのか。研修会、講習会、ホームページ上での公表等も、もし実施しているのであれば記載しアピールする必要があるのではないか。
【堤委員】
4行目の「第2回点検の重点的検討事項として、3つの社会(循環型社会、低炭素社会、自然共生社会)の総合的取組」として取り組みが記載されているが、例えば廃棄物で循環型社会及び低炭素社会を描く場合、次項目の【循環資源の適正な3Rの推進】に記載の個別リサイクル法等の3Rの中で、低炭素化の具体的な手法としてバイオマス発電等の種々の対応策が実施され結果を出しているわけであるが、別々の枠組みとして記載するにとどまると、実際には枠組み同士が密接な関係でつながりあって低炭素化が進展していることが見えにくい。これらの繋がり等も表現できればよいと思う。
不法投棄等の問題であるが、適正な処理のために処理業者を選別・契約し、マニフェストを発行するなどの制度が定着し成果が上がってきている一方で、なかなか不適正な行為が撲滅されないことが気になる。もう一段、効果を高めるための細かな対策が必要なのではないか。あるいは、施策と施策を横断的に連動させる試みが必要なのではないか。例えば、産業廃棄物処理業者の優良性評価制度ではISO14001またはエコアクション21の取得が条件となっており、現在廃棄物処理業者の間でエコアクション21の取得申請が急増している。このエコアクション21という施策を通して、審査に当たる審査人等が形式的なチェックやフロー図確認だけでなく、不適正処理や犯罪防止の視点及びバイオマスや廃棄物発電などの低炭素化処理を促す視点等も含めて指導し、評価できるよう各所管同士で横断的に工夫し、結果、優良性評価制度の質や信頼が高まり、同時に不適正処理が減っていく方向付け等が考えられないだろうか。
【藤井委員】
地球温暖化の分野、あるいは大気・水の分野で話せばよいのかわからないが、例えば琵琶湖の問題について、今までは水質問題でアプローチしてきたが、現在では地球温暖化の影響がかなり出ている。それをどこの分野でどのように扱うのか、大気・水の分野を見ても、地球温暖化の分野を見てもない。もっとも地球温暖化の主題はCO2の削減であるが、それが環境にどのような影響を及ぼしているのか、その解決のためのアプローチの施策の検討が、かなり遅れているので、他分野との関連性に触れられると有効になるのではないか。
31ページの浄化槽の整備等について、目標が上がらないことは、20年以上指摘されてきている。11条検査がようやく旧浄化槽協会だけではなく、維持管理業者も可能になったため、11条検査については目標が上がっているが、それでも単独浄化槽の変換ができない。省庁横断的に話し合いが行われているのであれば、各地域の処理に最適なシステムは何なのかということを考えていただきたい。その中で、下水道に取り組めないところを出し、そこについては面的整備をする、というような対策をとらないと追いつかないのではないか。
30ページに「アジア3R推進フォーラム」が開催されたとあるが、同時開催されたNGOの市民フォーラムが抜け落ちている。実は、私はこの市民フォーラムの実行委員長をしたのだが、国のハイレベルな協議だけでは絶対に国際的な廃棄物の問題、循環の問題は解決できない、NGOと連携して取り組むべきだと意見申し上げ、その結果、まずは市民フォーラムが開催され、さらに、政府間レベルの話し合いにもNGOが参加した。基本的に、他の施策でもNGO・NPOとの連携が、特に国際的な分野では必要だと思うので、触れていただきたい。
【三橋委員】
3ページの温暖化対策について、京都議定書6%削減目標をなんとか達成できそうな書きぶりとなっているが、実際にはリーマンショックを引き金とした世界同時不況の影響により達成できるというニュアンスを記述しておくべきではないか。2008年は、先進国の中では日本だけがマイナス成長であり、2009年は、日本が先進国の中で最も大きなマイナス成長であった。2011年、2012年はそれまでの落ち込みが大きかったためにプラス成長にはなるが、2008年前半のGDPには達しない。そのため化石燃料消費量もマイナスになり、京都メカニズムを採用するなどしてバランスをとれば、6%削減については、2012年末の段階では達成できるかもしれない。しかし、また景気が拡大すれば、構図は変わっていないため、同じような状況が起こる可能性がある。このような意味で、そうした点をきちんと書いておかないとフェアではない。石油消費は名目成長率に依存するが、経済成長率がマイナス成長の結果、6%削減が達成できる可能性が強まっていることは、楽観的な表現のみで書くと、かえって一般国民の目を惑わせてしまうのではないか。もちろん努力による削減もあるだろうが、丁寧に書いたほうが良い。
4ページの中長期の展望について、2020年までの日本経済の姿を、これまでの延長線上で予測するのは可能かもしれないが、2020年から2050年の間は、日本を取り巻く内外の政治経済・社会情勢は相当変化するであろう。例えば、2030年以降、年率1%程度の人口減少が進み、それに伴い、経済成長率も鈍化、あるいはマイナスに転じるだろう。恐らく2020年から2030年の間に日本のGDPはピークに達し、以降、GDPは人口減少とともに落ちるのではないか。今後の取組の中で、中長期の問題を考えるといっても、その辺りが非常に甘い。現在、小委員会で作成しているロードマップで、国立環境研究所に委託して出している数値では、2050年にはGDPが現在の1.5倍、粗鋼生産量が今とほとんど変わらない1億トンとあり、非常に驚いた。そんなことはあり得ない。自分の試算では、2050年の粗鋼生産は半分以下で、場合によってはゼロである。現在のアメリカのように、電炉で鉄を作る時代になるかもしれない。それを、例えば、鉄鋼業界からの圧力があるからといって、2050年の粗鋼生産が今と変わらない1億トンを想定し、その前提の下でつくられたロードマップというのは、間違った羅針盤である。それに沿っていろいろな対策が立てられるとすれば、かえって日本経済の方向を間違えることになる。また、日本では、GDPがマイナス成長になることを前提に、国の目標を設定できないといった誤った信仰みたいなものがある。しかし、2050年には、人口が今の1億2,700万人から9,500万人まで、約3割落ちる。粗鋼生産量についても落ちれば、現在の日本のCO2排出量の約3割は鉄によるものであるため、人口減と産業構造の変化のみでも、2050年に80%削減のうち40%以上は何もしなくても削減されるだろう。それなのに、誤った試算に基づいてロードマップをつくっても、意味はない。
どうにもすることができないのであれば、A案、B案として複数のシナリオを用意するなどして対応すべきではないか。何か工夫をしないと、国民を欺くことになる。
【山本委員】
三橋委員と同意見であり、産業構造がどのように変わっていくかということをきちんと予想して、シナリオを検討しないといけないのではないか。
ここ数年、世界における様々な認識が変わってきている。このようなことも織り込まないといけないのではないか。
一つは海洋酸性化の問題であるが、あまり触れられていない。なぜ海洋酸性化にこだわるかというと、CO2の大量放出は地球温暖化だけの問題ではなく、海洋酸性化を急激に進め、海洋生態系、ひいては海洋漁業に甚大な影響を及ぼすということが、ここ数年、世界において認識され、一年前には70の科学アカデミーが一致して警告を発している。それに反して、本評価書(案)では、何も言及しないというのは問題なのではないか。
二つ目は、ジオエンジニアリングについて全く触れられていないとい点で、これも問題である。現在、特に欧米では3つの問題があると認識されている。一つ目は緩やかな温暖化とそれに伴うインパクト。二つ目はティッピングポイントを超える可能性があるという問題。三つ目は海洋酸性化である。それにどのように対応していくかというと、削減策、適応策、そしてジオエンジニアリングという順序である。3月10日に英国下院の科学技術委員会から、ジオエンジニアリングの規制に関する報告書が出されている。現在、ジオエンジニアリングを国際的なガバナンスの下に置くために規制をかけなければいけないといった動きになっている。今後のメキシコにおけるCOP16においてもおそらく政治合意がなされないであろうことから、世界はティッピングポイントを予想して、破局に備えるためにジオエンジニアリングの開発をしなければならないという流れがもっと強くなる。日本でも、地球環境局でまずはきちんと調査するべきである。
次に、フロンの問題について、代替フロンの政策が効果を上げていない。大量の漏出があって、大気中に出ていると専門家は見ている。日本も規制を強化し、自然冷媒への切り替えを促進させるべきである。
この他、リスク評価について、最近気になっているのは、太陽光発電の素子についてである。素子がシリコン系から化合物系に変わり、化合物系が大量に生産されるようになったことを受け、この問題に対してどのようにリスクを管理するのか、リサイクルするのかについても検討していただきたい。
最後になるが、環境省の政策の一番の目玉は、経済のグリーン化の推進である。この数年、これについては相当整備されてきたと高く評価している。グリーン・ビジネス、グリーン・インダストリーの発展の死命を制するのは、まさに環境政策そのものであるという認識が世界にある。米国では「Stateof GreenBusiness」とうレポートが毎年発行されており、市場がどのように発展しているのか、その市場の発展にはどのような環境政策が影響を及ぼしているのか分析されている。従って、施策8(「環境・経済・社会の統合的向上」)のところで、例えば太陽光発電についてはこのような環境政策を導入したことにより、このように太陽光発電の市場が成長したというような分析があればよいのではないか。
【鷲谷委員】
重点的評価対象施策の分野では着実な進展があったという印象である。
国際的な動きの中の日本の役割という視点を持ち、国内だけではなく国際社会に目を向けた重点を設定することも必要なのではないか。その際に、人為的環境変動についても生物多様性の損失についても、国際社会では2020年を節目の年として目標を設定しようとしているが、2020年までにはもう10年をきっている。そのような目標を実現していくとすれば、相当なことを相当な覚悟を持って、していかなれければならない。国際社会の中で日本がリーダーとしての役割を確たるものにするためには、国内だけではなく、国際的な環境面での持続可能性を確保するための人類にとっての10年、といった重点的な行動を提案することも必要ではないか。さらに、目標実現に向けた戦略を国際社会に提案し、国内においても模範となるような意欲的な政策を実行すれば、国際的にも評価を受けることができるようになるのではないか。その際に参照すべきものは、環境危機に対する科学的アセスメントである。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、ミレニアム生態系評価、地球規模生物多様性概況(GBO)のようなフォーマルなものはもちろんだが、多くの分野の研究者グループが、総合的に共同研究した成果も参考となる。例えば、昨年秋、「Nature」にロックストロームら29名の著者が公表したアセスメントがそうである。そのアセスメントをするに当たっての科学的認識は、文明や人類社会の発展の基礎となった完新世、例外的に安定的であったホロシーン(Holocene)と言われる1万年くらい前から始まった時代と、産業革命以降に人間活動がもたらした、かなり不安定な変動環境としてのアンスロポシーン(Anthropocene)との対比である。ホロシーンをレファレンスとすることによって、現在、限界と考えられる値と、現在の状況がどういう関係にあるかということを評価している。地球のシステム全体を、そういうことの認識が可能なサブシステムに分け、いくつかのサブシステムに関しては、要因の変化に関して非線形の反応、時として非常に跳躍的な、異なるフェーズに移ってしまうような変化をすることが、理論的もしくは現実のデータなどでも知られてきている。そのようなティッピングポイント(TippingPoint)の閾値が設定可能なものに関しては、その閾値をやや安全側にずらしたところに限界値を考える。知見が不足していて、閾値は設定できないけれども、さまざまな知見から論理的に安全域を想定できるものは、それを区切る限界値を取るというようにしながら、そのような境界値・限界値を仮置きできたものの中で、境界値と現状の比較をする。このうち既に限界と思われる値を超えていると考えられるのが、人為的な気候変動、生物多様性の損失および窒素サイクルへの干渉である。
前者二つは日本でも認識されている。その二つについて、限界値をどのように設定したかを紹介すると、気候変動については、CO2濃度が350ppm、放射強制力が1m2当たり1Wを限界値にしている。生物多様性については、種の絶滅率をバックグラウンドの絶滅率と現在の絶滅率として比較すると、限界値を100万種当たり10種/年と仮に設定している。このようにしてみると、一番大きく限界を超えているのは生物多様性の損失であるが、これは他の様々なサブシステムの変化の影響を受けた総合的な指標と考えれば、ある意味では当然のことである。
このような科学的アセスメントを踏まえて、危機の現状を直視するということも必要である。今、可能なことは何か、少しでもよい方向に進めばよいという政策のつくり方もあるかもしれないが、危機がどれくらい深刻なのか理解し、それを克服するために今何が必要なのかという視点を重視しながら重点にする施策、また、実行するに当たって必要なことを客観的、科学的なプロセスを提案していくことが、今求められているのではないか。
【細田委員】
一点目は、14ページの漂流・漂着ゴミ対策について、海ゴミは漂流・漂着ゴミだけではなく、上層、中間層、海底にある。現在プラスチックで相当汚染されているが、これを抑止あるいは改善するためには日本だけで取り組んでいても無理である。海外と連携をしつつ、なるべく早く手を打たなければならない。
二点目は、32ページから33ページの廃棄物について、静脈物流について全く触れられていない。産業廃棄物については、プラント側の大規模化が進み、割と効率性を追求しているが、一般廃棄物はなかなか進まない。
しかし、問題なのは、静脈物流である。全国産業廃棄物連合会の加盟事業者のうち、約7割以上は収集運搬業である。収集運搬が効率化されていない上、不良業者がおり、不適正処理の問題にもつながっている。例えば、レアメタルを効率的に集めるためには、収集の部分をしっかり押さえなくてはならない。しかし、その部分が研究もされていないし、施策の中にも入っていない。モノが集まらなければリサイクルはできない。海外に流出してしまうことさえある。どこから逃げてしまうかというと物流からである。静脈物流について、調査・研究を行い、施策を検討するなどの対応が必要である。
三点目について、河野委員のご指摘は非常に的を射たものであり重要だが、環境省は相当な施策を実施してきた。個別のリサイクル法では拡大生産者責任(EPR)を求めおり、拡大生産者責任の目的は環境配慮設計(DfE)である。また、資源有効利用促進法もそうである。今回の改正廃棄物処理法では、広域認定に関連して、環境配慮設計の促進の必要性について議論がなされた。それがどれくらい施策としてなされているかは別であるが、かなりの対策を打ってきているのに、それがあまり記述されていない。実施してきた良いことをきちんと反映させるべきではないか。環境配慮設計は様々なところで出てきているということを、明示的に書くべきである。
【須藤委員長】
他省や他の産業界との関係は別問題として、局内、あるいは1つの施策内で解決できる問題は少なくなってきている。例えば、藤井委員ご指摘の琵琶湖の問題や、山本委員ご指摘の海洋酸性化の問題などについては自分としても非常に気になっており、どの部・課がそれを中心的に調査、研究し、施策を出すのか。例えば温暖化の問題では、水温の上昇、水や風が動かなくなっていることなどの問題がある。大阪湾の水温が2度上がっていると聞き、驚いた。このような問題をどこで担当するのか。水・大気環境局の中に海洋室ができると聞いているが、各局・各課の間に入る問題はどうなるのか。
また、化学物質の問題であるが、水にしても大気にしても、すべて環境基準や排出基準があり化学物質に関わるが、その関連がほとんどうまくなされていないような気がする。その点についてはどうなのか。
さらに、浄化槽の問題について、浄化槽は水をきれいにするため、あるいは排出物を取り除くためにあるが、それと水行政との関わりが非常に不十分ではないか。
【地球環境局】
井村委員から頂いたご質問、CCSのアセスメントやモニタリングとは具体的にどういうことなのかについては、端的に言えば、海底でCO2が漏れてきたときにどのように感知するのか、ということである。例えば火山下からのCO2をどのように検知したらよいかなど、技術的な問題について勉強しているところである。
同じく井村委員から、単位表記の誤りについてご指摘いただいた。その通りであるため、修正する。
河野委員から、5ページの施策の方向性の記述がないというご指摘については、ここでの議論を踏まえた上で書きこんでいきたいと考えている。ただ、正直、地球温暖化問題やその他の地球環境問題の施策は非常に重要であるため、施策をなくすというようなことは考えていない。
同じく河野委員の、温室効果ガス2020年までに25%削減、2050年までに80%削減の目標達成のための資金手当に関するご意見については、目標を立てて、それに向けてどう進めていくかという道筋、ロードマップに関して有識者と話し合いを進めている。地球温暖化対策基本法案については前の国会で廃案にはなったものの、再提出し、速やかに仕上げていきたい。そこで掲げられている25%削減、80%削減の目標を具体的にどのようにするかについては、法律に基づき基本計画を作成することになっている。現在、ロードマップ作成作業中であるが、これを進化させ、政府としての計画にしていくという流れで進めている。その中で実際にどのように負担をするかについても、議論していかなければならない。25%削減を行った場合の試算がある。国立環境研究所が研究しているロードマップの中の試算では、2020年までに真水で25%削減するためには、様々な投資が必要であり、例えばハイブリッド自動車を導入する場合には、従来車との差額が必要であり、こうしたすべての差額を合算すると10年間で約100兆円という試算である。一年に割り戻すと年間10兆円で、官民でどのように分担していくのか、という議論になるだろう。ただし、この投資した100兆円はすべて消えてなくなるわけではなく、需要創出あるいは雇用創出などにつながる。このようなことも踏まえてどう考えていくか議論中である。
藤井委員、須藤委員長からの、地球温暖化の影響をどう捉えるのか、どの部局で対応していくのかというご意見について、地球温暖化の影響自体については、環境省だけではなく、各省との関連もある。例えば、海面上昇による災害の可能性については国土交通省、生物への影響の一環としての作物の不作などについては農林水産省などと関係している。現在、気象庁、国土交通省、農林水産省と協力して、実際にどのような影響があるのか、影響に対してどのように対応すべきかを研究するプロセスを開始したところである。しかし個別問題についてはご指摘の通り、省内各局と連携しなければならないと考えている。
三橋委員からの、CO2削減目標に対する見通しに関する記述が楽観的な記述ばかりで国民の誤解を招くというご指摘については、その通りである。世界同時不況の中で鉱工業生産の落ち込みによるものであるから、景気が回復した場合にはCO2排出量は増加する。手を緩めていい状況では決してない。この辺りの記述は適切な記述に改める。
同じく三橋委員から、2050年までのロードマップにおいて、産業構造の変化、人口減少を適切に見込んでいないのではないかというご指摘を受けた。これについては、人口減少に関しては、国内では人口問題研究所、世界的には国連などコンセンサスのある推計に基づき、国立環境研究所に依頼して2050年の姿を描いた際にも、7,000万人台に落ちるという見込みをしている。産業構造に関しては、国立環境研究所と共同で2050年の姿を描いたものを、昨年8月に公表した際には、粗鋼生産が現状維持のものと落ちるものと2つのシナリオを発表した。しかしその場合も、粗鋼生産が5,000トン以下あるいはゼロといったような指摘はなかった。いずれにしても、ご指摘を踏まえ、一つに絞るのではなく複数のシナリオを描きながら検討することが必要である。
山本委員からの、海洋酸性化、ジオエンジニアリングの問題についての目配りが足りないというご指摘については、確かに今回の資料には記述がほとんどなく、申し訳ない。新しい動きについてもフォローアップすべく、山本委員には、別途、相談し、勉強させていただきたい。
同じく山本委員より、フロン、代替フロンについての対応が甘いというご指摘について、廃棄時に回収して破壊するシステムはそれなりに機能しているが、使用時の漏れが予想以上に多かったことが最近になって明らかになった。フロン回収・破壊法の中で、使用時に機器を点検し、点検時に漏えいしないようにチェックをしっかりすることについては取り組みつつあるが、温暖化対策としての2020年に向けたロードマップもあるため、審議会の場でも新しい政策が必要かどうか議論を始めたいという計画はある。これは正式に発表しているものではないが、現在考えているところである。
鷲谷委員からのご意見について、現在我々が政策を取る上では10年先の議論がせいぜいな面もあるが、もう少し長い目で長期的に考えることについても必要であり、そうした議論を重視していくことは大事である。
細田委員の漂流・漂着ゴミについてのご意見については、確かに海の中・底の問題があるため、ご指摘を踏まえて取り組みたい。海外との連携については、日中韓の環境大臣会合が5月にあり、小沢大臣から漂流・漂着ゴミについての問題提起をしているところではある。
須藤委員長からのご指摘については、各省連携して取り組んでいきたい。
【廃棄物・リサイクル対策部】
河野委員の、3Rの川上に対して、今後どのような施策を実施していくことができるのかというご質問について、細田委員のお話にもあったように、各種リサイクル制度において拡大生産者責任が強化されつつある中で、個別リサイクル法の施行などにより循環利用率が上がっていることなどに反映されてきていると考えている。環境配慮設計についても、第二次循環計画において技術開発を推進することが決まっており、また、廃棄物処理法改正における中央環境審議会における議論の中でも、環境配慮設計の促進の必要性についてのご提言もいただいているため、それに沿って施策を進めていきたい。また、リユースについても今後進めていきたい。
堤委員の低炭素社会と循環型社会との統合的取組に関するご意見について、例えば、ごみ発電の推進は指標にも出ており、また、廃棄物処理施設整備計画においてもこれを向上させるための推進目標を掲げている。廃棄物処理法の改正においても、廃棄物熱回収事業者の認定制度を創設することなどにより、推進していく予定である。産業廃棄物処理の熱回収は一般廃棄物処理の熱回収と比べて進んでいないため、認定制度を活用することで、取組を進めていきたい。
また、廃棄物処理の優良業者制度については、廃棄物処理法の改正により、許可の更新期間の5年を延長できる特例を設けることが決まっており、優良事業者に対して一定のメリットを法律で準備した。現在、どのような事業者にそのメリットを与えるかを検討中である。
藤井委員の浄化槽に関するご意見については、補助制度を充実させる方向で単独浄化槽の転換を進めようとしているが、なかなか顕著な成果として数値に現れてこない。今年から、市町村に、浄化槽・下水処理のどちらがコスト的に良いか判断できるように、双方のコストを比較するような施策を準備している。また、環境、国交、農水の3省の政務官レベルで話し合いが持たれ、汚水処理の今後の進め方について議論しているところである。
藤井委員よりご指摘があった、市民フォーラムについての記述がないことについては、追記する。
細田委員の静脈物流に関するご意見については、まだわかっていない部分がある。手始めに、家電について、見えないフロー、家電リサイクル法ルートから外れた部分について調査を始める。この調査により、今後どのようなことができるか検討していきたい。
【環境保健部】
井村委員の黄砂の健康影響の調査に関するご質問については、124ページから125ページのその他の課題に記述している。結果や成果についての記述はできていないが、黄砂健康影響調査評価検討会を設置し、疫学調査を実施している段階である。
河野委員から、リスクコミュニケーションに関して、円卓会議やマニュアル作成・配布以外の取り組みがあるかというご質問をいただいた。この点については、60ページ(「リスクコミュニケーションの推進」)の「有効性」の部分に記述している。まず化学物質ファクトシートを作成しており、ホームページで請求いただければ配布している。年間500件以上注文がある。また、3つ目の○に記述されているように、化学物質アドバイザーに対する講習や化学物質アドバイザーの試行的派遣も行っている。21年度においては、年間41回派遣の実績がある。国が行っている東京・大阪の2回だけではなく、他地域の自治体がこのような化学物質アドバイザーの派遣を受け入れることにより、リスクコミュニケーションを行っていると考えている。
山本委員の太陽光発電の素子に関するご意見については、これまでは化学物質の関係で、製造の段階から短期使用の段階まではチェック・管理を行っていた。しかし、長期間の使用において化学物質が環境中に漏洩することや、廃棄された後、実際にどうなるかについてはチェックしていなかった。例えば、難燃剤プラスチックなどについても、廃棄またはリサイクルするときに、難燃性を高めるために使用されている有害物質はどうなるのか、リサイクルしてよいのか、ということについて、今後着目し、管理に向けて進めていきたい。
須藤委員長から、化学物質に関して、環境中にどれだけ存在するかという実態調査、あるいは環境中にどれだけ排出されているかというPRTR情報と、環境基準設定との関係についてご質問いただいた。関係部局からの要望を踏まえ、今年はこの物質とこの物質について環境中実態調査およびリスク評価を行うなどして、限られた予算の中で効率的に、関係部局との連携の下、リスク評価を行っている。
【総合環境政策局】
堤委員の、エコアクション21の審査時に不法投棄を防ぐ視点も入れてはどうかというご指摘については、大変重要な視点だと考えており、受け止めていきたい。ただ、エコアクション21は、中小企業でも手の届く簡易な環境マネジメントシステムでもあるので、そうした範囲の中で、どの程度進めていくことができるのか検討したい。
山本委員から経済のグリーン化、および環境ビジネスの市場規模とその重要性についてご意見をいただいた。この点、政府としてはグリーン・ニューディール、グリーン・イノベーションを非常にはっきりと方針として打ち出しており、小沢大臣もたびたび表明している。また、今回の菅新総理の所信の中にも記述があった。さらに、成長戦略の中にも入れ込んでもらっていると考えており、経済白書の中でも総論で1章を設け、環境政策がまさに経済を引っ張っていくということを分析している。このような中、評価書(案)131ページから133ページにかけて記述されている環境ビジネスの市場規模について、ご指摘を踏まえてもう少し追加できないか検討していきたい。
【水・大気環境局】
藤井委員からは琵琶湖に対する温暖化の影響について、それに関連して、須藤委員長からは大阪湾を例に水温上昇についてお話をいただいた。地球温暖化による水環境への影響は、水温の問題、降雨パターンの変化、あるいは雪解け水による水量が水環境に与える影響など様々あり、非常に大きな分野であると考える。このような問題については、須藤委員長にお願いして、水環境対策のあり方について検討会を設けており、その中で地球温暖化の影響に関して大きなテーマとして位置付けている。本評価書(案)では必ずしも記述が十分ではないが、今後力を入れていきたい。
須藤委員長からご指摘があった海洋環境室が、今後、水・大気局に新設されるが、細田委員からご指摘あった海洋ゴミの問題、山本委員からご指摘があった海洋酸性化の問題も含めて、水環境の問題、海洋の関係について取り組んでいきたい。
【自然環境局】
鷲谷委員の、国内だけでなく、国際的な目標の実現に向けてリーダーシップをとっていくべきというご意見については、まさにその通りである。10月に名古屋でCOP10が開催されるが、そこで様々な目標が議論され、新たな目標設定もされることとなる。日本はこれまでアジアを中心に国際貢献を行ってきたが、より充実させていく必要がある。例えば里山イニシアティブのように、わが国の知見・経験を生かして国際的なイニシアティブとして立ち上げることも一つの動きだと考える。他にも来週、さんご礁関係の会議がタイで開催され、行動計画を策定する予定である。このような協力を様々な分野で取り組みたい。
また、しっかりとした科学的アセスメントに立脚して政策を充実させていくべきというご意見についても、おっしゃる通りである。IPBES(生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)設立の動きがあり、特にアジア地域を中心に、しっかりとしたアセスメントに対するわが国の貢献も重要なことであると考える。現在ある枠組みや仕組みを生かしつつ、様々な研究者の知見等を参考にしながら充実させていきたい。
【政策評価広報課長】
この政策評価制度は、施策を評価し、適切に予算に反映していくことが主な目的である。この点について、河野委員の廃止された予算額やその理由等に関するご質問いただいた。8月末に予定されている第2回政策評価委員会において、平成23年度予算要求にどう反映されたか、廃止された予算項目や廃止理由につき報告するため、そのときにご説明する。

(事務局より参考資料3「行政機関が行う政策の評価に関する法律施行令」改正の紹介)

【須藤委員長】
先ほどの評価書については、修正を行っていただき、最終的にはパブリックコメントに出すということでよろしいか。その修正案についての確認は、委員長である私にお任せいただけるか。
【鷲谷委員】
生物多様性の総合評価について、全く記述がない。サイン・ベースド・ポリシーを作るに当たって初めての総合的評価として意義が大きいため、国家戦略の後にでも一言、生物多様性総合評価が実施されたことを記述すべきではないか。
【須藤委員長】
鷲谷委員のご指摘も含めて追加し、修正は御一任いただく。
以上をもって、本年度の第一回政策評価委員会を終了する。

以上


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環境省大臣官房総合政策課企画評価・政策プロモーション室
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