Lifestyle Innovation ライフスタイル イノベーション

環境省

アイコンパッシブクーリング技術によるNEB

株式会社 ミサワホーム総合研究所

概要

地球温暖化やヒートアイランドの深刻化に伴い、エネルギーに頼らないパッシブな手法を用いて街区全体をクーリングすることは、省エネルギーの推進と豊かな生活空間の創出などの効果が期待される。パッシブクーリング技術は、居住者・事業者・社会全般を含むステークホルダーに対してEB(エナジーベネフィット)とNEB(ノンエナジーベネフィット)をもたらすと考えられるものの、それらを定量的に評価した事例は少ない。また、評価をするための指標も限られることが、これまで普及に至らなかった要因の一つと考えられる。
本事業では、“「涼」を呼ぶまちづくり”をテーマとした住宅街区において、パッシブクーリング技術の導入による熱環境改善効果を明らかにすると共に、導入技術がライフスタイルの変化に及ぼす効果について検証し、今後同様の街区を開発する際に活用可能な指標としてまとめた。

NEB/EB

NEB・・熱的快適性指標(戸建住宅地においてパッシブクーリング技術を活用することによる居住者の熱的快適性の改善を評価する指標)
熱的満足感指標(居住者の熱的満足感を評価する指標)

EB・・パッシブクーリングによる光熱費・CO2削減効果

試行実験

パッシブクーリング技術の具体的評価を行うにあたっては、埼玉県熊谷市で開発中の住宅地を対象とし、屋内外の温熱環境調査、アンケート調査、エネルギー消費量計測を行った。また、各宅地に設計したパッシブクーリング部材の冷却性能を評価する指標として、「気温低下量」、「気温の乱れ」をそれぞれ検討し、部材の冷却性能を定量的に表現すると共に、冷却性能の評価指標としての有用性も示すことができた。
被験者による温冷感申告と被験者近傍温度の測定結果からは、窓開閉条件やパッシブクーリング部材による快適温度の変化を評価した。その結果、窓を閉めた状態では温冷感中立(TSV=4)となる室温が6月では27.3℃であるのに対し、窓を開けると28.5℃まで上昇し、さらにパッシブクーリング部材に散水することで29.3℃まで上昇することを明らかにした。自然な気流や間歇的冷気を体感することで、室温が高くても温冷感中立を保つことを意味しており、夏季の冷房時間で見たとき窓を閉じた場合と比較して52%削減できる可能性を明らかにした。さらに、本事業において設計・施工したパッシブクーリング部材は、従来よりも冷涼な空間を屋外に創り出すことで、屋外で過ごせる時間を延ばし、結果として冷房時間を6.9%さらに短縮することにつながることを明らかにした。

NEB活用の方向性

本業務で作成したNEBの活用の方向性を下に整理した。