水・土壌・地盤・海洋環境の保全

海域の物質循環健全化計画 | 平成25年度第3回海域の物質循環健全化計画統括検討委員会議事概要

開催日時

2014年3月10日(月) 14:00~16:00

開催場所

都道府県会館 401会議室

出席者

(委員)
松田座長、鈴木委員、寺島委員、中田(喜)委員、西村委員、山本委員
(オブザーバー)
藤原名誉教授
(環境省水・大気環境局水環境課閉鎖性海域対策室)
名倉室長、石倉主査
(事務局)
いであ(株)黒川、高橋、舘野、畑、平野
(三津湾地域検討委員会事務局)
三洋テクノマリン(株) 合田、水島

資料確認

〔配布資料を確認した。〕

座長挨拶

(松田座長)本日は3月10日で明日が東日本大震災から3年目となる。本事業は3つのモデル地域で始めたが、1年後に東日本大震災のため気仙沼湾での事業が継続できなくなった。1年遅れで三津湾での事業が始まり、昨年度は播磨灘北東部海域、三河湾海域でヘルシープランが策定され、三津湾では今回ヘルシープランの最終案が取りまとめられた。本日の議題は三津湾ヘルシープランの検討と三津湾での検討成果を踏まえた海域のヘルシープラン策定の手引きの改訂である。また、モデル地域での検討成果や海域のヘルシープラン策定の手引きが有効に使われる必要があるので、普及啓発を議題とする。気仙沼湾については、1年間集めたデータ及び解析結果があるので、将来的には有効利用されることを望んでいる。本事業が始まって4年、準備期間を含めれば5年が経った。今回は本事業の最終回であることを意識して、ご議論頂きたい。

議事

(1)第2回統括検討委員会の指摘と対応【参考資料-1】

〔事務局より第2回委員会時の指摘事項への対応の説明を行った。質疑応答はなし。〕

(2)三津湾地域の物質収支モデルによる検討及びヘルシープラン(最終案)について【資料-1】

〔事務局より資料説明を行った。資料-1及び参考資料-3-1、-3-2に関する質疑応答は以下のとおりである。〕

1.(中田(喜)委員)質問が三点。一つ目は、資料-1のp.3、底泥間隙水中の硫化水素とはどの層の値なのか。二つ目は、資料-1のp.10、アマモ場のDO濃度はいつの時期の値か、昼か夜か昼夜平均の値か。DO濃度は夜に下がると思うが、そのようになっているか。三つ目は、アマモの現存量の条件はどの程度か。現存量によってアマモ場の与える影響は異なる。
→(事務局)硫化水素は0~3cm層の値である。アマモ場のDO濃度は6月の昼夜平均である。現存量については現地調査に基づく値である。詳細は参考資料-2に記載している。
→(中田(喜)委員)DO濃度は昼夜平均で見てしまうと、夜の呼吸による低下がみられないので、アマモ場の効果の評価が難しい。アマモ場はアマモによる酸素供給だけでなく、アマモ場の生態系の効果を考慮しているのか。
→(事務局)アマモのみを考慮しており、生態系は考慮していない。
→(中田(喜)委員)アマモのみで、アマモ場の効果がないという結論は書きすぎだろう。
→(事務局)ご指摘のとおりと考える。
2.(西村委員)資料-1、p.6のカキ養殖量の調整について、カキの初期養殖量を現状の0.5倍に調整した場合に、年間カキ成長量が3~4倍になるという計算結果になっている。この理由は何か。
→(事務局)モデルではカキの密度が高くなると、成長量が小さくなるように設定しているためである。
→(西村委員)このモデルでは、カキの初期養殖量を半分にすれば全体としてのカキ成長量が大きくなる可能性があると解釈してよいのか。注釈の個体モデルでないとはどういう意味か。
→(事務局)計算結果からそのように解釈する。個体モデルは個体別年齢別の成長量を設定し、栄養塩を与えてカキ成長量を個体別に計算する。一方、本モデルはボックス内のカキ現存量の炭素量に栄養塩を与えてカキ成長量をボックスごとに計算しており、個体ごとの成長量の積み上げではない。
→(西村委員)カキの初期養殖量を減少させると、底生動物が増加するということはどういうことか。
→(事務局)結果を参考資料-2、p.21に示している。カキの初期養殖量を減らした場合にベントス現存量が増加するという計算結果である。これは、底質環境中の硫化水素が改善することが要因である。
→(西村委員)餌となる植物プランクトンがどこにどのように分配されているかが、わかるようにしてもらえれば、より理解しやすくなると考える。検討してほしい。
→(松田座長)カキ養殖量の調整について、地域検討委員会では生産者や養殖関係者から意見はあったのか。
→(山本委員)特になかった。モデルについて補足説明したい。カキは個体ではなく、養殖筏1枚当たりで計算している。したがって、カキの成長量が3~4倍というのはカキの個体が3~4倍になるのではなく、養殖場全体として3~4倍になることを示している。
3.(藤原委員)資料-1、p.3に底質改善効果が約10年持続とあるが、現地調査結果に基づきキャリブレーションを行っているか、効果が持続する10年間は環境がどのように変化するのか。
→(事務局)論文によると、カキ殻1gあたり12mgの硫化水素を吸着するポテンシャルを持っている。計算では管理方策を実施後2.5年間での硫化水素の吸着量を求めた。この計算結果から、硫化水素の吸着量がポテンシャル量に達するまでの時間を求めたところ約10年と見積もられた。
4.(中田(喜)委員)三津湾の特性として、総リンが増えている理由は何か。
→(三津湾WG事務局)理由は不明である。三津湾では人口動態や地形に大きな変化は確認されなかったが、他の項目は変わっていないのに対して、総リンのみがほんの少し右肩上がりであった。

(3)海域のヘルシープラン策定の手引き改訂版及び普及啓発について【資料-2】

〔事務局より資料説明を行った。資料-2に関する質疑応答は以下のとおりである。〕
(なお、参照ページは全て資料-2策定の手引き本編)

1.(山本委員)p.11の「また、貧酸素水塊が発生すると生物にとって有害な硫化水素が発生し、底生生態系が崩壊するとともに、海底の生物を餌とする浮遊生態系への栄養が及ぶ」とあるが、貧酸素と硫化水素の発生は相互に関係するものと考える。硫化水素は酸素を消費するため貧酸素水塊の発生要因にもなるので、修文してほしい。
2.(松田座長)p.58の図Ⅱ-13「3つの視点と指標の項目」の右側の列で、フロー的項目は時間のマイナス1乗、ストック的な項目は濃度などの次元となり、赤枠・青枠で分類した。ここで、無次元の比の扱いを考える必要がある。例えば、「有機物の沈降量と底泥からの溶出量の比率」は無次元であり、ストック的な項目に分類するのは不適切ではないか。フロー的な項目ではないものは、全てストック的な項目と分類しているが、比の扱いをどうするか、委員に伺いたい。
→(山本委員)元の値がフローであれば、その比はフロー的な項目と分類してよいのではないか。
→(松田座長)事務局は修正案を作成すること。
→(事務局)はい。
3.(中田(喜)委員)p.13の図Ⅰ-8「健全な物質循環とバランスが崩れた物質循環のイメージ」では、大型浮遊魚類が死亡・分解して栄養塩類に戻るというフローであるが、実際は、小型浮遊魚類、動物・植物プランクトンからも栄養塩類に戻るフローがある。この図の表現に違和感があるがいかがか。
→(事務局)なるべくわかりやすく、シンプルに表現したいという考えから、現状の図を作成したが、さらに工夫したい。
4.(鈴木委員)感想となるが、スライド資料-2 p.15の海域のヘルシープラン策定の手引きの普及啓発では、「兵庫県環境基本計画で検討中」とある。愛知県は三河湾再生行動計画を策定中である。本行動計画の検討では貧酸素や水産資源の減少などの問題に対する方策として、流入負荷削減のみを続けていくか、他の方法を進めていくかで議論があった。議論の結果、流入負荷削減だけではなく、干潟・浅場・藻場の再生を進めることとした。おそらく、兵庫県においても同じような議論が行われるものと考える。現状においてT-N、T-Pの環境基準を達成していても問題が生じている海域があり、貧酸素、赤潮、水産資源の減少などの問題に対する方策として流入負荷削減だけでなく、他の方法についても検討すべきであるということを、明確にすべきであると考える。
→(松田座長)重要なご指摘である。本委員会は最終回であるので、何か具体的な改訂案は示すことはできるか。例えば、p.ⅰ「はじめに」の最後のパラグラフは海域のヘルシープランを説明する中心的な文章となっており、水質環境基準を必ずしも絶対視するような記載ではない。ここを補強して鈴木委員の意見を強めることはできないだろうか。環境省からはなにかあるか。
→(環境省)海域のヘルシープランでは、環境基準のあり方や水質総量削減の必要性を示すことは考えていない。これまでモデル地域では水質総量削減に限らず物質循環の観点からさまざまな方策を検討してきた。例えば、p.ⅰの「このような現状に対し、環境省では下層DO等の環境基準の検討や瀬戸内海における湾・灘ごと、季節ごとの状況を把握した上での栄養塩類の濃度レベルの管理等の検討を進めているところである。」というパラグラフを削除しても海域のヘルシープランの本質を失わないと考える。削除の可否等については委員会の判断に任せたい。
→(松田座長)海域のヘルシープランは、これまでの水質総量削減を中心とした方策ではなく、完璧ではなくとも今までにない新たなテーゼ(哲学)を示していると考える。本日の議論のニュアンスを、今回の改訂で充実させた「はじめに」「取りまとめ」の部分などに反映できるか、事務局で検討してほしい。
→(事務局)はい。
→(中田(喜)委員)全体的なトーンはトップダウン的な発想になったと感じるが、ボトムアップ的な発想が残っているところがみられる。細かくなるが、例えば、p.49の貧酸素の発生が問題となっている場合が例示されており、ここでは課題として「過剰な流入負荷」が他の課題と併記されているが、「過剰な流入負荷」は課題ではなく原因の一つの可能性ということだろう。できる限りトップダウン的な発想にしてほしい。
5.(中田(喜)委員)p.58の図Ⅱ-13では、T-N、T-Pに占める形態別の栄養塩類の割合などが指標の項目として示されている。N、Pの比率については今まで議論がなかった。必要だとは思うが、唐突な感じを受ける。
→(事務局)p.62~63で指標の考え方を示している。ここでN、Pの比率について説明を補充したい。
6.(松田座長)さきほど鈴木委員から説明のあった三河湾再生行動計画が先行事例であれば、普及啓発の例に示してはどうか。
7.(山本委員)p.18に「瀬戸内海環境保全特別措置法」「瀬戸内海環境保全基本計画」の変更に向けた検討とあるが、検討はどのような状況で、海域のヘルシープランの改訂版がどの程度関与できるものか。
→(松田座長)国の検討は進んでおり、3月末にパブリックコメント、次年度初めには案ができ、夏には閣議決定される見通しである。関係府県での計画は次年度以降に検討が進められると考える。したがって、今年度末に海域のヘルシープランの改訂版を策定することはタイミングとしてはよく、関係府県での活用が見込まれる。
→(山本委員)関係府県での「瀬戸内海環境保全基本計画」では、水質総量削減はどのように組み込まれることになるのか。
→(環境省)現行の「瀬戸内海環境保全基本計画」ではツールの一つとして現行の水質総量削減を位置づけている。水質総量削減の全体の仕組みは今後検討する予定であり、検討が進んだ段階で関係府県での水質総量削減計画が見直される。
→(松田座長)三河湾再生行動計画では三河湾ヘルシープランはどのように利用されているのか。
→(鈴木委員)三河湾再生行動計画では、三河湾ヘルシープランの考え方を基本として、関係者がどのように三河湾をかえていくのかという論理を展開している。そこでは、流入負荷削減の見直しを明確にしたが、今後、愛知県の建設、農水、環境といった関係部局との連絡会議ができ、議論を深めていく手順である。したがって、考え方については海域のヘルシープランに基づいて場の保全と場の造成が最も重要な施策であるとしており、一歩前進したと考える。今後は、いかに実現していくかについて議論が進められる。

(4)全体について

1.(鈴木委員)感想としては、海域の物質循環健全化計画が地域に与えた影響は非常に大きかったと考える。環境省の海域のヘルシープランがあったからこそ、この考えに沿った三河湾再生行動計画ができた。環境省に感謝の意を示したい。
2.(松田座長)ヘルシープランの前段となっている海洋政策研究財団の「海の健康診断」がある。寺島委員から何かあるか。
→(寺島委員)このような形で取りまとめたことは大きな進歩であると考える。考え方の基本を変えることは簡単なことではない。政府に取り上げてもらったことで社会科学、自然科学の双方が集まって、議論を進め、考え方をまとめることができた。環境省にはたいへん感謝している。この海域のヘルシープラン策定の手引きを地域に活用してもらうように広報など普及活動をぜひ進めてほしい。
→(松田座長)昨年改訂された新海洋基本計画では、「地域の計画の構築に取り組む地方を支援する」、という内容が加わった。このような点からも、将来的には、海域のヘルシープランは沿岸域の総合的管理とリンクする可能性が高いと考えている。
→(寺島委員)関連して、新海洋基本計画では「支援する」という抽象的な表現となっており、具体的な取り組みと合わせてどのように支援するかということを明確にしていくことが課題である。地域からの率直な意見として支援の要望はあるが、政府の施策としてどのような形で支援するかはこれからの議論であり、海域のヘルシープランの活用も含めて、新海洋基本計画の期間内にある程度具体的に示していく必要がある。
3.(鈴木委員)資料-2、p.9、沿岸域の利用の中に、一般・産業廃棄物処分場を入れてほしい。海域は、人間の社会生活か排出される廃棄物処分の大部分を担っている現状がある。
→(松田座長)陸上での処分場確保は難しい状況であり、海域を処分場として利用するという潜在的な要望はあるだろう。追記を検討してほしい。

環境省挨拶

 本検討委員会が始まって4年が経つ。平成23年度からは三津湾のモデル地域での検討が始まり、現地調査を中心とした基礎的な情報収集、改善効果検証のための実証試験、山本委員を座長とした地域ワーキングでの地域関係者の情報共有、検討を経て、三津湾ヘルシープランが策定された。先行してヘルシープランが策定された播磨灘北東部海域、三河湾では、地域のヘルシープランに基づいた地域の関係者による取組が進められている。
環境省としては取組の実施状況、評価結果の情報収集、検証を行いたい。
また、本検討委員会のミッションである海域のヘルシープランの策定の手引き 改訂版の取りまとめについては、三津湾モデル地域での検討及び新たな視点を加えて、若干の宿題を残しつつも本日取りまとめることができた。海域のヘルシープラン策定の手引き改訂版は、三津湾ヘルシープランと合わせて全国自治体に送付し、普及資料を活用して積極的に周知していきたい。
来年度以降は本事業の成果を活用しつつ、沿岸域の環境改善技術の評価事業という新しい事業を進めていきたい。4年という長い間、助言、協力いただいた委員の皆様に深く感謝する。

その他

 今回の指摘事項等を踏まえて、海域のヘルシープラン策定の手引き改訂版を修正し、各委員に送付予定。修正内容は事務局及び松田座長に一任する。

以上

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