水・土壌・地盤・海洋環境の保全

海域の物質循環健全化計画 | 平成24年度第2回海域の物質循環健全化計画統括検討委員会議事概要

開催日時

2012年11月1日(木) 10:00~12:40

開催場所

航空会館201会議室

出席者

(委員)
松田座長、鈴木委員、中田(喜)委員、中田(英)委員、西村委員、藤原委員、山本委員
(環境省水・大気環境局水環境課閉鎖性海域対策室)
名倉室長、阿部室長補佐、的場主査
(事務局)
いであ(株)島田、黒川、畑、舘野、阿部、平野
(地域検討委員会事務局)
三河湾地域:いであ(株) 風間、松田
播磨灘北東部地域:(社)瀬戸内海環境保全協会 藤原、いであ(株)田中
三津湾地域:三洋テクノマリン(株) 合田、水島

委員紹介

〔寺島委員はご欠席。配付資料を確認した。〕

環境省挨拶

〔本事業は平成22年度から実施しており、委員の先生方にはその当時よりお世話になっている。本事業の検討の流れとしては各モデル地域での地域検討委員会(以下、WG)で検討し、本委員会でまとめるという形となっている。三津湾での検討は1年遅れで始まったため来年度までの検討となっているが、当初の予定では本年度が事業の最終年度となる。従って、海域のヘルシープラン策定の手引きについては本年度内に策定し、地方自治体などに配付することを予定している。また、来年度は三津湾の成果を踏まえ、手引きの改訂版を作成し、配付したいと考えている。本日も忌憚なくご検討をお願いする。〕

座長挨拶

(松田座長)本委員会の位置づけを確認し、挨拶と代えさせて頂きたい。当初から検討を始めた2海域(三河湾、播磨灘北東部)については3年計画の3年次目、三津湾は3年計画の2年次目であり、2海域については最終回の1回手前となっている。最終回で大きな問題が出ると年度内に策定する手引きへの反映等が難しくなるため、是非今回の検討で議論を深めて頂きたい。

議事

(1)物質収支モデルによる解析結果及び精度向上について【資料-1】

〔事務局より資料説明を行った。資料-1に関する質疑応答は以下のとおりである。〕

1.(松田座長)資料-1、p.38(以下、参照ページはすべて資料-1)の図 2.12「酸素消費物質の存在量の比較」や、p.103の図3.15「溶存態窒素濃度が0.1 mg/Lを超える頻度の増加分布状況」が示されたことは、今後の展開に重要であると考える。解析結果については十分な精査が必要であるが、図 2.12 からは1960年代地形では6~7月、9~10月には酸素消費物質の存在量はほとんどないが、現況では存在しており、従来なかった季節に酸素消費物質が増加しているということが重要な結果だろう。図 3.15 からは施策を組み合わせることで窒素源がノリ養殖場に広がっていることが示された。
2.(藤原委員)p.37の図 2.11「溶存酸素2mg/L以下の面積の比較」とp.38の図 2.12「酸素消費物質の存在量の比較」とでは、見た目に違いがあるが、これは無酸素水の存在の有無が原因か。
→(事務局)ご指摘のとおりである。現況と1960年代地形とでは溶存酸素2mg/L以下の面積はあまり差がないが、1960年代地形では無酸素水が存在しなかったため、硫化水素などの酸素消費物質が生じていないという結果となっている。
→(山本委員)関連して、酸素の収支についてはどうか。広島湾でのモデル解析結果においては、有機物の分解で消費する酸素量と還元性物質が消費する酸素量が同程度であった。三河湾では還元性物質が多く存在していることが想定される。浅場造成は酸素を供給するための1つの方法であるが、そのほかに底質を改善するなどが効果的であると考える。
→(事務局)p.32~34に三河湾における酸素フラックスを示している。1960年代地形で無酸素になりにくい理由としては、海水交換がよかったこと、干潟が存在し底生生物現存量があったために底泥に落ちる有機物量等が低減されていたことなどが挙げられる。流入負荷量が同じで地形を変えるだけでなぜ結果が大きく異なるのかについては、物理的な側面なども含め解析を進めたい。
→(山本委員)p.35の一色干潟域での酸素フラックスをみると、1960年代地形のほうが現況よりも酸素消費物質の酸化が比較的大きい。これは、ローカルでみれば酸素消費物質による酸化が大きい地域もあるということでよいか。
→(事務局)そのとおりである。
2.(松田座長)p.32~36の図では、分解に伴う消費と無機化に伴う消費、底泥酸素消費と酸素消費物質の酸化など、概念の似ている凡例があるが、これらの定義はどうなっているか。資料では記載がないようであるが。
→(事務局)定義を整理して明示したい。分解に伴う消費は懸濁態有機物が溶存態になるときに消費する酸素量、無機化に伴う消費は溶存態が無機態になるときに消費する酸素量である。一般に有機物分解に伴う酸素消費量はこれらを合算したものである。底泥酸素消費は実際に酸素を消費する量、酸素消費物質の酸化は嫌気分解に伴う酸素消費量で、底泥酸素消費が0になった後に出てくるものである。
→(松田座長)読み手がわかるように明示すること。
3.(中田(喜)委員)p.24~31では三河湾口のりん・窒素・炭素のフラックスが示されている。これは断面全体での正味のフラックスと考えてよいか。これを上層と下層で分けてみるとどうなるのか。流れは上層から出て、下層から入るだろうが、下層からどれだけ入ってくるのかが気になるところである。
p.65~70の図 2.22「底泥表層のTOC_fastと間隙水中DO濃度」から何がいえるのか。
→(事務局)干潟での底泥酸素消費量について1年間分の解析を行った結果、現況と1960年代地形とで差値が小さかった。原因を確認するため、底泥酸素消費量にもっとも影響が大きい底泥表層の易分解性TOCに着目し、この傾向を示したものである。凡例はcase08が現況、remedy1~4は改善策[1]~[4]に対応している。結果をみると、干潟を造成することで、底泥表層の易分解性TOCが減少する傾向が認められる箇所がいくつかみられた。また、底泥表層のDOが増加する傾向がみられた。これらのことから、改善策を継続することで、底泥表層の易分解性TOCが減少、DOが増加する方向に向かうだろうということを示している。
→(中田(喜)委員)p.45~46では、夏季の渥美湾奥における植物プランクトンフラックスをみると、小さいサイズの植物プランクトンのフラックスは1960年代地形のほうが現況よりも大きい。この結果には、干潟でアサリの稚貝等がナノ・ピコ植物プランクトンを選択的に摂食するという効果は反映されているのか。
→(事務局)反映はしていない。モデルに反映した場合は結果が変わってくるものと考える。
4.(鈴木委員)p.73の図2.24「三河湾全域における底生生物現存量」では、例えば懸濁物食者は1960年代地形では2009年の2倍程度の現存量となっている。これはどのように求めた値か。
→(事務局)1960年代地形での底生生物現存量は、埋立てにより消失した干潟・浅場の面積を加え、面積に近傍での現状における底生生物の現存量をかけて算出している。
→(鈴木委員)愛知県水産試験場が試算した過去のアサリの現存量は現況の少なくとも約3~4倍、中田(喜)委員が過去からの漁獲量、漁獲努力量等から試算した資源量は記憶では現況の約10倍となっている。面積の増分だけ現状の現存量をそのまま引き延ばすという方法では、1960年代の底生生物による摂食圧が過小に評価されている可能性がある。p.73の図をそのまま素直にみると、この程度の改善策を実施しても効果はない、費用対効果の観点からも約500~800haの干潟・浅場造成や藻場造成は意味がない、と解釈されかねない。豊かな海の実現を目指すことをアウトプットとするのであれば、シミュレーションで1960年代の底生生物現存量の試算について考慮する必要がある。三河湾では、1998年ころから2004年にかけて約600haの干潟・浅場造成が実施され、二枚貝の漁獲量が倍増、ガザミの漁獲量も増加、希少種であるニホンハマグリが湾奥で採取されるようになった。干潟・浅場造成によって豊かな海が実現されつつあるというのが、実際であると考える。
→(事務局)p.73では1年目の計算結果を示しているが、改善策により酸素環境は改善方向に向かっているので、計算期間を長くすることで底生生物現存量の現況との差は出てくるものと考える。
5.(鈴木委員)p.57で、微小植物プランクトンが現況よりも1960年代地形のほうが4万tonC/year多く、有機物の沈降も2万ton多い。有機物の沈降量が大きければ、酸素消費量も大きいように思うが、溶存酸素2mg/L以下の面積比較や酸素消費物質の存在量の比較ではそのようになっていない。その理由については整理すること。
微小植物プランクトンから動物プランクトン、有機物からベントスへのフラックスに数値が入っていない点など修正すること。
→(事務局)修正を行う。

(2)地域検討委員会の検討状況について【資料-2】

〔事務局より資料説明を行った。資料-2に関する質疑応答は以下のとおりである。〕

1.(中田(喜)委員)資料-2、p.5(以下、参照ページはすべて資料-2)の三河湾での実証試験の中間結果[3]について補足説明をしたい。沖出し距離の長い一色干潟では懸濁物食者、堆積物食者ともに現存量が多い。一方、比較的沖出し距離の短い六条干潟では懸濁物食者の現存量は多いが、堆積物食者の現存量は多くはない。干潟の沖だし距離が長いほど、懸濁物食者が多く、それに続く堆積物食者もたくさん存在できると考える。つまり、滞留時間が長い干潟のほうが、物質循環の健全化にとってはよいのではないかということである。
2.(藤原委員)実証試験結果からは、富栄養ではサイズの大きい珪藻類が増殖、貧栄養ではサイズの小さい珪藻類が増殖となっている。これは一般的な内湾での傾向とは逆になっている。どのように解釈すべきか。
→(中田(喜)委員)理由はわからないが、観測したときにこのような結果だったということである。私としては、貧栄養の状態は外洋のような環境となっており、回転の速い、比較的小型の植物プランクトンが栄養をとってしまうという構造になっていると解釈している。
→(藤原委員)内湾での富栄養と貧栄養の比較ではなく、内湾の貧栄養と外洋の貧栄養との比較となっているということか。
→(松田座長)今後も検討すること。
3.(中田(喜)委員)播磨灘北東部での実証試験の中間結果について、水質鉛直分布状況調査でアンモニア性窒素と硝酸性窒素の割合が昨年度と本年度の結果で異なるが、これはどういうことか。
→(藤原委員)事業場排水はアンモニア性窒素の割合が多い。事業場排水は常時放流されていないとのことで、現在事業場に排水状況を確認中である。確認の状況はどのようになっているか。
→(播磨灘北東部WG事務局)事業場は本年度調査時に排水を行っていなかったとのことである。このため、本年度は昨年度にくらべて硝酸性窒素の割合が大きかったと考えられる。
4.(西村委員)p.5の図4「アサリ着底稚貝によるサイズ別のクロロフィルaの変化」では2~20μmサイズのクロロフィルが顕著に減少となっているが、実験開始時の濃度の違いなどもあるので、この結果はどのように解釈すればよいのか。2μm未満の植物プランクトンは摂食されにくい、ということか。
→(三河湾WG事務局)実験開始時の濃度は考慮しなくてはいけない。濃度の変化量ではなく、変化率をみても2~20μmの植物プランクトンの減少が多かった。2μm未満の植物プランクトンについても数十%程度は減少していた。
→(山本委員)実験系ではコントロールを設けていたか。摂食圧のない状態での増殖速度との比較などが評価する際には必要になると考えるが。
→(三河湾WG事務局)コントロールされた実験系で試験を行った。
→(松田座長)最終報告では結果の解釈についての表現を工夫し、実験系についても触れること。
→(西村委員)例えば、資料-1、p.57などでは「微小植物プランクトン」という表現があるが、サイズはどのように区分しているのか。
→(事務局)20μm未満の植物プランクトンを「微小植物プランクトン」、20μm以上を「植物プランクトン」としている。
→(松田座長)資料にその定義をわかりやすく示すこと。
→(西村委員)三河湾では2~20μmの植物プランクトンが増えてくることが、物質循環の健全化に重要であるという結論になるのか。
→(事務局)アサリなどの二枚貝に着目すると2~20μmの植物プランクトンが重要であるが、より高次の魚類などにとっては大型の植物プランクトン、動物プランクトンも重要であると考える。
→(西村委員)三河湾のモデルではサイズを分画したことに大きな意味があると思うが、栄養塩濃度と植物プランクトンのサイズとの関係や、その先の動物プランクトンへのフローなどを整理することが必要だろう。
→(松田座長)2~20μmの植物プランクトンの全体のなかでの位置づけなど明確にしていく必要がある。
→(中田(喜)委員)フラックスの表現に工夫が必要だと考える。三河湾の食物網のなかで、微小プランクトンを介した食物網とプランクトンを介した古典的な食物網とがどれくらいなのかを明示して、豊かな海ではおそらく古典的な食物網が太いが、そうでない海では微小食物網で終始して高次の栄養段階にあがらないという状況となっている、というようなことをフラックスの計算結果を示し表現することが重要だと考える。
→(西村委員)そのときのサイズは20μmということでよいか。
→(中田(喜)委員)そのとおりで、ピコ・ナノでいうとナノも含むということである。
→(松田座長)微小食物網だけではなく、三河湾での全体的な特徴がわかるように整理してほしい。加えて、表現について捕食ではなく、摂食ではないか、確認して修正すること。
→(山本委員)学術的にはマイクロビアルループという表現がある。つまり、ループになってしまって、高次の栄養段階にまわらないということである。実証試験では、微小植物プランクトンであっても、アサリの稚貝のようにサイズの小さい生物であれば摂食し、微小植物プランクトンも食物網にのってくる、ということでよいか。
→(中田(喜)委員)そのことを確認するための実験である。干潟のようにアサリの稚貝のような生物がいる場所であれば、微小植物プランクトンも食物網にのってくる、そのような場所がなければ食物網にのらないということが実験からいえればいいと考えている。
5.(中田(英)委員)さきほど中田(喜)委員より補足説明のあったp.5の三河湾での実証試験の中間結果[3]について、沖出し距離と海水の滞留時間、懸濁物食者と堆積物食者の割合などの関係から効率的な栄養塩変換をモデルで検討することはできるのか。
→(松田座長)モデル解析結果を用いて説明することができれば、新しい結果となる。今後の課題としてほしい。
→(中田(英)委員)ヘルシープランのなかで、その部分がポイントなるのであれば、その部分とモデルとの整合性がとれているとヘルシープラン策定の際に整理しやすいだろう。
6.(中田(英)委員)資料-1、p.73について、1年間の計算結果を示しているとのことであるが、計算期間を延ばした場合にはどのような解析結果が得られると考えているのか。ある程度期間が経つと収束に向かうのか。
→(事務局)現在のところ、モデルでは5年間の計算結果が得られている。その結果をみると、3~4年で周期定常となっている。
→(中田(英)委員)どのようなバランスになるのか。
→(事務局)酸素環境が改善し、あるところで安定している。
→(中田(英)委員)播磨灘北東部での検討では、改善の目標に対して改善策を講じるとこのような解析結果となり現況と差が出てくる、というようにストーリーとしてわかりやすい。3~4年というのはモデルでの話しではあるが、三河湾では時間の規模をどのようにみていくかというのは整理すべきだろう。
→(山本委員)解析結果については、安定したところを示したほうがよいのではないか。
→(中田(喜)委員)初期値の影響があるので、定常になるまで計算する必要がある。
→(鈴木委員)構築したモデルでは、母貝の生存率の向上が引き金となる幼生の発生・加入・生き残り過程が含まれていないため、過小評価となっている。二枚貝のような大量に産卵する種では、母貝の少しの増加でも浮遊幼生加入量が大幅に増加することにより次のストックの劇的な増加につながる。天然の二枚貝資源が大きく変動するのはこのような特性によっている。この課題は国土交通省の主催する伊勢湾再生三河湾ワーキングで議題にあがり、現在はモデルに反映させることが難しいということで棚上げされているが、将来的にはモデルに組み込むのがよいだろう。モデルの課題のなかに表現しておくべきだと考える。
→(中田(英)委員)モデルでは栄養塩のバランスについてはある程度評価できるだろうが、生物の評価についてはモデルの限界などの説明を加えないと、読み手に誤解を与える可能性がある。
→(松田座長)生物はある程度までよくなると、生物自身でよりよくなるということもあるが、現在のところモデルではそれを表現することは難しい。モデルの限界や課題がわかるようにしておく必要がある。
→(山本委員)1つの方法としては、1960年代の生物の現存量等のデータに基づき、その現存量に達するために必要な加入量を逆算して合わせる方法などが考えられる。
→(鈴木委員)中田(喜)委員は、過去から現在までの二枚貝の漁獲量から、現存量を試算して、ろ過食性マクロベントスの現存量の違いが酸素消費量に大きく影響してくるという結果を示している。
解析結果を示す際は、読み手の誤解を招かないように説明を加えることと、モデルの限界や課題などがわかるように記載する必要がある。一般の人は1960年代の再現というと生物生息状況などのさまざまな環境が再現されていると思うだろう。しかし、実際はそうなってはいない。地形のみを1960年代としているという点も、これがどのような結果につながるのかをイメージするのは難しいだろう。
→(松田座長)モデルの解析結果からわかること、わからないことを書き分ける必要がある。

(3)海域のヘルシープラン策定の手引き(案)について【資料-3】

〔事務局より資料説明を行った。資料-3に関する質疑応答は以下のとおりである。〕

1.(山本委員)資料-3、p.5(以下、参照ページはすべて資料-3)に「栄養塩類(鉄を含む)」とある。モデル海域では鉄に着目した検討は行っていない。ここであえて記載しているというのは、今後こうした栄養塩についても着目する余地を残すためか。
→(事務局)ここで鉄を特別に記載するのは不自然に感じる。検討し修文が必要であれば、最終報告で対応したい。
2.(藤原委員)p.10で、STEP.5「健全化に向けた方策」を検討する前段階までに、調査・解析といった研究が必要となる。5-1の前に研究の必要性を強調することが必要だと考える。
→(事務局)現状の把握は、STEP.1~2で地方自治体やNPOなどが解析できる方法ということで、既存資料調査、現地調査、シミュレーション解析などを用いて行うこととなっている。研究者については、さらにSTEP.3~4でも研究を通してアプローチする必要があると考える。
3.(鈴木委員)p.52の表Ⅱ-9「望まれる役割」では、「住民・NPO・漁業者」とひとくくりに区分されているが、これはそれぞれ分けて役割を考えたほうがよい。漁業者は生業であり、海を常にみているので、日々感じていることやシミュレーション等の科学的見解に対する意見を発言してもらうことが重要な役割である。また、NPOは近年その数が増加しており、それぞれの目的に沿った活動を行っている。NPOにはヘルシープランに直接関与してもらい、さまざまな側面で活動をしてもらうという役割が重要だろう。
「~はじめに~」で記載を追加した部分で、2つ目のパラグラフの表現は修文が必要だと考える。水質の改善に一定の効果を挙げてきたにもかかわらず、未だに赤潮や貧酸素水塊の発生が収まらない海域がある。そのことと、低次の生産を抑制したこともあいまって、高次の生態系に物質が循環せず、水産資源の減少を招いている。つまり、栄養塩類の循環バランスが損なわれている。
→(松田座長)同様の意見である。「低次の生産を抑制したことにより、」という表現では、直接的な因果関係を示すことになるが、実際は、埋立てや生息場の消失などその他の要因も関係するので修文すること。
役割については、それぞれ役割が異なるので分けて考える必要がある。関連して、「~はじめに~」では対象とする海域は明示されているが、この手引きの読み手についての記載はない。手引きの内容をみるとさまざまな関係者の合意を求めているので、想定する読み手も明示すべきである。
4.(中田(英)委員)本文中で紹介されている三河湾の事例をみると、微小プランクトンの問題が強調され過ぎている印象を受ける。確かに重要な問題ではあるが、その他にも浅場を確保することで植物プランクトンの全体のパイが大きくなり、貧酸素の解消や高次の食物網へつながり、生産性が向上するというモデル地域でもある。この点も手引きに盛り込む必要がある。
→(鈴木委員)p.19の「三河湾の基本特性把握の事例」では、「高次の生物に摂食・捕食されにくい微小なプランクトン(ピコ・ナノプランクトン)が増えているのではないか?」とあるが、ピコ・ナノプランクトンは結果として増えてきているのであって、「~が原因として考えられ、」という原因についての記載があって「~増えているのではないか?」という表現のほうがよいだろう。今の表現では、ピコ・ナノプランクトンが増えたことが原因だと短絡的に捉えられてしまうおそれがある。修文が必要である。
5.(松田座長)2μm以下の植物プランクトンは主に藍藻であるとの表現があるが、データとしては示されていない。
→(三河湾事務局)種を確認する。
6.(山本委員)p.18の表Ⅱ-3「問題点や不具合の検討を始める事項」では、貧酸素(青潮)の発生で想定される要因が示されているが、還元物質の硫化水素や鉄などが含まれていない。少なくともこれらは酸素消費物質であるので加えてもよいだろう。
→(松田座長)シミュレーションでは酸素消費物質を取り上げているので、全体として整合がとれるように修文すること。
7.(西村委員)p.39の基本方針の決定で、記載を追加した部分に「個々の問題点が持続・自律的に解決できるような基本方針」「既に深刻な問題が生じている場合には、短期的な方針」とあるが、この2つが具体的にどういうものなのか。本文やコラムで説明が必要である。
8.(藤原委員)三河湾の事例の書きぶりは、ヘルシープランの先行事例として成功している事例として扱うのが、読み手にとってわかりやすいだろう。
→(鈴木委員)深堀の埋め戻しや干潟・浅場造成を初めて7~8年経ち効果が見え始め、今漁獲量に効果が現れてきている。また、漁業者、NPO・住民も海が良い状態に変化してきたことを実感してきている。だだし、公共用水域水質調査の結果からは、トレンドしては水質に顕著な改善はみられていない。道半ばということを前提として取り上げるのであれば、先行事例として扱うのもよいだろう。
→(松田座長)三河湾のようにこれまでさまざまな取組が行われてきた地域と、そうでない地域では書きぶりも変わってくるだろうから、藤原委員の意見の反映について検討すること。
9.(中田(英)委員)4つのモデル地域での事例が本文中では並列、細切れで紹介されている。これでは検討の流れがわかりにくいので、表現を工夫してほしい。
→(事務局)全体のストーリーがわかるように表現を工夫したい。

その他

 今後の予定は、海域のヘルシープラン策定の手引き(案)、各モデル地域のヘルシープラン(案)を年内に策定、委員に送付予定。
次回の第3回 海域の物質循環健全化計画統括検討委員会は、平成25年3月の開催予定。

以上

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