水・土壌・地盤・海洋環境の保全
東アジア諸国における水質総量削減制度の導入支援の取組
東アジア諸国を対象に、海域の富栄養化対策として我が国が有する知見を活かし、水質総量削減制度の導入に向けた支援を実施しています。
目的
中国をはじめとする東アジア諸国においては、急激な経済発展の過程で大量の汚濁負荷が発生し、閉鎖性海域の富栄養化が深刻化しており、我が国の海域環境にも影響を及ぼすことが懸念されています。このような状況に対しては、我が国が昭和50年代初めに導入した水質総量削減制度が有効ですが、東アジア諸国においては、当該制度を導入するにあたって必要な技術的・制度的知見が不足しており、関係者の理解・関心も低い状況にあります。
こうした中、環境省では我が国と密接な関係にある東アジア諸国において持続可能な経済発展をしつつ、水質改善を実現するため、我が国がこれまで培ってきた水質総量削減の経験を活かし、積極的に国際貢献を図っています。
窒素・りんの水質総量削減に係る日中共同研究
中国では『第9次五カ年計画』(1996-2000年)から水質総量削減を開始して水環境の改善に取り組んでいますが、海域、湖沼等における水質汚濁が依然として進行し、深刻な問題となっています。このため、『第12次五カ年計画』(2011-2015年)において、第11次五カ年計画で総量削減の対象とされていた化学的酸素要求量(COD)に加えて、窒素やりんを水質総量削減の対象に追加することの検討を進めていました。
このような状況を踏まえ、平成20年12月の日中環境汚染対策に関する第5回局長級対話において、日本の知見・経験を基に中国の国情に沿った窒素・りんの水質総量削減の実施方法案を作成するための日中共同研究の実施が合意されました。さらに、平成21年3月の日中環境汚染対策に関する第6回局長級対話では、この日中共同研究実施に際して、日本から提供する知見・経験や今後の進め方についての意見交換が行われました。このような合意のもと、日本環境省と中国環境保護部の協力により、平成21~22年度の2年間にわたる「窒素・りんの水質総量削減に係る日中共同研究」(以下、日中共同研究という。)を実施してきました。
本協力の結果も踏まえ、中国では、第12次五カ年計画から、新たにアンモニア性窒素が総量削減の対象として加えられることとなりました。
(1)日中共同研究の内容
- 1)日中共同研究レポートの作成
- 日本及び中国の協力のもと、日中双方の水質総量削減制度の法体系や経緯、中国における窒素・りんの水質総量削減の実施方針案を取りまとめる。
- 2)キャパシティ・ビルディングの実施
- 中国における窒素・りんの水質総量削減実施に向けて、中国側検討委員を我が国に招聘し、水質総量削減に係る歴史、実施状況、経験等の現地視察を行う。
- 3)中国モデル地域におけるフィージビリティスタディ(FS)の実施
- 日中共同研究レポートで取りまとめた中国における窒素・りんの水質総量削減の実施方法案について、中国のモデル地域で現地適用性を検証する。
(2)経緯
平成20年12月 | 水質総量削減に係る日中共同研究開始に合意(第5回局長級対話) |
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平成21年6月 |
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9月 | 中国政府関係者のキャパシティ・ビルディング実施(於:日本) |
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平成22年3月 |
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8月 |
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10月 | 中国政府関係者のキャパシティ・ビルディング実施(於:兵庫) |
11月 |
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12月 |
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(3)日中共同研究イメージ
(4)日中共同研究レポート
2か年に渡る日中共同研究の成果として、窒素・りんの水質総量削減に係る日中共同研究レポート(前編・後編)を以下の通り取りまとめました。
水質総量削減制度導入指針
窒素・りんの水質総量削減に係る日中共同研究で得られた導入支援に関する知見を踏まえ、水質総量削減制度の導入に係る指針を取りまとめました。