報道発表資料

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2024年03月22日
  • 地球環境

環境省ナッジ事業の結果について~カーボンフットプリントやコミットメント、ポイント等の効果を予備実証~

1.環境省では、ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を始めとする行動科学の知見を活用してライフスタイルの自発的な変革を創出する新たな政策手法を検証するとともに、産学政官民連携・関係府省等連携のオールジャパンの体制による日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)の事務局を務めています。

2.この度、令和4年度から実施している「ナッジ×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進事業」で採択された事業者のうち、株式会社サイバー創研及び株式会社電力シェアリングが令和5年度に実施した、カーボンフットプリントの見える化やコミットメント、ポイント等の効果が環境配慮行動の実施数に与える効果に関する予備的な実証実験の結果についてお知らせします。

3.予備的な実証実験の結果、環境配慮行動の実施数について、カーボンフットプリントを見える化するのみでは効果が見られなかったのに対し(※)、実施数の目標を宣言させることや金銭的価値のあるポイントを付与することにより実施数が統計的有意に高まることが実証されました。今後、結果を踏まえて介入内容を見直し、複数年度にわたる効果の持続性の検証等の本格的な実証実験を実施する予定です。

 ※「見える化」はしばしば用いられる手法ですが、社会実装においては効果のある見える化であるかどうかに留意が必要です。

 

■予備実証実施期間

 令和5年10月

■実証実験参加世帯及び介入内容

 調査会社のモニタ2,000人を無作為に以下の5つのグループのいずれか(400人ずつ)に割当てました。
 ・比較対象としてナッジを提供せず、スマートフォンのアプリで日々の環境配慮行動(脱炭素アクション)を記録し、履歴を表示するグループ(対照群)
 ・対照群の内容に加え、自身の環境配慮行動に伴うカーボンフットプリントの削減量を見える化するグループ(介入群1)
 ・介入群1の内容に加え、1日当たりの環境配慮行動の実施数の目標を宣言させ、目標を達成したら金銭価値のないポイントを付与するグループ(介入群2)
 ・介入群2のポイントを金銭的価値のあるものとするグループ(介入群3)
 ・介入群3の内容に加え、目標を超えて実施した環境配慮行動に対しても金銭的価値のあるポイントを提供するグループ(介入群4)

■用いたスマートフォンのアプリの概要

 ・日々の環境配慮行動を記録し、閲覧できる。記録に当たっては、環境配慮行動を実施したことの客観的根拠として、写真をアップロードさせる。AIがアップロードされた写真を画像判定し、どのような環境配慮行動を実践したか、その候補(1つまたは複数)を表示する。(図1)
 ・実施した環境配慮行動により削減されたCO2排出量を表示する。【カーボンフットプリントの見える化】(図1)
 ・環境配慮行動の実施数の目標を宣言することができ、目標の達成度合いに応じてポイントを付与する。【コミットメント、少額の金銭的または非金銭的インセンティブ】(図2)

図.スマートフォンのアプリの画面のイメージ

 図1:AIの画像判定とCO2排出量の削減量の表示(カーボンフットプリントの見える化)

 図2:環境配慮行動の実施数の目標の宣言(コミットメント)

■結果

 対照群と介入群1の間の比較においては、カーボンフットプリントの見える化により、環境配慮行動の実施数がわずかに増加する傾向が見られましたが、統計的有意差は検出されませんでした。一方で、環境配慮行動の実施数についての目標を設定し、その達成状況を表示することで環境配慮行動の実施数が統計的有意に増加することが実証されました。また、環境配慮行動の実施数の目標達成度合いに応じて金銭的価値のあるポイントを付与することにより、さらに効果が統計的有意に高まるとともに、目標を超えて実施した環境配慮行動に対しても金銭的価値のあるポイントを付与することでさらに効果が統計的有意に高まることが実証されました。

■今後について

 令和6年度以降においては、令和5年度の予備的な実証実験の結果を踏まえて、実証実験の参加世帯数や介入内容の見直し(とりわけ、どのように見える化することで環境配慮行動が促進されるかについて)を行い、改めて実証実験を実施する予定です。

■(参考)日本版ナッジ・ユニットBESTについて

 https://www.env.go.jp/earth/best.html
 日本版ナッジ・ユニットBEST(Behavioral Sciences Team)は、関係府省庁や地方公共団体、産業界や有識者等から成る産学政官民連携のオールジャパンの取組です(事務局:環境省)。ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)を始めとする行動科学の知見(行動インサイト)に基づく取組が政策として、また、民間に早期に社会実装され、自立的に普及することを目的に、環境省のイニシアチブの下、2017年4月に発足しました。その後、同年10月のノーベル経済学賞の受賞分野が行動経済学であったことの後押しもあり、取組が深化し、連携体制が次第に強化されています。どのような取組も、地域に根付くものとするためには、関係するあらゆるステークホルダーを巻き込んでいくことが必要不可欠です。このため、行政内に限った取組ではなく、参加者が同じ立場で自由に議論のできるオールジャパンの実施体制としています。

 ○日本版ナッジ・ユニットBEST のウェブサイト(会議資料、報道発表等)
  https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge.html
 
 ○平成29・30年度年次報告書(日本版ナッジ・ユニットBEST活動報告書)
  https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/report1.pdf
 
 ○報告書「ナッジとEBPM~環境省ナッジ事業を題材とした実践から好循環へ~
  https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/EBPM.pdf
 
 ○ナッジ等の行動インサイトの活用に関わる倫理チェックリスト ①調査・研究編
  https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/checklist_study.pdf
 
 ○ナッジ等の行動インサイトの活用に関わる倫理チェックリスト ②社会実装編
  https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/checklist_deploy.pdf
 
 ○我が国におけるナッジ・ブースト等の行動インサイトの活用の広がりについて
  https://www.env.go.jp/earth/ondanka/nudge/hirogari.pdf

連絡先

環境省地球環境局地球温暖化対策課デコ活応援隊(脱炭素ライフスタイル推進室)
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8341
隊長
井上 雄祐
隊長補佐
池本 忠弘
主査
深澤 友博
隊士
林 晃平