報道発表資料

この記事を印刷
2025年12月26日
  • 保健対策

「令和6年度化学物質環境実態調査結果(概要)」について

1. 環境省では、昭和49年度から一般環境中における化学物質の残留状況を継続的に把握することを目的に、化学物質 環境実態調査(黒本調査)を実施し、その調査結果を各種化学物質対策に活用しています。
2. この度、「令和6年度化学物質環境実態調査結果(概要)」を取りまとめましたので公表します。調査結果の詳細については、今後、「令和7年度版 化学物質と環境」として取りまとめ、公表する予定です。

1. 経緯

 昭和49年度に、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下「化審法」という。)制定時の附帯決議を踏まえ、一般環境中の既存化学物質の残留状況の把握を目的として「化学物質環境調査」が開始されました。昭和54年度からは、「プライオリティリスト」(優先的に調査に取り組む化学物質の一覧)に基づく「化学物質環境安全性総点検調査」の枠組みが確立され、調査内容が拡充されてきたところです。
 その後、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下「化管法」という。)の施行、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(以下「POPs条約」という。)の採択等を踏まえ、平成14年度からは調査結果が施策により有効に活用されるよう、環境省内の化学物質管理施策等を所管している部署からの要望物質を中心に調査対象物質を選定する方式に変更し、平成18年度からは調査体系を「初期環境調査」、「詳細環境調査」及び「モニタリング調査」として実施しています。
 さらに、平成22年度から、排出に関する情報を考慮した調査地点の選定やモニタリング調査における調査頻度等を見直した調査を実施しています。

2. 調査の進め方

(1) 調査対象物質の選定

 調査対象物質は、各担当部署から調査要望がなされた物質について、分析法開発の可能性やリスクの観点等を考慮して絞り込みを行った後、令和5年度に開催された中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会(第29回)における評価等を経て選定されました。

(2) 調査内容

ア.初期環境調査

 環境リスクが懸念される化学物質について、一般環境中で高濃度が予想される地域においてデータを取得することにより、化管法の指定化学物質の指定、その他化学物質による環境リスクに係る施策について検討する際の基礎資料等とすることを目的として調査を行い、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」及び「初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会」においてデータの精査、解析等を行いました。
 令和6年度は10物質(群)を調査対象としました。なお、一部の物質においては、排出に関する情報を考慮した調査地点を含むものとなっています。

イ. 詳細環境調査

 化審法の優先評価化学物質のリスク評価等を行うため、一般環境中における全国的なばく露評価について検討するための資料とすることを目的として調査を行い、初期環境調査と同様、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」及び「初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会」においてデータの精査、解析等を行いました。
 令和6年度は4物質(群)を調査対象としました。なお、一部の物質においては、排出に関する情報を考慮した調査地点を含むものとなっています。

ウ. モニタリング調査

 化審法の第一種特定化学物質等について一般環境中の残留状況を監視すること及びPOPs条約に対応するため条約対象物質等の一般環境中における残留状況の経年変化を把握することを目的として調査を行い、「化学物質環境実態調査結果精査等検討会」、「モニタリング調査の結果に関する解析検討会」においてデータの精査や解析等を行いました。
 令和6年度は、POPs条約対象物質のうち総PCB等11物質(群)を調査対象としました。

3. 調査結果

ア. 初期環境調査(調査結果は別表1のとおり)

 水質については、7調査対象物質(群)を調査し、1物質(群)(りん酸トリエステル類)が検出されました。
 底質については、2調査対象物質を調査し、1物質(トリブチルアミン)が検出されました。
 大気については、4調査対象物質(群)を調査し、全物質(群)(アリルアルコール、1-アリルオキシ-2,3-エポキシプロパン、プロパナール (別名:プロピオンアルデヒド)、りん酸トリエステル類)が検出されました。

イ. 詳細環境調査(調査結果は別表2のとおり)

 水質については、3調査対象物質(群)を調査し、全物質(群)(アクリル酸及びそのエステル類、アルキル硫酸(アルキル基の炭素数が8、9、10、12、14、16又は18のもの)及びその塩類、N,N,N-トリメチルドデカン-1-アミニウムの塩類)が検出されました。
 底質については、1調査対象物質(群)(アルカノール類(アルキル基が直鎖で炭素数が10から16までのもの))を調査し、検出されました。
 大気については、1調査対象物質(アクリル酸)を調査し、検出されました。

ウ. モニタリング調査(調査結果は別表3-1、3-2のとおり)

 令和6年度のモニタリング調査は、POPs条約発効当初からの対象物質のうちの2物質(群)(PCB類、ヘキサクロロベンゼン)及びPOPs条約発効後に対象物質に追加された物質のうちの9物質(群)※の計11物質(群)について調査しました。

※ 令和6年度調査では、同時分析の可能性及び過年度調査における検出状況等を考慮して、以下の9物質(群)について調査を実施しました。
・ ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)
・ ペルフルオロオクタン酸(PFOA)
・ ペンタクロロベンゼン
・ ヘキサクロロブタジエン
・ 短鎖塩素化パラフィン類
・ ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)
・ メトキシクロル
・ デクロランプラス類
・ UV-328

① 継続的に調査を実施している物質(PCB類、ヘキサクロロベンゼン、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ペンタクロロベンゼン(生物及び大気)並びにヘキサクロロブタ-1,3-ジエン(大気))(統計学的な手法による経年変化の解析結果は、別表3-3~3-5のとおり)
 調査を行った全ての媒体(水質、底質、生物及び大気)において、PCB類、ヘキサクロロベンゼン、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)が検出されました。生物及び大気で継続的に調査を実施しているペンタクロロベンゼンが生物及び大気でそれぞれ検出されました。大気で継続的に調査実施しているヘキサクロロブタ-1,3-ジエンも検出されました。なお、以下の媒体別の比較については、環境濃度の比較であり、環境リスクの比較ではありません。
 水質及び底質について平成14年度~令和6年度のデータの推移をみると、水質及び底質中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあるという結果でした。水質及び底質中の濃度の地域分布を見ると、例年どおり、港湾、大都市圏沿岸の準閉鎖系海域等、人間活動の影響を受けやすい地域にある地点の多くは、その他の地域の地点と比べて高濃度でした。
 生物について平成14年度~令和6年度のデータの推移をみると、生物中のPOPs濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあるという結果でした。昨年度に引き続き、総PCB等が人口密集地帯近傍の沿岸域の魚類で、その他の地域の魚類及び貝類と比べて高濃度でした。
 大気について平成14年度~令和6年度のデータの推移をみると、PCB類、ヘキサクロロベンゼン、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)及びペンタクロロベンゼン(生物及び大気)については、大気中の濃度レベルは総じて横ばい又は漸減傾向にあるという結果でした。

② その他の物質(短鎖塩素化パラフィン類(生物及び大気)、ペルフルオロヘキサスルホン酸(PFHxS)並びにメトキシクロル、デクロランプラス類及びUV-328(水質及び底質))
 短鎖塩素化パラフィン類は生物及び大気で検出されました。ペルフルオロヘキサスルホン酸(PFHxS)は全ての媒体(水質、底質、生物及び大気)で検出されました。デクロランプラス類及びUV-328は水質、底質及び生物で検出されました。
 
以上

連絡先

化学物質安全課
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8261
課長
塚田 源一郎
保健専門官
西川 玄希
係長
酒井 学