報道発表資料

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2025年12月08日
  • 自然環境

ワシントン条約第20回締約国会議の結果概要について

  1. 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約(CITES: Convention on International Trade in Endangered Species))第20回締約国会議が、2025年11月24日から同年12月5日まで、サマルカンド(ウズベキスタン共和国)で開催されました。
  2. この会議では、国際取引が規制される種を定めている附属書の改正が審議されたほか、CITESと他の生物多様性関連条約との協力について定めた決議の改正等、条約の運営事項や種の取引と保全に関する決議が採択されました。
■ 開催概要
(1)日  程:2025年11月24日 から 同年12月5日
(2)場  所:サマルカンド(ウズベキスタン共和国)
(3)出席国等:締約国等(163か国及びEU)、国際機関、NGO等
 
■ 附属書改正の審議結果
 51提案(うち陸棲動物は26提案)について審議されました。審議の結果、新たに附属書I又は附属書IIに掲載されることとなった陸棲動物は以下のとおりです。
(附属書Iに掲載)
(1)オカピ(Okapia johnstoni
   附属書Iに掲載。
(2)ゴールデンマンガベイ(Cercocebus chrysogaster
   附属書IIから附属書Iに移行。
(3)コシジロハゲワシ(Gyps africanus)及びマダラハゲワシ(Gyps rueppelli
   附属書IIから附属書Iに移行。
(4)オオハシコメワリ(Sporophila maximiliani
   附属書Iに掲載。
(5)ワレンギャリワスプ(Caribicus warreni
   附属書Iに掲載。
(6)ウミイグアナ(Amblyrhynchus cristatus
   附属書IIから附属書Iに移行。
(7)オカイグアナ属全種(Conolophus spp.
   附属書IIから附属書Iに移行。
(8)エチオピアアダー(Bitis parviocula)及びベールマウンテンアダー(Bitis harenna
   附属書Iに掲載。
(9)ホームセオレガメ(Kinixys homeana
   附属書IIから附属書Iに移行。

(附属書IIに掲載) 
(1)ドルカスガゼル(Gazella dorcas
   附属書IIに掲載。
(2)シマハイエナ(Hyaena hyaena
   附属書IIに掲載。
(3)ホフマンナマケモノ(Choloepus hoffmanni)及びフタユビナマケモノ(Choloepus didactylus
   附属書IIに掲載。
(4)ナキサイチョウ属全種(Bycanistes spp.)及びクロコブサイチョウ属全種(Ceratogymna spp.
   附属書IIに掲載。
(5)ヒメコメワリを含むヒメウソ属5種(Sporophila spp.
   附属書IIに掲載。
(6)エリオットコノハヤモリ(Phyllurus amnicola
   附属書IIに掲載。
(7)ワオコノハヤモリ(Phyllurus caudiannulatus
   附属書IIに掲載。
(8)ギリシャトノサマガエルを含むトノサマガエル属4種(Pelophylax spp.
   附属書IIに掲載。ただし発効は改正附属書の採択より18ヶ月後。
(9)タランチュラの1種(※)(Grammostola rosea
   附属書IIに掲載。
   ※日本では、チリアンレッドローズ、チリアンコモン、ローズヘア等と呼ばれる。
 
 このほか、
ボンテボック(Damaliscus pygargus pygargus)が附属書IIから削除されました。また、附属書IIに掲載されているサイガ(Saiga tatarica)については、商業目的の野生由来標本の取引が原則認められていませんが、カザフスタンの個体群に限り、一定の条件を満たす場合に取引を可能とする附属書の注釈変更が採択されました。
 水棲動物では、ニホンウナギ(Anguilla japonica)を含むウナギ属(Anguilla spp.)を附属書II へ掲載する提案がEU 及びパナマにより提出されましたが、多くの締約国の反対により、否決されました。
 
■ その他の審議結果
(1)国内象牙市場について
 我が国を含めた国内象牙市場を有する国に対し、国内象牙市場が密猟又は違法取引に寄与しないよう講じている措置を報告することを求める決定が更新されました。
 また、我が国における商業目的の象牙の国内取引を原則禁止することを求める決定案がブルキナファソ、エチオピア、ニジェール及びセネガルから提出され、議論されました。しかし、我が国のほか、EU、米国、アジア諸国及び南部アフリカ各国は、同決定案の内容は科学的・客観的な根拠に基づいておらず、国内市場の規制はCITESの権限を超えるとの懸念を示し、この提案に反対しました。最終的に、本決定案は十分な支持を得られなかったため、採択されませんでした。
(2)BBNJとの協力について
 EUやオセアニア各国等から、CITESと国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)との連携の重要性を指摘する意見が寄せられ、CITESと他の生物多様性関連条約との協力について定めた決議16.4及びCITES戦略ビジョン2023-2030について定めた決議18.3がBBNJの記載を盛り込んだ上で改定されました。
 
■ 次回の締約国会議
  次回の締約国会議は、2028年にパナマにおいて開催されることが決定されました。
 
 
● 参考: 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)の概要
(1)目的
 野生動植物の種の国際取引の規制を輸出国と輸入国とが協力して実施することにより、採取・捕獲を抑制して絶滅のおそれのある野生動植物の種の保護を図る。
(2)締約国数
 184ヵ国及び欧州連合(EU)
(3)条約の規制のしくみ
 野生動植物の種の絶滅のおそれ及び取引がその種に与える影響の程度に応じて同条約附属書に掲載し、国際取引の規制を行う。
①附属書Ⅰ:絶滅のおそれのある種であって取引による影響を受けており、又は受けることのあるもの。商業取引を原則禁止。
②附属書Ⅱ:現在必ずしも絶滅のおそれのある種ではないが、取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種となり得るもの。輸出国の許可を受けて商業取引を行うことが可能。
③附属書Ⅲ:いずれかの締約国が、自国内の種の保護のため、他の締約国の協力を必要とするもの。当該種を掲げた国と当該種について取引を行う場合、許可を受けて行う。

● 参考: 附属書の改正に伴う国内対応について
 今回の締約国会議で改正された附属書については、改正が採択された2025年12月5日から起算して90日目の2026年3月5日に効力が生ずる。新たに附属書Ⅰに掲載された種については、改正附属書の発効と同時に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号)」第4条に基づき国際希少野生動植物種に指定し、国内流通規制の対象とする予定。

※国際希少野生動植物種は、生死を問わず、個体(指定されている場合には器官も同様)の譲渡し等(あげる、売る、貸す、もらう、買う、借りる)が原則禁止される。ただし、規制適用前に取得した個体等については、個体等登録を行うことにより取引が可能となる場合がある。
(参考)譲渡し等の規制及び手続について ワシントン条約と種の保存法(環境省Webサイト)
    https://www.env.go.jp/nature/kisho/kisei/species/trade/index.html

連絡先

環境省自然環境局野生生物課
代表
03-3581-3351
直通
03-5521-8283
課長
川越 久史
課長補佐
笹渕 紘平
課長補佐
守 容平
係長
和田 光央