報道発表資料

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1998年12月18日

平成10年光化学大気汚染の概要

平成10年の光化学オキシダント注意報の発令延日数(都道府県単位での発令日の全国集計値)は、135日であり、昨年の95日と比べ、40日増加した。光化学オキシダントの濃度は、気象条件等に大きく影響されるため、年により大きく増減するが、過去10年間でみると本年は多い方から5番目であった。
 また、平成10年の光化学大気汚染によると思われる被害届出人数は、1,270人であり、昨年の315人と比べ、955人増加した。被害届出人数についても、年ごとの増減が著しいが、過去10年間でみると本年は平成3年の1,454人に次いで2番目に多かった。
 環境庁では、関東地域において、大気汚染物質広域監視システム(PAPION)を運用し、地域内の各都県に光化学オキシダントの濃度予測等の情報提供を行ってきたところである。今後も引き続き、大気汚染物質の広域的な監視を実施するとともに、大気汚染防止法、自動車NOx法等に基づき、光化学オキシダント生成の原原因物質である窒素酸化物、炭化水素類の一層の削減等に努めていくこととしている。

 環境庁は、光化学オキシダント注意報等の発令状況、光化学大気汚染によると思われる被害届出状況について、毎年、その発生のおそれのある4~10月の間を対象に、全国の都道府県からその状況の報告を求め、取りまとめている。本年の状況は、以下のとおりである。

1.注意報等発令状況

 平成10年においては、22都府県で光化学オキシダントに係る注意報の発令があり、その延日数は135日であった(表-1)。これは昨年の95日(20都府県)より40日増加した。光化学オキシダントの濃度は、気象条件等に大きく影響されるため、年により大きく増減するが、過去10年間でみると、本年は多い方から5番目であった(表-2、図-1)。
 ブロック別では東京湾ブロック(1都6県)が56日で全体の41%を占めた。都道府県別では、大阪府が25日で最も多く、次いで広島県が15日、埼玉県が12日、東京都が11日、神奈川県が10日と続いている。また、月別では6、7、8月の発令の合計が93日で、全体の69%を占めた(表-1、図-2)。
 なお、本年は警報の発令はなかった。

2.被害届出状況

 平成10年の光化学大気汚染によると思われる被害については、9都府県で届出があった。その人数は合計1,270人で、昨年の315人(5都県)より955人増加した。被害届出人数についても、注意報発令延日数と同様、年により大きく増減するが、過去10年間でみると、本年は平成3年の1,454人(6都県)に次いで2番目に多かった(表-2)。
 月別に見ると、7月に集中しており、この月は1,145人で全体の90%を占めた。そのうちでも3日は茨城県で479人、埼玉県で7人、9日は千葉県で311人、東京都で303人、埼玉県で12人と集中して発生し、この2日間だけで全体の88%を占めた(表-3)。
 集団被害発生(20人以上)は、茨城県で452人、千葉県で291人等18件(1,127人)であった。集団被害届出人数は被害届出人数の89%を占めた。
 被害届出の内訳を見ると、小学生が全体の61%を占めた。また、その多くは屋外での運動中に発生した。
 被害症状としては、眼及びのどに関する症状が多く、静養やうがい等によって回復した。

3.今後の対策

 環境庁としては、引き続き、大気汚染物質広域監視システム(PAPION)を活用し、大気汚染物質の広域的な監視を実施するとともに、大気汚染防止法、自動車NOx法等に基づき、光化学オキシダント生成の原因物質である窒素酸化物、炭化水素類の一層の削減等に努めていくこととしている。

参考

1.光化学オキシダントの発生機構

 光化学オキシダントは、工場や自動車から排出される窒素酸化物及び炭化水素類を主体とする一次汚染物質が、太陽光線の照射を受けて光化学反応を起こすことにより発生する二次的な汚染物質である。日差しが強く、気温が高く、風が弱い日等に高濃度になりやすい。

「注意報等」

注意報及び警報をいう。
「注意報」 光化学オキシダント濃度の1時間値が0.12ppm以上で、気象条件からみてその状態が継続すると認められる場合に、大気汚染防止法第23条第1項の規定により発令される。
「警報」 各都道府県等が独自に要綱等で定めているもので、一般的には、光化学オキシダント濃度の1時間値が0.24ppm以上で、気象条件からみてその状態が継続すると認められる場合に発令される。
「延日数」 都道府県を一つの単位として注意報等の発令日数を集計したものであり、同一日に同一都道府県内の複数の発令区域で注意報等が発令されても、当該都道府県での発令は1日として数える。
2.緊急時の措置の概要

 大気汚染防止法においては、光化学オキシダントの濃度が高くなり、被害が生ずるおそれがあるときは、都道府県知事等が注意報を発令し、報道、教育機関等を通じて、住民、工場・事業場等に対して情報の周知徹底を迅速に行うこととなっている。また、この際、光化学オキシダントの原因物質である窒素酸化物及び炭化水素類の排出削減のため、工場・事業場等に対しては、ばい煙排出量の削減について、自動車の使用者に対しては運転の自粛について、それぞれ協力を求めることとなっている。

3.大気汚染物質広域監視システム(PAPION)

 関東地域(1都7県)を対象として、平成8年6月より運用を開始したシステムで、気温、風向・風速等の気象データ及び大気汚染常時監視局で測定されたオキシダント、窒素酸化物、浮遊粒子状物質等の大気環境データをリアルタイムで収集・配信するとともに、光化学オキシダント等の濃度の前日・当日予測を行うものである。

4.本年、6月末から7月上旬の関東地域における気象状況

 関東地域においては、6月末から7月上旬にかけて太平洋高気圧が強まって夏型となり、晴天で風が弱く光化学オキシダントが滞留しやすい気象条件になった。

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局企画課広域大気管理室
室 長 :一瀬 壽幸  内6560
 補 佐 :山崎 元資  内6562
 担 当 :小梶 登志明 内6564