報道発表資料

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1997年04月18日

第3次酸性雨対策調査の中間取りまとめについて

 酸性雨対策検討会(座長:大喜多敏一桜美林大学教授)は,第3次酸性雨対策調査(平成5年度~9年度)の最終的な取りまとめに向けた検討課題を抽出するとともに,今後の対策の方向性を探るため,平成5年度から7年度までの調査結果について中間取りまとめを行った。                       
 その概要は次のとおりである。

  1.  降水のpHは4.8~4.9(年平均値の全国平均)と,第2次調査の結果とほぼ同レベルの酸性雨が観測され,これまで森林,湖沼等の被害が報告されている欧米と比べてもほぼ同程度の酸性度であった。また,日本海側の離島測定局で冬季に硫酸イオン濃度の上昇が認められ,大陸からの影響が示唆された。      
     
  2.  酸性雨の陸水への影響については,アルカリ度の低い湖沼が確認された。また,これまで得られた実測データ,文献データ等を基に,湖沼の酸性化の予測シミュレーションモデルの構築を行い,一定の条件を設定して酸性化が始まる年数の予測を行ったが,早い場合で概ね30年後との結果も得られている。    
     
  3.  土壌・植生モニタリングにおいては,原因不明の樹木衰退が見られた地点が前 回調査に引き続き確認された。また,土壌理化学性の面からは前回調査に比べ変化は見られなかったが,酸性の強い土壌が今回も確認された。
 環境庁においては、この中間取りまとめを受け,第3次調査の最終取りまとめに向けてさらに調査・検討を進め,酸性雨対策の一層の推進を図っていくこととしている。

【第3次酸性雨対策調査について】

  1. 酸性雨について
     酸性雨とは,狭義には化石燃料の燃焼に伴い大気中に放出された硫黄酸化物や窒素酸化物が溶解した酸性度の高い(pHの低い)雨のことを指すが,現在ではこれに加え,酸性度の高い霧や雪(湿性沈着)とエアロゾル状又はガス状の酸性降下物(乾性沈着)をあわせて酸性雨と呼んでいる。酸性雨による影響としては,湖沼の酸性化,土壌の酸性化による森林の衰退,銅像等の文化財の損傷等が指摘されている。
     酸性雨は地球環境問題のひとつであり,その解決のためには関係国が協力してこの問題に取組む必要があることから,欧州においては1979年に長距離越境大気汚染物質に関する条約が締結され,同条約に基づき,酸性雨の共同監視,汚染物質の排出削減対策等が進められている。
     
  2. 第3次酸性雨対策調査の構成
     第3次酸性雨対策調査は,我が国における酸性雨の実態及びその影響を明らかにするため,第1次(昭和58年度~62年度)及び第2次(昭和63年度~平成4年度)の2次にわたる調査に引き続き平成5年度から5カ年計画で環境庁が実施している調査であり,次の調査により構成されている。
     
    1.大気系調査 酸性雨モニタリング調査
    酸性雨発生予測調査
    2.陸水系調査 陸水モニタリング調査
    陸水生態系影響調査
    陸水影響予測調査
    3.土壌・植生系調査 土壌・植生モニタリング調査
    土壌影響予測調査
    4.総合影響調査 総合モニタリング調査
      酸性雨及び酸化性大気汚染物質等による土壌・植生影響解明調査
【第3次酸性雨対策調査中間取りまとめの概要】、降水中のpH分布図、及び月別全地点平均 nss-SO4 2- 濃度変化図については、添付資料を参照。

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局大気規制課
課長 飯島 (6530) 担当 飯豊 (6538)

環境庁水質保全局水質管理課
課長 南川 (6630) 担当 増田 (6632)

環境庁水質保全局土壌農薬課
課長 西川 (6650) 担当 福盛田(6652)