報道発表資料

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1997年06月20日

平成8年度有害大気汚染物質モニタリング調査結果

環境庁では、有害大気汚染物質の対策の一環として、昭和60年度から未規制大気汚染物質モニタリング調査を実施している。
 平成8年度は、一般環境調査として、ダイオキシン類について、21地点で測定を実施した。また、ベンゼン等の揮発性有機化合物9物質及びアルデヒド類2物質について、国設大気環境測定所等の11地点で測定を実施した。また、道路沿道調査として、自動車排出ガスに含まれると考えられる5物質について、全国の自動車交通量が多い道路(6箇所)の沿道及びその後背地で測定を実施した。
 ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンに係る調査結果を、本年2月に設定された大気環境基準値と比較すると、ベンゼンについては、国設大気環境測定所等で測定した11地点のうち8地点で環境基準値を上回っており、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについては、すべての地点で環境基準値を下回っていた。                        

1.調査趣旨

大気中の濃度が低濃度であっても人が長期的に曝露された場合には健康影響が懸念される有害大気汚染物質については、本年4月から改正大気汚染防止法に基づき対策が推進されている。

平成8年10月の中央環境審議会答申は、有害大気汚染物質の中から、当該物質の有害性の程度や大気環境の状況等からみて、ある程度健康リスクが高いと考えられる22種類の物質(優先取組物質)を選定し、これらの物質に重点を置いて有害大気汚染物質対策を推進することを提言した。

環境庁においては、昭和60年度から未規制大気汚染物質モニタリング調査を行い、大気汚染防止対策推進の基礎資料としているが、平成8年度の調査では、優先取組物質の中から、一般環境調査として、ダイオキシン類、揮発性有機化合物9物質及びアルデヒド類2物質の合計12物質、道路沿道調査として、自動車排出ガスに含まれると考えられる5物質を対象として調査を行った。

2.対象物質及び調査方法

  • (1)一般環境調査
    • {1}ダイオキシン類

      10地方公共団体の21地点において、夏期及び冬期に、それぞれ24時間のサンプリングを2日間連続して行うことにより、各地点4検体、計84検体を採取し、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS法)により分析を行った。

    • {2}揮発性有機化合物及びアルデヒド類・対象物質  揮発性有機化合物・・・アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、ベンゼン アルデヒド類・・・・・アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド
      • ・調査方法

        全国11個所の国設大気環境測定所等において、毎月1回、連続24時間のサンプリングを行い、揮発性有機化合物についてはGC/MS法、アルデヒド類については高速液体クロマトグラフ法(HPLC法)により分析を行った。(アクリロニトリルについては、宇部及び岩崎西のみ調査を行った。)

  • (2)道路沿道調査
    • ・対象物質

      アセトアルデヒド、1,3-ブタジエン、ベンゼン、ホルムアルデヒド、ベンゾ[a]ピレン

    • ・調査方法

      全国6個所の自動車交通量が多い道路の沿道(上り車線側、下り車線側及びそれぞれの後背地)において夏期及び冬期に、それぞれ連続24時間のサンプリングを3日間連続して行うことにより、各地点24検体を採取し、ベンゼン及び1,3-ブタジエンについては原則としてGC/MS法、アルデヒド類及びベンゾ[a]ピレンについてはHPLC法により分析を行った。

3.調査結果の要点

  • (1)一般環境調査
    • {1}ダイオキシン類

      ダイオキシン類には多数の異性体が存在しており、これらの中で最も毒性が強いといわれている2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(2,3,7,8-TCDD)等量濃度にそれぞれ異性体の濃度を換算し、評価するのが一般的である。2,3,7,8-TCDDに換算した結果は、地域ごとに以下のとおり。

      工業地域近傍の住宅地域の平均値は1.00pg/m3(0.38pg/m3~1.67pg/m3)、大都市地域の平均値は1.02pg/m3(0.30pg/m3~1.65pg/m3)、中都市地域の平均値は0.82pg/m3(0.05pg/m3~1.56pg/m3)、バックグラウンド地域の平均値は0.07pg/m3(0.05pg/m3~0.10pg/m3)であった。

      (注)1pgは1兆分の1g

      (参考)ダイオキシン類の指針となる大気環境濃度として、年平均値0.8pg-TEQ/m3以下が中央環境審議会答申で提言される予定。

    • {2}揮発性有機化合物及びアルデヒド類

      ベンゼンについては、一般環境の平均値は5.1μg/m3(2.3μg/m3~8.4μg/m3)であった。

      トリクロロエチレンについては、一般環境の平均値は1.8μg/m3(0.19μg/m3~4.1μg/m3)、テトラクロロエチレンについては、一般環境の平均値は1.1μg/m3(0.17μg/m3~3.6μg/m3)であった。

      なお、ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの環境基準が平成9年2月に設定されているので、これと比較すると、ベンゼンについては11地点のうち8地点において環境基準値を上回っており、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについてはすべての地点で環境基準値を下回っていた。(注)1μgは100万分の1g

      (参考)ベンゼンの環境基準は、年平均値3μg/m3以下

      トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの環境基準は、年平均値200μg/m3以下

  • (2)道路沿道調査

    ベンゼンについては、沿道の平均値は7.3μg/m3(3.3μg/m3~10μg/m3)、その後背地の平均値は4.9μg/m3(2.8μg/m3~8.1μg/m3)であり、沿道と後背地において明確な差がみられた。

今後の対応

有害大気汚染物質の大気環境モニタリングについては、大気汚染防止法に基づき、国及び地方公共団体が調査の実施に努めることとされており、地方公共団体においても、本年度から本格的な調査が開始される予定である。

環境庁としても、今後とも、ダイオキシン類をはじめとする有害大気汚染物質の大気環境モニタリングの充実を図り、地方公共団体による調査結果とあわせて、有害大気汚染物質による大気汚染の健康リスク評価を行い、対策推進に役立てていくこととしている。

*表1・2・3、及び参考については、添付ファイルを参照。
上記の表、及びその他の図表については、添付ファイル(画像版)参照。

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局大気規制課
課長 飯島   孝(内6530)
 担当 宮崎 正信(内6537)

環境庁大気保全局自動車環境対策第二課
課長 中山 寛治(内6550)
 担当 吉田 晶子(内6551)