報道発表資料

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1996年12月17日

気候変動枠組条約ベルリンマンデート・アドホックグループ(AGBM)第5回会合の成果及び今後の見通しについて(資料配付)

今回の会合に際し、各国から多くの具体的提案が行われたが、それらについての意見交換を通じ、各国のプライオリティの違いが明確になってきたことは大きな成果と評価できる。考え方については、ほぼ出尽くした感があり、今回の会合は、考え方の提示段階から国際合意に向けた絞り込みの段階への移行を画する、いわばターニングポイントとなる会合であった。このような機運が醸成されてきたことから、新しい国際約束の土台となる枠組み文書の作成など、国際約束づくりに向けた道筋について大きな異論なく円滑に合意ができたと考えられ、今回の合意は今後の交渉を成功させる上での弾みとなるものと評価できる。
 今後、6月初旬の事務局からの交渉案文の配布に向け、各国とも真剣な検討を進めることが予想されるが、我が国としても、今回の提案について見直しが必要であるか否かの検討作業やさらに他の事項についての条文案づくりの作業を早急に進める必要がある。
1.今回の会合の成果等

 上述の要旨に掲げるほか、今回会合の成果や特色は次のとおり。

{1} サウジアラビアを始めとする産油国の態度に軟化の兆しが見えたことは、今回の交渉における進展として評価できる。具体的には、サウジアラビアは、議定書交渉を阻止する意向がないことを表明し、次回会合までに議定書に盛り込むべき事項について提案を行うことを約束したが、これは今後の交渉を進める上で大きな進展であるといえる。
 
{2} また、附属書I締約国の新たな約束による途上国経済への影響についても、ネガティブな影響についてだけでなく、例えば行動をとらなかった場合の損失費用等の比較を行う等、全体のバランスを考えた検討を行うべきとの指摘が多々行われたことも今後の交渉に受けての明るい材料である。
 
{3} 附属書I締約国に加えて他の国を新約束の対象国として想定することは、ベルリンマンデートを越えるものであるとの考え方から、EU提案の附属書X(OECD加盟国は全て対象とする)については、途上国を中心に強い反発が示された。
 
{4} 米国から、途上国の将来の参加を促進するための措置をとるべきとの強い主張が行われたことも特に注目に値する。今後、途上国の参加促進に向けて、京都会議までに、京都会議以降の対策強化の方向をどこまで検討するかが大きな課題となる。
 
{5} 守るべき目標という形で目標を定める以上は、その達成の方途が確実であると同時に柔軟である必要があるとの理解が共通のものとなってきたが、その具体化方策については、なお意見が分かれている。
 
{6} 我が国の提案に対しては、賛否両論が表明された。例えば、政策措置については、米国やEUの提案を勘案して両者の妥協点を示唆するべきものと考えられるとの評価から、QELROSにおけるp、qの関係が不明確なため、将来の削減に向けて明確な絵が描かれていないとの批判まで、幅広いコメントが寄せられた。


2.今後の見通し及び課題

{1} 我が国及びEUが具体的な議定書案を提出したことにより、未だポジションを固めていない米国に対して、早急に具体的な提案を行うべきとの圧力が強まるものと期待される。また、6月初旬の交渉案文の配布に向けた道筋が決まったことも各国の真剣な検討を促すきっかけとなろう。
 
{2} ノルウェー、オーストラリアを始めとして、多くの国から差異化目標の提案がなされたが、それらの提案には具体的な算出方式も明確にされていないものも多かったため、次回会合までに具体的な数字を示して、附属書I国全体としてどのような将来排出量の見通しになるのかを示すことが強く求められた。差異化目標に国際合意の可能性があるか否かの見極めにとって、次回会合は重要な意義を持つ。
 
{3} 我が国としても、今回の提案について見直しが必要であるか否かの検討作業やさらに他の事項についての条文案づくりの作業を早急に進める必要がある。
 
{4} また、京都会議の開催国として、専門家による会合の開催や、各地域や各グループの主要国間の非公式な協議などを支援するなど、交渉の促進に向けて積極的に貢献していくとともに、京都会議のロジ面についても、国外参加者に周知を行っていく必要がある。
{5} さらに、新年からは、国際交渉の進展にも呼応しつつ、対策の強化に向けた国民的な盛り上がりを図っていくことが急務である。

*参考1,2,3については、添付資料を参照。

添付資料

連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課  長:小林   光(6740)
 調査官:小林 正明(6760)
 補  佐:清瀬 和彦(6758)
 温暖化国際対策推進室
 室  長:鈴木 克徳(6741)
 担  当:奥山 祐矢(6739)