報道発表資料

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1997年06月09日

「気候変動枠組条約議定書策定に向けて必要な科学的知見の評価について」の中間報告書について

この度、地球温暖化問題の科学的側面に関する我が国の権威を集めた「環境庁地球温暖化問題検討委員会」(座長:北野康(やすし)名古屋大学名誉教授、別紙参照、以下「北野委員会」)は、「気候変動枠組条約議定書策定に向けて必要な科学的知見の評価について」と題する中間報告をとりまとめた。
 現在、本年12月の地球温暖化防止京都会議(COP3)における採択を目指して2000年以降の対策、特に数量化された排出抑制・削減目的及びその実現のために必要な政策・措置に関する議定書交渉が進行中である。この中間報告は、議定書交渉において環境庁として重要と考えられる次の3つの事項について、環境庁が北野委員会に科学的な観点からの検討を依頼し、とりまとめられたものである。
 {1}  究極的目標としての大気中の二酸化炭素濃度または温室効果ガスの二酸化炭素換算濃度の安定化の考え方
 {2}  条約の究極的目的の達成に向けた温室効果ガスの排出回廊の考え方
 {3}  バスケット・アプローチ等の考え方
 本中間報告では政策決定に際し、{1}気候変動による影響はこれまでに明らかになった検討成果と比べてより深刻である可能性があること、{2}温室効果ガス(GHG)の排出から気候変動の影響が現実化するまでには相当の遅れがあり確実な変化の検出を待って対策を行うのでは手遅れとなること、{3}気候変動の影響は地域により著しく異なり、特に途上国等においては影響に対して脆弱であること、{4}GHGのCO2換算濃度550ppmvであれば危険がないとは言い切れないこと、{5}温暖化のスピードも問題であること、{6}バスケット・アプローチを仮に使う場合は相当な慎重さが必要なこと{7}超長期的にはGHGの排出量を世界的に半減する必要があること、{8}これらのことを踏まえて、先進国は2000年以降明確な削減目標を持つべきこと等を十分考慮すべきであることを指摘している。
 環境庁としては、今回の報告を科学的な基礎として条約の議定書交渉等の準備作業において有効に活用し、交渉の進展に一層の貢献をしていきたいと考えている。
  1. 報告の背景及び目的

    地球温暖化問題検討委員会(以下「北野委員会」)は、1988年に環境庁が設置した委員会である。別紙メンバーのように、地球温暖化問題の科学的側面に関する我が国の権威を集めた委員会であり、本年4月には「地球温暖化の日本への影響1996」を取りまとめ公表するなど、過去数回にわたり温暖化問題に関する報告をとりまとめてきた。
    今回の報告は、北野委員会が環境庁からの要請により、{1}究極的目標としての大気中の二酸化炭素の濃度または温室効果ガスの二酸化炭素換算濃度の安定化の考え方、{2}条約の究極目的達成に向けた温室効果ガスの排出回廊の考え方及び{3}地球温暖化係数を用いたバスケット・アプローチ等の考え方について昨年9月から6回にわたり検討を続けてきた成果を、議定書交渉等に向けた環境庁の作業へのインプットとするべく、中間報告として取りまとめたものである。

  2. 報告書の構成

    本報告書では、第1章に今回の検討が必要となった理由、第2章から第4章には、前述の3つの課題に対する個別の検討と委員会としての考え方及び科学的な観点からの政策決定の際の留意点をそれぞれまとめ、また、第5章には、2章から4章の検討を総合した上で、科学的な視点から地球温暖化問題についての政策決定を行う際の留意点を総括的にまとめている。

     
    第1章
    本報告書における検討の目的、範囲
    第2章
    究極的目標としての大気中二酸化炭素濃度または温室効果ガスの二酸化炭素換算濃度の安定化の考え方
    第3章
    温室効果ガスの排出回廊の考え方
    第4章
    バスケット・アプローチ等の考え方
    第5章
    現在得られている科学的知見に基づく政策決定のあり方
    資料
    * 「報告内容の要点と解説」及び「検討委員会名簿」は添付資料参照。
    * 「中間報告書」は行政資料の報告書等に掲載しています。

添付資料

連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課研究調査室
なとり
 室 長: 名執 芳博  (内線6743)
      うにすが
 補 佐: 宇仁菅伸介 (内線6746)
      かわまた
 担 当: 川真田正宏 (内線6747)
 温暖化国際対策推進室
 室 長: 鈴木 克徳  (内線6741)