報道発表資料

この記事を印刷
2002年07月30日
  • 自然環境

鳥類標識調査によるベニアジサシの移動経路の確認について

環境省では、鳥類の渡りの経路を始めとした行動生態を把握し、保護施策立案のための基礎資料とするため、鳥類標識調査を全国各地で実施しています。
 今般、本調査の一環として、環境省が作成したレッドリストに準絶滅危惧種として記載されているベニアジサシについて、沖縄本島周辺地域の繁殖地において豪州研究者と共同で調査を行った結果、約6,000キロメートル離れた豪州グレートバリアリーフで標識を装着したベニアジサシが捕獲され、本種が沖縄本島周辺地域と豪州グレートバリアリーフを往き来していることが初めて確認されましたので、お知らせします。
1.調査の経緯
 
 鳥類標識調査は、鳥類に足環等を装着後放鳥し、再捕獲や観察によって情報を収集、解析することにより、鳥類の移動経路や生態等を明らかにし、保護施策立案に役立てるものであり、我が国では、環境省が財団法人山階鳥類研究所への委託事業として実施しています。この一環として、沖縄などで繁殖するベニアジサシ(Sterna dougallii)についても、1975年から調査を実施し、これまでに約9,000羽の個体を標識、放鳥してきました。
 過去の調査の結果として、台湾及びフィリピンにおいて標識個体の回収例があるほか、本年1月には、豪州クイーンズランド州グレートバリアリーフ南部のスウェイン礁において、わが国で足環を装着したベニアジサシの個体18羽が捕獲され、日本で繁殖するベニアジサシの越冬地が初めて明らかにされています。(平成14年2月20日付けの「お知らせ」を参照して下さい。
 
 
2.沖縄におけるベニアジサシ調査の結果
 
 本年7月18日から29日まで、沖縄本島周辺各地において、鳥類標識調査の受託者である財団法人山階鳥類研究所が、豪州クイーンズランド州公園野生生物局職員及び同州ジェイムズ・クック大学研究者の参加を得て、ベニアジサシの繁殖地における調査を実施しました。この結果、ベニアジサシの生息状況として、沖縄本島周辺において約2,000羽の個体及び141の巣が確認されました。
 この調査の中で、7月24日には、名護市屋我地島(やがじしま)において、豪州で足環を装着したベニアジサシ1羽の捕獲に成功しました。これは今回調査に参加した豪州の研究者らが、同国グレートバリアリーフ南部のスウェイン礁で、今年1月8日に足環を装着、放鳥したものです。このほかにも、望遠鏡を用いた観察によって、同様の足環を装着したベニアジサシの個体13羽が沖縄本島周辺で確認され、多くのベニアジサシが豪州グレートバリアリーフから渡ってきていることが初めて実証されました。
 なお、本年1月には、豪州グレートバリアリーフにおいて、沖縄本島周辺で足環を装着したベニアジサシが捕獲されたところであり、今回の調査結果によって、我が国の沖縄本島周辺及び豪州グレートバリアリーフが、ベニアジサシの繁殖地及び越冬地として密接な関係にあることが強く示唆されました。
 今後は、今回採集したベニアジサシの血液サンプルを用いて遺伝子解析を行い、豪州のデータと比較することによって、詳細な類縁関係を解明することとしています。さらに、環境省では、豪州など各国の協力を得つつ、引き続き本種を始めとする鳥類の標識調査を実施し情報の収集を行うとともに、得られた知見を踏まえて渡り鳥保護のための国際協力を進めていく予定です。
 

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課  長  黒田大三郎(6460)
 専門官  中島  尚子(6464)