報道発表資料

この記事を印刷
2002年07月01日
  • 地球環境

「温室効果ガスの国内排出量取引制度について」報告書について

温室効果ガスの費用効果的な排出抑制を目指し、また、京都議定書に基づく京都メカニズムの開始に備えて、国内の事業者が排出枠を設定し、その一部を取引する「国内排出量取引」制度について、国内外の関心が高まっている。
 今般、昨年9月17日に設置した「排出量取引・京都メカニズムに係る国内制度検討会」(座長:大塚直早稲田大学教授)において、国内排出量取引制度に関するこれまでの検討結果をとりまとめた「温室効果ガスの国内排出量取引制度について」報告書が作成されたので公表する。
 本報告書では、2008年からの京都議定書の第1約束期間に向けて、ステップ・バイ・ステップで国内排出量取引を導入することとし、第1ステップとしては、簡素で、事業者の任意参加による試行的な国内排出量取引を実施することを提言している。
 環境省では、我が国が京都議定書を締結したことを受け、温室効果ガスの排出量取引に関する経験の一層の蓄積が必要と考えており、本報告書を一つのガイドとして、事業者又は事業者団体等が試行的に自主的な国内排出量取引を実施していくことを期待している。

1.背 景

 
 京都議定書においては、国際排出量取引制度などの市場メカニズムを活用する京都メカニズムの導入を規定している。これを受け、本年3月に策定された政府の地球温暖化対策推進大綱においては、「京都議定書の約束を費用効果的に達成するためには、京都メカニズムの利用が国内対策に対して補足的であるとの原則を踏まえつつ、これを適切に活用していくことが重要である。」としている。京都メカニズムは、民間の事業者による活用も認められている。
 
 また、実効性があり、かつ、市場メカニズムを活用した費用効果の高い方法で、国内での温室効果ガスの排出を削減する「経済的措置」の一つとして、国内の事業者等を対象とした排出量取引制度(国内排出量取引制度)を導入することについて、世界的に関心が高まっている。英国では既に本年4月より導入されており、EUでも2005年からのEU域内での排出量取引制度の開始を検討している。しかし我が国において、国内排出量取引制度を環境保全のための制度として実施した経験がないため、我が国に合った制度設計を行うための政府の知見、制度を活用する側としての民間の知見等について蓄積がないのが現状である。これを受け、中央環境審議会の「京都議定書の締結に向けた国内制度の在り方に関する答申」(平成14年1月)においては、国内排出量取引について、「第1ステップにおいては自主的な取引の実施を支援することが適当である。また、第2ステップにおいては、第1ステップでの成果、海外の動向等も踏まえつつ、必要に応じ、国内の排出量取引制度の多面的な検討を行う。」としているところである。
 
 

2.報告書の概要

 
京都議定書の第1約束期間(2008年~2012年)が始まる前までの期間を助走期間として有効に活用し、制度の設計者、参加者の双方が排出量取引に係る知見を獲得するため、その期間を、2002~2004年(第1ステップ)、2005~2007年(第2ステップ)の2つに分け、ステップ・バイ・ステップで検討していくことが適当としている。そして、

 [1] 第1ステップにおいては、簡素で、任意の参加による、事業者等の自主性を重視した試行的な国内排出量取引を実施することによって、制度に関する経験を蓄積するのが適当としており、以下のような具体的な制度試案を提示している。
事業者が自らの排出枠を自らの判断で設定し、その排出枠の一部の売買が可能とする。
排出枠の移転・獲得は、レジストリー(登録簿)により行う。
各年末に、保有する排出枠と実際の排出量とを照合し、余剰排出枠があれば販売又は次期に繰り越しができ、排出枠が不足すれば他者から購入することとする。
[2] 第2ステップにおいては、第1ステップにおける成果や諸外国における検討・実施状況等を踏まえて問題点を把握し、必要に応じて柔軟に制度の見直しを行うことが期待されるとしており、制度の在り方を展望している。
[3] 京都議定書の第1約束期間においては、これらの経験を踏まえ、国際排出量取引とリンクした本格的な国内排出量取引制度を導入することの是非、導入する場合の制度設計の在り方等を判断することが適当としている。
 

 

今後の予定

 
 排出量取引を含む京都メカニズムの国内制度については、引き続き、本年4月8日に環境省に設置した「京都メカニズムに関する検討会」をはじめとする様々な場で更なる検討を進めることとする。
 
 

排出量取引・京都メカニズムに係る国内制度検討会委員名簿
 
 【座 長】  
  大塚  直 早稲田大学 法学部 教授
 【委 員】
  安達 精司 東京証券取引所 経営企画部 審議役
  高野 光信 ナットソース・ジャパン株式会社 ジェネラル・マネージャー
  浜岡 泰介 みずほ第一フィナンシャルテクノロジー(株)業務企画部 次長
  松尾 直樹 (財)地球環境戦略研究機関 気候政策プロジェクト 上席研究員
  弥永 真生 筑波大学 社会科学系 教授
  渡邉 泰宏 日本公認会計士協会 経営研究調査会 環境監査専門部会長

「温室効果ガスの国内排出量取引制度について」

添付資料

連絡先
環境省地球環境局地球温暖化対策課
室 長:高橋康夫 (6772)
 補 佐:熊倉基之 (6781)